08MS小隊とホワイトベース隊がシミュレータを使って模擬戦を行ったというのは、たちまち基地の中に噂として広まった。
そうなれば、当然自分達とも模擬戦をして欲しいと頼まれる事になり……
「はい、03MS小隊と05MS小隊の戦いでの賭けの締め切りはもうすぐそこだよ。早くしないと締め切りだから、賭ける人は急いでねー!」
キキの声が周囲に響く。
……いや、本当に何がどうしてこうなった? と、そんな光景を見ながら疑問を抱く。
ホワイトベース隊との模擬戦を希望するMS小隊が殺到し、ホワイトベース隊もその全てを相手には出来ない。
というか、08MS小隊と戦ったのは俺だけで、ホワイトベース隊が参加した訳ではないのだが……ともあれ、奇妙なくらいに事情が歪んで伝わっていた。
これが誰かの意図的なものだろうと思うくらいには。
そんな訳で、色々と話し合った結果として、ホワイトベース隊との模擬戦を希望するMS小隊はトーナメント戦をやってそこで優勝した相手とホワイトベース隊が模擬戦をやるということになった。
何がどうなってそんな事になったのか、非常に疑問なのだが……俺が相手をするんじゃなくてアムロ達が相手をするという事になっており、本人達もそれで構わないと言ってるのなら、俺からは何か言うつもりはない。
ちなみにMS3機なのだが、その3機はアムロ、ユウ、カイ、フィリップ、サマナ、綾子の6人から3機選ぶらしい。……一応、ガンタンクもMSという扱いではあると思うんだが、この場合は例外らしい。
アムロ、ユウ、綾子の3人とぶつかったりしたら、その小隊は涙目だな。
救いとしては、ブルーディスティニーのEXAMシステムはシミュレータでは再現されていないという事か。
とはいえ、ブルーディスティニーのベースは陸戦型ガンダムで、そのベース機となった陸戦型ガンダムも結構改修されていると考えると、EXAMシステムを使わなくても十分高性能なMSなのだが。
ともあれ、現在はMS小隊同士のトーナメントが行われており……シローを尋ねてやって来たキキが賭けを始めてしまっていた。
「随分と賑やかな事になってるみたいだな」
基地内を歩きながら、そんな風に呟く。
以前俺がボクシングをやった時もそうだったが、軍人というのは何だかんだと賭け事が好きだったりする。
実際、キキから賭け札を買っている者も多いし。
ここまで来ると、一種の祭りと思わないでもない。
今回の件を企んだのは、恐らくイーサンだと俺は思っている。
ホワイトベース隊と模擬戦をさせる事で、自分の部下のMS隊の実力を少しでも上げようと、そう考えているのだろう。
……とはいえ、イーサンの性格を考えると、それは別に部下を殺したくないからとかそういう理由ではなく、少しでも部下の能力を高めて自分の出世の道具として使いたいと、そういう狙いからなんだろうが。
それでもここでMSの操縦技術が上がれば生き残れるだろうから、このトーナメントの参加者達には、悪い話じゃないんだろうけど。
こうやってトーナメントを開催されているが、当然のようにそこでは普通の仕事も行われている。
トーナメントにまだ出ていない部隊だったり、もう負けてしまった部隊だったりといった者達が、MSを使った任務に参加しているらしい。
その辺は上手くやっていると思えば、イーサンもしっかりと仕事をしているというのは間違いない訳だ。
部下を駒としか見ていないのは間違いないが、それでも有能な人物ではあるんだよな。
「うわぁ……キキの奴、後で問題にならないといいけど」
少し離れた場所にいたシローが、顔を覆うようにして呻く声が聞こえてきた。
そうしながらも、口調に若干の嬉しさが混ざっているように思えるのは……多分、俺の気のせいじゃないと思う。
「シローはどっちに賭けるんだ?」
「止めてくれよ、アクセル。俺が賭けたりしたら、八百長とかを疑われるよ」
「は? 何でだ? 他の小隊のMSパイロット達も賭けてるようだぞ?」
実際、現在キキの下に向かっている者の中には何人かMSパイロットとして見覚えのある顔もいる。
そいつらが普通に賭けているのに、何故シローが駄目なのかと。
そんな視線を向ける俺に、シローは複雑な表情としか呼べない表情を浮かべる。
「いや、ほら。俺がキキと親しいのは結構知ってる奴がいるんだよ。実際、今日キキがここに来たのも、俺に用事があったからだし」
その言葉で、何となくシローの言いたいことは理解出来た。
つまり、この基地の中ではシローとキキが特別な関係だと思っている者が多いのだろう。
具体的にそれがどれくらいの数なのかは、俺にも分からない。
だが、それを知っている者はそれなりの数になるという事は、キキがこの基地に来るのもこれが初めてという訳ではなく、これまでに何度も来ているのだろう。
もっとも、それはキキを守る為にシローがそういう風に見せ掛けたという一面もあったのかもしれないが。
「ふーん。……お幸せに」
「ちょっ、アクセル! 何か誤解してないか!?」
俺の言葉に、シローは慌てたようにそう言ってくる。
自分とキキの関係を誤解して欲しくないと、そう思っているのだろう。
だが、キキの様子を見る限りでは、キキがシローに好意を抱いているのも事実だし、こうしてシローに会いに基地まで来るといったように、外堀を埋めに来ている。
それを見れば、最終的にシローはキキに捕まる事になると思うんだが。
ただでさえ、シローは恋愛に慣れているようには見えないし。
そういう意味では、キキはゲリラの中で育ってきたという事もあって、恋愛的には捕食者っぽい感じがしないでもない。
あくまでも俺のイメージで、実際にどうなのかは分からないが。
「さて、誤解かどうかは分からないけど、シローとキキの仲が良好な関係にあるのは分かる。それがどういう意味での仲なのかまでは、分からないけど」
俺の言葉に、若干怯んだ様子を見せるシロー。
シローの恋愛観が具体的にどんなものなのかは分からないが、何だかんだと押しには弱そうな感じがするから、キキが徹底的に押して押して押しまくれば、最終的には呆気なく陥落して、キキに食べられる……いや、捕食されるような気がする。
「シロー!」
シローが俺に向かって黙っていると、賭け札を売るのが終わったのかキキがシローに向かって大きく手を振っている。
シローの隣には一応俺がいるんだが、その事に気が付いている様子はない。
……当然そんなキキの様子は周囲の軍人達からも見えており、シローに対してニヤニヤとした笑みを向けている者も多い。
中には嫉妬の混ざった視線もある辺り、キキはこの基地の中でもそれなりに人気が高いのだろう。
シロー、嫉妬に狂った軍人達から妙なちょっかいを出されないといいんだけどな。
「ほら、どうしたんだ? キキが手を振ってるんだから、シローも手を振った方がよくないか?」
困った様子を見せるシローに、そう促す。
若干恨みがましい視線を俺に向けたシローだったが、それでも結局はキキに向かって軽く手を振る。
……何人かの嫉妬の視線がより強くなったが、その辺は恋人候補持ちという事で、シローにも我慢して貰おう。
この基地にも女の軍人はそれなりに多いんだから、相手の決まっていないそっちを口説けばいいのにな。
もしくは、キキの村やキキ達と友好関係にあるゲリラ達の村の中で相手のいない女と合コンを開くとか。
そうすれば、シローに向けられている視線も幾らかは減る……かもしれない。
絶対にという訳じゃなくて、あくまでもその可能性があるというだけだが。
「このままここにいれば俺も邪魔になるだろうし、そろそろ俺は行くから」
「あ、ちょっ、アクセル! この状況で俺を置いていくのか!?」
不満そうに言ってくるシローだったが、俺はそれに軽く手を振ってその場から離れる。
その場から離れて、近くにある映像モニタに映されている模擬戦を見る。
今回は半ば基地を上げての祭りに近いという事で、メカニック達が色々と頑張って基地の中にあるモニタで模擬戦の様子を見る事が出来るようになっている。
そして現在そこに映されているのは、陸戦型ジム同士の戦い。
陸戦型ガンダムと陸戦型ジムは、殆ど一緒の生産ラインで作られているのだが、それでもやっぱりガンダムよりもジムの方がコストが低かったり交換部品を用意しやすかったりするらしく、全体的に見れば陸戦型ジムの方が多い。
陸戦型ガンダムも陸戦型ジムも、活躍しているのは恐らく今だけだと思うが、そんな中でも陸戦型ガンダムの寿命は換えの部品的な意味で早いかもしれないな。
まぁ、ブルーディスティニーを見れば分かるように、陸戦型ガンダムの胴体に陸戦型ジムの頭部をつけるといった真似も出来るので、最終的にはあいのこ的なMSが多くなりそうだが。
まさに、時代の徒花といった様子のMSなのは間違いない。
……ルナ・ジオンのヅダも、そうならないようにしないとな。
現在、ルナ・ジオンのディアナでは、ジオン軍系の技術と連邦軍系の技術を融合して、ルナ・ジオン独自の技術に昇華するように頑張っている。
2つの技術の融合というのは、下手をすればどっちつかずの技術となるのだが、出来ればそんな風にはなって欲しくないところだ。
それらの技術を活かし、ヅダの次世代機を作る事も計算に入れる必要がある。
とはいえ、ヅダは設計の段階から高い拡張性を有しているので、バージョンアップするのは難しい話ではない。……それでも、やっぱりある程度の時間が経てば新型MSを開発する必要は出て来るだろうが。
何しろ、今のUC世界はまだMSが世に出たばかりだ。
当然のようにMSの技術は雨後の竹の子のように次々と出てきてもおかしくはない。
技術の乱立ともいえるこの状況が落ち着くには、ある程度の時間が必要となるのは間違いない。
そうなると、ルナ・ジオンの新型MSは何になるのか……少し楽しみなような、怖いような。
ただ1つ言える事は、ビームライフルが主力になるという事だろう。
実弾の方も消える訳ではないだろうが、やはりビームライフルの攻撃力は魅力的なのは間違いない。
ヅダの次世代機……一体どんな機体になるのかと疑問を抱きながらも、俺は基地の中を見て回る。
意外な事に、屋台が並んでいる場所もあった。
これは、軍人達が用意した……いや、違うな。
軍人達の屋台もあるが、この辺りに住んでいる地元の者らしい奴の屋台もある。
東南アジアだけあって、いわゆるエスニック系の料理が多い。
ホワイトベースの食堂でも出た、フォーや生春巻きといった料理を売っている屋台もあった。
この辺の料理は色々と特徴的なので、好きな人にとってはこの上なく好きだけど、嫌いな人にとっては見るのも嫌だといった事が多い。
……それでも祭り気分という事もあってか、屋台で並んでいる奴は結構な数がいる。
「美味っ! こういう料理って初めて食うけど、思ってたよりも美味いな」
「えー、そう? 私はこれ……パクチーだっけ? これがあまり好きじゃないんだけど」
そんなやり取りをしている軍人のカップルもいる。
シローに嫉妬の視線を送っていた奴も多かったが、こうして見ると何気に軍人同士のカップルってのも、結構多いんだな。
それでも、やはり軍人の中での割合を考えると、男の方が女よりも多いのは事実である以上、自然とシローに嫉妬していたような男達が余るのは当然なのだが。
あ、でも1週間戦争やルウム戦役、それ以外にも今まで起こった戦いの中では、多くの軍人が……特に男が死んだ。
それを考えれば、以前より男女の比率は小さくなっているという可能性もあるのか?
その辺は正式には分からないから、恐らくとしか言えないが。
ともあれ、折角なので屋台で適当に買う。
買ったのは、パッタイ。
屋台の店主に聞いてみたところ、タイ風の焼きそばらしい。
基本的には甘辛い味付けで、エビやナッツといった食材を自分で入れて調整する感じの料理だ。
甘辛い焼きそばというのは珍しかったが、それでも慣れれば十分に美味いと思う。
それ以外にも生春巻きや揚げ春巻き、マンゴープリンといった料理を食べていく。
これぞ、祭りの十分な楽しみ方って奴だよな。
……とはいえ、それで満足したかと言われれば、正直なところ微妙だが。
どうせなら、他にも色々と売っている屋台で買ってコンプしたいところだ。
ふと気が付けば、MSによる模擬戦の事をすっかりと忘れ……俺は屋台の料理に集中していたと。
とはいえ、優勝したMS小隊との模擬戦に参加するのはアムロ達である以上、俺がそちらを気にする必要もなかったのだが。
そして、当然のように……優勝した小隊を相手に、アムロ達は無双するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:510
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1486