ガルマとゲラートの話し合いについては、それこそ数時間に渡って行われた。
当然だろう。今のところ、ガルマが実は生きていて、更にはルナ・ジオン軍が支配しているハワイにいるというのは、連邦軍にもジオン軍にも絶対に知られる訳にはいかないのだから。
そうである以上、ゲラートとしては決めるべき事は多かった。
その間、俺は非常に暇だったのは間違いのない事実だが。
そんな訳で、話し合いが終わったのは日付が変わる頃。
「じゃあ、取りあえず話は決まったって事でいいな?」
確認を込めて尋ねると、ゲラートとガルマの2人はそれぞれ俺の言葉に頷く。
それを見て、ようやく俺はガルマのお守りが終わった事に安堵した。
今日からガルマはゲラート預かりになる。
つまり、もうホワイトベースにある俺の部屋には戻らないという事だ。
まぁ、俺の部屋には別にガルマの私物とかそういうのもないので、引っ越しの面倒とかはないんだが。
何しろ、ガルマはガウで俺が捕らえた相手だ。
私物は……まぁ、ジオン軍の軍服ぐらいのものか。
一応軍服では部屋の中で寛げないだろうからという事で、今のガルマが着ているのは俺が空間倉庫の中から適当に取りだした服だ。
そしてガルマの軍服は、洗濯の類もしないで俺の空間倉庫の中に入っている。
まさか、ホワイトベースの中でジオン軍の軍服を洗濯する訳にもいかないだろうし。
そんな訳で、取りあえず私物らしい私物もない訳だ。
「ああ。アクセルには色々と手間を掛けた。……ミナトには、いつかリベンジすると伝えておいてくれ」
リベンジというのは、チェスの事だろう。
ガルマは何度となくミナトにチェスで勝負を挑んだのだが、結局最終的に1度も勝つ事が出来なかったのだ。
それを考えると、お互いの間には結構な実力差があると思うんだが……
まぁ、伝えるくらいなら俺は別に構わない。
「分かった。それで、イセリナを迎えに行くのはいつにする? それこそ、行くのなら今からでもいいけど。もしくは、きちんと住む場所が決まってからにするか?」
手紙を運ぶというのならともかく、イセリナが今いる場所から連れてくるといった真似をする必要がある以上、俺だけで行っても向こうに警戒されかねない。
だからこそ、イセリナにとってのジョーカーとでも言うべき、ガルマを連れていく必要があった。
イセリナも、ガルマがいれば特に躊躇せずに影のゲートに入ってくれるだろう。
「うーむ、迷うな。イセリナには少しでも早く会いたい。だが、こちらの住居も整っていない状況でイセリナを呼ぶのは……」
俺の言葉に迷う様子を見せるガルマ。
俺としては、出来るだけ早くイセリナを連れて来た方がいいと思うんだけどな。
父親が殺されてしまった以上、今の北米はイセリナにとって決して安全な場所とは言えない。
であれば、イセリナはハワイに連れて来てこちらの手の中に入れておいた方がいいと思うんだが。
「イセリナが無事なら、いいんだけどな」
「……それはどういう意味だ?」
ガルマにしては珍しい程に、厳しい視線をこちらに向けてくる。
ガルマにとっては、イセリナと添い遂げる為にザビ家を捨てたようなものだ。
そんな中でイセリナに危険が迫っているかもしれないと言われれば、とてもではないが許容出来る事ではないだろう。
「今までイセリナを守っていた父親は死に、婚約者のガルマもまた死んだ。……表向きの話だから、怒るな」
自分が死んだという言葉を聞かされたガルマは、不満そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。
実際に表向きはそういう事になっている以上、それはどうしようもない事だ。
「分かっている。ともかく、イセリナが危なくなる可能性もあるのだな?」
「まぁ、ないとは言えないだろうな」
イセリナは、美人と呼ぶに相応しい顔立ちをしている。
そんな人物が、今まで自分を守っていた父親や婚約者が死んだと思われている以上、妙なちょっかいを掛けてくる奴がいないとは限らない。
そうなれば、イセリナはどうなるか。
ガルマが生きているのを知っている以上、傷心につけ込まれるといったことはないだろうが、それでも強引に迫ってくればどうなるか分からない。
もしくは、殺されたというイセリナの父親の仲間や部下が、イセリナを利用しようとして狙ってくる可能性も十分にある。
他にも様々な事情から、イセリナが危険になるという可能性は十分にあった。
そう説明すると、ガルマの表情は一変する。
「分かった。そのような危険な場所にイセリナを置いておく事は出来ない。アクセル、悪いが今すぐにでもイセリナを迎えに行きたい。協力してくれるか?」
「ああ、俺は構わない。だが……一応念を押しておくけど、本当にいいんだな? 今は恋愛感情が燃え上がってるから、いいかもしれない。だが、この先ずっとそのままという風にはならないかもしれないんだぞ? それは理解した上での行動なんだな?」
「勿論だ。私はイセリナを愛している。その気持ちには一欠片の偽りも存在はしない」
きっぱりと言い切ったその様子に、俺だけではなくこの場にいるゲラートまでもが照れ臭そうな表情を浮かべる。
青い春と書いて青春。
きっとそんな事を思い出しているのだろう。
「そんな訳で、これからイセリナを連れてくるけど……ゲラート、住居の方の用意は頼んでもいいか?」
「あー……ああ。そうだな。その辺は任せてくれ。ただ、今日すぐにとはいかないから、今夜はガルマ殿にはどこかのホテルで休んで貰う事になるし、家の用意が出来るまでは数日かかるかもしれませんが……」
言葉の後半は、俺ではなくガルマに対する問いだ。
だが、愛する婚約者を取り戻そうとしているガルマが、そんな事で不満を言う筈もなく、一も二もなく頷きを返す。
「それで構わない。……ゲラートだったか、迷惑を掛ける。今はそちらの温情に甘える事しか出来ないが、いずれは何らかの謝礼をしたいと思う。……アクセル、頼む」
ゲラートにそう言い、ガルマは俺の方に視線を向けると、そう言う。
ガルマにしてみれば、とにかく一刻も早くイセリナに会いたいのだろう。
まぁ、実際……俺が一度手紙を運んだとはいえ、その後はお互いに全く連絡がないままだったのだから、ガルマの気持ちも分からないではない。
……それに、俺がミナトや綾子とイチャつく光景とかも、目にしているし。
そんな訳で、今回の一件に関してはガルマの気持ちも分からないではない。
「分かった。なら、今から行くぞ。……ゲラート、部屋の用意を頼む」
俺の言葉に、任せろと頷きを返すゲラート。
何だかんだと、ゲラートも男女間の件については思うところがない訳でもない。
であれば、今回の一件は間違いなく問題がないようにしてくれるだろう。
「ガルマ、行くぞ」
影のゲートを発動させ、ガルマを呼ぶ。
ホワイトベースの俺の部屋で影のゲートを使った時は、若干怯えた様子を見せたガルマだったが、今回に限ってはイセリナを迎えに行く為だろう。
怯えた様子もなくこちらに近づき、影のゲートに身体を沈めていく。
ハワイから北米。
正直なところ、今の俺でもこの距離を影のゲートで転移するとなると、結構な消耗ではある。
それに、俺だけじゃなくてガルマも一緒だし、帰りにいたってはイセリナも連れてくるのだから。
そうなると、魔力……SPがかなり高い俺であっても、当然のように相応に消耗する。
とはいえ、今の状況でそんな事を言っていられるような余裕はないし、何よりも大きいのはガルマに恩を売る機会を見逃すという選択肢は存在しないことだった。
そんな訳で、魔力を大量に消耗しながらもハワイにある政庁で影に潜った次の瞬間には、北米にあるイセリナの部屋の中に、俺とガルマの姿はあった。
「……え?」
いきなり部屋の影から出て来た俺とガルマに気が付いたイセリナは、数秒の沈黙の後に間の抜けた声を出す。
イセリナにしてみれば、まさかここでいきなりガルマに会えるとは思ってもいなかったのだろう。
ガルマもまた、まさかハワイから数秒と経たずに北米に到着するとは思っていなかったのか、驚きの表情でイセリナを眺めて……1歩、近づく。
「イセリナ?」
「……ガルマ様?」
お互いにお互いの名前を呼び、それでようやく相手が夢でも幻でも何でもない、本当の意味で自分の愛すべき存在だと理解したのだろう。
数秒の沈黙の後、2人は前に出てお互いを抱きしめる。
「ガルマ様っ! ガルマ様、ガルマ様、ガルマ様!」
「イセリナ……心配を掛けてすまない」
何て言うか、こういうのを多分感動の再会と言うんだろうな。
俺が暗躍した結果ではあるが、死んだと思われていたガルマが実は生きていて、その結果、こうして愛する者同士が再会したのだから。
その辺の事情を考えると、あるいはこれは映像とかで撮っておいた方がいいのか?
そう考え、空間倉庫の中から取りだしたPDAを使って映像を録画する。
ガルマとイセリナが結婚式をする時、この映像とかはかなりの目玉作品となるだろう。
あるいは、独立戦争が終わった後で、どこぞにドキュメンタリーとして売り捌いても面白いかもしれない。
そんな風に考えつつ、俺は気配遮断を使ってガルマとイセリナの邪魔にならないようにする。
……ちなみに、気配遮断というのはカメラとかそういう機械を通せば効果はなくなるのだが、俺がPDAで映像を録画してるので効果がなくなったりは……しないよな、うん。
実際にガルマとイセリナには気が付かれていないし。
単純に相手の事しか見えておらず、俺の存在そのものを完全に忘れてしまっている可能性もあるが。
そんな風に考える俺の視線の先では、ガルマがイセリナに愛を告げ、イセリナもまたガルマに愛を告げるといったやり取りをしており……やがて、抱きしめ合っていた2人の唇が触れあう。
このまま放っておけば、キスだけではなく最後までいきそうだったので、PDAを一旦止めると、気配遮断のスキルを使うのを止めて口を開く。……ガルマとイセリナの様子を考えると、気配遮断を使わなくても俺に気が付きはしなかったようにも思えるが。
「婚約者同士でイチャつくのもいいけど、あまりここでこうしていられる時間もない。出来れば、そろそろハワイに戻りたいんだけどな」
『っ!?』
俺の言葉に、ガルマとイセリナは鋭く息を呑んでお互いに離れる。
うん、どうやら本当に俺がこの部屋にいたというのを忘れていたらしい。
いやまぁ、らしいと言えばらしいんだけどな。
「えっと、その……ガルマ様?」
俺の言葉の意味が分からなかったのか、イセリナはガルマに視線を向ける。
その視線を向けられたガルマの方は、やがて小さく咳払いをしてから事情を説明し始めた。
父親が死に、婚約者のガルマも死んだ――表向きは、だが――イセリナが、1人でここにいると、良からぬ事を考えた者達が寄ってきて、利用しようとする可能性が高いと。
だからこそ、この先の展望は全くないが、それでも自分と一緒にハワイに来て欲しいと。
そう告げたガルマに、イセリナは一切の躊躇をせずに頷く。
「分かりました。ガルマ様と一緒にいられるのであれば、どこにでも行きます」
「ありがとう、イセリナ」
予想外に短い話し合いだったな。
てっきり、イセリナも幾らかは躊躇すると思っていたんだが、そんな事はなく、それこそ聞かれた直後には答えていた。
イセリナにとって、ガルマというのはそれだけ大きな存在であるという事か。
ここに残っていれば、誰かに利用される可能性はあるが、それでも生活をするのに苦労したりしなくてもすむ。
そんな豊かな生活を捨ててでも、そしてこの地にいるだろうイセリナの知人や友人、父親以外の血縁者を捨ててでも、ガルマを選ぶというのは、素直に凄いと思う。
「じゃあ、話は決まりだな。イセリナ、お前が持っていきたい物は全部持ってこい。それこそ、宝石とか家具、美術品、そういうのも全部だ」
「……え? その、どうするんですか?」
「ガルマの言葉に即座に頷いたのが気に入ったからな。特別サービスとして、俺が全部纏めて持っていってやるよ。ガルマと一緒に暮らすにしても、何かを買ったりとかはする必要があるだろうから、資金は必要だろ?」
一応ゲラートが全面的に協力する手筈にはなっているし、同時にそうする事でガルマに対する貸しも作れる。
それは分かっていたが、それでもイセリナの態度を見て、俺は気に入ったのだ。
幸い防犯設備は整っていたが、警備兵の類は誰もおらず、使用人の類も既にイセリナが解雇していた事もあり、屋敷の中のめぼしい品を回収するに邪魔となる物はなく、金目の物や思い出の品、それ以外にも色々と必要な物を手当たり次第に空間倉庫に入れてから、俺、ガルマ、イセリナの3人は影のゲートでハワイに戻るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469