転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2382話

「そう言えば、アクセル。この前の蒼いMSの話を聞いたか?」

 

 そうフィリップが言ってきたのは、賭けボクシングをやった休日から数日が経ってからだった。

 前線基地の攻略で使ったMSの修理や整備といった作業も一通り終わり、格納庫のシミュレータでそれぞれが訓練をしているのを眺めていた俺に、シミュレータの順番待ちをしていたフィリップがそう尋ねてきたのだ。

 

「蒼いMSって、前線基地の時の奴だよな? アムロを集中的に狙っていた」

 

 当然の話ではあるが、あの前線基地での戦いが終わってこの基地に戻ってきてから、ブライトはイーサンを含めた上層部に抗議した。

 当然だろう。まさか、いきなり友軍のMSから攻撃を受けるとは思ってもいなかったのだから。

 攻撃されたのがアムロだったから、そこまで大きな被害を受けるような事はなかった。

 もし攻撃されたのがフィリップやカイであれば、恐らく致命的なダメージを受けていただろう。

 それこそ、場合によってはMSだけではなく、パイロットの命を失っていた可能性もある。

 だからこそブライトは、イーサンにあの蒼いMSの追撃を許可されたなかった事に不満を抱いた。

 当然だろう。あそこで見逃したからこそ、再びあの蒼い陸戦型ジムが襲い掛かって来る可能性を否定は出来ないのだから。

 そんな危険な事があるかもしれないのなら、それこそ前回撤退した時に追撃して撃破しておくべきだったと思うのは、どこもおかしくはない。

 にも関わらず、イーサンはそれを拒否したのだ。

 ブライトにしてみれば、一体何を考えていると不満を抱いてもおかしくはない。

 特にブライトは生真面目な性格をしているしな。

 だが、結局そんな抗議もなしのつぶてだったらしい。

 レビルに今回の一件を報告すると匂わせても駄目だったというのだから、尚更だ。

 

「そう、それだ。情報通の女から聞き出したんだけど、何でもあの蒼い陸戦型ジムは、ジオンから亡命してきた博士に開発させたらしいぜ?」

「……は? それは、本気で言ってるのか? デマとかそういうのじゃなくて?」

「ああ。正真正銘の事実だ。いやまぁ、実際には裏を取ってる訳じゃないから、そういう情報があるというのが事実だ、というのが正しいだろうが」

 

 そう告げるフィリップに、俺は悩むと同時に納得もする。

 陸戦型ジム――胴体は陸戦型ガンダムだが――という機体の性能は、決して低い訳ではない。

 それでもアムロの操縦するガンダムと互角に渡り合えるかと言うと……ユウのような例外を除けば、基本的には難しいだろう。

 だが、あの蒼い陸戦型ジムはそんなアムロと戦い、互角以上に渡り合った。

 それは恐らく、MSパイロットではなく……機体の方に何らかの仕掛けがあるという事だ。

 そして、ジオン軍はMS関係の技術という点では連邦軍よりも10年先の技術を持っている。

 ……もっとも、実際にはビームライフルの技術を見れば分かる通り、全ての技術で完全に上に立っている訳ではなく、一部では連邦軍の方が進んでいたりもするのだが。

 ともあれ、そんなジオン軍から連邦軍に亡命してきた博士という存在がいれば、あのような機体を作るのも難しくはないだろう。

 幾ら性能が良くても、暴走して味方に襲い掛かるようなMSを操縦したいかと言われれば、絶対にごめんなのだが。

 恐らくその博士は、この戦争でジオン軍に勝ち目がないと判断して連邦軍に亡命してきたのだろう。

 もしくは、ルナ・ジオンが連邦軍に協力しているというのを何らかの理由で知ったのかもしれない。

 ぶっちゃけ、ルナ・ジオン……そして後ろ盾のシャドウミラーが連邦軍に協力すれば、ジオン軍に勝ち目はない。

 連邦軍だけでも相当に厳しい戦いなのだから。

 そう、思っていたのだが……

 

「何でも、あの機体はニュータイプ用の機体らしいぜ」

「……何?」

 

 ピクリ、と。

 フィリップのその言葉を聞き、動きが止まる。

 ニュータイプというのは、この世界において大きな意味を持つ。

 そして同時に、蒼い陸戦型ジムがニュータイプ用の機体であれば、執拗にアムロを狙ったという理由も理解出来る。

 また、何よりもジオン軍、ニュータイプという単語で思い当たる事があった。

 フラナガン機関。

 ジオン軍がサイド6に作ったニュータイプの非合法の研究所だ。

 人体実験の類も普通に行われており、ルナ・ジオン軍に俺が協力して制圧した。

 だが、研究所の中でも捕らえたのは下の方の研究者で、フラナガンを始めとして上の研究者を捕らえる事は出来ず、逃がしてしまった。

 ニュータイプ用のMSと、ジオン軍から亡命してきた博士。

 その2つをフラナガン機関と結びつけてしまうのは、俺の考えすぎか?

 

「フィリップ、その亡命してきた博士というのは、一体どういう相手なのか分かるか?」

「あ? いや、さっきも言ったけど、俺が知ってるのはあくまでも噂でしかねえよ。もしかしたら、その噂が全くのデマだって可能性だってあるんだぜ? 取りあえず、その辺については知らないけどよ」

 

 俺の言葉に首を横に振るフィリップ。

 フィリップにしてみれば、あくまでもそういう噂があると俺に言っただけで、まさかここまで反応するとは思っていなかったという事か。

 まぁ、普通ならそういう風に思っても、おかしくはないのだが。

 

「そうか。……なら、悪いけどその辺の情報をもう少し集めてくれないか? もし俺の予想通りだとすれば、色々と不味い事になりそうだ」

 

 フラガナン機関の研究者というのは、基本的に研究の為であれば何をしてもいいと思っている。

 勿論中には人体実験をしていた子供達を可哀想だと思っている者もいるし、月の強制労働をやっているうちに改心した者もいる。

 また、本当に少数だが、倫理的な考えを持っている者もいた。

 だが……もし連邦軍に亡命してきたのがフラガナン機関の人間だとすれば、その博士は恐らく研究の為なら何をやってもいいと思っている相手の可能性が高い。

 

「おい、それってどういう事だよ?」

 

 俺の言葉を聞いたフィリップが疑問をぶつけてくる。

 フィリップにしてみれば、自分の持ってきた情報によって、いきなり俺が妙な事を言い出した……といった感じなのだろう。

 とはいえ、フラガナン機関の件はかなりの重要事項だ。

 下手にここで情報を漏らすような事をすれば、こちらにとってのアドバンテージがなくなる可能性も十分にある。

 だとすれば、やはりこの件は秘密にしておいた方がいいのは、間違いない。

 

「いや、これはあくまでも俺の勘なんだけどな。そもそも、ジオン軍から亡命してきた博士をそこまで信じてもいいのかというのもある。実際、俺達……正確にはアムロは襲われただろ?」

「それは……まぁ」

 

 俺の言葉にそう呟くフィリップだったが、心の底から納得したといった様子はない。

 それでも無理に何かがあったのかを聞く様子がないのは、ここで無理に下手な事を聞いて、危ない話に顔を突っ込みたくないから……というのが大きいだろう。

 

「まぁ、ともあれ……だ。連邦軍のMSなら、もうこっちを襲ってくるような事はない……といいなぁ、と。そう思ってる訳だ。アクセルもそう思うよな?」

「襲ってこなければいいが、また襲ってくるようなことがあれば、次は仕留める」

 

 どこか冗談半分のようなフィリップに、そう返す。

 もしあの蒼い陸戦型ジムがフラナガン機関の生き残りによって開発されたMSだとすれば、かなり危険なのは間違いない。

 それこそ、パイロットの事は全く考えていない機体であってもおかしくはない。

 ……実際、アムロと戦っていた時の動きを思えば、普通のパイロットはGに耐えられるかどうか微妙なところだろう。

 まるで、ゼロシステムだな。

 パイロットの生死に関係なく、ただ敵を倒す為だけのシステム。

 とはいえ、当然のようにそれは外から見た限りの話であって、実際には全く違うシステムなのだろうが。

 ともあれ、フラナガン機関の生き残りが開発したMS……いや、外見は陸戦型ジムの頭部と陸戦型ガンダムの胴体であるのを考えると、フラナガン機関の生き残りが開発したのは、MSではなくやはりシステムの方か?

 だとすれば、ちょっと厄介だ。

 MSであれば、MS本体を破壊する事によってその博士の意図を挫く事が出来る可能性が高い。

 だが、システムの方だとなると……例えあの蒼い陸戦型ジムを破壊しても、まだ同じシステムを作ればいいだけだ。

 そう考えるも、わざわざ陸戦型ジムの頭部だけを陸戦型ガンダムの胴体に使うというのは、と疑問を抱く。

 そのシステムの量産性は、そこまで高くないのか?

 だとしても、ある程度の量産性があるという時点で厄介なのは間違いないんだが。

 ともあれ、蒼い陸戦型ジムが厄介な代物なのは間違いない以上、可能な限り素早く破壊するべきだろう。

 とはいえ、あのシステムの危険性を俺は証明出来る訳ではなく、それを知らない連邦軍にしてみれば、あの蒼い陸戦型ジムに使われているだろうシステムはかなり魅力的だろう。

 陸戦型ジムの頭を使っているということは、システムの量産性に問題があるんだと思うが。

 ……アムロと同等の戦闘力を有するんだから、エース級だけにでも配備する事が出来れば、という思いが理解出来ない訳でもない。

 

「仕留めるって……もし攻撃しようとしても、恐らくだけど連邦軍のお偉いさんが攻撃中止命令を出すと思うぜ?」

「だろうな。ただ、あのMSは残しておくと色々と問題が起きる可能性が高いから、その攻撃中止命令は無視すればいい。……そもそもの話、俺は今でこそホワイトベースでMSのパイロットをしているが、実際には傭兵だからな。少しくらい命令無視してしまっても、この場合は意味がないだろ」

「いや、それは……正直どうなんだ? 出来れば、そういうのは止めた方がいいと思うんけど」

 

 まさか、フィリップの口からそんな事を聞くというのは、少し意外だった。

 腐っても鯛ならぬ、腐っても軍人といったところか。

 もっとも、フィリップの場合は腐ってるんじゃなくて不良軍人という表現の方が相応しいのだろうが。

 ともあれ、そんな訳で若干驚きはしたものの、今はあまり気にしないでおく。

 

「ともあれ、あの蒼い陸戦型ジムがまた現れなければ、それでいいんだよ」

 

 そう言うものの、アムロだけを執拗に……それこそ偏執的はまでに狙っていた相手が、あっさりとこっちを諦めるかと言えば、それをすぐに信じる事は出来ないのだが。

 

「まぁ、そりゃそうだ。……お、終わったみたいだな。あー、やっぱりカイだとユウには勝てないか」

 

 シミュレータを見ていたフィリップが、そう呟く。

 その言葉通り、ユウの陸戦型ジムはカイのガンキャノンを見事に撃破していた。

 基本性能としては、決してガンキャノンが劣っている訳ではない。

 いや、単純にスペックとしてみれば、ガンキャノンの方が勝っている場所も多かった。

 そもそも、ジムというのはアムロの乗っているガンダムの余分な……言ってみれば高性能すぎる部分を削った機体だ。

 とはいえ、ジムと陸戦型ジムというのは大きく違う。

 陸戦型ジムは陸戦型ガンダムとほぼ同じ製造ラインで開発されている機体で、その陸戦型ガンダムはアムロの乗っているガンダムの余剰パーツや、規定の性能に届かなかった部品を使って作られた機体だ。

 客観的に見れば、ジムも陸戦型ジムも、性能的にはガンキャノンに劣っている筈だろう。

 それでもユウの陸戦型ジムが勝ったのは、やはり純粋に操縦技能の差と、何よりも陸戦型ジムがビームライフルやビームサーベルを使用出来るから、というのが大きかった。

 もし陸戦型ジムがピクシーの90mmサブマシンガンのように実弾兵器しか持っていないのであれば、ルナ・チタニウム製の装甲、それもガンダムよりも厚い装甲を相手に撃破は難しい。

 だが、ビーム兵器であれば、ルナ・チタニウムの装甲だろうと意味はなさない。

 つまり、陸戦型ジムの攻撃でも十分にガンキャノンを撃破出来るのだ。

 それが証明されたのが、丁度あの模擬戦だったのだろう。

 

「やっぱりユウは強いな。カイも以前に比べるとかなり腕が上がってきてはいるんだが」

 

 カイの技量は、間違いなく一流と言ってもいい。

 それこそ、ジオン軍のMSパイロットと比べても、大抵の相手には負けないだけの実力があるのは間違いない。

 それでも負けたのは、純粋にユウの能力が高かったからだろう。

 ユウがアムロと模擬戦をやれば、最終的に負けることは多いが、かなりの接戦となるのは間違いない。

 つまり……今のカイでは、やはりまだアムロに勝てないという事なのだろう。

 

「よっしゃ! アクセル、俺と模擬戦しようぜ。今日こそはアクセルのピクシーに勝ってやるからよ!」

 

 シミュレータが空いたのを見ると、フィリップがそう言ってくる。

 不良軍人ではあるが、ムードメーカーという意味ではかなりの者だよな。

 そう思いつつ、俺はフィリップの誘いに乗ってシミュレータに向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:510
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1486

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