結局、アムロがエイガーと模擬戦をする事が出来るようになったのは、エイガーと話した翌日の事だった。
幸いにして、ウッディに頼んだところシミュレータを特別に用意してくれる事になり、ホワイトベースから少し離れた場所に設置して貰う。
本来ならホワイトベースの格納庫にシミュレータを用意して貰いたかったのだが、やはりホワイトベースの改修作業があるので、難しかったらしい。
……ちなみに、今回の改修作業ではそのシミュレータの方もバージョンアップするとか何とか。
ウッディにこの話を持っていった時に聞いた話によると、最初ホワイトベースにはあそこまで立派なシミュレータはなかったらしい。
だが、ルナ・ジオンの出現――正解にはシャドウミラーの方だろうが――によって、MSの重要さを認識し、ガンダムやガンキャノン、ガンタンクを搭載するホワイトベースには本格的なシミュレータを用意する事になったとか。
それでもホワイトベースとかはもう結構建造が進んでいたので、本格的とはいえ、あくまでもその当時はという枕詞がついてしまう。
短期間で当時よりも飛躍的に技術力が上がった今なら、本当の意味で本格的なシミュレータを用意出来るらしい。
「初めまして、だな。色々と手間を取らせてすまない」
「いえ、僕の方こそガンダムのパイロットに会えるとは思っていませんでしたから」
エイガーとアムロの自己紹介は、俺が思ったよりも随分と和やかに行われていた。
アムロにとっても、別のガンダムというのは興味深かったのだろう。
何しろ、今の状況でも陸戦型ガンダムにピクシー、ブルーデスティニー3号機といったように、ホワイトベースには多数のガンダムが搭載されている。
それだけに、自分のガンダム以外にガンダムがあっても特に驚くべき事ではないのだろう。
「ウッディに協力して貰って、このシミュレータには最新のデータが入っている。だから、思う存分模擬戦を行ってくれ」
当然の話だが、当初エイガーが使うつもりだった一般的なMSパイロットが使っているシミュレータには、ガンダムのデータはない。
データを追加すれば問題ないのだろうが、ガンダムは基本的に軍事機密の機体だ。
それだけに、もしそのような事をした場合、模擬戦が終わった後にはシミュレータからデータを削除するなり、他の誰かが触れないようにプロテクトを掛けておくなりといった事をする必要がある。
当然、そのような事になれば面倒なので、ウッディがこうして用意してくれたシミュレータは大助かりだった訳だ。
「助かった。ありがとう」
頭を下げてくるエイガーだったが、それをするのなら俺じゃなくてウッディの方だと思うんだがな。
まぁ、取りあえず貸しを1つ作ったと思えばいいか。
「気にするな。それより自己紹介も終わったみたいだし、早速模擬戦をやったらどうだ? 時間は有限なんだ。アムロもいつでも模擬戦の相手を出来るって訳じゃないだろうし」
「そうだな。……頼めるか?」
「ええ、構いませんよ」
そうして話は決まり、それぞれがシミュレータに乗り込む。
数分後、シミュレータから離れた場所にある映像モニタには、戦場が映し出される。
どうやら戦場は、見晴らしのいい草原になったらしい。
こういう戦場だと、ホバー移動出来て中距離攻撃が可能な低反動キャノンを持つマドロックの方が有利だろうな。
「お、アクセル。これが噂の最新型のシミュレータか?」
そう声を掛けてきたのは、ヤザン。
一応このシミュレータの件はヤザンにも知らせてあったので、来るかもしれないとは思っていたが……
「そっちの訓練はもう終わったのか?」
昨日食堂で聞いた話では、ヤザンはダンケルとラムサスと共に後輩……ジャブローでMS訓練をしていたパイロット達に訓練をつけてやると、そう言っていた筈だ。
なのに、ヤザンがここにいるという事は……
「サボったのか?」
「馬鹿言うなよ。そんな訳ねえだろ。ただ、ちょっと本気で戦ってきただけだ」
「あー……うん、なるほど。それはそれで向こうが可哀想だな」
ホワイトベースに配属された当初はともかく、今のヤザンはその才能と自分よりも操縦技術が高い者達に囲まれており、それを覆すべく訓練を重ねている。
また、ホワイトベースに合流してきてからも結構な数の実戦を積み重ねていた。
その結果として、今のヤザンはアムロやユウには及ばなくても、ホワイトベースの中で見ても上位に位置するだけの実力を持つ。
……ホワイトベースの中でも下位の実力者のダンケルとラムサスであっても、それはあくまでもホワイトベースだからであって、実際に連邦軍全体で見れば間違いなく上位だ。
そんなダンケルとラムサスと比べても技量が上のヤザンが本気で戦ったとすれば……模擬戦の相手となったMSパイロット達は、まさに虐殺と呼ぶに相応しい結果になってしまっただろう。
とはいえ、それが駄目だという訳ではない。
今の実力で自分達よりも圧倒的な強者と遭遇した場合、どう行動するのかというのは重要だ。
特にジオン軍には、そんなパイロットがまだ大勢いるのだから。
……ルナ・ジオン建国の際に結構な数のパイロットを引き抜いたし、ザビ家を嫌って月に亡命してくる者もいるのだが、それでも何だかんだとまだ結構な数の腕利きのパイロットがいるというのが、ジオン軍の層の厚さだよな。
その代わり腕利きが死ねば次に来るのは新兵だったりする層の薄さもあるが。
ともあれ、現在ジャブローでMSパイロットの訓練をしているという事は、ヤザン達程ではないにしろ、腕利きとして選抜された者達なのは間違いない。
つまり、これからの戦いでもジオン軍との激戦に投入される可能性が高いのだ。
そして激戦の場となれば、当然のようにジオン軍の中にも腕利きがいる。
そういう意味では、ヤザンに蹂躙されるといった経験をした事は決して無意味ではない。……心が折れなければ、だが。
腕利きとしてジャブローに呼ばれてMSの操縦訓練を受けているのに、その訓練が無意味になるような蹂躙を受けたのだ。
心が弱い者であれば、心を折られてもおかしくはない。
「お、アムロと戦っているパイロット、凄いな」
「だろう? ガンダムのパイロットを任されるだけはある」
アムロに押されつつはあるが、それでも戦えているマドロックの姿に、ヤザンが感心したように言う。
アムロとの模擬戦を何度も繰り返しただけに、その実力をこれ以上ない程知っているからこそ、エイガーの技量に感心してるのだろう。
映像モニタでは、マドロックが接近してこようとするガンダムに対して、両肩のキャノン砲やビームライフルを使って牽制している。
その攻撃が的確な為か、アムロもなかなか近づけない。
マドロックは中距離での戦闘を得意としている。
勿論、ビームサーベルを持っているので、近接戦闘も出来ない訳ではない。
だが……それでも、やはりその攻撃力を最大限に発揮するのは中距離なのだ。
それに対して、アムロのガンダムはビームライフルもあるので、中距離での戦闘も決して不得意ではない。
だが、わざわざ相手が得意な間合いで攻撃をするような真似をしなくても、相手が苦手な間合いで攻撃するのが有利になるので、何とか近付こうとしていた。
「そう言えば、俺は新しいMSを受領する事になった」
映像モニタを見ながら、ヤザンが呟く。
それを聞いても、俺は特に驚かない。
実際、ヤザン程の技量の持ち主のパイロットを、通常のジムに乗せておくのはかなり勿体ない使い方なのだから。
「へぇ、それで、どんなMSだ?」
「ジムライトアーマーだ」
そのMS名は聞いた事があった。
俺が7号機以外にオデッサ作戦諸々の報酬として貰う予定だったMSの1機。
貰った資料には、高機動型のMSで同じジム系MSではあるが、ジムがビームスプレーガンなのに対して、ジムライトアーマーはビームライフルを持っているし、ビームサーベルも持っている。
とはいえ、装甲を削って高機動型にしているので、防御力は脆い。
言ってみれば、改修前のミロンガ的な特徴を持つ機体か。
勿論、ミロンガ程に極端ではないにしろ。
この辺、高機動型に対してもジオン軍と連邦軍では大きく違うんだよな。
ジオン軍の方は、スラスターとかを追加して高機動型にするプラスの高機動型。
それに対して、連邦軍は装甲とかを削って高機動型にするマイナスの高機動型。
勿論、どっちが正しく、どっちが間違っているという訳ではない。
ジオン軍の高機動型は、スラスターとかを追加する形なので防御力は維持される。
ただし、それだけ重量が増すので、推進剤の消耗が激しく、戦闘継続時間が短くなってしまう。
それに対して連邦軍型の高機動型は、装甲を削って軽量になっているので推進剤の消耗も多くはなく、結果として戦闘継続時間が長くなる。
代わりに、装甲を削った分だけ防御力が弱くなっているので、パイロットの腕が未熟だと即座に撃墜されてもおかしくはない。
とはいえ……ぶっちゃけた話、ルナ・チタニウム製の装甲であってもビーム兵器の攻撃は防げない以上、敵の攻撃は回避をするのが基本になる。
今はまだビーム兵器と実弾兵器が半々くらいだが、将来的にはビーム兵器が主流になる以上、連邦軍製高機動型の方が理に適ってると思う。
「いい機体を貰ったな」
「やっぱり知ってたのか」
ヤザンがニヤリとした笑みを浮かべ、俺に視線を向けてくる。
その笑みは、獰猛な笑みと表現するのが正しいだろう。
「ああ。俺と綾子とミナトが傭兵として働いた報酬の中にあった。どういう特色を持つ機体なのかは、ヤザンも知ってるんだよな?」
「ああ。使いようによっては、あっさりと撃墜されるって事もな」
陸戦型ガンダムや陸戦型ジムのように、量産機でもルナ・チタニウム製の装甲を持つMSなら、ジムライトアーマーのように薄い装甲であっても相応の防御力を発揮出来るだろう。
だが、ジムライトアーマーはルナ・チタニウム製ではなく、普通のジムと同じチタン・セラミック複合材だ。
その上で装甲を軽量化している以上、ザクマシンガンを食らえば間違いなく撃破されてしまう。
だからこそ、敵の攻撃を回避出来るだけの技量が必要なのだ。
「まぁ、ヤザンの技量なら大丈夫だとは思うけどな。……ちなみに、ダンケルとラムサスは?」
「いや」
俺の疑問に首を横に振って答えるヤザン。
なるほど、ダンケルとラムサスの2人は新型MSの受領はなしか。
連邦軍にしても、そこまで大盤振る舞いはしないという事なのだろう。
もっとも、ダンケルとラムサスがジムライトアーマーを乗りこなせるかと言えば……どうだろうな。
勿論、ダンケルとラムサスの2人も操縦技術は高い。
だが、ジムライトアーマーはかなり高い操縦技術が必要になる筈だった。
それを思えば、ヤザンだけにジムライトアーマーを配備するというのは、悪い話ではない。
だが、その場合問題なのは、ヤザンとダンケル、ラムサスで小隊を組むのが難しくなるという事だろう。
通常のジムとジムライトアーマーでは、機体性能が違うのだ。
勿論、小隊を組もうと思えば組めるだろう。
だが、もしそのようなことをした場合、ジムライトアーマーとジムでは同時に行動するのが難しくなるし、敵と遭遇した場合の対処もジムライトアーマーとジムでは違ってくる。
「そうなると、厳しいな。特にジムライトアーマーは、使いこなせば強力なMSだが、少しミスをすればそれが命取りになる可能性が高い」
「分かってる。その辺は、ホワイトベースが次の戦場に行くまでにどうにかするさ。……お、それよりも戦場が動いたぞ」
ヤザンの言葉に映像モニタに視線を向けると、そこではアムロのガンダムがマドロックの攻撃を掻い潜って間合いを詰め、ビームサーベルを振るっていた。
マドロックは中距離用のMSであるが、ガンキャノンと違ってビームサーベルを持っている。
アムロの振るうビームサーベルを何とか防いではいるが……当然のように押されていた。
「ここまで間合いを詰めれば、アムロの勝ちだな」
マドロックはビームサーベルを持ってはいるが、両肩に低反動キャノンがある分、どうしてもガンダムと比べると、腕を動かす自由度が少ない。
これで戦っている相手がアムロではなくもっと技量の未熟な相手であれば、エイガーも低反動キャノンがあってもある程度自由に動けるのだろうが……今回ばかりは、相手が悪い。
いや、そもそもエイガーは強敵との戦いを求めてアムロと模擬戦をしているのだから、これは当然の事かもしれないが。
ともあれ、何とかアムロの攻撃を凌いでいたエイガーだったが、やがてマドロックがガンダムの動きについていけなくなり、次の瞬間にはガンダムが振るった横薙ぎのビームサーベルの一撃によって、コックピットを切断されるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:980
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1575