転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0250話

 この学園都市にいる魔法使い達を率いている人物。それは何とこの学園都市の学園長だった。……いや、そう考えるとそれ程驚くべき事ではないのかもしれないが。

 とにもかくにも、あの場にいた全員でその学園長とやらに会う為に移動したのだが、その向かった先が問題だった。

 

「何故女子中等部?」

 

 そう。何故か学園長室に向かう筈が辿り着いたのは千鶴やあやかの学校である麻帆良学園女子中等部だったのだ。

 

「……」

 

 思わずジトっとした目で高畑を見た俺は決して悪くないと思う。

 

「いや、そんな目で見ないでくれないか。ここに学園長室があるのは事実なんだ」

「……本当に大丈夫なのか?」

 

 重ねて尋ねる俺に、どこか目を逸らしながら高畑は苦笑する。

 

「少なくても尊敬できる人であるのは間違い無いよ」

「くっくっく。まぁ、確かに部外者にしてみればそう反応するのも無理はないがな」

 

 エヴァンジェリンは高畑とは別に愉快そうな笑みを浮かべている。

 

「大丈夫ですわよ、アクセル君。学園長先生とは何度もお会いした事がありますが、信頼出来る方であるのは間違いないですわ。……ただちょっと悪戯好きな所がありますけど」

「そうねぇ。孫娘であるこのかさんのお見合いに熱心だという話はクラスで聞くわね」

「孫娘?」

「ええ。近衛木乃香さんと言って、私達のクラスメイトよ」

 

 中学生にお見合いを勧める、ねぇ。

 この麻帆良学園のトップに対する信用度が、まだ会いもしていないのに微妙に下がっているのを感じる。

 いや、組織の長ともなれば孫娘を政略結婚に使うというのはそれ程おかしい話でもないのかもしれないが。

 

「まぁ、じじぃが実際どんな人物かは会ってみて判断するといい。ほら、行くぞ」

 

 エヴァンジェリンがそう言い、先頭に立って校舎の中へと入っていく。

 

「エヴァンジェリンさん、ちょっとお待ちになって下さいな。ほら、アクセル君。迷子になると大変ですから手を繋ぎましょう」

 

 いや、迷子になるような校舎なのか? そう思いつつも、差し出してきたあやかの手を握る。

 

「ならこっちは私の分ね」

 

 ニコリと微笑みながら千鶴があやかとは反対側の手を握ってきた。

 なんと言うか、この2人は妙に人の世話を焼くのが好きなようだ。あやかに関してはその性癖故におかしくはないんだろうが、千鶴ももしかしたらあやかの同類なのか?

 

「あらあら、何か妙な事を考えなかったかしら?」

 

 ニコニコ笑いながらも、得体の知れない迫力を醸し出す千鶴に黙って首を振る。

 

「いや、特には。ただ、妙に世話を焼くのに慣れていると思っただけだ」

 

 上手く嘘をつくコツは一部分だけ真実を入れて語る、というのは誰の言葉だったか。

 

「そう? 私は元々保育士のボランティアをしているから、毎日アクセル君みたいな子の相手をしているのよ。だからかしらね。……もっとも、アクセル君みたいに手の掛からない子はそう多くないのだけれど」

「ちょっと、千鶴さん! 千鶴さんだけアクセル君と話してずるいですわよ。アクセル君、この話し合いが終わったら一緒に寝ましょうね。私が添い寝して差し上げますので」

 

 ……いい加減、俺の実年齢は20代だと言った方がいいのか? いや、だがいくらそれを言ったとしても、身体が10歳程度のままだと説得力がないか。

 

「ほら、馬鹿話もそれくらいにしろ。着いたぞ」

 

 俺達の会話をどこか呆れたような様子で眺めていたエヴァンジェリンの言葉に、視線を向ける。そこには確かに『学園長室』と書かれたプレートが掛けられているドアがあった。

 本当に女子中学校の校舎内に学園長室があるんだな。

 

「学園長、高畑です。エヴァと件の客人をお連れしました」

「そうか。入ってくれて構わんぞい」

 

 学園長室をノックして声を掛ける高畑。中からは学園長だろう老人の声が聞こえてきた。

 

「取りあえず、この学園都市の責任者に会うんだから手を離して貰えると助かるんだが」

 

 さすがに両手を握られたまま学園長に会うというのも拙いだろうと判断し、あやかと千鶴へと手を離すように遠回しに催促する。

 

「それもそうね」

 

 千鶴はあっさりと。

 

「あぁっ、名残惜しいですが……これも試練と思って涙を呑んで我慢しますわ」

 

 あやかは妙に大袈裟にだが手を離す。

 そして高畑がドアを開け……

 

「……」

 

 俺は無言でドアを閉める。

 

「えっと、アクセル君?」

 

 自分の開いたドアを無言で閉めた俺に戸惑いながら尋ねる高畑だったが、取りあえず目を閉じて、今目の前に広がった光景を思い出す。

 執務用だろう、大きめの机があった。うん、これはいい。だが、その中にいた人物はなんと言うか……

 

「頭が長い?」

 

 そう、とても人間には見えないような頭をしていたのだ。あるいは、この麻帆良学園都市という場所を統べるのは人間ではなく妖怪とかだったりするのだろうか。

 

「……あぁ」

「くくっ。まぁ、普通はそうなるな」

 

 俺の台詞で何を言いたいのかを理解した高畑と、面白そうな笑みを浮かべるエヴァンジェリン。俺の両側ではあやかと千鶴もまた、苦笑を浮かべている。

 

「ふぉふぉふぉ、こう見えても立派な人間じゃぞい。入って来てくれるかな」

 

 ドアの向こうから学園長らしき声が聞こえて来る。恐らく言われ慣れているのであろう、俺の感想に特に気分を悪くした様子は無かった。

 高畑とエヴァンジェリンへと視線を向けると、黙って頷いたので改めて学園長室のドアを開ける。するとやはり目に入ってきたのはとても人間には見えない老人の姿だった。

 

「ふぉふぉふぉ、ようこそ麻帆良学園へ。儂はこの麻帆良学園の学園長をしている近衛近右衛門という者じゃ。……いや、お主にはこう言った方が分かりやすいかな? 関東魔法協会の理事、と」

 

 左目を閉じたまま、右目だけ開けてこちらを見てくる近右衛門。その迫力はオーブの獅子と呼ばれたウズミに勝るとも劣らぬものがある。

 

「そうか。先に名乗って貰ったんだし、俺も名乗らないとな。俺はアクセル。アクセル・アルマ-という。次元転移装置の暴走でこの世界へと飛ばされてきた」

「次元転移装置、じゃと?」

 

 眉を顰める近右衛門。他の面々もまた信じられないように、あるいは呆然と俺の話を聞いている。

 

「ああ。その衝撃で気を失っている所をそこにいる那波千鶴、雪広あやかの2人に助けられた。そしてそれから少しして魔法使いらしき男2人に襲われるものの、何とか撃退。その時の疲労やら何やらで休んでいる所にエヴァンジェリンが現れ、再び戦いに。その勝負がつきかけた時に高畑が乱入。その後、学園長に面通ししておいた方がいいとなり、今ここにいる訳だ」

 

 取りあえず魔法使いの男2人を殺した件については伏せておく。幸いスライムによる吸収だったので痕跡は何1つ残っていないし、その場にいた2人にしても目を瞑っていたから知られる心配はないだろう。

 

「ふぉ? エヴァとの勝負がつきかけた、じゃと? そこまで戦いが熾烈化していたというのに、よくエヴァがタカミチ君の説得を聞いたものじゃの」

「おい、勘違いするなよじじぃ。勝負がつきかけたというのは私が奴を追い詰めたのではなく、奴が私を追い詰めた結果だぞ」

「……本当かね?」

 

 エヴァの言葉を聞き、近右衛門が両目を開いてこちらへと視線を向ける。

 

「ま、そうなるな。何が理由かは知らないが、能力が制限されている吸血鬼だ。それに俺の情報も無かった訳だし不覚を取ったという所だろうな」

 

 俺の台詞に、近右衛門が高畑へと視線を向ける。

 

「はい、事実です。僕が割って入らなければ恐らくエヴァが負けていたでしょう。……学園に侵入した魔法使いを追っていて幸いだった、というべきでしょうね」

 

 なるほど。随分と都合良くあの場に現れたものだと思っていたが、俺が吸収した魔法使いを追っていたのか。

 

「……一応言っておくが、能力の大半を封じ込められた現状でもエヴァはこの麻帆良でもトップクラスの実力を持っておるんじゃがな。そのエヴァを追い詰めるとは、の」

 

 改めてこちらへと視線を向ける近右衛門だったが、俺はそれに軽く肩を竦める事で答える。

 

「確かにここでは実力者だったかもしれないが、俺を魔法使いと誤解したままで戦ったからな」

「ふぉ? それではお主は魔法使いではないと?」

「ああ。言っただろう? 俺は次元転移装置の暴走でこの世界にやってきたと。俺が今までいた世界には魔法使いなんて存在はいなかった。……いや、いたのかもしれないが、少なくても俺は存在を知らなかった」

 

 念動力やらなにやら、それっぽいのはあったがな。

 

「ふーむ……おぬし、もの凄い魔力をその身に宿しておるんじゃが……」

 

 そう呟く近右衛門だったが、実際俺が魔力やら魔法やらをこの目で確認したのはこの世界に来てからだ。……となると。ふと思いつき、近右衛門のステータスを表示する。そこにはSPが225とかなりの数値を表していた。やはりSPが魔力と認識してもいいのか? エヴァンジェリンの場合は、封印とやらがされてるのでSPが100にも届いていなかったと見るべきか。

 

「まぁ、いい。それでお主はこれからどうするつもりじゃ?」

「何、次元転移装置の暴走で飛ばされてきたが、このマーカーが……あ……れ…ば……」

 

 近右衛門にジャケットから取り出したマーカーを見せようとして、思わず固まる。何せ、取り出されたマーカーは半分程壊れていたのだから。

 

「……」

 

 俺の動きが固まったのを見て、学園長室の空気も固まった。俺の出した機械の正体が分からなくても、何か拙い事態が起きたというのは理解出来たのだろう。

 

「アクセル君、その、それが……」

 

 恐る恐る、といった様子で高畑が尋ねてくる。

 

「……ああ。違う次元に転移した時に、次元転移装置側でこのマーカーを追跡してその位置を割り出してくれる……筈だったんだが」

 

 何故壊れている? まず頭に思い浮かんだのはその疑問だ。この世界に転移してからの行動を思い出す。思い出す。……思い出す。

 そんな俺の視線が止まったのは話の成り行きを見守っていたエヴァンジェリンの顔だった。そう。確か氷爆とかいう魔法を使われた時にジャケットを掠めた。恐らくマーカーが損傷したのはあの時なのだろう。

 

「な、何だ?」

「いや。戦闘中の出来事だったし、何よりあの時の俺とお前は敵対していたんだしな」

 

 その言葉でマーカーの壊れた理由を理解したのだろう。エヴァンジェリン、高畑、近右衛門の3人が顔を引きつらせる。

 

「なるほど。エヴァとの戦いが原因か」

「いや、だがそう言ってもだな。あの時は確かにアクセルが言っていたように私とこいつは敵対していた訳で」

「マスター、自分の過ちはしっかりと認めてくれると従者としても助かるのですが」

「ええい、このボケロボっ! いらない所でいらない突っ込みを入れるんじゃない! 巻いてやる!」

「あぁっ! そんなにゼンマイを巻かれては……」

 

 茶々丸の後頭部にゼンマイのようなものを差し込み回し始めるエヴァンジェリン。……と言うか、もしかして茶々丸の動力はゼンマイだったりするのだろうか。

 そんな様子を見ながら、学園長室に漂っていた重い雰囲気が消えていくのを感じていた。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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