転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0253話

 ナンパ男2名を撃退した場所から徒歩で10分程進むと木で出来た家が見えてきた。木で出来たといっても、いわゆる日本家屋では無くログハウス的な感じだ。ここがエヴァンジェリンの家らしい。

 その家の中へと茶々丸が入っていくので、後に続く。

 

「マスター、アクセルさんをお連れしました」

「うむ、ご苦労だったな。さて、早速話を聞きたい所だが……がっつくのもみっともないからな。まずはお茶でも飲め。茶々丸」

「はい、少々お待ち下さい」

 

 茶々丸が軽く礼をして部屋を出て行くのを見ながら、思わず感心したように呟く。

 

「この時代に、ああも自我がはっきりとしている人造人間を造れるとはな」

「ほう? お前も興味あるのか?」

「正確には俺の組織だな。人造人間がメインの戦力となっている。もっとも、そっちは自我や感情の無い完全な人型機械だが。自我や感情のあるタイプとなると、数例といった所か」

「ふむ、なるほど。だが、茶々丸は人造人間では無いぞ? 何と言ったか……確かガイノイドとか何とか」

 

 確かガイノイドも一種の人造人間の呼び方だったと思うが……まぁ、細かい所に拘るつもりは無いし構わないか。

 

「お待たせしました。マスター、アクセルさんもどうぞ」

 

 紅茶とクッキーを持ってきた茶々丸がテーブルの上へと並べていく。

 それを確認し、紅茶を一口飲んでからエヴァンジェリンが口を開く。

 

「さて、では昨夜私の動きを止めた能力に関してだが」

「あれは念動力……分かりやすく言えば超能力だな。サイコキネシスとかそっち方面だ」

「やはりな。……物を動かす魔法というのもあるが、それにしたって簡易的な呪文詠唱は必要だし昨夜のようにノータイムで発動出来るというものでもない。それに比べるとお前の念動力とか言ったか? あれは随分と便利なものだな。何せ幾ら封印されているとは言っても、私の動きをああもあっさりと封じてみせるのだからな」

 

 クッキーを囓りながらエヴァンジェリンが感心したように頷いている。

 

「私だけが聞くというのもちょっとアレだな。お前も何か聞きたい事があったら聞いていいぞ。私に答えられるのなら答えよう」

 

 とは言ってもな。何を聞くべきか。いや、聞くべき内容が無いという訳ではなく、逆に多すぎるのが問題だ。元々魔法という存在には興味があった。と言うか、そうでも無ければ転生時の特典として魔法の才能なんて選ばないだろう。

 

「そうだな、まずはやっぱり魔法だな。少なくても俺が今まで渡ってきた世界には魔法と呼べる物は無かったからな」

 

 強いて似ている物を上げるとすれば、コードギアスの世界にあるギアス能力か。……そう言えば、マオから吸収したギアスはいつまで俺のスキル覧を無駄に占拠し続けるんだろうな。

 

「渡ってきた?」

「ん? ……あぁ、そうか言ってなかったか。俺達の本拠地はいわゆる次元の狭間にあってな。そこから次元転移装置で色々な世界と繋がってるんだ」

「なるほど、ハブステーションのようなものか」

「ま、そんな感じだ。……で、質問だが……そうだな」

 

 自分のステータスを確認する。スキル覧に表示されているのは、昨日入手した炎、影、召喚という3つの魔法だ。エヴァンジェリンが魔法使いだというのなら、この3つの魔法についてアドバイスなり使用方法なりを教えて貰いたい所だ。

 だが、そうなると当然昨日まで魔法を知らなかった俺が何故その3つの魔法を選んだのかを不思議に思うだろう。

 ……ある程度まで俺の能力を明かすべきか? 少なくても、昨日の夜のやり取りを見る限りではこちらを騙すといったような行動をするようには思えない。ならばエヴァンジェリンの好奇心を満足させて、魔法について教えて貰う。そういうギブ&テイクが成り立つのではないだろうか。

 そう判断し、肝心の質問を口に出す。

 

「炎、影、召喚。この3つの魔法についてだな」

「……構わんが、どんな理由で選んでその3つになったのだ?」

 

 案の定尋ねてきたエヴァンジェリンの言葉を聞き、指をパチンっと鳴らすといつものように俺の右側に空間倉庫が展開される。

 

「それは、確か昨日も使っていたな」

「そうだ。空間倉庫といって容量無限で時の流れの止まってる空間、と認識して貰えばいい。そして……」

 

 空間倉庫からスライムの触手を少しだけ出現させる。

 

「これも昨日見たな。……いや、待て。そうか、そう言えばお前は魔法という物をこの世界に来るまで見た事が無かったと言っていたな。つまりはそのスライムに関しても召喚術では無く……」

「これもまた俺の能力の1つ。まぁ、スライム状なのは間違いないからそのままスライムと呼んでいるがな。このスライムは俺の手足のようなもので、一種の感覚器と言ってもいい。そしてこのスライムには敵を取り込んで相手が持っている特殊能力を吸収するという力がある」

「なるほど。つまり、昨日お前達が襲われたという魔法使い達は逃げ出したのではなく……」

 

 能力を説明しただけで大体話の流れを理解したのか、ニヤリとした笑みを口元に浮かべるエヴァンジェリン。

 

「ああ。スライムで吸収されてすでにこの世にはいないな」

「それでお前が吸収した能力というのが、炎、影、召喚の魔法という訳か」

「そうなる」

「なるほど、なるほど……面白い事を聞かせて貰った。よし、ちょっと待ってろ」

 

 上機嫌なエヴァンジェリンはそのまま俺を居間へと残し、部屋から出て行く。

 そんな様子を見ていた茶々丸が無表情ながらもどことなく嬉しそうに口を開く。

 

「アクセルさん、ありがとうございます」

「ん? 何がだ?」

「あそこまで上機嫌のマスターは久しぶりに見ますので」

「……そうか?」

 

 俺の知る限りでは、俺と話している時は大抵機嫌がいいように思えるんだが。

 

「はい。マスターは真祖の吸血鬼という立場上、学園の魔法先生、魔法生徒達にあまり快く思われておりません。なので真祖の吸血鬼というのを知っても全く対応が変わらないアクセルさんはマスターにとって非常に好ましく感じているのだと思います」

「おい、ボケロボ。好き勝手な事を言うな。それだと私が寂しくてしょうがない奴みたいじゃないか」

 

 何かを持って居間へと戻ってきたエヴァンジェリンが、茶々丸へとそう言い、その持っていた物を俺へと投げつける。

 

「っと、これは、本と……杖?」

 

 そう、投げ渡されたのは1冊の本と1本の杖だった。

 ただし、本はともかく杖に関しては魔法使いの杖というよりは玩具の杖といった代物だ。30cm程度の棒で、先端が三日月のような形になっている。

 

「ああ。その杖は初心者用の杖だ。本に関しても初心者用の教本のようだものだな。魔法学校で使われている物よりは実践的な内容が書かれているが。取りあえず、そうだな。その杖を構えて『プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ』と唱えてみろ」

 

 エヴァンジェリンの言葉を聞き、杖を手に持つ。

 

『プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ』

 

 ……何も起きない。無言でエヴァンジェリンへと視線を向ける。

 

「幾ら何でも一発で成功する筈が無いだろう。魔力の流れに意識を集中させてみろ」

 

 魔力の流れ? すなわち、俺のステータス画面で考えるとSPか。……待てよ? つまりスライムに対するSPブーストを使う時みたいな感じでいいのか?

 魔力の流れと言われても理解は出来ないが、SPを消費しろというのなら今までの戦闘で数え切れない程に行ってきた行為だけにスムーズに行える。

 杖へとSPを込め意識を集中しながら……

 

「おい待て、やめろっ!」

 

 エヴァンジェリンの言葉を聞いた時には、既に俺の口は開いていた。

 

『プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ』

 

 轟っ!

 

 2m程の火柱が上がり、居間を明るく染め上げた。それを見た瞬間、殆ど反射的に杖を床へと放り出して後ろへと飛び退る。

 

「何だ!?」

「この馬鹿者が! 魔力を込め過ぎだ! 茶々丸!」

「了解しました」

 

 どこからともなく茶々丸が消化器を取り出し、床へと噴射させ、数分後にはようやく火が収まっていた。

 当然の如く、そこには俺がエヴァンジェリンから受け取った杖は跡形も無く消え去っており、唯一残るのは飛び退った時に反射的に確保していた魔法教本だけだった。

 

「魔法を試して2回目で成功したのは褒めてやろう。……だが、お前の馬鹿魔力を考えろ! たかが火よ灯れの魔法にあんなに魔力を込める馬鹿がいるか、この馬鹿が!」

 

 がぁーっと怒鳴ってくるエヴァンジェリン。……まぁ、さすがに自分の家を燃やされそうになれば怒りもするか。

 

「ちなみに、昨日から馬鹿魔力、馬鹿魔力と繰り返し言ってるがそんなに俺の魔力はでかいのか?」

「む……そうか。魔法の無い世界から来たならその辺の感覚も分からないか。そうだな……昨日会ったじじぃだが、奴は極東でも屈指の超一流の魔法使いだ。そしてお前はそんなじじぃに比べても倍近い魔力量を持っている……と言えば理解しやすいか?」

 

 消化器の泡で見る影もなくなった居間に視線を向けてから、どこか不機嫌そうに言う。

 なるほど、近右衛門の200オーバーのSPで極東屈指となるのか。数値的に言えば俺のSPは近右衛門の倍以上だと考えると、確かに馬鹿魔力と言われてもしょうがないか。

 

「家がこの有様では話をするにも集中出来ないな。……まぁ、いい。今日はこのくらいにしておくとしよう。ほら、予備の杖だ。それとその本はお前にやるから魔法を使いたいのなら勉強でもしておけ」

 

 どこから取り出したのか、先程俺が燃やしてしまった杖と同じような玩具のような杖を俺へと放り投げてくる。先程の杖との違いは、杖の先端が三日月型から星形に変わった程度か。

 

「いいのか?」

「ああ。今日は色々と愉快な体験をさせてもらったからな。その礼だ。だが、そうだな……恩に着てくれるというのなら、今度全力で私と戦って貰おうか。お前の全力にも興味があるしな。昨日の戦いでは私もそうだが、お前も全力では無かったんだろう?」

「そうだな。スキルの吸収直後で体調的には最悪に近い状態だったからな」

「くくっ、その状態で私に勝つか。なら本気のお前とは是非やり合ってみたいものだ」

 

 心底面白そうな笑みを浮かべるエヴァンジェリン。何と言うか、真祖の吸血鬼がどうこうと言うよりは、新しい玩具を見つけた子供のようにしか見えない。だが……

 

「こんな街中でそんな真似が出来る訳無いだろう」

 

 俺の本気となると、人型兵器やメギロート等が無い今は基本的にスライムを使った攻撃や銃器の類が攻撃のメインだ。空間倉庫の中にある爆発物の量を考えると、下手をしたらこの麻帆良が地図上から消滅する可能性すら考えられる。

 だが、そんな俺の疑問にエヴァンジェリンはどこか得意げな笑みを浮かべる。

 

「安心しろ。後で別荘を掘り起こす」

「別荘?」

 

 余程不思議そうな顔をしていたのだろう。エヴァンジェリンが笑みを浮かべて言葉を続けた。

 

「それに関しては次に来た時のお楽しみだ。私ばかり驚かされるのは不公平だからな」

「まぁ、話は分かった。取りあえず今日はもう帰るとするよ」

「ああ。今日は愉快な時間を過ごさせて貰った。……あぁ、昨日の2人に魔法に関する事は他人に喋らないように言っておけよ。来る時に茶々丸と一緒に来たんだから、帰り道は大丈夫だな?」

「寮までの道はきちんと覚えてるよ。本と杖、ありがたく貰っていく」

「何、お前のような存在が魔法を覚えたらどうなるのか……多少楽しみだしな」

 

 エヴァンジェリンのそんな言葉を聞きながら、ログハウスから出る。

 ちなみに茶々丸は一礼して俺を見送っていた。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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