バンダナをしたその男は、本人としては周囲に溶け込んでいるつもりなんだろうし、実際周囲にいる者達はそんな男の様子に違和感を抱いていないように見えるが……それでも戦場にいた事のある者なら、その男から戦場の臭いを嗅ぎ取れる筈だ。
勿論、戦場の臭いをしているからといって、即座にあのバンダナの男がジオン軍の軍人であると決めつける訳にもいかない。
だが……男の放つ雰囲気は、間違いなく現役の軍人のそれだ。
それもその辺の軍人ではなく、結構な死地を潜ってきた精鋭が持つ雰囲気。
何の手掛かりもない今の状況を考えれば、あの男を発見出来たのは千載一遇のチャンスだろう。
念の為に気配遮断のスキルを使い、バンダナの男を追う。
監視カメラの類があれば効果を持たない気配遮断のスキルだが、こうして尾行をするという意味では重宝する。
もし相手が周囲を警戒していて、その上で二重尾行といったような事をしていても、気配遮断を使っていれば気が付かれる事はない。
ちなみに二重尾行というのは、対象の後ろを別の仲間が尾行して、対象を尾行している奴がいないかどうかを確認する方法だ。
相応の技術や注意力は必要となるが、誰かを尾行している者を見つけるのはそう難しい話ではないので、尾行している者がいないかどうかを確認する意味では有用な行為だったりする。
難点といえば、人手を割く必要があるので少数だろうサイクロプス隊にしてみれば人手不足になりやすいといったところか。
実際にサイクロプス隊がどれくらいの人数がいるのかは、俺にも分からない。
もしかしたら現地協力者が多数いる可能性もあるし、MSを4機も運用していた事から考えるとメカニックとかもいる可能性は否定出来ない。
……もっとも、メカニックにこういう実戦的な事が出来るかどうかは、また別の問題だろうが。
ともあれ、俺は気配遮断のスキルを使って、バンダナの男のすぐ後ろを移動する。
そうして分かったのは……結構な数の機械部品を購入しているという事だ。
それこそ、持ち帰るのではなく配達を頼むかのように。
恐らくだが、これはMSの部品。
基本的に軍用のMSだが、部品によっては街中で売ってるような店の部品でも流用は出来る。
勿論正規品に比べれば、頑丈さや精密さという点で劣るだろうが。
それでも、サイクロプス隊にとっては現地調達出来る重要な部品という事なのだろう。
こんな真似をしておきながら、実はこのバンダナの男がサイクロプス隊と何の関係もなかったりしたら……いやまぁ、戦場の空気を漂わせている人物が今のリボーにいる時点で怪しいんだし。
そう判断して尾行を続けると、やがて用事が終わったのかバンダナの男……店での会話から、ガレスという名前だと判明したが……何となくだが、偽名なような気がする。
もしこのバンダナの男がサイクロプス隊の者なら、それこそここで自分の本名を正直に言うとは思えないし。
ともあれ、ガレスが乗っていたのはそれなりに大きなトラックだったので、荷台に潜り込む。
こういう時も、気配遮断って便利だよな。
ちなみに外見はかなり昔の……ガソリンとか軽油とかで走るようなトラックに見えるが、そう見えるのはあくまでも外見だけで、実際には電気自動車なんだよな。
考えてみれば当然だが、コロニーという密閉空間の中でガソリンや軽油を使ったトラックで走り回る……なんて真似をしたら、それは文字通りの意味で環境破壊……それも地球で行われている環境破壊より、何倍も激しい環境破壊という事になる。
そう考えると、ガイアと一緒に行ったクレイドルの焼き肉屋も空気を汚すという意味では相当なものだったりするのだが。
そんな事を考えていると、トラックは街中を出て人気の少ない工場地帯に向かう。
ちなみに工場地帯とは言っても、それは別にアレックスが開発されていた工場ではなく、もっと別の工場だ。
リボーというコロニーの中でも、別に工場地帯は1つだけという訳ではない。
連邦軍が使っている場所以外に、他に幾つもそういう場所は存在してる。
……ただし、見た感じ結構ボロい……いや、かなり年期の入った工場だな。
連邦軍が使っていた場所は、それなりに新しい場所だったんだが。
ともあれ、こうしてトラックがやって来たとなると、ここに来た時点でサイクロプス隊に接触するという目的は半ば果たしたも同然だった。
後の問題は……サイクロプス隊が、一体どういう考えを持っているかだな。
前回の戦いからその危険は少ないと思うが、もし……万が一にも、核ミサイルの攻撃を許容するような奴であったら、ここで全員纏めて殺してしまった方が後腐れがなくて手っ取り早い。
もしコロニーに核ミサイルを撃ち込むのを許容は出来ないと言うような相手なら……こちらとしても、手を組む事を考えてもいい。
また、ここでの戦いが終わったらジオン軍を抜けて月で匿っても構わない。
というか、月も腕の立つMSパイロットは可能な限り欲しいだろうし。
ジオン軍が不利になっている現状では、上手くいけば忠誠心が薄くて、技量が高かったり有能な軍人をもっと引き抜けるかもしれないな。
トラックが大きな工場の前で停止する。
……MSが4機いたんだし、それを思えば街中の小型の工場でという訳にはいかないよな。
そもそも、あの状況から周囲に見つからないようにして、一体どうやってこの工場までやって来たのかは、俺にも分からないが。
それでもかなりの苦労をしたというのは、間違いのない事だった。
そしてガレスが工場の中に声を掛けると、やがてその工場から3人の男達が姿を現す。
まだ若い金髪の男、太っている男、そして……恐らくこの男がサイクロプス隊を率いているのだろうと思われる、中年の男。
ガレスを入れて、これで4人。
何となく金髪の若い男は以前どこかで見たような覚えがあるが……まぁ、今はいいか。
もしかして、本当にこの4人だけでリボーに潜入していたのか?
普通に考えれば、MSのパイロットが4人だけで戦力を万全な状況に持っていくのはまず不可能だ。
MSというのは、そんなに簡単な代物ではないのだから。
とはいえ、これは俺にとって悪い話ではない。
こうして見る限り、サイクロプス隊は明らかにジオン軍から……突撃機動軍から疎まれている。
人数が4人しかいないというのを見ると、当然の話だが本人もそれを理解しているだろう。
であれば、サイクロプス隊を引き抜こうとしているこちらとしては、寧ろ願ったり叶ったりと言ってもいい。
後の問題は、いつどうやって話を持っていくかだな。
取りあえずは、もっと詳細にサイクロプス隊の事情を知りたいので、もう少し観察させて貰うとしよう。
気配遮断を使っているから、向こうから俺の姿は認識出来ない。
実はまだ仲間がいて、俺のいる場所をカメラか何かで見ているのなら、また話は別だったが。
とはいえ、そうなったらそうなったで、サイクロプス隊の連中を説得しやすくなるのも事実だ。
そうして考えていると……
「アクセル!?」
不意にそんな叫びが周囲に響く。
……って、おい。今の声、思い切り聞き覚えがあるんだが……
微妙に嫌な予感を覚える俺だったが、サイクロプス隊の面々もまた今の声を聞いた瞬間、素早く周囲を見回す。
金髪のまだ一番若い男だけが、右往左往している様子だったが、他の3人は素早く拳銃やナイフを引き抜き、周囲を警戒する。
一瞬、さっきの聞き覚えのあった声の持ち主について警戒しているのかと思ったが、サイクロプス隊の面々の様子を見ると、その警戒対象は明らかに俺だ。
そうである以上、あの声の主はサイクロプス隊に何かされたりはしないだろう。
そんな俺の予想を裏付けるように、工場の中から1人の少年……アルが姿を現し、不思議そうに周囲を見回していた。
「アル、お前何を見た?」
「いや、だからアクセルだよ。ガルシアの側にアクセルがいたと思ったんだけど……あれぇ?」
ガレス……ではなく、ガルシアか。
どうやら、やっぱりガレスというのは偽名だったらしい。
もしくは、愛称か何かか。
他のサイクロプス隊の面々に視線を向けられたガルシアだったが、気配遮断を使っている今の俺の姿を見つけられる筈もない。
疑問だけを顔に浮かべながら、それでも周囲に怪しい存在がいないかと見回すが……結局は首を横に振る。
「アル、アクセルってのは誰だ? 本当にいたのか?」
「え? あ、うん。バーニィと会うよりも前に会ったんだ」
「……何でそんな奴がここに? もしかして連邦軍の軍人だったりするのか?」
「ううん。月の人間だって言ってたよ」
「月か……あそこは、今となっちゃ魔窟らしいな」
サイクロプス隊を率いているのだろう中年の男が、そう呟き……不意に再び周囲を見回す。
「隊長?」
太った男が疑問の声を投げるが、隊長と呼ばれた男の方はそんな声を気にした様子もなく、改めて周囲の様子を確認していた。
「月の連中……正確には、シャドウミラーの中には魔法使いなんて常識外れの存在がいるらしい。その連中に協力して貰っていると考えれば、何らかの魔法を使ってどこかに隠れているという可能性も否定出来ない」
鋭いな。
まぁ、ルナ・ジオンの建国宣言の時に魔法を使ったからな。
「それに、アクセルというのはシャドウミラーの代表の名前だった筈だ。国を率いる者がこのような場所にいるとは思えないが……それでも、魔法を使えるとなれば何かそのような手段があってもおかしくはない」
この連中にしてみれば、それこそギレンが最前線……いや、サイド6は別に最前線じゃないか。ともあれ、最前線ではないにしろ戦場に出て来ているようなものだ。
UC世界の常識で考えれば、まず有り得ない。
有り得ないが……そこに魔法という手段があれば、話は違ってくるだろう。
「隊長、どこにもそれらしい人物はいませんが……」
ガルシアの言葉に、アルは不満そうに口を開く。
「だって、見たんだよ! カメラにアクセルはしっかり映っていたんだ!」
「アル、そのアクセルというのは……何歳くらいの奴だ?」
「バーニィよりも下だよ」
「俺より? ……隊長、そうなると、アルが接触したアクセルというのは、アクセル・アルマー本人じゃなくて、家族とかそういう感じなんじゃ?」
「どうだろうな。その辺はすぐには判断出来ん。……ともあれ、周囲にはいないんだな?」
「はい、それは間違いありません」
ガルシアが自信を持ってそう告げる。
実際に自分の目で確認しただけに、その言葉には自信が満ちていた。
それでも……そんなガルシアのすぐ横に俺の姿はあったのだが。
さて、どうするか。
本来なら、もう少しサイクロプス隊が現在どんな状況なのかを確認してから姿を現すつもりだったんだが……まさか、アルに見つけられるとは思いもしなかった。
ここで姿を現すべきか……いや、隊長の様子を見る限りでは、もう俺がいるというのを半ば確信している様子だ。
これ以上ここに隠れていても、向こうを疑心暗鬼にさせるだけか。
そう判断し、俺は気配遮断を解除する。
「……うおっ!」
突然自分の隣に姿を現した俺に驚き、ガルシアは半ば反射的にだろう。手に持っていたナイフを振るう。
当然の話だが、混沌精霊の俺は普通にナイフ程度でどうにかなったりはしない。
それでも当たったと思われれば、俺の異質さに気が付く……いや、気配遮断を使っていたのを皆の前で解除した時点で大概だな。
そんな風に考えつつ、後ろに1歩下がってナイフの一撃を回避する。
そしてナイフの一撃を回避されたガルシアの腕を軽く叩き、追加で勢いをつけ……すると次の瞬間、ちょっと勢いが強すぎたか、駒のように回転しながら地面に倒れた。
「全く……まさかアルがサイクロプス隊と繋がっているとは思わなかったな」
「う……」
俺の言葉に、アルは言葉に詰まる。
色々と思うところはあるんだろうが……取りあえず、それは置いておくとしよう。
アルから視線を逸らし、銃口をこちらに向けている2人に視線を向ける。
「さて、俺が何でここにいるのか……それを聞きたくはないか?」
パンッ、と。
俺の言葉に返ってきたのは、質問に対する答えではなく銃弾。
だが、その銃弾は俺の掌の中にあった。
別に銃弾が命中しても俺にダメージはないんだが、今回はやっぱり向こうに与える衝撃を重視しての行動となる。
そして相手に見せつけるように掌を開き……掴み取った銃弾が地面に落ちる音が周囲に響く。
向こうも、まさか俺が銃弾を素手で止めるとは思っていなかったのか、驚愕の視線をこちらに向けていた。
「言っておくが、俺に銃は効かない。俺にダメージを与えたいのなら、それこそ魔力や気を使うんだな」
「化け物め」
俺の言葉が真実だと理解したのか、隊長の口からそんな声が漏れる。
そんな相手に対し、俺は軽く地面を蹴り……次の瞬間、俺の影から刈り取る者が姿を現す。
「さて、ホールドアップって奴だ。これでようやく話が出来るな」
銃身が異様に長い拳銃の銃口を向けられたサイクロプス隊の面々に、俺は笑みを浮かべながら質問をする。
「ジオン軍は、このコロニーに核ミサイルを撃ち込もうとしている。……違うか?」
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1190
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1617