俺とブライトが予想した通り、バニング小隊との模擬戦の翌日から多くの模擬戦の申し込みがあった。
そこでブライトが出したのは、難易度の提示。
……ただ、これが余計に模擬戦を挑んでくる者達のプライドを刺激したようで、多くの者が本来の自分の実力よりも上の難易度に挑み……結果として惨敗するというのが多数あった。
そんな中で忙しかったのは、カイ、シロー、サンダース、フィリップ、サマナ、ヤザン、ダンケル、ラムサスといった面々だ。
この面々はホワイトベースの中でも実力的に丁度半ば前後くらいの者が多いので、結果として難易度調整とかそんな感じで出番が多くなってしまう。
それとは逆に、ベリーハードやインフィニティ枠の俺、綾子、アムロ、ユウといった面々は、暇……という訳ではなかったが、それでも他の面々に比べると忙しくなかった。
勿論何も仕事がない訳でもなく……模擬戦の中には、何を考えたのかいきなりインフィニティに挑んでいるような小隊もいたので、その時はインフィニティがインフィニティたる由縁を教える事にしたのだが。
ちなみに、俺の出番は基本的にインフィニティだけなのだが、中には俺1人を相手にしたいと希望してくる奴もいたので、そういう相手にはしっかりと実力を教える事にしてやった。
何気にこの模擬戦は、ワルシャワに集まってきている連邦軍にとって人気が高い。
MSパイロットだけに人気が高いのなら分からないでもないのだが、それ以外の61式戦車部隊や戦闘機部隊、補給部隊、その他諸々からも人気があったりする。
……実機で模擬戦をやるという事でメカニック達からは若干評判が悪いが、メカニック達だって自分が整備している機体のパイロットを殺したいとは思っていない以上、そこまで不機嫌には思っていない。
パイロットや上層部がメカニック達の大変さに報いる為に差し入れをしたりしているというのも、影響しているのだろうが。
ともあれ、そんな風に皆が喜んでいるのは……
「はいはい、次の賭けの時間まではもう少しだよ。難易度はイージーなので、ホワイトベース側からでてくるMSのパイロットはそこまで強くない。それに対して、挑むのは北米で多くの戦いを潜り抜けてきた猛者達だよ。賭けるのなら、早くしてね。オッズについては、そこに張り出されている紙で確認して」
ワルシャワにある連邦軍基地を歩いていると、聞こえてくるそんな声。
聞き覚えのあるその声は、考えるまでもなくキキの声だ。
ぶっちゃけ、現在ワルシャワ基地で行われているのは、東南アジア戦線で行われていた模擬戦のトーナメントの焼き直しにすぎない。
勿論参加している者の数が圧倒的に多い以上、そのままという訳にはいかないが。
ともあれ、現在はキキが賭けを取り仕切っている訳だ。
普通ならキキのような部外者の、それもゲリラの女が賭けを取り仕切ろうとしても、それを面白く思わないような奴もいる。
だが、その辺はブライトも場慣れしてきたと言うべきか、模擬戦を引き受ける代わりにキキが賭けの胴元をする事を上層部に黙認させたらしい。
ホワイトベース隊という、UC世界においても屈指の精鋭部隊が後ろ盾になってるからこそ、キキも安心して賭けの胴元が出来ている訳だ。
この賭けで得られる金額は、ホワイトベース側が7割、キキが3割という事になっている。
キキの儲けが少ないように思えるが、それでも賭けに参加している人数の多さを考えると、その儲けは相当な額になるだろう。
ホワイトベース側が得られる7割にしても、基本的にはその金額はホワイトベースで使われる施設をより快適にしたり、タオルのような消耗品で使う事になっているので、キキにも十分にリターンはあるのだが。
「アクセル代表!? こんな場所で一体何を……」
ワルシャワ基地の中を歩いていると、不意にそんな声を掛けられる。
声のした方に視線を向けると、そこにいたのは見覚えのある顔だった。
浅黒い顔に、髭。
バニング小隊の良心とでも言うべき、アデルだ。
俺が知ってる限りでは、モンシアやベイトと一緒に行動する事が多いアデルだが、今日は珍しく1人だった。
「珍しいな、今日はお前1人か?」
「ええ。その……モンシア少尉は裸踊りの映像が流れたことで始末書を書く事になってしまって」
「あー……なるほど」
連邦軍としては、裸踊りの映像が残っているとなれば、まさかそのままにも出来ないだろう。
その結果として、モンシアが割を食う事になった訳だ。
モンシアにとっては、最悪の結果と言ってもいいだろう。
……まぁ、俺に絡んだ不運を嘆いて貰おう。
「モンシアの件はともかくとして、ベイトはどうしたんだ?」
「ヤザン少尉と約束があるとかで」
モンシアとは問題児仲間だったが、ベイトとも相応に仲は良かったのだろう。
それは分からないでもないが、それならアデルも一緒に行けばよかったんじゃないかと思うんだが。
……アデルとヤザンでは、相性が悪いというのはあるかもしれないが。
「そうか。あの2人なら相性は悪くなさそうだな」
「そうですね。……悪くなさすぎて、妙な事にならないといいのですが」
はぁ、と憂鬱そうに息を吐くアデル。
模擬戦はあっという間に終わったので、その技量的な意味ではそこまで詳しくは分からない。
だが、性格という点では間違いなくバニング小隊の中で一番いいのは間違いない。
モンシアとベイトと比べての話だが。
それこそ、まさに苦労性という表現が相応しいだろう。
いっそホワイトベース隊に引き抜くか? と思わないでもなかったが、バニング小隊としてしっかり機能している状況でそんな真似をする訳にもいかない。
無理をすればどうにか出来るかもしれないが、そうなったらそうなったで問題になりそうだし。
そもそもの話、現在のホワイトベースにはMS15機があり、これ以上搭載するのは無理だというのも事実だ。
であれば、こちらとしてはアデルを引き抜いても意味はないどころか、連邦軍全体として見ればマイナスでしかない。
「取りあえず、何か食いに行くか? お前も色々と大変そうだろうし、奢るぞ」
ワルシャワ基地には大勢の連邦軍が集まってきているとあって、屋台の類もそれなりに出ている。
ワルシャワの住人にとっては、これだけ大量の連邦軍人が集まってくるのだから、商機として捉えている者も多いのだろう。
適当に料理を買うと、アデルの表情には申し訳なさそうな様子を見せながらも、食べる。
そのまま十分程アデルと話し、MSの操縦についてある程度の話をした後で、俺はアデルと別行動を取る。
アデルはまだMSの操縦について色々と聞きたそうにしていたが、俺のMS操縦というのは基本的に混沌精霊としての身体能力を有効的に使う操縦方法だ。
であれば、一般的なMSの操縦の仕方を教えるというのは、難しい。
また、ピクシーとジムの違いというのも、この場合は大きいだろう。
そんな訳で、その場から離れると次の場所に向かう。
「こうして見ると、結構頑張ってるよな」
MSの模擬戦だけではなく、それ以外の軍人達もオデッサ作戦に備えて訓練を繰り返している。
特に61式戦車は、現状においても連邦軍の中でも主力と言ってもいい。
MSを使い始めた連邦軍だが、それでもまだまだ全ての部隊に行き渡る程の数は揃っておらず、どうしても数の多い61式戦車が主力となってしまう。
とはいえ、連邦軍とジオン軍ではMSの運用方法は違うらしい。
ジオン軍は、基本的にMSで全てを行うようにしており、それに対して連邦軍はMSはあくまでもそのような兵種の1種として使う……といった具合に。
この辺り、どちらが正しいという訳ではないし、シャドウミラー的にはどちらかと言えばジオン軍的な運用の仕方だったりする。
実際にシャドウミラーで戦闘機や戦車が使われているかと言われれば、その答えはほぼ使われていないのだから。
……敢えて戦闘機的な使い方をしているとすれば、それこそメギロートやバッタとかか?
ただ、メギロートやバッタを戦闘機と言い切るのは、若干厳しいが。
シャドウミラーに、戦闘機や戦車の類が存在してない訳ではない。
ソルプレッサやF-32シュヴェールト改、フュルギアといった戦闘機や戦車はあるし、量産は殆どされていないが、様々な世界から入手した戦闘機や戦車の類も存在している。
……あ、でもSEED世界のリニア・ガンタンクは何気に結構な量があったりするな。
マブラヴ世界に輸出した際の残りとか、そんな感じで。
ともあれ、そんな訳で連邦軍とジオン軍のMSの運用方法が違うというのは、実は結構俺にとっても興味深い。
ルナ・ジオン軍がMSをどのように運用していくのかというのも、この辺の成功や失敗によって大きく変わってくると思うし。
とはいえ、ルナ・ジオン軍の基本はあくまでもジオン軍だ。
そうなると、やはりジオン軍のやり方が一番やりやすいだろう。
ジオン軍と違うと言えば……MAの運用方法か?
MIP社から以前聞いた話によると、ジオン軍でMAはあまり好まれていないらしい。
まぁ、その気持ちは分からないでもない。
MSは規格化されているので、違うMSでもある程度部品を流用したり出来るところもある。
ザクとグフとかは、まさにそんな感じだろうし、それ以外も同じだろう。
だが、MAは基本的にその機体によって大きく外見とかが変わってくるので、流用出来る部品は多くない。
また、量産化する事によってある程度コストを下げる事に成功したMSに対し、MAは圧倒的にコストが高くなってしまう。
ただでさえ、ルナ・ジオンの存在によって多くの人材やら何やらを引き抜かれ、グラナダも一応キシリアに貸しはしているものの、相応の料金は貰っている。
その辺の事情を考えれば、間違いなくこの世界の原作よりはジオン軍は困窮している筈だ。
……原作知識がないので、間違いなくと断言しているが本当にそうなのかどうか分からないのは痛いところだが。
だが、俺という存在がこの世界の原作にはいなかった以上、ルナ・ジオンの存在がある現在は、ジオン公国が困窮しているというのは間違いではない……と、思う。
とはいえ、資源に関してはルナ・ジオンが連邦軍に売るのに比べて割高ではあるがジオン軍に売っているので、資源という一点においては原作よりも優遇されてるのだろうが。
総合的に見れば、原作のジオン公国とこの世界のジオン公国は大差ない……のか?
ともあれ、そんな訳でコストの高いMAはジオン軍としては多数製造する訳にはいかない。
だが、ルナ・ジオン軍は違う。
資金的な問題は全くなく、高コストのMSをかなり量産する事も可能だ。
それこそ、アムロの乗っているガンダムをそのままのスペックで量産する事すら可能だろう。……それだけの技術があれば、の話だが。
あ、でもプロトタイプガンダムがあるから、それを調査して……いや、出来ないか。
正確にはやろうと思えば出来るのだが、もし本当にそれを実行しようものなら、ルナ・ジオン軍はシャドウミラーに対してもの凄い借りを作る事になってしまう。
そうである以上、ルナ・ジオンとしてはそんな事を望んだりはしないだろう。
それでもヅダの関節部分にルナ・チタニウムを使えるだけの余裕がある以上、MAを一定数用意する事は難しくはない。
そんな風に考えつつ、俺は基地の中を見て回る。
にしても、61式戦車か。
何気に結構優秀な性能を持っているだけに、技術班の土産として持って帰りたい。
連邦軍から購入しようとすれば、出来るか?
ゴップやレビル辺りに、おまけとして付けてくれるように頼んでみるか。
それと、ソルプレッサと似ているコアファイターも、出来れば欲しい。
ただ、コアファイターは教育型コンピュータがあるから、かなり高価なんだよな。
それを考えると、おまけとして欲しいと言っても、すぐにくれるとは思えない。
コアファイターを貰ったから、それで元々俺が貰う予定だった報酬のMSはなしと言われたりしたら、それこそ最悪だし。
そんな風に考え、コアファイターは後で買い取るという形にしようと考え、基地の中を歩く。
途中で何人かの軍人とすれ違うが、その中の何人かは俺のような子供が何故こんな場所に? といった様子で視線を向けてくる。
20代のアクセル・アルマーとしては知られていても、10代の俺の姿はまだ知られていないという事なのだろう。
寧ろ、ワルシャワから屋台を出しに来ている子供と勘違いされてもおかしくはない。
だからといって、妙に絡んでくるような奴がいなかったのは、俺にとっても……そして連邦軍の軍人にとっても、幸運な事だったのは間違いない。
「おい、聞いたか? オデッサからジオン軍のMSが何部隊か出撃してきて、ワルシャワに来ようとしている部隊を各個撃破しているらしい。……かなり強力なMS部隊だぞ」
歩いていると、少し離れた場所にいる軍人達がそんな話をしているのが耳に入るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:640
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1512