「ラサ基地攻略に際して、ホワイトベース隊が任されたのは後方からの援護と遊撃。……簡単に言えば、主戦力以外の雑用だ」
連邦軍基地にあるブリーフィングルームにて、ブライトがそう説明する。
その説明に嫌そうな表情を浮かべる者もいれば、嬉しそうな表情を浮かべる者もいる。
ホワイトベース隊に入ってきた新人のヤザンは、前者の筆頭だろう。
ダンケルとラムサスというヤザンの2人の部下も、隊長のヤザンと同様に嫌そうな表情を浮かべていた。
この3人は初日にシミュレータでズタボロに負けながら、それでも諦める事なく模擬戦を挑んでいる。
ちなみに現在のところ、ホワイトベース隊のシミュレータの強さ順は……綾子、アムロ、ユウ、カイ、フィリップ、ヤザン、サマナ、ダンケル、ラムサスの順番となっている。
ある意味で妥当な結果ではあるが……フィリップが言うには、もう少し時間があればヤザンは自分を抜いて、カイを抜いて、アムロやユウのレベルにまで到達するだろうという事だった。
それがフィリップの買いかぶりなのか、本当にそれだけの実力を持つと判断したのか、その辺りは分からない。
だが、ヤザンの雰囲気を考えると、フィリップの予想はそんなに的外れのようには思えなかった。
操縦センスという点では、かなりのものがあるのは間違いない。
ニュータイプではなくオールドタイプだが、低レベルのニュータイプ能力はヤザンの前ではそこまで役に立たないだろう。
それでも純粋に実戦経験が少ないのは間違いなく、そういう意味ではまだサマナの方が上だ。
「幸い……という言い方はどうかと思うが、今回の主力はあくまでもこの基地の戦力で、こちらは援護役だ。……途中で何かイレギュラーな出来事があれば、戦闘に積極的に参加する事になるかもしれないが」
「ブライト艦長、なら俺達は何で出撃するんだ? イレギュラーな出来事って、具体的にはどんな事があるのか教えてくれ」
ヤザンの言葉に、ブライトは微かに眉を顰める。
それでいながら、怒鳴りつけるような真似をしなかったのは、それこそホワイトべースにはイレギュラーな人材が多く集まっている事もあって、良くも悪くも慣れたのだろう。
規律を守る軍人としてはどうかと思うが、柔軟な対応を取る事が出来るというのは大きいと思う。
「そうだな。ラサ基地は東南アジア戦線にあるジオン軍の基地の中では本拠地と言ってもいい。つまり、この基地のような存在だ。情報を持ってきたゲリラからの話によると、こちらの攻撃を察してか、相当数のMSが集められていると聞く」
「ゲリラ? その情報は当てになるのか?」
ゲリラという言葉に、ヤザンは微かに嫌そうな表情を浮かべる。
ダンケルとラムサスの2人も同様だ。
だが、それ以外の面々はゲリラが連邦軍側に協力しつつあるというのを知っているので、そこまで嫌そうな様子は見えない。
シローがキキと友好的に接しているおかげだな。
ただまぁ……その代わりというか、そのせいというか、キキがシローに積極的にアタックしているらしいのだが。
シローはエレドアにからかわれつつ、それでも何とかそれを誤魔化しているらしい。
とはいえ、ミナトが聞いて来た情報によると、このままいけばキキがシローと付き合うようになるのは時間の問題らしいが。
キキはゲリラらしい神出鬼没さで、場合によってはシローの宿舎にまで入り込んでいるらしい。
MSパイロットで、更には小隊長という事もあって、シローは個室なんだが……それが、キキにとっては幸運、シローにとっては不運なのだろう。
「ああ。この辺りのゲリラは基本的に連邦軍に協力してくれるようになった。……勿論全てのゲリラがという訳ではなくジオン軍に協力しているゲリラもいる以上、ラサ基地攻略についての情報も流れているだろう。いや、正確にはそれもあってラサ基地にはMS戦力が集められていると言った方が正しい」
あー……まぁ、ゲリラの全てがこっちの味方になるってのはやっぱり難しかったのか。
この辺りは、シローの頑張り不足だな。
とはいえ、ゲリラというのは独立独歩というか、それこそ小さな戦力の集合体のような感じだ。
当然のようにキキの所属していたゲリラと仲の悪い者達も存在しており、そのような者達はキキ達が連邦軍側についたとなれば、自分達もという訳にはいかないだろう。
そうなると、中立かジオン軍側か。
連邦軍の戦力を考えれば、この場合は中立が一番正しい選択なのだろうが……キキ達のゲリラに対して敵対心を抱いてる者にしてみれば、中立では生温いと判断してもおかしくはない。
そのようなゲリラが、キキ達への対抗心からジオン軍側に協力したと言われれば、納得するしかない。
大局的に見れば、個人の感情から最悪の選択肢をしたようにしか見えないのだが、その辺は小規模なゲリラだからそのような感じになってしまったのだろう。
「ふーん。なら、俺達が主力になってもいいと思うんだけどな」
ヤザンにしてみれば、自分の実力が足りないのは実戦経験が足りないからという思いがある。
だからこそ、ラサ基地攻略作戦でその実戦を積もうと思っているのだろう。
「駄目だ」
ヤザンの言葉を即座に否定するブライト。
少しではあってもヤザンと一緒にいれば、どんな性格をしているかというのはすぐに理解出来る。
ここで何も言わなかったり、有耶無耶にしてしまえば、ヤザンはそれこそ敵に突っ込んで行きかねないと、そう判断したのだろう。
実際、それは間違っていない。
俺と出会った頃のムラタやイザークを思わせる今のヤザンは、血の気が多く好戦的だ。
これで少し落ち着く事が出来れば、本当に優秀なMSパイロットになるのだろうが……この辺は、結局個人によって違うしな。
あっさりと自分の要望を却下されたヤザンは不満そうだったが、ブライトはそんなヤザンを一瞥した後で話を戻す。
「ホワイトベース隊の仕事は、基本的には援護だ。……ただし、先程も言ったがラサ基地にはジオン軍も相応の戦力を揃えている。連邦軍のMSも性能は決して低くはないが、平均的なパイロットの技量となると、どうしてもジオン軍に劣る。そうである以上、もしかしたら連邦軍のMS部隊が被害を受けてこちらに援軍の要請が来るかもしれない。その要請が来た場合は即座に動く事になるから、くれぐれも準備は怠らないように」
そう告げたブライトは、ヤザンに視線を向ける。
ヤザンはブライトの言葉の意味をしっかりと理解していたのだろう。
満面な……それでいて獰猛な笑みを浮かべ、頷いていた。
ヤザンに対して、一応の配慮をしたという事か。
それはともかく、今回のラサ基地攻略作戦は俺にとってもそれなりに意味がある。
マチルダが持ってきた、ピクシー用のビームスプレーガン。
ピクシーで使えるのは間違いないが、具体的にそれをどのようにして使うのか……そして何の欠点もないのかどうかというのを、実戦でしっかりと確認する必要があった。
とはいえ、ヤザン達のジムが使っている以上、実際には問題なく使えると考えてもいいのだろうが。
「前線基地を攻略した時とは違い、今回はホワイトベースも前線に出る。補給に関しては、イーサン大佐からもしっかり対応するという言葉を貰っているので、心配する必要はない」
そう言いながら、ブライトは色々と細かい説明を口にしていく。
ブライトにしてみれば、別にこれが初めての大規模な作戦という訳でも……ああ、いや、違うな。
今までは、基本的にはホワイトベースだけでの戦いだった。
北米のロングビーチの戦いは、一応連邦軍の北米軍と連携した戦いではあったが、それでも結局戦いそのものはホワイトベースだけだった。
ユーラシア大陸に渡ってこの基地を拠点とするようになってからも、前線基地攻略作戦や、キキの村の周辺に出没していたジオン軍のMSを撃破する時も、ホワイトベースとしての戦いだけだ。
前線基地攻略作戦では一応シロー達の08MS小隊が見届け役として来ていたが、それだって結局のところは出番がなく……それどころかホワイトベースもその作戦には参加しないように言われていた。
だとすれば、今回の一件はブライトにとって初めて他の部隊と一緒の戦いって事になるのか?
ミデアと一緒に戦った事はあったが……ミデアを戦力として数えるのは、色々と間違っているしな。
そんな風に考えている間にもブライトから今回の作戦についての説明は終わり、解散となる。
「アクセル!」
部屋から出ようとした俺の背に、そんな風に声が掛けられる。
それが誰の声なのかは、考えるまでもなく明らかだ。
「どうした、ヤザン」
「ちょっとシミュレータに付き合ってくれ」
「それは構わないが……ぶっちゃけ、俺とのシミュレータはあまり役には立たないぞ?」
技量という点でも、身体能力という点でも、俺はこのUC世界のパイロット達とは大きく違う。違いすぎる、と言ってもいい。
UC世界のMSで……それも実機ではなくシミュレータでの戦いとなると、操縦技術もそれに合わせる必要がある。
それでも、MSの操縦を始めたばかりの新兵を相手に……と、そう思ったのだが、ヤザンが俺に向けてくる視線には、自分が負けてもいいという思いはない。
寧ろ自分が勝つと、そんな光が宿っていた。
「分かってる。あんたが、このホワイトベースの頂点なんだろ? どうせ勝つのなら、頂点を狙った方がいい」
……なるほど。
ヤザンの言葉に、俺は笑みを浮かべる。
ただし、その笑みはヤザンと同じような獰猛な笑みだろうと自分でも理解出来た。
「分かった。なら、やろうか。作戦開始までの時間は少ないが、それまでに出来る事はやってやるよ。ビームスプレーガンにも慣れておきたいしな」
こうして、俺はヤザンと共にホワイトベースの格納庫にあるシミュレータに向かうのだった。
「畜生っ! もう1度だ、アクセル!」
シミュレータから出たヤザンは、俺に向かってそう叫ぶ。
これで30連敗以上してるのだが、それに全く堪えた様子はない。
この負けん気の強さは、ヤザンの長所の1つだろうな。
MSのパイロットに限らず、何をするにしてもこういう負けん気の強さというのはプラスに働く。
とはいえ、既に結構な時間になっているのを考えると、このまま延々と……という風には出来ないか。
負けん気が強いのはいい事だが、ここで無理をして、結果として身体を壊すといった事になれば、それこそ作戦に支障が出る。
だとすれば、この辺りでそろそろ模擬戦は終わらせた方がいいか。
「分かった。けど、これが最後だ。それでいいな?」
「……分かった」
数秒の沈黙の後、ヤザンはそう告げる。
それこそ、ヤザンにしてみれば今回の一件は自分がどこまで出来るかを試してみたいという思いからだったのだろう。
実際、模擬戦の中でヤザンが急速に操縦技術を上昇しているのは、俺にも理解出来る。
俺に対抗する為に悪戦苦闘し、ヤザンはそんな中で急速に成長していったのだ。
今なら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、フィリップやカイに勝てるという可能性もあるかしれないな。
ともあれ、今日最後の模擬戦を始めるべく、再びシミュレータを起動する。
最初はビームスプレーガンの使い勝手を試すという意味の方が大きかったが、それも30回も模擬戦をやれば当然のように慣れる。……実際にはあくまでもシミュレータであって、実機で使った訳ではないので過信は禁物だが。
ランダムで選ばれた戦場は、密林。
東南アジア戦線としては、これ以上に相応しい場所はそうそうないだろう。
模擬戦が始まると、まずは敵を発見するところから始まる。
とはいえ、密林の中となると相手を見つけるのも苦労する訳で……ここは手っ取り早く、こっちを見つけて貰おう。
そう判断し、スラスターを全開にして跳躍する。
密林の木々を通り越し、かなり高い位置まで到達する。
そしてビームスプレーガンではなく90mmサブマシンガンを構えつつ……ヤザンのジムがいそうな場所を適当に掃射する。
当たればラッキー、当たらなくてもヤザンにこちらのいる場所を把握させて……
「っと!」
映像モニタに一瞬だけジムの姿が表示されたのを確認し、俺はそのままそちらに向かって降下していく。
それも、頭部を下方向に向け、スラスターを全開にしてだ。
そのま各所のスラスターを使って機体を細かく動かし、ジムが撃ってくるビームを回避する。
ジムの基本的な武器は俺が持っているのと同じビームスプレーガンなのだが、ヤザンの場合はその操縦技術を期待されているという事もあってか、陸戦型ジムが使ってるのと同型のビームライフルを与えられている。
その攻撃を回避しつつ、真っ直ぐにジムのいる場所に突っ込んでいき……スラスターで機体制御して半回転。頭部を上に持ってくるのと地面に着地するのは、ほぼ同時だった。
そうして呆気にとられているヤザンのコックピットに近距離からビームダガーの切っ先を突き出し、勝負ありで戦いは終わるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1500