ソロモンが近付くに連れて、当然ながら周囲には他にも連邦軍の軍艦の姿を見ることが出来るようになる。
ブリッジから流されてきた映像を見ながら、そこにジオン軍の戦力がいないのを疑問に思う。
まさか、さっきの攻撃でソロモンの外に出ていた戦力が全て撃破された……などということはないだろう。
だとすれば、戦力を立て直すために一時的に後退したといったところか?
だが、そのような真似をすれば……それこそ、連邦軍に一気に押し込まれる事になるだろう。
実際、今はこうやって多くの連邦軍が……ルナ・ジオン軍もどこかにいるのだろうが、その戦力がソロモンに向かって進んでいるのだ。
そうである以上、ソロモンにとって戦力を立て直す為に一時的に撤退するというのは、色々と問題もあると思うのだが。
ただ、普通に考えた場合は、そうしなければならない程にジオン軍の被害が大きかったという事なのだろう。
実際のダメージもそうだが、やはりソロモンを直接焼かれたというのはジオン軍の兵士にとっては衝撃的であってもおかしくはない。
……あ、でもジオン軍はジオン軍で地球に向かってコロニー落としなんて真似をしてるんだし、それを考えればそこまでおかしな話でもないのか?
『アクセル代表、ソロモンから敵が出て来てました』
ブリッジの量産型Wからそんな通信が入る。
だよな。こっちが行動を起こすのを、いつまでも向こうが待ってる訳がないか。
敵にしてみれば、ソロモンは絶対に守り切らなければならない場所なのだから。
それを思えば、この短時間で戦力を立て直して出撃してきたのは当然の事なのだろう。
当然だが、そのように無理な事をすれば色々と問題も起きる。
だが、ソロモンとしては……いや、ドズルとしては、後々起きる問題よりも、今の状況で必要な戦力を用意する方が優先だったという事か。
「具体的にどちらの方面に向かっている? それとも、守りを固めているか? それはないと思うが……」
『いえ、守りを固めています』
「……何?」
それは、俺にとっては意外な言葉だった。
一応、守りを固めているかと聞きはしたものの、その可能性は恐ろしく低いと思っていたのだ。
ドズルは軍人として有能なのは間違いないが、タイプとしては猛将と呼ぶべき存在に分類される。
そんなドズルが、守りを選ぶ?
そう考え……ふと、気がつく。
「キルスティンに通信を繋げろ」
「は!」
俺の言葉に量産型Wが頷き、数秒後には映像モニタにキルスティンの姿が映し出されていた。
『アクセル殿、一体どうしたのです?』
「ソロモンが防衛を選んだという事は、敵の援軍が迫っている可能性がある。連邦軍の方で、何かその辺の情報を得ていないか?」
俺がキルスティンにこう聞いたのは、キルスティンが連邦軍の軍人だからというのもあるが、それ以上に本来ならサラブレッド隊は月にあるグラナダを警戒する……具体的には、チェンバロ作戦に援軍を送らないようするというのが当初の目的だったと聞いたからというのもある。
つまり、今この状況でソロモンに援軍を送ってくるとすれば、その可能性が一番高いのはキシリアの突撃機動軍となるのだ。
キシリアとドズルはMSの運用という意味で以前対立した事があったらしいが、ジオン軍が危険な今の状況でそんな昔の事を引きずるとは思えない。
もしここでドズルが死んでソロモンが陥落すれば、それはジオン軍にとって大きな……大きすぎるダメージとなるのだから。
だからこそ、キシリアもソロモンに援軍を送ってくる可能性がある。
また、ア・バオア・クーにいる戦力をソロモンの援軍にするという可能性も否定は出来ない。
ソロモンが抜かれれば、本当の意味で最終防衛ラインはア・バオア・クーになるのだが、それでも戦力をソロモンに送ったりといったことはしてもおかしくはなかった。
ジオン軍の最善としては、このソロモンで連邦軍を押し止めることなのだから。
だが……予想外な事に、キルスティンは首を横に振る。
『一応こちらも色々と情報を当たっていますが、援軍が来るといった様子はありません。正直なところ、一体何を思ってソロモンがこのような真似をしたのかは……』
分かりませんと、そう首を横に振るキルスティン。
この状況にも関わらず、ジオン軍は援軍を送っていない?
それは一体何がどうなってそのような事になる?
いや、勿論援軍が送られてこないというのは、ソロモンを攻略している俺達にしてみれば助かる。
助かるが……ジオン軍としては、ここで援軍を送る必要があるんじゃないのか?
そう考え、ふとザビ家は基本的に仲が悪いという事を思い出す。
これは俺がジオン軍にいた時から知っていた事でもあるし、ガルマから話を聞いて補足したというのもある。
だが……ソロモンを抜かれるかどうかといったところで、そんな真似をするのか? といった疑問もある。
さて、正直なところこの場合はどうしたらいいのか……迷うな。
いや、迷う必要もないか。
結局のところ、防衛戦を固めていたとしてもそれを突破する必要があるんだから。
「キルスティン、ソロモンを焼いたあの兵器……具体的にどんな兵器なのかは分からないが、それをまた使えるか?」
もしあの兵器を再度使えるのなら、それこそ防衛戦を敷いているジオン軍に大きな被害を与える事が出来る。
そう思いながらも、恐らくは無理だろうという予想は出来た。
何故なら、ソロモン側でもその辺の事情は当然知っており、それを知った上でこうして防衛戦を敷いているのだ。
先程の一撃が大きなダメージを与えたのを考えると、何の対策もなしに防衛戦を敷いたりはしないだろう。
『はい。本隊の方から連絡がありました。先程の兵器の名前は、ソーラシステム、反射ミラーを使い、太陽の光を一点に集中する事で相手に被害を与える兵器ですが……続けて使うのは難しいかと』
なるほど。
ようは、あれだ。虫眼鏡を使って太陽の光を集め、それによって黒い紙とかを燃やす実験。
それを大規模に……それこそ、ソロモンの表面を焼くのに十分なだけ集中して行ったといったところか。
その辺の理由は理解出来るが、その類の兵器なら再度攻撃をする事も可能なのでは?
「続けて使えない理由があるのか?」
『ジオン軍に察知され、コントロール艦を撃破されてしまいました。また、反射ミラーの方にも被害は多数……』
「つまり、続けて攻撃する事は不可能な訳か」
『そうなります』
ドズルもさすがに軍事の専門家と称されるだけの実力はあるな。
ソーラシステムについて前もって情報を得ていたのか、それとも連邦軍の動きからソーラシステムを展開している場所に何か奥の手があると思って部隊を派遣したのか。
その辺りの事情は俺にも分からなかったが、それでも厄介な戦力を最優先に排除出来た訳だ。
……もしかして、ドズルもニュータイプって事はないよな?
ザビ家……言わばこの世界におけるラスボス的な存在の中でも軍事を司っている存在だ。
それだけに、ニュータイプとしての能力に覚醒していてもおかしくはない……ような気がしないでもない。
とはいえ、今の状況を考えれば、ドズルがニュータイプであろうとなかろうとやる事は変わらない。
とにかく今はまず、ソロモンを落とす方が先なのだ。
ましてや、ソーラシステムによる攻撃がこれ以降はないとなれば、こちらのやるべき事は決まっていた。
「なら、攻めるぞ。いつまでもこのままって訳にはいかないだろう」
『……分かりました』
俺の言葉に、キルスティンも色々と思うところはあったのだろうが、素直に頷く。
こうして頷いたところから考えると、恐らくソロモンに対する攻撃をしろという命令は来ていたのか?
いや、今はそんなことを考えているような余裕はないか。
今はとにかく、ソロモンを守る敵を倒す方が最優先だ。
「まずは俺達が出る。サラブレッド隊とホワイトベース隊は、俺達に続け」
『いいのですか? そのような……一番槍と言えば聞こえはいいですが、ようは一番消耗する場所を任される事になりますが』
「そのくらいは構わない。こちらとしても、それだけ活躍出来るという事を意味してるんだからな。……ただ、いいか? お前達が遅ければ、追いついた時にはもう敵の姿はどこにもないって事になるかもしれないぞ?」
冗談っぽく告げるが、その言葉は本気の色も強い。
何しろ、今回のチェンバロ作戦に俺達が参加した理由の1つに、ルナ・ジオン軍の力を連邦軍に見せつけるというのがある。
勿論ジオン軍に対しても同様だが、ジオン軍の方は実際に俺達と戦えば嫌でもその実力は理解出来る筈だ。
連邦軍の方は、実際に俺達が戦っている光景を目にし……そしてジオン軍のMSを相手にどれだけの戦力を発揮出来るのかを見せつけるのが、一番手っ取り早い。
『ははは。そうなったらこっちも楽が出来ていいですね。ですが……こちらも連邦軍の精鋭としての誇りはあります。そう簡単に負けるような真似はしませんよ』
不敵な笑みを浮かべてそう告げるキルスティンに、俺も笑みを返してから通信を切る。
「ガトー」
「は!」
俺とキルスティンの通信を聞いていたガトーは、すぐに反応する。
そんなガトーの向こう側では、ノリスが自分の機体の調整についてディアナのメカニックと話している光景があった。
「すぐに出るぞ。この戦いでお前がどれだけ活躍するのかは分からないが、お前にとっては絶対に活躍しなければならない……名を上げなければならない戦いだろう? お前の実力を十分に発揮しろ」
「お任せ下さい! ルナ・ジオンの名を汚す事がないよう、戦ってみせましょう」
ガトーのやる気は十分だな。
正直なところを言わせて貰えば、これまでサラブレッド隊として行動した事で、十分アイナと結婚出来るだけの名声は得ていると思う。
だが、ガトー本人としては、まだ足りないと思っているのだろう。
だからこそ、ソロモンという多くの者が集まっている場所で、これ以上ない程の実力を見せつける事により、誰にも文句を言わせないだけの成果を挙げてみせようと言うのだろう。
普通なら気合いの入りすぎ、入れ込みすぎで視野が狭くなって、それが危機に陥ってしまうという可能性があるのだが……ガトーの場合は、その辺を心配しなくてもいいのはさすがだよな。
精鋭やエースと呼ばれるだけあり、その辺はかなり冷静だ。
それこそ、もしかしたらこの戦いにおいて異名持ちになる程の力を発揮するという可能性もあった。
「ノリス、そっちの準備はいいか!?」
「問題ありません。いつでも出撃出来ます」
機体の調子を確認していたノリスが、俺の言葉にそう返してくる。
ノリスもまた、サハリン家の名前を上げるべく戦いにおいてはその力を存分に発揮するだろう。
場合によっては、この戦いにおいて月には2人の異名持ちが生まれる可能性もある。
「よし、じゃあ俺達は出るぞ。俺達が出た後でサラブレッド隊とホワイトベース隊のMS隊が追ってくるだろうが、後から来る連中には獲物を逃してやるな。進路上にいるジオン軍のMSは、全て俺達で撃破するんだ」
『は!』
ガトーとノリスが揃って俺の言葉に敬礼を返す。
俺達がソロモンに向かえば、当然のようにルナ・ジオン軍から来ている援軍の方でもこちらの動きを察知出来る筈だ。
そうなれば……場合によっては、ルナ・ジオン軍の戦力だけでソロモンを攻略するといったような事が出来る可能性もある。
……連邦軍にしてみれば、そんな事になったらそれこそ面子を潰されたといった形になる以上、俺達が活躍すれば間違いなく予定を繰り上げてでもこっちに攻めてくるだろうが。
だが……そうしてやって来た時、一体どれくらいの戦力が残っているのか。
それは少し楽しみな気がしないでもない。
「ヤンマは今まで通り重力波砲を使わず、レールガンとミサイルだけで援護射撃をしろ。それと……連邦軍の中に妙な事を考えて接近してくる奴がいないとも限らない。そういう場合は、出来るだけ生け捕りにしろ。バッタとメギロートを使ってもいい。ただし、生け捕りする際に被害が出るようなら、殺しても構わない」
「了解しました」
近くを通りかかった量産型Wにそう伝えておく。
ヤンマは、このUC世界においては完全に未知の軍艦だ。
しかもこれまでの戦闘で実力を完全に発揮していないというのは、分かる者には分かるだろう。
そうである以上、ヤンマの持つ未知の技術を入手しようと考える者がいる可能性は十分にある。
サラブレッドやホワイトベースの面々なら、そんな真似をすれば自殺行為だと理解するだろう。
それこそ、俺を嫌っているカークですら、そんな真似をすれば洒落ではすまないと判断して、こっちにちょっかいを出すといったような真似はしない筈だ。
そうして用事を終わらせると、俺は重装フルアーマーガンダムのコックピットに乗り込み……
「アクセル・アルマー、重装フルアーマーガンダム、出るぞ!」
その言葉と共に、ソロモンに向かって出撃するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1130
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1605