ハワイ。
そこは、現在の地球上で唯一絶対に安全だと言える場所だ。
もっとも、本当に安全な場所という意味では、ジャブローなんかもそうなのだが。
厚い岩盤によって守られているジャブローは、この世界の核兵器を使われても防ぐ事が出来るらしい。
……厚い岩盤が防御の要となると、フレイヤを使ったら一発なような気がするが。
フレイヤの場合は爆発というが、その空間そのものを消滅させるといったような効果を持つ。
厚い岩盤があろうがなんだろうが、フレイヤを使えばその岩盤はあっさりと消滅してしまう。
そして消滅した後は、二次被害として消失した場所に急速に空気が流入する事になり、その被害を拡大させる。
そうだな、取りあえずフレイヤの事はこのUC世界の人間については秘密にしておいた方がいいか。
「ボ……アクセル? どうしたんだい?」
ハワイに転移してきた俺達を見て、アリーヌが不思議そうな顔で尋ねてくる。
ボスと言いそうになっているのは、そのうち慣れて貰うしかないか。
そんなアリーヌに、俺は少し迷ってから誤魔化すように口を開く。
「いや、アリーヌ達をオデッサ作戦から連れてきたのはいいけど、陸戦強襲型ガンタンクのデータを入手する事が出来なかったと思ってな」
「……あたしが言うのも何だけど、陸戦強襲型ガンタンクは連邦軍の上層部からも見捨てられた機体だよ? オデッサではかなり活躍したのは間違いないけど」
そう告げるアリーヌは、少しだけ残念そうな表情を浮かべている。
やはり自分で開発した機体だけに、色々と思うところがあるのだろう。
「それでもだ。この先、すぐにお蔵入りする事になるかもしれないが、それがいつまた役に立つかは分からない。そういう意味では、それなりに役に立つ可能性はある。陸戦強襲型ガンタンクがディアナで開発している機体の役に立つという可能性は決して否定出来ないしな。まぁ、陸戦強襲型ガンタンクの件についてはレビルから報酬でデータを……そして可能なら実機を貰う事にするよ」
俺の言葉に、アリーヌは嬉しそうな笑みを浮かべる、
陸戦強襲型ガンタンクが1世代だけで終わるのではなく、もしかしたらその血脈を残す事が出来るかもしれないと聞き、嬉しかったのだろう。
もっとも、それはあくまでも可能性であって確約出来る事ではないのだが。
それに陸戦強襲型ガンタンクの系統が続くとしても、具体的にどのような形になるのかというのは、俺にもしっかりと理解は出来ないし。
「今からハワイの政庁に向かうぞ。HLVの席を用意して貰う必要があるしな」
連邦軍からの脱走兵、何よりクライドの事を考えると、迂闊にHLVのチケットを買ったりは出来ない。
HLVのチケットを買う場合は当然のように身分証の類が必要となるが、それを持っていないからだ。
いや、持っていても使うような真似は出来ないか。
今の状況で身分証を使って、調べられるような事になれば問題になるし。
まぁ、現在オデッサ作戦進行中という事を考えると、その辺は今のところ気にしなくてもいいのかもしれないが。
そうして、俺達は政庁に向かう。
とはいえ、軍服を着た者が……それも連邦軍とジオン軍の軍服を着た者が混在しており、しかも見るからに戦場帰りといった様子で政庁に入っていけばどうしても目立つので、アリーヌ達には少し離れた場所にある喫茶店で待っていて貰う事になったが。
ちなみに喫茶店でも当然のように連邦軍とジオン軍の軍服は目立つので、取りあえず軍服は脱いで適当な服を買った。
それなら普通に俺と一緒に政庁に行ってもいいのでは? と思ったが、俺1人と多数で纏まってとなれば、どうしても後者の方が目立つ。
そんな訳で、取りあえず適当に飲み食いするだけの金は渡して、政庁に向かう。
ゲラートに会うと言っても、別に正面から堂々とアポを取って面会を希望する訳ではない。
俺には影のゲートがあり、それがあれば誰かに会う事もなくゲラートに会いに行けるのだから。
そうして政庁にあるゲラートの執務室に影のゲートで移動すると、そこでは書類を処理しているゲラートの姿があった。
前線に出る事がなくなったとはいえ、それでもゲラートが俺に気が付くのは素早い。
書類にサインをすると、こちらに顔を向けてくる。
「アクセルか。今はオデッサ作戦が行われているんじゃないのか?」
「ああ。ただ、ちょっとやるべき事があってな。月に向かうHLVのチケットを4枚用意して欲しい」
「……どういう事だ?」
さすがに今の言葉は聞き流せなかったのか、ゲラートは俺にそう尋ねてくる。
ゲラートの立場なら、HLVのチケットを4枚用意するのは難しくはない。
だがそれでも、すぐにはいそうですと了承する訳にはいかないのだろう。
別にゲラートに隠す必要がある訳でもないので、俺はアリーヌとクライドについての事情を話す。
その内容に何か言いたげな様子を見せたゲラートだったが、結局何も言わずに最後までこちらの話を聞いていた。
「なるほど。事情は分かった。優れた技術者がディアナに入社してくれるのであれば、こちらとしても文句はない。チケットはすぐに用意しよう」
「助かる。アリーヌとクライドは、連邦軍の上層部に知られると、色々と不味い事になるからな。出来るだけ早く月に行きたいらしい」
「ハワイも安心だと思うが?」
「それは否定しないが、本人達がそう望んだしな」
実際、ハワイは月面都市と同様にコバッタと量産型Wが配備されている。
ジオン軍に占領された時からレジスタンスをしていた連邦派の人間だったり、ルナ・ジオンがジオン軍からハワイを奪った――正確には譲渡されたのだが――のが許せないジオン軍派とか、もしくは、そのどちらでもない独立派とでも言うべき者達とか。
そのような者達がテロを起こそうとするのを止めたり、また連邦軍やジオン軍からやって来たスパイを捕まえたり、それらに重要機密を売り渡そうとする者を捕らえたり。
他にも純粋に犯罪を抑止し、罪人を捕まえたり等々。
ちょっと変わったところでは、迷子になった子供を案内するといった事もする。
言ってみれば、警察的な役割を果たしている訳だ。
……一応ハワイにも警察の類はあるのだが、ルナ・ジオンがハワイを占拠してから、その仕事はかなり少なくなったと聞く。
そんなコバッタや量産型Wがいるハワイは、言ってみれば地球上で一番安全な場所と言ってもいい。
それが知られて戦火を逃れて大勢がやって来て、人口過密状態にあるのも間違いないのだが。
「ふむ。まぁ、ハワイも安全だが、月の方がより安全なのは間違いないしな。それに、ディアナで働けばそれだけ給料も貰えるし」
「人が暮らしていく上で、金は必要だしな」
UC世界において月は、商売の中心であると言ってもいい場所だったが、ルナ・ジオンが月を占領した為に、若干の影響が出ている。
何しろ、現在の月は機動要塞が幾つも存在して見張っている。
怪しい相手がいれば、即座にそこからバッタやメギロート、量産型Wといった戦力がやって来るのだ。
当然のように、後ろ暗い商売は出来なくなった。
まぁ、代わりにジオンや連邦に資源を売ったりといった真似はしてるのだが。
月に北海道以上の大きさを持つクレイドルという首都が出来た事も、その辺りには影響してるだろう。
結果として、月が内部ではなく外部との貿易をする事になったのは、相対的に見て以前よりも若干のプラスといったところか。
やはり戦火を逃れたい者や、異世界という存在に興味を持った者が大勢移住してきたというのが、大きい。
人が増えれば当然のように衣食住、それ以外にも様々な物が必要となり、経済活動は活発となる。
そういう意味で、月は現在かなりの好景気に沸いていた。
月面都市からクレイドルまで商品を持ってきて、それをクレイドルで売って、その金でクレイドルの商品を仕入れて戻る。
勿論全てがそこまで単純ではないが、大雑把に見ればこのようなやり方で儲けている者が大勢いたのだ。
完全自給自足……とまでは、まだいかないが。
ただ、クレイドルの大きさと月面都市の数を考えれば、将来的には本当に完全な自給自足が実現出来る可能性もあった。
ともあれ、今の月ならアリーヌ達が紛れ込んでも、そこまで不自然ではない。
「じゃあまぁ、そういう訳で。クレイドルの方にも連絡をしておいてくれ」
「ああ。……って、ちょっと待った。アプサラスⅢの方はどうするんだ? オデッサ作戦で使うという話をギニアスから聞いてるが、まだ出番はないのか?」
「あー……そっちはまだだな」
オデッサ作戦においては、現在はまだオデッサという戦場の様々な場所で連邦軍とジオン軍の部隊がぶつかっているような状況だ。
アプサラスの出番となるのは、この流れで考えると最終局面……ジオン軍が追い詰められて、一大決戦を挑んでくる時か、もしくはオデッサという中でもジオン軍の本拠地とも言えるオデッサ基地を攻略する時のどちらかになるだろう。
個人的には、アプサラスⅢの活躍を早く見たいという思いもない訳ではないのだが。
「なるほど。……それと、ギニアスを始めとして、研究所の面々が待ちくたびれていたぞ」
「だろうな」
基本的にギニアスのいる研究所はシャドウミラーの管轄と言ってもいいのだが、それでもハワイに……ルナ・ジオンの領土にある以上、当然ながらゲラートも好きにその様子を見る事が出来る。
そもそも、研究そのものは俺がバックアップしているが、ギニアスを始めとして研究所の面々は大半がルナ・ジオンの人間だ。
少数、MIP社から派遣されてきている技術者とかもいるのだが。
そんな風に考えつつ、俺はゲラートと会話を少しして、HLVの予定を聞いてから執務室から立ち去る。
扉を開いて部屋を出たのではなく、影のゲートを使ってだが。
そうして政庁から外に出て、建物の陰に姿を現す。
周囲に誰もいないのを確認してから、アリーヌ達が待っている喫茶店に向かう。
そうしてやって来た喫茶店の中は、何だか微妙な雰囲気になっている。
まぁ、その気持ちも分からないではない。
アリーヌやクライドはともかく、アリーヌの部下2人は明確な犯罪者だ。
着替えたにも関わらず、どうしてもその雰囲気が周囲に違和感を生むのだろう。
だからこそ、俺がその4人のいる席に向かって近づいていくと、他の客達から驚きの視線を向けられる。
とはいえ、俺にとってはそんなのは全く気にするような事ではないので、そのままアリーヌ達が座っているテーブルに近づいていく。
「待たせたか?」
「いや、そうでもないよ。……けど、随分と早かったな」
クライドが俺の姿を見て、若干驚いたように告げる。
普通に考えて、ハワイを治めているゲラートに会おうと思ってもすぐに会えるという事はないだろうし、HLVのチケットだって欲しいと言ってすぐに用意出来る訳でもない。
そう考えれば、クライドの心配はおかしくないのだが……この場合、俺が色々な意味で規格外だったという事か。
政庁の人間も、まさか影のゲートなんて魔法で移動するなどとは思ってもいないだろうし。
「ああ、準備は出来た。HLV発射場の方にはもう連絡が行ってる筈だから、そろそろ行くぞ。……クレイドルの方には、ゲラート……ハワイを任されてる奴から連絡が行ってる筈だから、後はHLVに乗れば問題はなくなる」
その言葉に、クライドを含め4人全員が安堵した様子を見せる。
実際に大丈夫だと言われてはいても、やはり確約を得られるまでは、本当に喜ぶような事は出来なかったのだろう。
嬉しそうな表情を浮かべる4人を連れて、HLVの打ち上げ場に向かう。
途中で何かの買い物をしているらしい、観光客か何かの集団と遭遇したりもしたが、それ以降は特に何の問題もなく進む事が出来た。
ただ、やっぱりというか、ハワイにいる者の数はかなり多い。
そろそろハワイも許容限界を超えるのではないかと、そう思えるくらいの人数だ。
……やっぱり、地球に住んでいた者としては、宇宙に行くよりもハワイにいたいんだろうな。
その気持ちは分かるが、人口過密度がもの凄い事になってるような気がする。
ともあれ、そんな事を考えながら進み、HLVの打ち上げ場に到着した。
宇宙港のお偉いさんと会って、ゲラートから話が通っている事を確認する。
幸い、次のHLVの打ち上げは2時間後という事で、今日のうちに地球は脱出出来るらしい。
「ありがとう、アクセル。アクセルがいなければ、恐らく僕はアリーヌと殺し合っていた筈だ。……あの、妙な存在もいたしね」
クライドから心の底から感謝の言葉を口にされる。
クライドだけではなく、アリーヌやその部下2人もこちらに感謝の視線を向けてきた。
……アリーヌは恋人を殺さなくてもすんだから、感謝するのは分かる。
だが、その部下2人は……まぁ、あのまま連邦軍にいても、刑務所に戻されていた可能性が高い。
そう考えれば、月で自由に出来るというのはありがたいのだろう。
「感謝するのなら、その分ディアナで頑張って働いてくれ」
そう言い、俺はクライドやアリーヌ達との別れを済ませ、影の転移でオデッサに戻るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:735
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1531