転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2347話

「ハワイです、ハワイが見えてきました!」

 

 ガルマの国葬があった翌日……あの国葬を見たガルマは何か色々と考え事をするようになっており、今も俺の部屋で何かを考えていた。

 今はガルマを一人にしておいた方がいいだろうと判断し、今はブリッジにやって来ていたのだが……そんな中で、不意にブリッジの中にそんな声が響く。

 喜色満面といった様子は、取りあえずこれでジオン軍に狙われる事がないと安心したからだろう。

 ホワイトベースの面々にしてみれば、ガルマの国葬があってすぐの今は、それこそガルマの仇として襲われてもおかしくはなかったのだから。

 こういうのは、感情がある程度落ち着けば激情に駆られて行動を起こす者も少なくなってくるのだが、それだけに当日と翌日が一番危ない。

 ……とはいえ、問題なのは、ハワイにもジオン軍と親しくしていた奴がある程度の数いるという事だろう。

 ジオン軍の追撃を心配しなくなったのはいいが、ハワイで待っている中にガルマの復讐を企む奴がいないとも限らない。

 その辺の事情を考えると、ハワイでも月と同じように窮屈な思いをして貰う事になりそうだな。

 

「ハワイに通信を入れる必要があるな。俺がこの艦に乗ってるというのを、向こうに知らせる必要がある」

 

 一応月からの報告で知ってるとは思うが、その情報を知っているのは、当然のように一部だけだろう。

 ハワイにいるルナ・ジオン軍の全員が、その件を知ってるとは到底思えない。

 そうである以上、やはりここは俺が連絡をした方が最善なのは間違いなかった

 俺に話し掛けられたオペレータが、ブライトに視線を向ける。

 だが、ハワイに近づいている以上、ここで俺が前に出てハワイにいるルナ・ジオン軍と話さなければ、どうにもならない……それこそ、下手をすればハワイから攻撃を受けるというのはブライトも理解しているのだろう。

 やがてオペレータの言葉に小さく頷き、こちらに視線を向けてくる。

 

「アクセル、頼む」

「任せろ。……まぁ、ちょっと大変かもしれないけど、事情を知ってる奴と会話が出来れば、どうとでもなる筈だ」

 

 そう答え、オペレータから場所を譲って貰い、ハワイに通信を送る。

 すると、すぐに通信が繋がった。

 ハワイの方でも当然ホワイトベースの存在には気が付いていたんだから、そんなにおかしな話ではないが。

 

「ハワイのルナ・ジオン軍。聞こえるか? こちらは、連邦軍所属のホワイトベース。応答してくれ」

 

 数回そんな通信を送ると、やがて向こうからの通信が入り、映像モニタに表示される。

 そこに映し出されたのは、ルナ・ジオン軍の制服を着た20代くらいの女の姿。

 だが、その女が浮かべている表情は、決して友好的なものではない。

 

『こちら、ハワイのルナ・ジオン軍。……何故、ホワイトベースがルナ・ジオン軍の領土を侵犯したのか、その理由を聞かせてください』

「あー……色々と事情があるんだが、もっと上の人物に変わって欲しい。色々と機密もあるからな」

『……』

 

 当然の話ではあるが、オペレータの女は俺の言葉を素直に信じる様子はない。

 普通なら、上の人間に変わって欲しいと言われてはいそうですかとはいかないだろう。

 だが、今回に限っては違う。

 俺が今の姿で1人で現れたのではなく、ホワイトベースに乗ってハワイの領土内に入ったのだから。

 さすがにこの状況で、オペレータの判断でこちらの要望を断るというのは、非常に不味い。

 だからこそ、俺もこうして強気の交渉をしている訳だが。

 

「連邦軍の機密がやって来たんだから、上に連絡を取った方がよくないか? ああ、それから俺の名前はアクセル・アルマーだ。ルナ・ジオンなら、その意味は分かるよな?」

『っ!?』

 

 その名前に息を呑むオペレータの女。

 実際。ルナ・ジオンという国にとって、アクセル・アルマーというのはそこまで重い名前なのだから、こういう態度になるのは当然だろう。ただし……

 

『ルナ・ジオンに所属する者の前で、その名前を出すというのがどういう意味を持つのか……分かってるんでしょうね? あのお方の名前を偽名で使うなんて』

 

 いや、あのお方って……

 偽名云々と言われるのは予想していたけど、まさかここまで俺に心酔しているとは思わなかった。

 ぶっちゃけ、俺はこの女の事を知らない。

 いや、もしかしたら会った事があるのかもしれないが、会話の類をしたことがないのは間違いない事実だった。

 とはいえ、自分が不幸な境遇だったところをルナ・ジオンに救われたという者は何気に多い。

 そんな者達にしてみれば、ルナ・ジオンの建国に多大な協力があった俺という人物は、感謝すべき存在なのだろう。

 こうして俺に好意を抱いている相手に無碍にするのは少し思うところがない訳でもないが……それでも、今のホワイトベースの状況を考えれば、出来るだけ早くハワイに匿って貰った方がいい。

 今は特に問題がないが、もしかしたら……本当にもしかしたら、ガルマの仇討ち部隊とか、そういうのがやって来ないとも限らないのだから。

 そんな状況になれば、ハワイの方でもホワイトベースを簡単に受け入れるといった真似は出来なくなるだろう。

 

「俺がアクセル・アルマーであると名乗った以上、そちらとしても相応の人物に連絡した方がいいと思うんだけどな」

 

 俺がホワイトベースで地球に降下するという情報は、当然のようにハワイにも伝わっている筈だ。

 そうである以上、その事情を知っている相手と話が出来れば、後は特に問題らしい問題もないのだが。

 数秒、俺と女は映像モニタ越しに睨み合う。

 それでも、女は自分の仕事を忘れた訳ではないのか、手元で何らかの操作をし……やがて、その映像モニタが切り替わる。

 

『アクセル、随分と遅かったな。予定ではもっと早くに到着している筈ではなかったか?』

 

 笑みを浮かべつつそう言ってきたのは、ハワイを任されているゲラート。

 言ってみれば、ジオン軍におけるガルマのような立場の人物だ。

 ……さっきの女が、もしかしてゲラートに繋げたのか?

 だとすれば、色々と疑問がない訳でもない。

 もしくは、単純に俺が来たらゲラートに繋がるようになっていたが、さっきの女はそれを知らなかったという可能性もある。

 

「旅にアクシデントはつきものだからな。正直なところ、俺が予想していた以上にアクシデントが大きかったが」

『どうやら、そのようだな。ガルマ・ザビの国葬の映像は俺も見たよ』

 

 国葬された筈のガルマが、実はホワイトベースにいるというのを知れば、ゲラートは一体どんな顔をするのやら。

 そんな風に思いつつ、まさかホワイトベースのブリッジでそんな事をいう訳にもいかないので、その言葉には頷くだけですませる。

 

「あの時のギレンの演説のおかげで、色々と面倒な事になったのは間違いないな」

 

 あの演説がなければ、ホワイトベースもガルマを倒した部隊という事で狙われる心配をしなくてもよかった筈だ。

 

『そうだな。今や、ジオン軍にとって……いや、ジオン公国にとって、ホワイトベースは憎むべき敵だろう』

 

 しみじみとした口調でそう言われると、正直なところ微妙な気分になるので、出来れば止めて欲しい。

 

「ともあれ、そんな訳でホワイトベースをハワイに入港させて欲しいんだが、頼めるか?」

『はぁ……いやまぁ、勿論構わないがな。だが、本来ならハワイに来るのはアクセル達だけだっただろう? そうすぐには……』

「おや、ゲラートともあろう者が、その辺りも予想していなかった……とは言わせないぞ?」

『それは……』

 

 やっぱりな。

 どうやら図星だったらしい。

 まぁ、ゲラートの事だし、当然のように俺が乗ったホワイトベースについての情報も集めていた筈だ。

 それを思えば、やはり前もって俺がホワイトベースでハワイに来るというのは、予想していただろう。

 その辺り、何気に如才ないしな。

 

「それで? ホワイトベースはどこに行けばいい? 外から見えるような場所だと、色々と不味いのは明らかだし」

『……接収したジオン軍の施設がある。今からデータを送るので、そこに行ってくれ』

 

 不承不承といった様子で告げるゲラート。

 まぁ、今回の一件はルナ・ジオンとしては決して喜ぶべき事ではないのだから、それも当然なのか。

 特に外から見えるような場所にホワイトベースがいるのを知れば、ガルマの仇という事で狙ってくる奴も多いだろうし。

 

「分かった。そこのデータを送ってくれ。それと、色々と話しておきたい事があるんだが、今夜にでも時間は取れるか?」

『ああ、問題ない。こちらとしても、色々と聞きたい事はあるしな』

 

 ゲラートにしてみれば、その言葉通り本当に俺に色々と聞きたい事があってもおかしくはないだろう。

 俺としても、ガルマをハワイに匿って貰おうと考えている以上、ゲラートにガルマの件を話さない訳にはいかない。

 まぁ、国葬云々と言っていたところでガルマを見る何て事になれば、一体どうなるのかは正直微妙なところだが。

 

「そうなると、詳しい話は今夜だな」

『ああ。それと、ホワイトベースの面々には、悪いが自由に街中を歩き回るといった真似はさせられない。いらない騒ぎを起こしたくないしな』

「分かっています。こちらも無理を言ってるのは承知である以上、そちらの指示には従わせて貰います」

 

 俺の隣で話を聞いていたブライトが、そう告げる。

 つくづく、月で避難民を降ろした後で良かったよな。

 もしホワイトベースにまだ避難民が乗っていれば、まず間違いなく大きな騒動になっただろうし。

 そうなれば、それこそホワイトベースがハワイにあるというのを、ガルマの仇討ちを狙っている相手に知られた……という可能性も否定は出来ない。

 ……とはいえ、カツ、レツ、キッカの3人は外に出たいと騒ぐ可能性もあるか?

 子供達だけなら、折角のハワイなんだし市街地とかに遊びに行かせてもいいと思うんだが。

 普通なら、地球規模……いや、宇宙規模か? そんな戦争が起きている時に、子供達だけで市街地を出歩かせるような真似は、とてもではないが出来ない。

 だが、ハワイでなら話は別だった。

 コバッタや量産型Wによって、治安は他の場所とは比べものにならない程にいいのだから。

 勿論、クレイドルのように完璧という訳ではない。

 だが、それでもほぼ安全と思えるくらいには治安がいいので、子供達だけで遊びに行っても問題はない。

 まぁ、それでも何かあった時の事を考えると、大人と一緒ってのがいいんだろうけど。

 その辺は、フラウ辺りにでも頼むか?

 そんな風に思いながら、俺はゲラートと会話をしていたが、いつまでもハワイの近くにいる訳にもいかず、取りあえずハワイから指示された場所までホワイトベースを動かすという事になる。

 

「ブライト、悪いけど俺は部屋に戻る。ゲラートに説明する前に、色々と情報を整理しておかないといけないからな」

「分かった」

 

 この場合の情報というのは、当然ながらホワイトベースのこれまでだったり、ホワイトベースやMSの情報といった感じなので、ブライトとしてはあまり歓迎すべき事ではないのだろうが、俺とルナ・ジオンという存在に頼らないと不味い事態になる以上、ブライトとしてもそれを許容するしかないといったところか。

 そもそも、大まかなデータそのものは既に月で取られている以上、今更という話でもあるのだが。

 ともあれ、俺はそのままブリッジを出るのだった。

 

 

 

 

 

「ガルマ」

「っ!? な、何だアクセルか。あまり驚かさないでくれないか?」

 

 ノックも何もなしに部屋に入ってきた俺の姿に驚いた様子のガルマ。

 どうやら、俺が暇潰し用にと空間倉庫から出した漫画を読んでいたらしい。

 ファンタジーものの漫画で、勇者として召喚されてピンチになっている国を助けて魔王を倒すといった典型的……いっそ古典的とすら言ってもいいようなストーリーではあるのだが、ザビ家の男としてこういう文化に全く触れてこなかったガルマにしてみれば、熱中するのに十分だったのだろう。

 

「悪いな。それより、もう結構読んだな」

 

 漫画は、全30巻。

 それを積み上げていったのだが、気が付けばその30冊の本のうち半分以上が既になくなっている。

 そしてなくなった……読み終わった漫画は、また少し離れた場所に積まれており、それを見れば既に半分以上読んだというのは明らかだった。

 

「ああ。これは面白いな。漫画というのは知っていたが、ここまでとは思わなかった」

 

 感心したように読んでいた漫画の内容を語るガルマだが、実はこの漫画は他の世界の漫画だと言ったら、どう反応するんだろうな。

 それはそれでちょっと見てみたい気がしないでもないけど……ともあれ、今はそれよりも前にやるべき事を口にする。

 

「ハワイに到着したぞ。今夜、ハワイを任されているゲラートと会う事になってるから、その時にお前の事を話す」

「……分かった」

 

 その言葉には、ガルマも読んでいた漫画から顔を上げて真面目な表情で頷くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1469

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