それは、言ってみれば金属で出来た大福とでも呼ぶべき存在だった。
部屋から見えるのは、ハワイらしい好天の青空の下に存在する機械の大福。
それ程に、現在俺の視線の先にある存在は丸かったのだ。
いやまぁ、出来るだけ大きくしないように、それでいてミノフスキークラフトと大出力のメガ粒子砲を内蔵するとなれば、このような形になるのはしょうがない。
ミノフスキークラフトの上にメガ粒子砲を内臓し、それ以外は可能な限り排除した機体。
一応ランディングギアとして4本の足――と呼ぶには若干抵抗があるが――はある。
ただ、MSであれば肩に当たる部分……と言ってもいいのかどうかは分からないが、そこにある棘は一体何だ?
もしかして、接近された時に体当たりをする時の為か?
ザクの左肩にある、シールドスパイク的な意味で。
色々な意味で特殊な素材ではあったのだが……そんな中で、何よりも俺の意識を奪ったのは、顔だった。
MAであっても、顔があるというのは特におかしな話ではないだろう。だが……
「何でザクの顔を使ってるんだ?」
そう、それがアプサラスを見て最初に思い、そして最大の疑問として感じた内容だった。
これがヅダの頭部であれば、まだ俺も納得は出来た。
ヅダはルナ・ジオン軍の主力量産機なのだから、その部品を流用したという意味で。
だというのに、何故ザク。
言うまでもなく、ザクというのはジオン軍の主力量産機であり、ルナ・ジオンとジオン公国は表向き敵対している。……実際には、資源を売ったりしているが。
だというのに、何故アプサラスの頭部がザクなのか。
そんな俺の疑問に、ギニアスは図星を突かれたのか、困ったように頭を掻く。
「実は、最初にアプサラスを設計した時は、ザクの頭部ありきで設計データを作ってしまったので……」
「その気持ちは分からないでもないが」
アプサラス計画は当初ジオン公国でギニアスが考えたものだから、当然のようにジオン軍にある技術やMSを流用するという事を考えただろう。
そうなれば、ジオン軍で主力量産機となっているザクを使うというのは、分からないでもないが……
「それでもルナ・ジオンに来たんだから、設計を変えるといった事は出来たんじゃないか?」
「ヅダの改修作業がもっと早く終わっていれば、それも出来たとは思います。ですが、ヅダの改修が終わってルナ・ジオン軍の主力量産機となった頃には……」
その頃には既にハワイでアプサラス計画が発動しており、研究所も完成していたので、どうにも出来なくなった……といったところか。
「けど、頭部を変えるくらいはそこまで難しくないんじゃないか?」
そう。確かにザクとヅダでは頭部の作りがかなり違うだろう。
それでも、ギニアスやそれ以外の技術者がいる現状を考えると、その程度の事は容易に出来そうな気がするのだ。
「そうですね。やろうと思えば出来たと思います。ただ、その場合はアプサラスの性能そのものに色々と問題が出て来る可能性もありますし、設計の段階から色々と調整する必要があるので、かなり時間が掛かっていたかと。……これがヅダにザクの頭を、もしくはその反対にザクにヅダの頭を使うといったことなら、そこまで難しくはないんですが」
なるほど。つまり、MSからMSではなく、MAからMA。それも、アプサラスという特殊なMAとなると、その辺も大きく変わってくるのか。
「事情は分かった。分かったけど……ルナ・ジオン軍として活動する上で、ザク頭だと色々と不味いんじゃないか?」
「それは否定しません。ですが、頭部を変えるとなると……」
さっき言ったように、時間が掛かる、か。
アプサラス計画の事を思えば、頭部の問題で大きく進展が遅れるというのは、出来れば遠慮したい。
であれば、しょうがないか。
ルナ・ジオンのMAがザクの頭を使うということは、相手を混乱……とまではいかないが、困惑させることは出来るだろうと、そう考える。
「分かった。なら、このままザク頭で計画を進めてくれ」
結局俺が選んだのは、アプサラス計画の進捗だった。
このままの流れというか、ルナ・ジオン軍の予定でいけば、最終的に今回の戦争で勝利するのは連邦軍だ。
であれば、ジオン軍の象徴ともいえるザクの頭をアプサラスが使っていても、特に問題はない……筈。
ジオン軍の残党辺りには、ジオンの象徴たるザクの頭をそのような事に使うとは! とか言われそうな気がしないでもないが。
とはいえ、ジオン軍の残党となった程度の戦力であれば、ハワイや月にちょっかいを出すのは難しいだろう。
テロの類はコバッタや量産型Wが防ぐし、MSとかで攻撃しようにも、相応のMSを用意しているのだから。
「ありがとうございます」
ほっと息を吐き、安堵した様子を見せるギニアス。
ギニアスにしてみれば、アプサラスの頭部の問題はやはり色々と悩んでいたのだろう。
そんな訳で、安心した様子のギニアスにアプサラスの説明を続けて貰う。
「では、まずはミノフスキークラフトで実際に浮かんでいるところを見て貰います。……アイナ、頼む」
『はい、お兄様』
ギニアスが壁に掛かっていた通信機を使って声を掛けると、そんな声が返ってくる。
なるほど。もうアイナがアプサラスに乗っていたのか。
ガトーの姿がないのが気になるが……まぁ、いい。
ともあれ、俺の視線の先でハワイの青い空の下に待機していたアプサラスが起動していく。
そしてミノフスキークラフトが動き、四方に存在するランディングギアが微かに浮かぶ。
「あら」
「へぇ」
ミナトと綾子の2人が、そんな風に浮かんだアプサラスの姿を見て感心したように呟く。
まさに、ふわりといった様子で浮かんのだ。
……まぁ、俺達は部屋の中にいるからそう見えただけで、実際にアプサラスの周囲を見れば、結構な突風が放たれているのが分かるのだが。
ともあれ、ミノフスキークラフトで空中に浮かんだアプサラスは、そのまま周囲を行ったり来たりする。
あまり高度を上げないのは、アプサラスの姿を部外者に見せたくないからだろう。
この研究所の周辺には人が住んでいないが、それでも万が一という事もある。
また、ジオン軍や連邦軍にしても、ハワイがルナ・ジオンの領土である以上、何らかの方法で偵察をしている可能性もあった。
特に地球上空は今もまだジオン軍が実質的に占領しているので、大気圏外からハワイを偵察しているという可能性もない訳ではない。……そういう観測機器があるのかどうかは、正直なところ分からないが。
ともあれ、そんな風に考えながらアプサラスを見ているが、危なげなく空を飛んでいる光景が見える。
「ミノフスキークラフトに関しては、十分な性能を持っているな」
「ありがとうございます」
俺の言葉に、ギニアスが笑みを浮かべてそう告げてくる。
ギニアスにしてみれば、ジオン公国からルナ・ジオンに移住してまで進めてきたアプサラス計画が実を結んだといったところか。
「このままⅡの方の開発も進めてくれ。……上手く行けば、すぐに実戦での出番がやって来るかもしれないからな」
そう言うと、ギニアスの表情が驚きと歓喜の表情に染まる。
アプサラスの能力を発揮出来る時が近いかもしれないと言われたのだから、それも当然だろう。
この時、俺が思い出していたのはゴップからの依頼だ。
ユーラシア大陸で具体的にどのような依頼をされるのかは分からないが、その際にアプサラスという戦力があれば、それは大きな切り札となる可能性が高かった。
普通に考えて、ゴップからの依頼というのはジオン軍の基地を攻略して欲しいとか、そういうのだろうし。
まだ完成形のⅢではないとはいえ、Ⅱが使えるようになれば、高威力のメガ粒子砲は基地を攻略する上で非常に頼りになる。
……ぶっちゃけ、高威力のメガ粒子砲というだけならホワイトベースにも搭載されてるんだが、艦艇とMAでは運動性や機動性が大きく違う。
メガ粒子砲を撃ったら即移動といった真似は、ホワイトベースには難しい。
また、ジオン軍にしてみればザクの頭を使ったMAが自分達を攻撃してくるという事になれば、間違いなく衝撃を受けるだろう。
であれば、やはりアプサラスは出来るだけ早く使えるようにして欲しい。
「分かりました。出来るだけ早くアプサラスⅡの完成を急がせます」
ギニアスの言葉には、やる気が満ちていた。
とはいえ、ギニアスの部下やMIP社から派遣されている者達はある程度の休息も必要だろうが。
24時間働けますかというのは、この場合あまり好ましくない。
根を詰めて作業をしても、結果としてつまらないミスを連発するようになる……という可能性は十分にあるのだから。
そうならないようにする為には、やはり適度な休憩を取るというのは必要だろう。
「完成を急がせるのはいいけど、あまり無理はするなよ」
「はい。……ただ、現在ちょっと悩んでいる事がありまして」
困った様子を見せるギニアス。
アプサラス計画については、シャドウミラーがバックアップしてる計画だけに、何か困っているのであればどうにかしてやりたいと思わないでもない。
……こうして見ると、ザク頭の大福型というアプサラスも、どことなく愛嬌があるしな。
ミノフスキークラフトと大型のメガ粒子砲の2つだけを追求したアプサラスには、一種の機能美があるのも事実だし。
単純に言えば、俺自身がアプサラスを気に入ったというのもある。
ランディングギアで地面に着地したアプサラスを見ながら、ギニアスの言葉を待つ。
そして、やがてギニアスが困った様子で口を開く。
「その、アプサラスⅡの大型メガ粒子砲で、試射を行える場所が……」
「あー……うん。まぁ、ここはハワイだしな」
アプサラス計画にあったような巨大なメガ粒子砲を撃てるような場所ともなれば、当然のようにある程度の……いや、かなりの広さを必要とされる。
元々がジャブローの分厚い岩盤……それこそ核弾頭を使っても崩す事が出来ないと言われた岩盤を貫通して連邦軍の本拠地に致命的なダメージを与える事を想定されていたメガ粒子砲なだけに、ちょっとその辺でといった真似は出来ない。
それこそ、下手をすればハワイを形成する島々に致命的な被害を与えてもおかしくはないのだから。
「そうだな、そうなると……どこか広くて人目に付かない場所……それこそ、砂漠とかそういう場所でやる必要が出て来るのか」
「そうなります。一応コンピュータ上でのシミュレーションは出来ますが、まさかそれだけを頼りにして開発した物を搭載するという訳にはいきませんし。正確には、シミュレータ上では既に問題ないと出ているので、それを確認するという意味でもやはり色々と調査をする必要がある訳で」
ギニアスの言葉は理解出来る。
シミュレータ上では完璧であっても、実際にそれを使って確認してみた場合、どこかに問題があったりするのだから。
実際にシミュレータだけで開発されたドップが航空機としては色々と問題があるのを思えば、シミュレータだけでメガ粒子砲を開発するのは問題があるだろう。
空という環境のないコロニーで開発されたドップと、ジオン軍が既に実用化しているメガ粒子砲という事で、色々と前提条件が違ってくるのは間違いないだろうけど。
ただ、そうだな。そうなると……
「メガ粒子砲の発射実験を行う為の準備を整えるのに、どれくらい掛かる?」
「は? そうですね。恐らくは数時間から半日程度かと」
「そうか。なら、今から準備すれば、明日の午前中には問題なく準備を完了出来るな」
「それは出来ますけど。今も言ったように、ハワイでは実験が出来ないんですが……」
「そうだな。ハワイでは実験は出来ない。けど、ここには俺がいる。影のゲートを使えば、即座に砂漠に移動出来る俺が。アプサラスはでかいから、空間倉庫に入れての移動となるだろうけど」
「それは……」
俺の言葉に、ギニアスは驚きを露わにして視線をこちらに向けてくる。
ギニアスも空間倉庫や影のゲートについては、知っていてもおかしくはなかった筈だけどな。
そしてアプサラス計画はシャドウミラーが全面的にバックアップしてる以上、協力するくらいは何の問題もなかった。
「ありがとうございます! すぐに準備を開始します!」
驚きから歓喜に表情が変わったギニアスが、そう言ってくる。
ギニアスにしてみれば、メガ粒子砲の発射実験が出来るというのは、それほどに嬉しかったのだろう。
「あら」
ミナトがそんなギニアスの様子に、少しだけ面白そうな笑みを浮かべる。
以前はともかく、健康になった今のギニアスは貴公子と呼ぶに相応しい、一種貴族らしい外見だ。
そんなギニアスがここまで熱血……熱血? ともあれ、一生懸命になるというのが、どこか面白かったのだろう。
一種のギャップ萌えって奴か?
何となくそんな風に思いながら、俺はギニアスとアプサラス計画についての話を進めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469