転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0248話

 目の前に現れた偉そうな子供。……いや、違うな。少なくてもその中身は子供なんて可愛らしいものではない。だが……何だ? 俺の念動力は目の前に現れた子供を酷く危険な相手だと感じている。だが、こうして実際に自分の目で見る限りではそれ程の脅威は感じないのだ。何と言うか……そう、アンバランスとでも言うのだろうか。

 だが、どうする? 現在の俺の状況は能力吸収直後という事もあり、控えめに言っても最悪一歩手前だ。グロウセイヴァー……とまではいかなくても、せめてガーリオン辺りでも出せれば良かったのだが、使える機体は全てホワイトスターで空間倉庫から出してきたからその類の兵器は一切無い。あるとすればこれまで生きてきた中でマフィアやテロリストを襲撃して手に入れた銃器や技術班謹製の武器数種のみ。それでこの目の前にいる相手を仕留められるか?

 

「貴方……エヴァンジェリンさん!?」

 

 あやかの驚きの声が夜の公園へと響き渡る。

 

「こんばんは、那波千鶴さん、雪広あやかさん」

「茶々丸さんまで……」

 

 そんなあやかの様子を見ながら千鶴へと視線を向ける。

 

「知り合いか?」

「ええ、2人共クラスメイトでエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさんと絡繰茶々丸さんよ」

「……何? するとあの子供も中学生?」

 

 エヴァンジェリンと呼ばれた子供へと視線を向けるが、どう見積もっても小学生くらいにしか見えない。……いや、それでも俺の念動力はしきりに危険を訴えてはいるのだが。

 

「おいっ、貴様! この私を子供だと!?」

「あらあら、人の身体的特徴を口に出しては駄目よ?」

「はい。マスターはご自分の身体にコンプレックスを抱いていますので」

 

 千鶴と共に、茶々丸と呼ばれた少女……少女? あのあからさまに耳から生えてる機械部品を見るにサイボーグか何か、か? だが、2000年代の日本でサイボーグ技術が確立されているとはとても思えない。となると、やはりここは俺の知らない漫画なりアニメなりの世界なのだろう。

 

「ええいっ、お前はどっちの味方だ! このボケロボ!」

「私はもちろんマスターの従者です」

「……まぁ、いい。おい、そこのお前」

 

 夫婦漫才ならぬ主従漫才を一段落させ、エヴァンジェリンと呼ばれた子供が俺の方へと視線を向けてくる。

 

「貴様も魔法使いなら『闇の福音』『人形使い』『不死の魔法使い』『悪しき音信』『禍音の使徒』『童姿の闇の魔王』といった通り名は聞いた事があるだろう」

「いや、全部初耳だが」

 

 と言うか、この世界に転移してきたばかりの俺に自慢気に通り名をズラズラと並べられても知ってる訳がないだろうに。

 

「……何? あのサウザンドマスターよりも馬鹿でかい魔力を持っている魔法使いの癖に、私の事を知らないだと? 貴様、一体どこの田舎から出て来た?」

「魔力、だと?」

 

 魔力。その名で呼ぶからには当然魔法を使う為に必要なものだろう。ゲーム的に言えばMPとかINTとか知力とかそんな風な感じか。だが、俺が魔法の存在を知ったのはこの世界に来てからで、そもそもスライムによる吸収で魔法を入手してからまだ30分と経っていない。それなのに俺に魔力がある? いや、待て。魔力、魔力ね。脳裏に浮かんだのは俺の転生特典の1つでもある魔法の才能だ。転生先がスパロボだった関係もあってか、その手の才能はSPブーストというスキルと豊富なSPになっていた。もしかして、それか?

 チラリと目の前でこちらを睥睨するかのように見ているエヴァンジェリンのステータスを表示する。そこにはSP58とかなり低い数値が表示されていた。……この数値を見る限りでは、俺の推測は間違っていたのか?

 ちなみにスキル覧に関しては『魔法(氷)』『魔法(闇)』『魔法(影)』『人形使い』『闇の魔法』と豊富に並んでいる。魔法(闇)と闇の魔法の違いがいまいち分からないが。……確かにこれ程のスキル数を持っている人間を見るのは初めてだし、この偉そうな態度も実力に裏打ちされているのだろう。だが、SPを始めとした全ステータスが低すぎる。いや、技量に関して言えば259と俺とそう殆ど変わらないレベルの数値を示しているが、逆に言えば突出しているのはスキルの量と技量の数値のみだ。

 

「何だ、本当にお前は私の事を知らないというのか?」

 

 拍子抜けしたようなエヴァンジェリンの声に黙って小さく頷く。

 

「……まぁ、いい。どのみちこの麻帆良に不法侵入してきた魔法使いは捕らえてじじぃに引き渡す事になってるんでな。悪いがこの私がいるのを知らないで侵入してきた己の浅はかさを悔いるといい。……茶々丸、手出しをするなよ。魔法使いの癖にこの私の存在を知らない等という世間知らずにはきちんと教育としてやらないといけないからな」

「了解しました、マスター」

 

 結局やりあう羽目になる、か。現在のコンディションでどこまでやれる? こうなったら能力を隠すのどうのと言っていられないな。

 

「ちょっとエヴァンジェリンさん!? アクセル君に何をするつもりですの!」

 

 だが、そんな俺を庇うかのようにエヴァンジェリンの前に立ち塞がったのはあやかだ。

 

「そうね。さすがにこんな子供に酷い事をするのは見過ごせないわ」

 

 そしてあやかの隣には千鶴の姿も。

 

「……馬鹿が。そいつが見た目通りの存在だと思っているのか? 茶々丸、この2人を押さえておけ」

「了解しました」

 

 茶々丸と呼ばれたサイボーグと思しき存在はスラスターを噴射させて素早くあやかと千鶴の後ろへと回り込み……

 

「甘いですわよ! 雪広あやか流合気柔術、雪中花!」

 

 背後から伸ばされた茶々丸の手へと触れようとして、その手を茶々丸へと逆に掴まれる。

 

「すいませんが私には古今東西の格闘技に関するデータが入力されていますので」

「きゃっ!」

 

 悲鳴を上げた千鶴諸共その場へと押さえつけられる。

 

「ふんっ、これでいいだろう。……さて、始めようか」

 

 エヴァンジェリンはチラリと茶々丸達へと視線を向けてから、俺へと近付いてくる。

 

「あの2人をどうするつもりだ?」

「なに、気にするな。この戦いが終わった後に忘却魔法でここ数時間の記憶を消すだけだ。明日にはいつも通りの生活が送れるだろうさ」

「そんなのは許しませんわよ!」

「黙って見ていろ。お前達がこちらの世界に足を踏み入れる必要も能力も無いのだからな」

 

 皮肉気に笑うエヴァンジェリンには嘘を言っている様子は無い。その辺は信じても構わないか? ……どのみち、俺がこいつに勝てさえすれば問題は無いか。

 

「いいのか? お前、実は本気を出せないんだろう?」

 

 念動力で感じる危機感と、目の前に実在しているエヴァンジェリンから感じる脅威度。その落差を考えると、恐らく何らかの理由でステータスが低下しているのだろう。

 だがそれを言うのなら俺自身もそう大して変わらない。スキルを1度に3つも吸収した直後という事もあり、体調的には最悪一歩手前でおまけに縮んだ身体にもまだ慣れていないのだから。

 

「ふん、分かるか。だが、それを言うのならお前も随分と辛そうに見えるぞ?」

 

 こちらを見透かすかのように視線で射貫いてくるエヴァンジェリン。

 そしてお互いの距離が徐々に縮まり……

 

「加速、集中!」

 

 精神コマンドの加速の効果で速度を上げ、同時に集中の効果により集中力を上げる。その状態のままエヴァンジェリンの背後へと回り込んでその首筋へと手刀を……

 

「ほう、速いな。だが、瞬動術ではない。魔法による身体強化か? だが、そんな様子も感じられない。つくづく興味深い奴だな」

 

 叩き込もうとした次の瞬間には咄嗟の判断で手を引いていた。夜の月明かりにチラリと反射した存在を感知したからだ。

 

「なるほど、私の糸にも気が付くか」

「糸? 成る程、人形使いのスキルか」

 

 口の中で小さく呟いたその内容が聞こえたのか、笑みを浮かべるエヴァンジェリン。

 

「私の事を知らなくても、人形使いのスキルは知っている。……ますます興味深い。だがいいのか? そのままそこにいても」

 

 ……何? 周囲の様子を確認する。何も……いや、糸!?

 

「これもまた、人形使いのスキルだよ」

 

 いつの間にか俺の周囲へと張り巡らされていた幾重もの糸。もちろんエヴァンジェリンのような奴が使っている以上はただの糸ではあるまい。俗に言う鋼糸とかそっち系だろう。グロウセイヴァーで俺が使っているグレイプニルの糸にSPを消費する事で切断力を与えたアレに近い。

 

「さて、どうする? このまま何も出来ないのであれば、そろそろじじぃの所へと連れて行かせて貰うが」

 

 エヴァンジェリンの言うじじぃというのが誰かは想像するしかないが、捕縛した俺を連れて行くとなると恐らく上司か何かだろう。この世界の事を知るにはそれもいいかもしれないと一瞬考えたが、そこに行けばまず間違い無く千鶴とあやかは何らかの処置――恐らくは記憶操作――を受ける羽目になるのだろう。さすがに恩人である2人にみすみすそんな真似をさせる訳にはいかない。

 

「しょうがない。……千鶴、あやか。先程と同じく目を」

「え? ええ」

「分かりましたわ」

 

 俺の台詞に頷き、目を瞑る2人。それを確認してから糸に触れないように指をパチンと鳴らす。

 

「何だ?」

 

 その様子を愉快そうに見ているエヴァンジェリンだったが、唐突に俺の隣へと開いた空間倉庫を見ると眉を顰める。

 

「影の倉庫、か? いや、違うな。これもまた初めて見る魔法だ」

「なら、これは見た事があるか? スライムっ!」

 

 空間倉庫から一瞬にして飛び出してきた銀色のスライムの触手が俺の周囲を踊り回るかの如く縦横無尽に暴れ回る。当然そこに存在する糸を切断・吸収しながら、だ。

 

「馬鹿なっ! 幾ら封印状態とは言っても私の魔力を纏わせた糸だぞ!? それをこうも容易く!」

「さて、今度はこちらの番だな。踊れ、スライム!」

「スライム!? 無詠唱の召喚魔法か? いや、しかし……くっ!?」

 

 スライムから放たれた水銀の鞭による一撃だったが、それを後方へと跳躍する事で何とか回避するエヴァンジェリン。なるほど、千鶴とあやかの知人という事で殺す訳にはいかないと手加減した一撃だったが、それでも回避するか。

 

『魔法の射手 氷の10矢!』

 

 懐から取り出したビーカーのような物をこちらへと投げつけ、同時に先程の男達のような呪文を唱えるエヴァンジェリン。するとビーカーが砕けるや否や、氷の矢が10本こちらへと飛んでくる。

 だが、スライムを出した今の俺にそんな攻撃が通用すると思ってもらっては困る!

 俺の意志に反応したスライムが防御形態へと姿を変え半ば壁状になって目の前に展開。氷の矢を受け止める。

 攻撃が終了し、スライムの壁が崩れるとその向こうにいたのはある種呆然とした様子のエヴァンジェリンだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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