ハワイに戻ってきた俺、ガルマ、イセリナの3人は、ゲラートに案内されて政庁にある部屋に通される。
ゲラート曰く、ここはゲラートが政庁に泊まり込む時に使っている部屋で、基本的には自分以外には誰も入ってこないから安心だという事だった。
俺が預かった荷物は、ガルマとイセリナの家が決まるまでは取りあえずそのまま預かっておくとして、今日は取りあえずゆっくりと話をしたいだろう2人はそのまま残し、俺とゲラートは執務室に戻る。
「それにしても、戻ってくるのが随分と早かったな」
「そうか? イセリナの家の中にあった諸々を空間倉庫に収納したりしていたから、そこまで早くなかったと思うが。……まぁ、ガルマから話を聞いたイセリナは、それこそ一瞬の躊躇もなく一緒に行くと判断したから、その辺は早いと思うけど」
「それは、また。……大人しそうに見えるが、随分と芯は強そうなお嬢さんだ」
感心したようにゲラートが告げる。
普通なら、何もかもを投げ捨てて男の下に走った女という事で、不愉快に思ってもおかしくはないんだが、ゲラートにしてみればイセリナの行動は好感度が高かったらしい。
「まぁ、ガルマの件は後はお前に任せる。一応、月の方にも知らせておいてくれ。セイラなら無下にはしないだろうし」
「うむ。ギレン・ザビかキシリア・ザビであれば、ここぞとばかりにガルマ様を利用しただろうがな」
ギレンとキシリアは呼び捨てなのに、ガルマには様付け。
この辺りに、ゲラートがギレンやキシリアをどう思っているのかという事が如実に表れている。
「だろうな。とはいえ、セイラも情だけでその辺を判断したりはしない筈だ。しっかりと月の利益になる事を前提とした判断をするだろう」
そう言い、テーブルの上に用意されたサンドイッチに手を伸ばす。
白身魚を蒸したものに甘酸っぱいタレが絡んでいるサンドイッチは、かなり美味い。
俺の表情を見て、ゲラートが満足そうに笑いながら自分もサンドイッチに手を伸ばす。
「で、話は変わるけど、ホワイトベースとMSの修理や補給の方は、一体どれくらいの時間が掛かりそうだ?」
「そうだな、1日2日では無理なのは間違いない。上がってきている報告によれば、MSの方はともかくとして、ホワイトベースだったか。そっちの方はかなり手間が掛かるらしい」
まぁ、それはしょうがない。
今までは、応急処置で何とか7割といったところだしな。
その辺の事情を考えれば、無理を言うわけにもいかないだろう。
とはいえ、あまりハワイで時間を掛けていられないというのも、また事実だ。
……具体的には、俺がどのくらいハワイにいるか、だな。
元々俺が月から地球に下りてきたのは、ハワイで行われているアプサラス計画の進捗状況を直接自分の目で確認する為だ。
ゴップからの依頼を受けている現状でも、当然のようにそれを放棄するつもりはない。
そうなると、問題なのは具体的にアプサラス計画の確認にどれくらいの時間が掛かるかという事だろう。
それとこっちはついでだが、ガトーとアイナの関係についてもちょっと探りを入れてみたいという思いがあるのは否定しない。
俺が知ってる限りでは、アイナの親代わりたるノリスに何とかガトーが認められようとしているとか、そんな感じだったと思う。
とはいえ、ガトーとノリスは双方共に軍人……いや、武人らしい性格をしており、決して相性は悪くない筈。
それとも、同族嫌悪とかか?
ともあれ、そんな感じで月でも事情を知っている一部の者達は、アイナとガトーの恋愛模様が気になっている者は多い。
勿論、ハワイにいる者達から情報を仕入れはしているが、それでもその手の情報はあった方がいい。
何だかんだと、ルナ・ジオンの上層部には女が多いしな。
これも、月を治めているのが女のセイラだから、というのも大きいのだろう。
何気に、セイラが自分の師匠たるシェリルに頼んで少女漫画……それも恋愛をテーマにした物を自分の代わりに買って貰っている、というのを俺は知っている。
「アプサラス計画の方については、連邦軍やジオン軍に知られていないか?」
「ああ、それは大丈夫だ。バッタやコバッタ、メギロート、量産型Wといった戦力がかなり厳重に施設を守ってるからな」
ゲラートのその言葉に、安堵の表情を浮かべる。
アプサラス計画は、一見すれば笑い話や思わず無茶だろと言いたくなってもおかしくないような、そんな計画だ。
だが、ギニアスやその部下達、そして協力しているMIP社の技術者達が協力すれば、十分に成功の見込みがあった。
また、もし失敗したとしても、それは次の成功に繋がる重要な経験を残してくれるのだから、必ずしも成功しなければならないという訳でもない。
重要なのは、ハワイでアプサラス計画という計画が行われているという事実そのものを知られない事。
だからこそ、ここまで警備を厳重にしているのだ。
「なら、いい。……とはいえ、ハワイの人口は最近急激に増えている。そうなると、どうしてもスパイとか工作員とかも混ざってくるだろうから、その辺は注意してくれると助かる」
現在のハワイは、戦争をしている連邦軍やジオン軍ではなく、名目的には第3勢力と呼んでもいい月の支配下にある。
だからこそ、戦争を嫌った多くの者達が戦争避難民という形で増えているのだが、そうやって人が多くなれば、当然のようにスパイとかそういうのも紛れ込みやすい。
勿論、量産型Wやコバッタがいるので、そういう連中は大半が捕らえる事が出来ている筈だが、それでも絶対とは言えないのだ。
「分かっている」
俺の言葉に、ゲラートは厳しい表情で頷く。
以前シェリルがコンサートをやった時は、テロリストが行動を起こそうとしていたしな。
その時の事を覚えているのだろう。
「ならいい。俺は明日にはギニアスのところに顔を出して来るから、ホワイトベースの修理の方は頼む。一応、月である程度のデータは取ってるが、折角本格的に修理するんだから、出来る限りのデータを取ってくれ。月で取ったデータとは、また違うデータが採れるかもしれないし」
月で取ったデータは、ホワイトベースが宇宙で戦った際のデータだ。
それに対すると、今回のデータは地上での戦闘を経験したホワイトベースのデータとなる。
同じホワイトベースのデータでも、宇宙と地上では大きく意味が違う。
……まぁ、マチルダはそのデータをより詳細に取って、ミデアでジャブローに運んでいるのだろうが。
恐らくホワイトベースの後継艦を作る際には、そのデータが使われるのだろう。
ミノフスキークラフトを使って空を飛ぶ戦艦。
テスラ・ドライブを知っている俺にしてみれば、そこまで違和感はないが、このUC世界の人間にとっては十分な程に驚くべき存在だろう。
とはいえ、ジオン軍ではガウやザンジバルのように、地球上でも空を飛ぶ巨大な軍艦――ガウは分類的にどうかと思うが――を採用しているのだが。
「分かっている。いつかルナ・ジオン軍でもホワイトベースのような軍艦を作るかもしれない以上、その辺りのデータ収集はしっかりやる」
「頼むよ。じゃあ、取りあえず俺はそろそろホワイトベースに戻る。また何かあったら来るから、よろしくな」
「……出来れば、仕事中とかの忙しい時は止めて欲しいけどな」
そう言いつつも、ゲラートの視線は笑みが混ざっている。
「そうだな、前向きに善処するよう検討する努力をさせて貰うよ」
「あのなぁ……まぁ、いい。ああ、そう言えばアクセルが鹵獲したというジオン軍のMSだが……」
「こっちで渡せばいいか?」
ザクはともかく、グフとドムは双方共に地上用MSだ。
ドムは多少の改修で宇宙用のリックドムに出来るが、グフは……ちょっとな。
ただでさえグフは近接戦闘に向いているMSだが、宇宙でのMSは近接戦闘は行われない……という訳ではないにしろ、どうしても射撃を使っての戦いの方が多くなる。
その辺の事情を考えれば、グフを宇宙用MSにするというのは、それこそ下手をすれば新型のMSを開発するかもしれないくらいの労力が必要となってもおかしくはなかった。
そんな訳で、どうせならグフはハワイに置いていって、修理なり改修なりをして使った方がいい。
まぁ、シャドウミラーの技術班のお土産用に、1機ずつは確保しておきたいが。
「頼む。可能であれば、修理して使いたい」
「……まぁ、地上だとヅダが使えないしな」
正確には、ヅダも地上で使おうと思えば使う事は出来る。
だが、その性能が著しく落ちるのは、間違いのない事実だ。
高機動狙撃型のSP型なら、遠距離からの狙撃が使えるので使えない事もないが……ぶっちゃけ、遠距離からの砲撃って意味ならハワイで使っているトラゴスやザウートといった、ガンタンクと似た性能のMSで十分だし。
そういう意味では、ザク、グフ、ドムを修理して使いたいという思いも分からないではない。
とはいえ、ハワイは小さな島の集まりだ。
ザク、グフ、ドムといったMSは、ダラニの類がないと使いにくい……あ、でもドムはホバー移動なんだし、もしかしたら水上も移動出来るのか?
そんな風に思いつつ、ゲラートの苦しい懐事情を考える。
小さな島の集まりであるハワイは、水中用MSはともかく、普通のMSでは戦いにくい場所だ。
であれば、やはりここはMSを譲った方がいいのは間違いないか。
「シャドウミラーから水中用MSをかなりの数譲渡されてるから、海中での戦いには不安はない。だが、上陸された後の事を思うと……」
少し厳しい。
そう告げる様子に、俺もだろうなと納得する。
闇夜のフェンリル隊がそのままハワイにはいるので、一定以上の戦力が揃っているのは間違いない。
だが、それはあくまでも一定以上でしかなく、もし連邦軍やジオン軍が本気になって攻めて来たりすれば、対処するのは難しい。
勿論、連邦軍もジオン軍も、ハワイを攻撃して月を……そして月の後ろ盾となっているシャドウミラーを敵に回すといったことをするとは思わないが、戦争というのは何が起こるか分からない。
それこそ、連邦軍には強硬派といった連中もいるし。
だからこそ、いざという時の為に準備は万端にしておく必要がある。
「まぁ、アプサラス計画が成功したら、ハワイは無敵……とまでは言わないが、かなり頑丈な要塞と化すだろうな」
空を飛び、自由にビームを放つMA。
ぶっちゃけ、今のUC世界においては凶悪な性能なのは間違いない。
問題なのは、アプサラス計画の予定通りだとかなり巨大な機体になる事か。
大きいという事は、それだけ敵に狙われやすいという事を意味している。
例えば、シャドウミラーで使っている外部武装追加ユニットのファブニールというのがある。
これは、全高30m、全幅20m、全長50mという、極めて巨大な機体ではあるが、Eフィールド、G・テリトリー、ブレイズ・ルミナス、PS装甲、ミサイルのジャマーといった具合に、防御能力が充実している。
だからこそ、それだけの巨体であっても、敵に狙われてもダメージを受けるといった事はない……訳ではないが、それらの各種防御装置を貫通するだけの威力の攻撃がなければ、不可能だ。
だが、アプサラスにはその手の防御装置がない。
いや、勿論あればギニアスも搭載していただろうが、このUC世界においてその手のバリアの類は存在していないのだ。
少なくても、今はまだ。
将来的に、もしかしたら何らかのバリアの類が開発される可能性はあるかもしれないが。
「アプサラス、か。……あれは、凄いな」
どうやら、ゲラートは俺よりも早くアプサラスの件について知っているらしい。
感心したように呟く。
「ジオン軍がアプサラス計画を認可しなかったのは、大きな損失だったな」
「そうか? いやまぁ、俺にとってはそのおかげでギニアス達がルナ・ジオンに降ってくれたんだから、個人的にはジオン公国には感謝すらしてるんだけどな」
これは嘘でも何でもなく、俺の正直な気持ちだ。
……実際には、俺がグラナダを攻略した件によって、アプサラス計画について話を持っていった時は、ジオン公国にそんな余裕はなかった、というだけの事かもしれないが。
そうなると、ギニアスの夢を一旦潰して、その後で拾い上げたのが俺という事になるし……うーん、これはある意味マッチポンプと言えなくもないような……
「どうした?」
「いや、明日にでも見に行く予定のアプサラスが気になってな」
取りあえず、この一件は俺の胸にしまっておこう。
というより、ギニアスはこの件に当然気が付いてるだろう。
「そうか。まぁ、取りあえずアクセルには好きに動いて貰って構わんよ。それと、ついでに何か気になる事があったら後で教えてくれ」
「……気になる事? 何かあるのか?」
「ないとは思うが、もしかしたらどこかのスパイが入り込んでいる可能性もあるからな。念には念をといったところだ」
そう告げるゲラートに、俺は頷きを返すのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469