国葬。
そう言われたガルマは、当然のようにショックを受けていた。
当然だろう。普通なら、国葬とはいえ自分の葬式を見るなどという事はないのだから。
そもそも、ガルマがここにいる以上はガルマの死体は当然見つかっておらず、ジオン軍はガルマの捜索を諦め、戦闘中行方不明……いわゆるKIA……いや、死亡が確認された訳じゃないから、MIAか? ともあれ、そんな風に認識されたという事だ。
『地球連邦に比べ、我がジオン公国の国力は三十分の一以下である。にも関わらず、今日まで果敢に戦い抜いてこられたのは、何故か』
そう叫び、ギレンは大きく手を振り、言葉を続ける。
『我々ジオン公国の戦争目的こそが正義であるからだ!』
「ギレン兄さん……」
ギレンの演説に、ガルマが何を感じたのか分からない。
失望か希望か、それとも絶望か。
ともあれ、それからもギレンの演説は続く。
ギレンにしてみれば、ガルマというジオン公国でも人気の高かったザビ家の人間が死んだという今の状況は、決して悪い状況ではないといったところか。
英雄というのは、死んでこそ使い道が増えるのだから。
まぁ、ギレンに肉親の情というのがあるのかどうかは、俺にも分からない。
もしかしたら、ガルマが死んだ事を本当に悲しんではいるが、ジオン公国総帥という立場から、何とかこうしてガルマの死をジオン公国の利益に結びつけようとしているのかもしれない。
あるいは、本当にギレンにとってガルマという人物は、駒でしかないという可能性もある。
ともあれ、このギレンの演説はガルマに色々と思うところがあったのも事実だろう。
「弟の国葬をこういうのに使うのって、ちょっと面白くないわね」
演説を見ていたミナトが、不愉快そうに告げる。
ミナトは家族という存在を大事にする。
それこそ、ルリやラピスといった面々を千鶴と同じくらい可愛がっているし。
そんなミナトにしてみれば、ギレンのこの行動は完全にアウトといったところか。
「人の家の事だから、俺からは何とも言えないな。ただ……まぁ、あまりいい気分じゃないのは、間違いないけど」
そう告げ、俺はガルマに視線を向ける。
実際、この件は俺やミナトがどうこう言うよりも、ガルマがどう思っているのかというのが、一番大きいのだから。
「私は……今は、何とも言えない。ギレン兄さんのやってる事が全て正しいとは思えないけど、もし私が死んでいたのだとすれば、それをジオン公国の為に使うのはおかしくはないだろうし」
「ふーん」
ガルマの言葉に納得した様子を見せるミナトだったが、その表情には一切納得の色はなく、あるのは不満だけだ。
恐らくは、ガルマの中でも今の状況をどう判断すればいいのかをまだ判断出来ていない、といったところか。
とはいえ、ガルマはザビ家を捨ててイセリナとの愛を選んだ男だ。
もしこの状況に不満を持っていても、それを口に出すような真似は難しいだろう。
……もっとも、こうしてガルマの国葬が行われてしまったのを考えると、これからガルマの行動は色々と厳しくなる。
少なくても、素顔のままで人前に出るのは……ジオン公国が存在している間は無理だろう。
いっそ、年齢詐称薬辺りを使わせるか?
そうすれば、俺がアクセル・アルマーと認識されないように、ガルマもガルマ・ザビと認識されるような事はないだろう。
UC世界においては、まだ魔法というのは全く普及していない。
クレイドルに来ている者の中には、当然のように魔法に興味を持っている者もいるのだが、魔法使いがUC世界にやってくるというのは、今のところ殆どない。
だからこそ、ガルマが年齢詐称薬を使っても、それを見破られるという可能性は……それこそ、ガルマが何らかのドジを踏まない限り、心配はいらないだろう。
であれば、やっぱり年齢詐称薬を用意しておいた方がいいのは、間違いない。
「ともあれ、これでガルマが表舞台に立つのは無理……とは言わないが、難しくなったのは間違いないな」
「……そうね。ガルマにとっては残念だろうけど」
「別に、私はそんな風に思ってはいないぞ」
そう告げるガルマだが、その言葉に強がりが混ざっているというのは、それこそ見れば明らかだ。
本人は、決して認めるような事はないだろうが。
「まぁ、ガルマがそう思うのなら、それはそれでいい。取りあえず俺はブリッジに行ってくる。多分、今回の国葬の一件でブライトも何らかの考えがあるだろうし」
「なら、私も行くわ。そろそろミライと交代した方がいいでしょうし」
ミナトも俺の言葉に頷き、最終的にはガルマを残したままで部屋を出て……
「あ」
丁度部屋の前を通りかかったフラウが、俺とミナトの姿を見て小さく声を上げる。
……うん。取りあえず、部屋の中を見られなかったのは、助かったな。
フラウは、何を考えたのか部屋から出て来た俺とミナトを見ると、頬を赤く染める。
「どうしたの? 何かアクセルに用? 言っておくけど、アクセルは女癖が悪いから注意してね。くれぐれも、アクセルの部屋に行ったりしちゃ駄目よ?」
いや、ミナト……ガルマが見つかりにくくする為だろうが、だからって俺を悪者にするのはどうなんだ?
まぁ、なら俺の女癖が悪くないのかと言われれば、素直にそれを否定は出来ないのだが。
恋人が10人以上いて、その多くと同棲をしているというのを考えれば、とてもではないが女癖が悪くないとは言い切れない。
もっとも、だからといってそれを素直に認めるかどうかと言われれば、あまり認めたくないというのが正直なところなのだが。
「い、いえ。そんな事はしません」
慌てたように言うフラウだったが、以前俺の部屋に食事を持ってきた事があったような気がするんだが……まぁ、その件は別にここで言う必要はないか。
「アムロと一緒にいるんじゃなかったのか?」
「え? その、アムロは……知りませんっ!」
いきなり機嫌が悪くなるフラウ。
何かアムロとあったのか?
そう思うが、俺が聞いてもいいような話ではないだろう。
すると、ミナトは自分に任せろと視線を向けてきてから、フラウに話しかける。
「ねぇ、よかったら少し話を聞かせてくれない? こう見えて、男女関係にはそれなりに詳しいつもりよ? 相談に乗るけど」
「え? でも、その……いいんですか? 本当に?」
ミナトの言葉に、フラウが嬉しそうにする。
その相談が具体的にどのようなものなのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかで、アムロの事だろう。
だが、そのアムロがある意味で憧れている女の1人がミナトなんだが……その辺、フラウは理解しているんだろうか。
多分理解していないんだろうな。
もし理解していれば、恋敵とも呼ぶべきミナトに相談をするとは思えないし。
とはいえ、ミナトはアムロに対して特に何か思うところがある訳でもない。
からかうような相手としては、ある意味で向いてるかもしれないが……アムロの場合、基本的に内向的な性格だという事もあって、精神的な浮き沈みが激しいんだよな。
それだけに、アムロに下手な事を言って動揺させたりした場合、戦いの中で若干不味い事になる可能性は十分にある。
それを考えれば、ミナトがアムロをからかうというのは、止めておいた方がいいのは間違いない。
「程々にな」
ミナトに影響されて、フラウまでもが際どい格好とかをしてアムロを誘惑するような真似をしない事を祈るのみだ。
……とはいえ、フラウは年齢の問題もあるのだろうが、決して女らしい身体をしている訳ではない。
まだ発展途上という感じの身体付きなのは、以前の海水浴の時に確認している。
そんなフラウがミナト直伝の恋の駆け引きとかをやると……さて、一体どうなるのやら。
楽しみなような怖いような気持ちを抱きつつ、俺は食堂に行ってお茶をしながら女同士の話をするというミナトとフラウの2人と別れ、ブリッジに向かう。
途中で何人かとすれ違うが、そのうちの半分以上は深刻な表情を浮かべていた。
ジオン軍の勢力圏内である北米から脱出したにも関わらず、このような表情を浮かべているのは……間違いなく、先程行われたギレンの演説が原因だろう。
あの演説で、またジオン軍が勢いづくのを不安に思っている、という事か。
実際、ジオン軍の中でも人気の高かったガルマの仇討ちだと言われれば、士気を高めるには十分な効果を発揮するのは間違いない。
そして、ホワイトベースはそんなガルマを殺した艦と認識されている以上、当然だがジオン軍に仇討ちとばかりに攻撃されてもおかしくはなかった。
もしホワイトベースを撃破すれば、それこそ仇討ちにやって来た部隊がガルマを殺したという事になるのだが、それはガルマがホワイトベースに乗って生きているというのを知らない以上、どうしようもないか。
ともあれ、不安そうにしている者達を横目に、俺はブリッジに到着する。
「うわぁ……」
予想通りと言うべきか、ブリッジの雰囲気も決して良いものではない。
それでも泣き言を言ったりしている者がいないのは、ブライトがいるからか。
「アクセル、来てくれたか」
「ああ。……この原因は、やっぱりさっきの演説か?」
「そうだ。とはいえ、幾らジオン軍がホワイトベースを狙おうとしても、ハワイにいる間は安全だ。そうだろう?」
そう言い、俺に視線を向けてくるブライト。
なるほど。俺の口からその辺をはっきりとさせて、ブリッジの落ちた士気を上げようという事か。
ブライトに利用されるようであまり面白くないのは間違いないが、それでも今回の一件を考えると士気は上げておいた方がいいのは間違いない。
「そうだな。もしジオン軍がハワイに攻撃してくるような事になれば、手痛いしっぺ返しを食らうことになるのは間違いない。水中用MSはかなりの量が配備されているし、地上用MSもダラニで空中戦力として用いる事が出来るし」
「ダラニ?」
「ん? 知らなかったか? MSを乗せて空を飛ばす為の戦闘機……いや、この場合は輸送機みたいなものか? 分かりやすく言えば、ジオン軍にドダイとかいう爆撃機があるだろ? あのくらいの大きさの奴にMSが乗って空を自由に移動していると思えばいい」
実際、ダラニを見て思いついたのか、それとも本当に偶然そんな形になったのかは分からないが、ジオン軍でもグフとかをドダイの上に乗せて運用しているらしいし。
とはいえ、ダラニとドダイでは性能的に色々と違う。
そんな中でも一番大きい違いは、ダラニはビーム砲を装備している事だろう。
ドダイの方が装備している武器はミサイルだけである以上、これはダラニにとってかなり有利な点だろう。
もっとも、ダラニは基本的に戦場までエネルギーを消費せずに素早く移動する為の機体であり、戦場に到着した後は盾代わりにするなり、敵にぶつけて爆発させるなりといった使い方が想定されているが。
「MSを輸送、か。連邦軍もガンペリーではなく、そういうのを開発する必要があるのかもしれんな」
「連邦軍なら、それこそそういうのを開発するのは簡単じゃないか?」
ブライトの呟きに、そう返す。
実際、連邦軍が有している戦闘機の類は結構な種類がある。
そして、ドップのような戦闘機を開発してしまったジオン軍とは違い、地球というホームベースがある連邦軍にしてみれば、戦闘機を開発するノウハウは幾らでもある。
であれば、ドダイのような戦闘機を作る事も可能なのではないか。
まぁ、連邦軍ではまだMSの数も揃っていないし、現状ではその手のサポート兵器とでも呼ぶべき機体は必要ないのかもしれないが、将来的には絶対にあった方が便利なのは間違いない。
まぁ、何らかの手段でMSそのものが飛べるようになれば、話はまた別なのだが。
それこそ、テスラ・ドライブとか。あとは、ホワイトベースが空を飛んでいるのはミノフスキークラフトとかいう装置のおかげらしいから、それをMSにも搭載出来るように小型化するとか。
「ともあれ、連邦軍と戦争している今のジオン軍が、月を敵に回すような真似をするとは思えないな。今でさえ、連邦軍を相手に苦戦してるってのに」
ここ最近、ジオン軍は地球での戦いでも戦線が広がりすぎて、これを維持するのが精一杯であり、これ以上領土を広める事が出来ていない。
特に補給線の類はかなり深刻な状況だ。
だというのに、ここで月まで敵に回してしまえばどうなるか。
それは、当然のようにザビ家の面々も理解している筈だった。
それこそ、グラナダを攻めたニーズヘッグがサイド3に襲い掛かるような事になれば、それはジオン公国にとって最悪の結果しか生まないのだろうから。
そんな風に話しつつ、取りあえずホワイトベースが安心だと理解したブリッジの面々は、安堵した様子を見せる。
なるほど、ブライトも恐らくこうなる事を狙っての話題だったらしい。
この辺、何気にブライトも艦長らしくなってきたなと、つくづく思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469