こちらからの要望を呑んだペイルライダーは、複合武装のシェキナーがなくなっているのを特に気にした様子を見せず……そのまま、ニュータイプ用のザクの方に近付いていく。
正確には、ジオン軍の部隊を率いる隊長と思われる人物が乗っているゲルググも一緒にだったが。
あのペイルライダーとジオン軍の隊長が親しい関係にあるのか?
そう思いつつも、今の状況ではそれよりニュータイプ用のザクの方が重要なのは間違いなかった。
そうしてニュータイプ用のザクのコックピットからパイロットが降りると、ゲルググの掌の上に移動する。
……あのパイロット、女か。
パイロットスーツは、そのボディラインを結構露骨に出す。
マブラヴ世界のパイロットスーツに比べれば、随分とマシなのは間違いないか。
そのパイロットは、自分の機体が俺に奪われるという事が当然のように面白くないのだろう。
こちらに向かって鋭い視線で一瞥し……そして顔を背ける。
その気持ちは、分からないでもない。
俺もガンダム7号機を奪うと言われれば、到底面白いとは思えないだろうし。
そして、ペイルライダーがパイロットのいなくなったザクを押して、こちらに渡してくる。
『これでそちらの条件は全て呑んだ。もう、こっちを攻撃するような真似はしないな?』
「そうだな。取りあえずこの場は、取引に応じたということでこのまま戻る。……ただ、この取引が有効なのは、あくまでも今ここでだけだ。次にまた敵として遭遇したら……」
『分かっている』
俺に最後まで言わせず、そう告げるペイルライダーのパイロット。
戦場でのやり取りに慣れている感じだな。
「分かった。なら、さっさと行け。俺達はここでお前達がいなくなってから、行動を開始する」
その言葉に、ペイルライダーはジオン軍の部隊と共に移動を始める。
俺に向かって特に何か声を掛けるといったような真似をしなかったのは、そうする必要がないと、そう思ったからだろう。
実際、わざわざそうする必要はないのだから。
この宙域から離れていくペイルライダーとジオン軍の部隊を見送りながら、俺はパイロットのいないニュータイプ用のザクをコックピットから出てシェキナーと同じく空間倉庫に収納し、この場に残ったペイルライダーに近付いていく。
今は気絶してるからいいが、接触した時の様子を考えると、起きたら間違いなく暴れる。
そうなると……
『アクセル、そのペイルライダーに乗ってるパイロットはどうするの?』
「それを今考えていたところだ。……結構薬の症状とかでボロボロらしいから、そうなると考えられるのは……やっぱり、ホワイトスターだろうな」
アウル達を治療した施設があり、治療した人物がいるのはホワイトスターだ。
人だけなら、レモンを月に呼ぶといった方法も取れるかもしれないが……幾らレモンが天才であっても、治療するのに必要な機器がなければどうしようもない。
……いや、レモンの実力ならあっさりとその機器を作ってしまいそうな気がするが。
ただ、きちんとした機器があるのなら、最初からそちらで治療した方がいいのは間違いない。
『じゃあ、月に戻るの?』
「いや、直接ホワイトスターに向かう」
普通なら、ゲートを通らなければホワイトスターに行く事は出来ない。
だが、何にでも例外があるように、システムXNを搭載しているニーズヘッグはゲートを通らなくても、直接ホワイトスターに転移する事が可能だった。
『……どうやって?』
「ニーズヘッグを使ってだな。ともあれ、準備をするからクリスはこっちに来てくれ。それと、ペイルライダーを確保しておいて欲しい。転移する前に、下手に暴れられたりしたら、困るからな」
ペイルライダーのジャイアントガトリングとかで手当たり次第に周囲を撃ったりとかいったような事をされた場合、それはかなり大きな被害となる。
いや、この宇宙空間でならそこまで被害は出ないのだが、ホワイトスターの転移区画だったりすれば、話は別だ。……まぁ、ビームではない以上、宇宙空間では何かに命中するまで弾丸が消える事はないので、そういう意味でジャイアントガトリングのような武器を撃ったりしたら、被害は大きそうだが。
いっそ、コックピットを無理矢理開けたりしてパイロットを引きずり出すか? とも思ったが、EXAMシステムを搭載しているとなると迂闊な真似は出来ない。
しまったな。さっきのパイロットにその辺についてもう少し詳しく聞いておけばよかった。
そんな事を考えながら、俺はコックピットから外に出てガンダム7号機を空間倉庫に収納し、ニーズヘッグを取り出す。
本来なら、ペイルライダーはそのままにするか……もしくは、カトンボにでも搭載しておけばいいのかもしれないが、パイロットが気絶する前の様子を見る限りではそこまで放っておくような真似は出来ない。
ニーズヘッグのコックピットに入り、T-LINKシステムによって認証が終わり、機体が起動する。
『アクセル、連れて来たわよ』
ヅダがペイルライダーを引っ張りながら、こっちに移動してくる。
「よし、じゃあ、俺の近くに来い。転移そのものは、以前も経験したから問題ないだろ」
『そうね。……かなり驚いたけど』
クリスの若干呆れた声を聞きながら、システムXNを起動する。
「システムXN、起動。転移座標入力。転移フィールド生成開始」
そして光の繭がニーズヘッグとヅダ、ペイルライダーを包み込み……
「転移」
その言葉と同時に、次の瞬間俺の姿は久しぶりに戻ってきたホワイトスターの転移区画の中にあった。
いきなり転移区画に現れた人型機動兵器を見て、転移区画にいる人々……これから自分達の世界に転移したり、もしくはそれぞれの世界から転移してきた者達が驚きの表情を浮かべているのが見え……
「ちっ!」
ペイルライダーの手が少し動いたのを見て、俺は素早くニーズヘッグで床に倒れた状態のペイルライダーの手を踏みつけ、動けなくする。
どうやら、転移した衝撃で気絶していたパイロットが気が付いたらしい。
そうして咄嗟に動き始めたのを見て、俺はニーズヘッグでペイルライダーの動きを止めたのだ。
とはいえ……頭部に装備している外付けのバルカンもあるので、迂闊な真似は出来ない。
ちっ、しょうがないか。
ここでそのような真似をされ、転移区画にいる者達に被害が出るというのは、最悪の結果だ。
そうならないよう、先手を打った方がいい。
そう判断すると、俺はニーズヘッグのコックピットから飛び出る。
そして床に抑えているペイルライダーのコックピットの前まで飛んで移動し……コックピットハッチに手を掛ける。
出来れば、これでコックピットが……特にEXAMシステムが破損しないように、祈りながら……素手で、強引にコックピットハッチを引き千切るようにして取り外す。
「ああああああああああああああああああああああああっ!」
コックピットが開いた瞬間、聞こえてきたのはそんな叫び声。
今の俺と同年代くらいの女が、コックピットの中で叫び声を上げながら暴れていた。
不幸中の幸いだったのは、この女が半ば恐慌状態にあったことで、先程ペイルライダーが少し動いたのも、偶然そのような形になったという事か。
周囲に対し、手当たり次第に攻撃を行う……などといった真似は、とてもではないが出来ない状況だった。
とはいえ、暴れているその状況では、偶然トリガーを引いたり……場合によっては、ジャイアントガトリングを発射したりといったようなことを、しかねないのも事実。
まずは、この女の意識を奪ってしまった方がいい。
そう判断し、暴れている女の鳩尾を軽く……怪我をさせずに気絶させる程度の威力で殴り、意識を絶つ。
気絶したパイロットを引き出し、転移区画の床に眠らせる。
……当然の話だが、転移区画にいきなりMSやニーズヘッグといった人型機動兵器がやって来たのだから、転移区画にいる者の多くはこちらに視線を向けていた。
その視線にも、一体何があったのかといったような純粋な好奇心を抱いているような者や、これが自分の……もしくは所属している組織や世界の利益になるのではないかと思っているような者や、はたまた一体何をやってるのやらといったような呆れの視線を向けてくる者もいる。
そのような様々な視線を無視し、俺が転移してきた周辺には他にも誰もいないか……具体的には、死んだり怪我をした奴がいないかといったような事を確認する。
だが、幸いにして俺が転移してきた周辺には他に人の姿はない。
転移区画がかなりの広さを持っているからこそ、こんな感じで何も問題はないのだろう。
「アクセル代表」
俺が周囲を見ていると、転移区画を担当している量産型Wが姿を現す。
「この女を魔法区画じゃない場所にあるレモンの研究室、バルシェムの生成チャンバーのある場所まで連れていけ。それと、レモンにすぐに来るように連絡を」
「分かりました」
量産型Wのいいところは、あくまでも人型の機械に近い存在だって事だよな。
だからこそ、俺が命令さえすれば、その命令に素直に従う。
もしこれが普通の兵士だったりすれば、それこそ一体何がどうなってこんな事になったのかといった話を聞きたがって、行動がワンテンポ遅れたりもする。
量産型Wによって運ばれていくパイロットを一瞥すると、次にヅダに視線を向ける。
「クリス、ちょっと降りてこい。さすがにここでMSをそのまま出しておくのは、色々と不味い」
そう声を掛け、ニーズヘッグとペイルライダーを空間倉庫に収納する。
それを見て、クリスもヅダのコックピットから出て来る。
「ここが……ホワイトスター?」
「ああ。シャドウミラーの本拠地たるホワイトスターの転移区画……まぁ、玄関みたいなものだな」
転移でそれぞれの世界に移動するのに玄関という表現はどうかと思うが……それでも、ホワイトスターの事を思えば、その表現は相応しい。
「ともあれ、これから俺はあのパイロットの治療の為にレモン……シャドウミラーの技術班を率いている人物に会いに行くけど、お前はどうする?」
「どうするって言われても……」
「俺と一緒に来るか、それともホワイトスターの中を見て回るか。普通なら、ホワイトスターにはそう簡単に来られないし」
これは紛れもない事実だ。
ルナ・ジオン軍の中で幾ら高い地位にあろうとも、俺が……もしくはシャドウミラーの誰かが許可しない限り、ホワイトスターに来る事は出来ない。
現在のルナ・ジオンは、結局のところシャドウミラーの下部組織、もしくは従属国といったような扱いなのだから、その辺は実は厳しかったりする。
それが嫌なら、ルナ・ジオン建国の際に持ち出した分の労力や金額をしっかりとこっちに返して貰う必要があるのだが……まぁ、従属国とはいえ、基本的に搾取をしたりはしておらず、ある時払いといった形だしな。
UC世界特有の技術については、話が別だが。
ともあれ、そういう訳でルナ・ジオンの人間でも限られた者達しか来る事が出来ないホワイトスターだけに、クリスにしてみればかなり興味深い存在がある筈だった。
それこそ、魔法使いとかエルフとか。牧場に行けば、ワイバーンに乗る事だって出来るし、マジックアイテムだったり技術班が開発した諸々が売られていたりもする。
そういう意味で、ホワイトスターはクリスにとって十分に楽しめる場所だと思うのだが……
「いえ、アクセルと一緒に行くわ。ア・バオア・クーで皆が戦っている今の状況で、私だけそんな事はしていられないし」
そう言い、あっさりと俺の提案を断ってくる。
「いいのか? 今日は色々と特別だったから、クリスもここに連れて来た。けど、ルナ・ジオンに入ったからといって、クリスがまたホワイトスターにやって来る事が出来るとは限らないんだぞ?」
念の為にそう言っておく。
もしかしたら、またすぐにホワイトスターに来る事が出来るかもしれないからこそ、このように言っているのかもしれないと、そう思った為だ。
とはいえ、実際にクリスの能力や性格を考えると、ホワイトスターに来ることが出来るようになる可能性は十分にあるのだが。
「構わないわ。それに……アクセルの側にいた方が、色々と安心出来るし」
少しだけ照れ臭い表情でそう告げるクリス。
クリスにとって、このホワイトスターは全く見知らぬ場所と言ってもいい。
そうである以上、俺と一緒にいた方が安心出来るというのは、理解出来ないでもない。
「分かった。クリスがそれでいいのなら、さっさと行くか。俺に近付いてくれ」
「それって……まさか……」
俺の言葉で、一体どうやって移動するのか分かったのだろう。
クリスは表情を引き攣らせながら……それでも、今は俺の指示に従うしかないと判断したのか、渋々と俺に近付き……影のゲートに沈む感触に、悲鳴を上げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1240
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1627