「うっそだろ……マジかよ……」
シミュレータから出たフィリップの不満そうな声が聞こえてくる。
俺もまたシミュレータから出ると、色々な視線が向けられた。
ホワイトベースのMSパイロット達からは、やっぱりなといったような視線を。
サマナとモーリンの2人からは、驚愕の視線を。
ユウからは、こちらの力量を測るような視線を。
フィリップからは悔しげな視線を。
そんな様々な視線を向けられつつ、俺は口を開く。
「取りあえず、フィリップはそこそこの腕をしてるのは分かった。分かったけど……アムロやカイの方が腕は上だな」
「はぁっ!?」
その言葉が理解出来ないといった様子で叫ぶフィリップだったが、俺の言葉にはリュウも納得したように頷いている。
モルモット隊という名前とは裏腹に、連邦軍でも最初期のMSパイロットという、言ってみればエリート的な存在――性格ではなく操縦技術的な意味で――のフィリップとしては、少し前まで一般人だったアムロやカイに負けると言われたのが面白くなかったのだろう。
「落ち着け。連邦軍の軍人として訓練してきた以上、そう言いたくなる気持ちは分かる。だが、それは結局のところ、ただの訓練だろう? それに比べると、ホワイトベースはジオン軍でもトップエースたる赤い彗星と何度も戦いを繰り返してきたんだぞ? それ以外にも、多くのジオン軍と戦い抜いてきた」
シャアは間違いなくトップエースだが、地球に降下してから戦ったウルフ・ガー隊もかなりの精鋭だった。
楽な戦いと言ったら……ああ、あれか。北米でロス奪還作戦の陽動として戦った、ロングビーチでの戦い。
あの戦いでは、アムロ以外はドームの中で待機していて、最後の最後でガウに向かって一斉攻撃といった感じだったから、楽な戦いだったろう。……シャアとの戦闘を行ったアムロはともかくとして。
「そんなトップエースとの実戦を潜り抜けてきたホワイトベースのMS隊の中でも、アムロとカイは常に最前線で戦ってきたんだから、その実力が上がるのは当然だ。……正確には、実力が上がらなければ撃破されて死んでいたというのが正しいんだが」
実力が上と言われたアムロとカイだったが、俺の最後の事を聞いて、ビクリとする。
アムロはともかくとして、カイが最前線で戦うってのは……うん。ガンキャノンの機体特性を無視してはいるんだが、そうならなければいけない事情があったのも間違いないしな。
その結果として、カイの腕はとんでもない事になった。
ニュータイプのアムロは、そんなカイ以上の操縦技術を持っているのだが。
「ともあれ、そういう訳でアムロとカイの操縦技術はフィリップよりも上だ。ガンタンク隊の方は……普通のMSとはちょっと比べられないけどな」
キャタピラを持つガンタンクは、基本的には後方からの援護射撃を行う機体だ。
だからこそ、その性能はモルモット隊の面々と比べる訳にはいかない。
綾子の操縦するガンタンクなら、普通に前線で戦えるような気がしないでもないが。
ただし、ガンタンクは2人乗りである以上、綾子の能力が幾ら高くても、ガンナーとして乗っている相棒の技量は、決して高い訳ではない。
そうなると、ガンタンクで敵に突っ込んでも撃破はされないが撃破出来ないといった事になりかねないが。
「……分かった。なら、それを証明して見せてくれよ。アムロとカイだったか? どっちでもいいけど、俺と模擬戦をしようぜ」
「あ、じゃあ俺ちゃんがやるよ」
フィリップの言葉を聞き、模擬戦に立候補したのはカイ。
まぁ、今の俺の説明を聞いて、自分の技量に自信を持ったのもあるけど、ユーラシア大陸上陸前に襲ってきたジオン軍のMSを撃破したというのが大きいのだろう。
……その後、アムロとシミュレータをやってかなりの大敗をした事により、伸びそうになっていた鼻はあっさりとへし折られていたが。
ともあれ、それで自信を持つようになったのは間違いない。
「へぇ、やる気じゃねえか。いいぜ。アクセルには負けたが、お前達みたいな素人に負ける訳じゃねえってのを証明してやる」
フィリップも、自信満々の様子で模擬戦を希望していたカイに思うところがあったのか、カイからの挑戦を受けて立つ。
双方がシミュレータに乗ったところで、リュウが俺に話し掛けてくる。
「それで、どうなんだ? 本当にカイが勝てるのか?」
「どうだろうな。カイの方が操縦技術が上なのは間違いないが、それだけで勝負が決まる訳じゃないし」
「おい」
そんなリュウの突っ込みと同時に、模擬戦が開始された。
ちなみに、当然ながらその模擬戦の様子はシミュレータの外にある映像モニタで見る事も出来るようになっている。
これは、模擬戦をやっている当事者達以外にも、どのMSがどのような動きをしたのかといった事が分かるようにする為だ。
そんな映像モニタで、最初に動きを見せたのはフィリップの陸戦型ジム。
考えてみれば当然なのだが、ガンキャノンは近接用の武器を持っていない代わりに、遠距離と中距離の攻撃は充実している。
陸戦型ジムもビームライフルを始めとして色々な射撃武器を持っているが、どうせ闘うのならガンキャノンの苦手な至近距離でと、そう思ったのだろう。
実際、その考えは間違っていない。……というか、モルモット隊はガンキャノンについてのデータを持っていたんだな。
そっちの方が、ちょっと驚きだった。
ただ……今回の戦場は見晴らしのいい草原だというのが、フィリップにとっては不利な要素だ。
身を隠すような場所がない状況で、ガンキャノンのいる場所まで辿りつかなければならないのだから。
戦闘フィールドを決めたのは、一体誰だ?
フィリップだとすれば、カイのガンキャノンを見下しすぎだと思えるし、カイが決めたのであれば自分に有利すぎる。
どちらも、そのような事はやりそうにないのを考えると……ランダムか?
一応シミュレータには、そのような機能もある。
だとすれば、フィリップは運が悪いとしか言いようがないな。
「うわぁ」
思わずといった様子で、そう呟いたのは一体誰だったのか。
もっとも、その気持ちも分からないではないが。
何しろ、現在映像モニタではガンキャノンが低反動キャノンとビームライフルを連射して、陸戦型ジムを一方的に攻撃しているのだから。
陸戦型ジムも、ガンキャノンの攻撃を可能な限り回避しようとはしているものの、既に細かいダメージを負ってはいる。
これは、まだ撃破されていないフィリップの腕前を賞賛するべきなのか?
とはいえ、それもいつまでも続くという事はなく……ガンキャノンの攻撃が1発、2発と命中し、最終的にはビームライフルでコックピットを貫通され、撃破された。
「勝てるかぁっ!」
シミュレータから出たフィリップが叫ぶが、それに対しては誰も何も言わない。
実際、フィールドの選択からして、ガンキャノンに圧倒的に有利だったのは明らかだったのだから。
せめて、模擬戦が始まった瞬間に近くにいたのであれば、まだ陸戦型ジムにも勝ち目はあったのだろうが。
「あー……その、何だ」
こちらもまた、コックピットから出て来たカイが何と言えばいいのか迷ったように呟く。
この様子から考えると、どうやらあの草原フィールドはカイが選んだ訳ではないらしい。
「あれ、ランダムで選ばれたのか?」
「ああ、そうだ。まさか、ここまで俺に有利な戦場になるとは思わなかったけど」
一方的すぎたからだろう。カイが困った様子で頭を掻く。
「取りあえず、フィリップだけじゃなくてユウやサマナも闘ってみたらどうだ? お互いに実力を知っておくのは決して悪い事じゃないだろうし。……ただし、戦闘フィールドは前もって決めておいた方がいいと思うけど」
そんな俺の言葉が切っ掛けとなり、何度も模擬戦が行われる。
驚いたのは、ユウがカイに勝った事……だけではなく、アムロと互角にやり合った事だろう。
1対1での模擬戦が5回行われたが、その勝敗は3勝2敗で何とかアムロの勝ちという結果になった。
俺との模擬戦を頻繁にやっているアムロは、その実力はかなり高い。
にも関わらずこの結果という事は、ユウの操縦技術は俺が想像していた以上に高いという事を意味している。
「これは……凄いな」
「嘘だろ、結果的に負けたとはいえ、あのアムロにここまで競り合うなんて」
リュウとカイがそれぞれ呟くが、それだけアムロはホワイトベースで腕利きのパイロットたと見られていたという証だろう。
そんなアムロとここまで接戦になったのだから、ユウはモルモット隊の隊長というだけの事はあるのか。
フィリップもそれなりの熟練者ではあったが、ユウの方が圧倒的に上だ。
それでも最終的にはアムロが勝ち越した辺り、アムロの才能って素直に凄いよな。
「はっはー。どうだ? うちのユウは強いだろ」
自分が2連敗したからか、フィリップは大威張りでそう告げる。
いや、勝ったのはユウなんだから、ユウが喜ぶのはともかくとして、お前がそこまで威張るのはどうなんだ?
そんな風に俺が思ってしまうのは当然の事だろう。
ともあれ、それ以後も模擬戦は続き、ホワイトベースのMS隊とモルモット隊は、何だかんだと親交を深める事になる。
勝敗云々も大事だが、こうして親交を深める方が大きいだろう。
ちなみに勝率という意味ではやはりホワイトベースのMS隊の方が上だった。
ユウとカイが1対1で戦った場合は、ユウが勝ったのだが……やはりアムロとカイという2人の壁は厚かったらしい。そして……
「うーん、これはちょっと無茶じゃないか?」
最後の模擬戦において、ピクシー対それ以外という組み合わせで行われる事になった。
ちなみに、当然のようにシミュレータの数が少ない事もあって、急遽この基地のシミュレータも使わせて貰っている。
陸戦型ガンダムを運用しているので、その辺の調整は難しくないらしい。
そんな訳でかなり大掛かりで……それこそ許可を出した軍人――イーサンではない――から、俺達だけでやるのは勿体ないと判断され、基地の中でも興味のある者は誰でも見られるようにという事になってしまった。
基地のシミュレータを使うのを許可した軍人……正確にはその上のイーサンにしてみれば、俺達のMS部隊がどれだけの戦力になるのかを、しっかり確認したいといったところなのだろう。
それ次第で、レビルに頭を下げるかどうか決めるといったところか。
これだけ大掛かりな模擬戦ともなれば、当然のようにこの基地の軍人でも気になる者は多い筈だ。
特に、この東南アジア戦線では他よりも一足早くMSが運用されているという事もあり、この基地のMS部隊にしてみれば、気にするなという方が無理だろう。
シロー辺りも、多分この模擬戦を見てるんだろうな。
……とはいえ、ピクシーを使う俺の戦い方が、一般のMSパイロットの役に立つのかと言われれば、首を傾げざるを得ないのだが。
何しろ、俺は混沌精霊としての能力を活かして、対G性能? 何それ美味しいの? といった戦い方をするのだから。
まぁ、その辺りを抜きにしても、この基地にいきなりやってきて最優先で整備や補給を受け、更にはモルモット隊の損傷した機体の修理やら何やらを行っているのだ。
そんな特別扱いされるのは、どのような実力があるのかといった事を疑問に……半ば嫉妬混じりに思われても、しょうがない。
『アクセル、これだけの人数で戦うんだ。絶対に負けないからな!』
通信でフィリップがそう言ってくる。
フィリップにしてみれば俺に負けて、カイに負けて、アムロにも負けている。
……一応リュウとハヤトが操縦するガンタンクには勝ったが、陸戦型ジムとガンタンクでは、MSの性能差が大きすぎる。
もっとも、ガンタンクの低反動キャノンは非常に高い威力を持っているので、それが命中すれば、まだ勝機はあったかもしれないが。
あ、でもルナ・チタニウムの装甲である以上、ダメージは受けても撃破扱いにはならないのか?
そんな疑問を抱くも、結局リュウとハヤトのガンタンクは低反動キャノンを命中させる事が出来ず、それでフィリップの勝利となった。
ビームライフルって、ぶっちゃけ今のUC世界だと卑怯な程に強いよな。
ザクマシンガンを食らっても平気なルナ・チタニウムの装甲であっても、ビームライフルは全く耐えられないのだから。
ドムは重装甲と高機動力が売りのMSなのだが、そんなドムであってもビームライフルが命中するとどうしようもない。
ここまで攻撃力が一方的になってしまうと、この先のMS開発では重装甲のMSというのは意味がなくなって、敵の攻撃を回避する事を最優先にしたMSが開発される可能性が高い。
まさに、『当たらなければ、どうという事はない!』という奴だな。
ん? これは誰の言葉だったか。
それを思い出せないでいるうちに、模擬戦が開始されるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469