転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2479話

 俺がミナトと食堂での逢瀬を楽しんでいる間も、オデッサ作戦は当然のようにまだ続いていた。

 いたのだが……

 

「アクセル!」

 

 と、食堂に突っ込むという表現が相応しい様子で入ってきたヤザンが、俺の前までやって来る。

 ヤザンの様子を見ると、とてもではないが普通の様子ではない。

 

「どうした? 何かあったのか?」

「何かあったのか、じゃねえだろ! お前、お前、お前……」

 

 何かを言いたいのだが、それを口にする事は出来なくなった様子のヤザン。

 取りあえずヤザンを落ち着かせるべく、水の入ったコップを渡す。

 ヤザンはそれを受け取ると、一息で飲んだ。

 よっぽど喉が乾いていたのか、それとも単純にそうしなければ落ち着けないと思ったのか。

 その辺の理由は俺にも分からなかったが、それでも水を飲んだヤザンは、少しだけ落ち着いたように見えた。

 ヤザンの様子を確認してから、俺は改めてヤザンに尋ねる。

 

「それで? そんなに急いでどうしたんだ? ……まぁ、何となく理由は分かるが」

 

 戦いを好むヤザンにとって、ニーズヘッグという存在は決して見逃す事は出来ないだろう。

 そして事実、ヤザンは水の入っていないコップをテーブルの上に置くと、真剣な表情で俺に視線を向けて尋ねてくる。

 

「月で出たシャドウミラーの機体が出た。それを使ったのはアクセルだって聞いたが、本当か?」

「本当だ」

 

 予想通りの質問に、短く返す。

 これについては、ホワイトベースに乗ってる面々の前で空間倉庫から取り出して乗り込んだり、ダブデ5隻を撃破した後で空間倉庫に収納したりしたので、ヤザンがその気になれば、誰かに聞くだけですぐに判明する筈だ。

 それに俺も、オデッサ作戦が終わればジャブローでホワイトベースから降りるのだから、ここで無理に隠す必要はないと判断した。

 今回の一件で、月の……そして月の後ろ盾になっているシャドウミラーの実力を改めて見せつけるといった事は、見事に成功した形だ。

 グラナダの一件の映像データを見た者も多かっただろうが、直接その目でニーズヘッグを見るのとでは、やはり迫力が違う。

 あのニーズヘッグの姿と、瞬時にダブデ5隻を撃破したのを見れば、月に余計なちょっかいを掛ける奴はいなくなる……と、そう思いたい。

 まぁ、アプサラスⅢの一件もあって、少し見せつけすぎたか? という気持ちもない訳ではないが。

 

「何で俺がいる時に、その機体を出してくれなかったんだよ!」

「いや、何でと言ってもな。お前が任された戦場を素早く片付けてホワイトベースに戻って来てれば、ニーズヘッグを見る事も出来たんだろうに」

「ぐっ、そ、それは……ジオン軍に強い奴がいて、それでだな」

 

 手こずっていた、と。

 そういう事らしい。

 だからこそ、ヤザンは非常に悔しく思ってるのだろう。

 

「まぁ……そうだな。ホワイトベースと一緒に行動していれば、もしかしたら、本当にもしかしたらだけど、またニーズヘッグを見る機会はあるかもしれないな」

「本当か!?」

「いや、だからもしかしたらだよ。忘れてるようだが、俺とミナト、綾子の3人はオデッサ作戦が終わったら仕事が終わったとして月に戻るんだ」

「じゃあ、見る事が出来ないじゃねえかよ」

「その辺は運次第だろうな。……もしくは、月に来るとか」

「月……月かぁ……」

 

 俺の言葉に、真剣に悩むヤザン。

 この様子を見ると、将来的にヤザンが月に来る可能性は十分にあるかもしれないな。

 俗に言う、フラグが立ったって奴だと思う。

 

「まぁ、それよりもだ。俺はもうオデッサ作戦では働かない方がいいと判断されたから食堂でゆっくりとしてるんだが、ヤザンはいいのか? というか、ダンケルとラムサスの2人はどうしたんだ?」

 

 食堂に突っ込んできたのはヤザンだけで、ヤザンの部下のダンケルとラムサスの2人はいない。

 この様子を見る限りでは、ダンケルとラムサスの2人は格納庫に置いてきたのだろう。

 

「あの2人は、格納庫でメカニック達に補給を頼んでるよ」

 

 あっさりとそう告げるヤザンだったが、それを言うならお前のジムは補給しなくてもいいのか? という疑問を抱く。

 いや、戦いに関しては何だかんだと真摯な態度を見せるヤザンだ。

 その辺りの事情を考えると、もう自分の機体についてはしっかりと相談してあるのだろう。

 

「そうか。取りあえず、このオデッサ作戦では連邦軍の勝利はもう決まった。後はまだ残っているジオン軍と戦ったり、基地の占領をしたり、逃げたジオン軍を追撃したりといった具合に、手柄の稼ぎ時だと思うんだが……ヤザンは出なくてもいいのか?」

「出るよ。ただ、ちょっとなぁ……もう逃げ腰の敵と戦っても、あまり面白くない」

 

 不満そうに言うヤザン。

 ヤザンの性格を考えれば、その気持ちは理解出来ないでもない。

 基本的に戦うのが好きなヤザンだが、それはあくまでもしっかりと自分と戦ってくれる相手との戦いを好むのであって、自分が一方的に攻撃するのを楽しむ訳ではない。

 だからこそ、今のオデッサ作戦は決して面白いとは思っていないのだろう。

 とはいえ、傭兵である俺と……ましてや、ブライトからこれ以上は戦わなくてもいいと言われている俺とは違い、ヤザンは列記として連邦軍の軍人だ。

 そうである以上、上からの命令には従う必要があるだろう。

 

「連邦軍の軍人である以上、その辺はしょうがないだろ。ともあれ、今は頑張って戦ってきたらどうだ? ニーズヘッグの事とか色々と聞きたい事はあるんだろうけど、今はそれどころじゃないだろうし」

「ぐっ、そ、それは……」

 

 渋々といった様子でヤザンは頷き、立ち上がる。

 ヤザンにとっては、出来ればここから戦いに行くよりも、俺から色々と話を聞きたいのだろうが……それは今の状況では無理だと、そう理解したのだろう。

 

「オデッサ作戦が終わったら、絶対に話を聞くからな! 絶対だぞ!」

 

 くどいくらいに念を押し、ヤザンは食堂から出ていく。

 

「アクセル、あまり若い子をからかっちゃ駄目よ?」

「別にからかっているつもりはないんだけどな」

 

 ミナトの言葉に、そう返す。

 実際にそれは冗談でも何でもなく、本当に俺はヤザンをからかっているつもりはない。

 

「この状況で俺達と話しているのをブライトに知られたら、それこそさっさと出撃しろって言われるだろうし」

 

 俺はオデッサ作戦の終盤となるこの戦いで、活躍しすぎたことにより、これ以上は戦わない方がいいと判断してここにいるが、ヤザンは違う。

 ダンケルとラムサスが補給をしているというのを聞いたように、またすぐに出撃をする予定なのだ。

 そんな中で小隊長が食堂にいることを知られたら、ブライトの大目玉を食らう事は確定だろう。

 そうならないようにと、そう思っての行動だった。

 ……それにしても、手柄を立てすぎないように戦闘に出ないようにするってのは、アプサラスⅢの時と同じだな。

 オデッサ作戦3日目となる今日の戦いでも、最初にジオン軍に大きなダメージを与えたアプサラスⅢは、これ以上戦果を挙げないようにと、一旦下げた。

 その途端にアッザムが出撃して、連邦軍も大きな被害を受け、MAにはMAという事で再びアプサラスⅢの出番となったのだが……うん、考えてみれば途中まではやっぱり同じ流れだな。

 とはいえ、今のこの状況でジオン軍に何らかの奥の手が残されているとは、到底思えない。

 実際に既にジオン軍は半ば壊滅状態になっているのだから。

 実際の戦力として考えた場合、実はまだジオン軍には相当の戦力が残っている。

 だが、それはあくまでも戦力としてであって、それを効果的に使えるかどうかというのは、また別の問題だ。

 何しろ、ジオン軍の移動指揮所とも言えるダブデが5隻纏めて消滅したのだ。

 今のジオン軍の指揮系統はズタボロだろう。

 だからこそ、現場の指揮官が独自に判断する必要があり、それによってオデッサにおけるジオン軍の行動は小隊単位、中隊単位、大隊単位といった感じで個別に行動を取っていた。

 降伏、逃亡、死守、反撃……それ以外にも様々な行動を取っているだけに、指揮系統がしっかりしている連邦軍とは大きく違うのだ。

 結果として、連邦軍はかなり……いや、圧倒的に有利な状況での戦いを進められている。

 

「ともあれ、今の俺は戦うなと言われてるから、こうして食堂でゆっくりとしているしかない訳だ」

 

 ブライトからの……いや、連邦軍上層部からの直々の要望である以上、俺が戦闘に出る事は出来ない。

 そもそも、俺は傭兵としてここにいるのだから。

 そうである以上、この状況で戦場に出るということをした場合、連邦軍に不満を抱かれる可能性が高かった。

 そうならない為には、やはりこうしてじっとしてるしかない。

 ミナトとのデートが出来るから、そこまで現状に不満がある訳じゃないんだが。

 

「それでも、オデッサ作戦も終盤になったというのに、こうして何もする事がないってのは、正直微妙だよな」

「あら、あんなに活躍したのに、まだ足りないの?」

「いや、そういう訳じゃないんだが……何というかこう、作戦の間にこうしてゆっくりしてるってのが、今までなかったからな。どうしても何だか妙な感じがするんだよ」

 

 何だかんだと、基本的に今まで俺は何らかの騒動やら作戦やらがあった場合、真っ先に敵に突っ込んでいくといったようなことをしていた。

 だからこそ、現在の俺は何というか微妙な気分になっている。

 本来なら、俺の立場としてはこういう風にしているのが普通なのだが。

 寧ろ、一国のトップが毎回最前線に……それも自国の戦いでもない、別の国の戦いに傭兵として雇われて参加しているという時点で、おかしいのだが。

 

「たまにはこういう時間もいいでしょ。それに、このオデッサ作戦は連邦軍にとっても大きな意味を持つんでしょう? その作戦を、アクセルに任せてどうにかしたとなると、色々と不味いわ」

「それは分かってるんだどな。……ああ、それと折角ならオデッサ基地に突入して、何か面白い物とかがあったら確保しておきたい気もする」

 

 オデッサ基地は、ジオン軍が地球で有している基地の中でも最大規模の基地の1つだ。

 当然のように、そこでは色々と研究が行われていた筈だ。

 それ以外にも、まだ宇宙に送っていない各種資源の類が存在しても、おかしな話ではない。

 そういう意味では、非常に美味しい場所なのは間違いないのだが……いっそ、影のゲートを使ってオデッサ基地に潜入するか?

 いや、けどオデッサ基地を占拠した連邦軍が色々と調べた結果、本来なら存在しなければならない諸々がなかったとすれば、俺が怪しまれそうな気がする。

 もっとも、一つや二つ程度であれば見つからない可能性もあるのだが。

 そんな風に思いつつ、俺はミナトと食堂でお茶の時間を楽しみ……やがて、その時がやって来た。

 

『うわああああああああああああああああああああああっ!』

 

 不意に聞こえてきた歓声。

 それも1人や2人ではなく、10人、20人、あるいはそれ以上の者達が揃って上げたような歓声。

 その歓声を聞けば、何か起きたのかというのは明らかだった。

 

「終わったな」

「そうね。どうやら水爆の件以外は特に何の問題もなく事態が進んだようね」

「……まぁ、普通ならジオン軍にとって奥の手たる水爆が、まさかダブデ諸共に破壊されるとは思っていなかったんだろうし」

 

 南極条約の破棄をしたと見なされても、おかしくはない行為だ。

 実際に連邦軍がその点を突いてジオン軍が南極条約を破棄したと言うのかどうかは、俺にも分からないし、その辺は俺がわざわざ考えるような事ではない。

 連邦軍にとって、最も望ましい形に持っていくだろう。

 ゴップ辺りは、その辺についてかなりやり手だろうし。

 

「結局オデッサ作戦の最後はこうしてお茶の時間で終わったか、……それはそれで、悪くないんだけどな」

「あら、そう言ってくれると嬉しいわね。これでもしつまらないとか、そんな事を言っていたら、それこそ私もかなり怒ったわよ?」

 

 冗談半分でそう告げてくるミナト。

 ……冗談半分という事は、もう半分は本気なのだろうが。

 

「ともあれ、オデッサ作戦が終わってしまった以上、俺達もいつまでもここにいる訳にはいかないだろ。どうする? ブリッジにでも行くか? もしくは格納庫とか」

 

 現状をしっかりと把握したいのであれば、ブリッジ。

 オデッサ作戦に参加していた機体が戻ってくるのを出迎えるのなら格納庫といったところだが……現状で必要なのは、やはり今がどのような感じになっているのかを、しっかりと把握する事だと判断して、俺はミナトと共にブリッジに向かう。

 ミナトも操舵を任せたミライと色々と話をしたいだろうし。

 何だかんだで、ミナトとミライって仲がいいんだよな。

 ミナトのようなタイプの女は、派手な美貌から同性に嫌われたりもするんだが……その辺を問題ないと判断するのは、ミライの包容力を示しているのだろう。

 ミライの場合……うん、ホワイトベースのお袋さんとか、おっかさんとか、そんな印象なんだよな。

 そんな風に思いながら、俺はブリッジに向かうのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:900
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1560

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