「現在地は、ここだ」
ブリッジの中で、ブライトがそう示したのは北米大陸の中でもメキシコに近い場所だった。
これだけを見れば、連邦軍の本拠地がある南米のジャブローまで行けそうではあるが……ただ、南米と北米でそれぞれ連邦軍とジオン軍と勢力がはっきりと別れている以上、当然ながら南米と北米の辺りはそれぞれが厳重に警戒している筈であり、そんな中をホワイトベースで進もうものなら、絶対に見つかる。
その上、現在のホワイトベースの戦力は、俺のガンキャノンがなくなっており、アムロのガンダムも大気圏突入時の戦いでかなり無茶をしたという事で、色々と問題が起きているという事だろう。
つまり、使える戦力はカイのガンキャノンに、ガンタンクが3機。それとホワイトベース。
カイは何だかんだとかなりパイロットとしての素質を持っているが、それでも戦力不足なのは明白だ。
そうなると、敵に見つからないようにジャブローに向かうのに、北米大陸を突っ切っていくというのは、かなり厳しい。
「ジャブローまでの距離は、約6000km。そう考えると、これからの進路は慎重に選ぶ必要がある」
「ジオン軍の勢力範囲内なんだぞ! そんな悠長な……あ、痛っ、痛たたたたた」
ブライトに何かを叫ぼうとしたリードだったが、胃を抑えて痛みを訴える。
ストレスから来る胃痛なんだろうが、ぶっちゃけリードよりはブライトの方がそういうのになってもおかしくはなさそうだけどな。
リードは何かあると叫んでストレスを発散させているし。
いやまぁ、リードの胃痛には俺の一件も当然関係しているんだろうから、そこまで責めるような事は出来ないが。
格納庫にブライトやリードが突っ込んできた時の騒動を考えると、そんな風に思ってしまう。
とはいえ、大尉という階級にある人物がそんな事でいいのかという思いがない訳でもないが。
フラウが呼ばれ、医務室にリードを連れて行こうとした、その時……
「艦長、敵です! 大型機が1機に、編隊を組んでいる小型機多数!」
不意に、レーダーで周囲を警戒していたオペレーターが叫ぶ。
それを聞いたブリッジにいた面々は緊張するが、俺にしてみれば当然だろうと思う。
そもそも、シャアからホワイトベースが北米に降下したという報告は当然のようにガルマに入っている筈だった。
シャアとガルマは士官学校でも仲が良く、そのうえ主席と次席だったらしいし。
……ちなみに、主席がガルマで次席がシャアだったのは、当時の士官学校の校長がドズルだった事を含めて考えると、すぐにどういう事なのかが分かる。
とはいえ、それでも実力で士官学校の中でもトップクラスの成績だったのは間違いないのだから、ガルマも相応に優秀であるのは間違いない。
そんな状況で自分の勢力圏内にホワイトベースがいると知れば、当然のように攻撃を仕掛けてくるだろう。
「ミナト、すぐにホワイトベースの移動を」
「それはいいけど、どこに向かうの?」
「取りあえず、ここを離れる。出来れば、岩山のような身を隠せる場所に移動したい」
ブライトの指示に従い、ミナトがホワイトベースの操舵を握る。
……リードは、とにかく敵を撃退しろとだけ命令してから医務室に向かった。
ちなみにホワイトベースの操舵に関しては、戦闘時や慎重な移動が必要になる時はミナトが、通常の移動時にはミライがやる、という感じになっているらしい。
「アクセルのガンキャノンはともかく、ガンダムは出せるか?」
ブライトの視線がアムロに向けられるが、そのアムロはメカニックに視線を向け、そのメカニックが口を開く。
「出撃出来るかどうかって言われれば、出撃は出来ます。ただし、大気突入時の戦いでかなり損耗しているので……性能としては、5割、下手をすれば4割といったところですね。個人的には、出さない方がいいかと」
最悪4割か。
俺が予想していた以上に、大気圏に突入する時の消耗は酷かったらしい。
下手をすればあのままザク諸共大気圏に突入していたんだろうから、それを考えれば、その程度で良かったと言うべきなのか?
ともあれ、メカニックの言葉を聞き……だが、ブライトは口を開く。
「敵の攻撃で装甲を抜かれるという事はないか?」
「あー……どうでしょう。多分大丈夫だとは思いますけど、何しろルナ・チタニウムの装甲で大気圏に突入しながら戦闘したなんて実験はやってませんしね。ただ、計算上では問題ありません」
「なら、悪いが出撃してくれ」
「えっ!?」
ブライトの言葉に、アムロが驚いたように声を上げる。
てっきり、出撃しなくてもいいと言われると思っていたのだろう。
まぁ、ガンダムの性能が半分以下になっていると言われば、普通ならそう思っても仕方がない。
「ブライトさん、本気ですか!?」
「本気だ。勿論、その状態で前線に出ろとは言わない。ガンタンク隊が以前やっていたように、ホワイトベースの甲板上からビームライフルを使って射撃してくれればいい」
「そんなっ!」
ブライトの言葉に、不満一杯といった様子で叫ぶアムロ。
まぁ、アムロにしてみれば大気圏突入時に戦闘が終わってから地球に降下し、そして多少は休む時間があったが本格的な休みはないままで、また戦闘に出ろと言われたのだ。
ましてや、ガンダムは半分以下の性能しか出ないとなれば、アムロが不満に思う気持ちは分かる。
だが、同時にブライトの気持ちも分かってしまう。
ブライト――ついでにリードも――にしてみれば、連邦軍の機密であるホワイトベースやMSのデータ……特にMSの戦闘データは、何が何でも連邦軍に引き渡す必要があった。
そうする事により、連邦軍のMSの性能は間違いなく上がり、ジオン軍との戦争でも有利に戦う事が出来るようになる。
その上、迫ってきているのは大型機と小型機……恐らくガウとドップだ。
ガウはメガ粒子砲があるのでその攻撃力は危険だが、それ以外……特に主力と思しきドップに関しては、ルナ・チタニウムの装甲を持つガンダムには損傷を与える事が出来ない。
それでいながら、ガンダムが持つビームライフルの威力は戦艦の主砲級で、例えガウであっても命中すれば撃墜するのは難しい事ではない。
そういう意味で、動かせるのであれば是非ともガンダムを使いたいというブライトの気持ちも分からないではない。
「分かってくれとは言わない。だが、今アムロが出撃しなければ、このホワイトベースは撃破されてしまうのだぞ。それでもいいのか!」
「だからって、僕が出撃すればいいっていうのは違うでしょう! そんなに言うなら、ブライトさんがガンダムに乗ればいいじゃないか!」
そう言った瞬間、ブライトは拳を振るう。
ネギま世界を含め、生身での戦闘を経験している俺にとっては、回避するのは難しくないような攻撃。
だが、インドア派のアムロにとって、その攻撃を回避することは出来ずに殴り飛ばされる。
床に倒れ込むアムロだったが、すぐに起き上がり、叫ぶ。
「殴ったな! 父さんにも殴られた事はないのに!」
「それが甘ったれなんだ! 殴られもせずに一人前になった奴がいるものか!」
そうして、再びブライトの拳が振るわれる。
ニュータイプ能力を持つアムロなら、それこそブライトの攻撃を回避する事が出来てもおかしくはない。
だが、それはあくまでも理屈ならでは、という事なのだろう。
幾ら攻撃をしてくるとアムロが分かっていても、実際に目の前で拳を振るわれれば、身体が硬直してしまってもおかしくはない。
「ま、また殴ったな……2度も殴ったな! もう、絶対にガンダムになんか乗ってやらないからなぁっ!」
「ああ、構わん。だがな、アムロ。今のままだと、お前は虫けら以下だ。お前のその実力があれば、いずれはシャアにだって勝てると、そう思ってたんだがな」
そう言ったブライトは、視線をこちらに向けてくる。
「アクセル、ガンダムに乗って貰えるか?」
「……まぁ、俺のガンキャノンは既にないしな。乗るMSがあるのなら構わないが……本当にいいのか?」
最後の言葉は、ブライトでなく、殴られた頬を抑えながらブライトを睨み付けているアムロに対するものだ。
そんな俺の言葉に、アムロは視線を向け……ぎりっ、と周囲に聞こえるように奥歯を噛みしめる。
「このままだと、お前は俺に勝てない。それで、本当に構わないんだな?」
再び俺の口から出た言葉に、アムロの視線は鋭くなる。
ハヤトがアムロに対抗心があるように、アムロが俺に対抗心を持っているというのは、当然知っている。
そんな状況の中で対抗心を抱いている俺に勝てないと言われれば、何気に負けん気の強いアムロとしては、思うところがあったのだろう。
正直なところ、敵を迎撃するだけならMSを使わず炎獣を使ってもいい。
大量に生み出された炎獣は、ドップ程度なら容易に撃墜する事が出来るのだから。
ガウの方も、この戦争で最大級の航空機であるとはいえ、炎獣の数で戦えばどうとでもなる。
だが……今はアムロを少しでも成長させる為に、最後の最後、本当に最後になるまで、手を出すつもりはない。……ガンキャノンも半ば大破して空間倉庫にあるしな。
そんな訳で、俺はアムロがどう答えるのかを待ち……
「分かりましたよ! 乗ればいいんでしょ、乗れば! 僕がガンダムに乗って、ジオン軍を追い払ってやる!」
そう叫ぶアムロ。
ふぅ。取りあえず、アムロがガンダムで出撃する事を了承したのは助かった。
とはいえ、今のガンダムの状況を考えると、ブライトが望んでいるのはあくまでもビームライフルという極めて強力な攻撃力を活かした、砲台役なんだろうが。
「……だ、そうだが?」
「分かった。では、アムロに頼もう」
俺の言葉に、ブライトは短くそう告げる。
そしてアムロがガンダムに乗ると言った時には既にガンタンク隊の面々はいなくなっており、カイだけがここに残っていた。
……って、何でカイはここに残ってるんだ?
そんな疑問を抱き、カイに視線を向ける。
俺の視線を受け取ったカイは、頭を掻きながら口を開く。
「いや、ガンキャノンに乗るなら、俺より操縦が上手いアクセルが乗った方がいいと思ったんだけど。どうなのかね?」
なるほど。まぁ、カイの気持ちも理解は出来る。
カイにしてみれば、より操縦技術の高い俺がガンキャノンに乗った方が、今回の戦いでホワイトベースの被害が低くなると、そう考えたのだろう。
それは間違っていない。
だが、同時に俺の狙いを定めるという意味では少し物足りないのも事実。
「教育型コンピュータの影響で、カイのガンキャノンはカイの専用機になっている。それに、傍から見れば元気に見えるかもしれないが、生身で大気圏を突破した時に大量に魔力を消費したから、こう見えても結構疲れてるんだよ」
勿論、それは真っ赤な嘘だ。
混沌精霊の俺にとって、生身で大気圏を突破するのは特別な対処をするような必要もなく、それこそ生身でそのまま降下しても全く問題はない。
そんな状況で俺が出ない事にしたのは、曲がりなりにもアムロが出る以上、ホワイトベースの安全は半ば確約されたようなものだったからだ。
いやまぁ、さっきのアムロの様子から考えると、とてもではないがまともな状態ではないのは明らかなのだが。
そのような状況であっても、恐らく……いや、ほぼ確実に戦いを有利に進める事が出来るだろうというのは、予想出来る。
そんな訳で、何気にMSを操縦する才能の高いカイに、出来れば戦闘経験を積ませておきたかった、というのもある。
特にアムロは一応、本当に一応ではあってもコロニー内での戦闘……つまり、無重力下以外の場所での戦闘を経験しているが、カイが参加した戦闘は全てが無重力空間だ。
……一応ルナツーでの戦いでは地面がある場所での戦闘ではあったが、それでも無重力だっていうのは変わらないしな。
俺、綾子、ミナトの3人がホワイトベースから降りると、ここに残るのはアムロ達だけになる。
その為、今のうちに地球という場所での戦闘を経験させておきたいと思うのは当然だろう。
シミュレータで地球での戦いも経験してはいるのかもしれないが、シミュレータと実戦はやっぱり細かい場所でかなり違うしな。
「分かったよ。しゃーねーな」
カイが不満そうにしながら、それでもそれ以上は何も言わずにブリッジを出て行く。
これ以上ここで言い争いをしていても、ただ時間を無駄にするだけで、ホワイトベースが危機に陥る可能性が高くなる。
そう判断しての行動なのだろう。
「まぁ、ジオン軍もいきなりこっちを倒そうとは思わないだろ。恐らくは、まず様子見といったところだ。……勿論、こっちが予想外に脆ければ、一気に撃破しようとする可能性はあるかもしれないが」
緊張した様子のブライトに対し、俺は安心させるようにそう告げる。
……ガルマ・ザビが予想以上に馬鹿な場合でなければ、の話なのだが。
多分大丈夫だろう。……うん、多分。
何となく自分にそう言い聞かせながら、いざとなったら炎獣で迎撃をするという事を決めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:345
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1456