俺に視線を向けられたモニクは、早速何かを言う。
……が、向こうからの音声をカットしている以上、声が聞こえるという事はない。
モニクもそれは当然のように分かっている為か、大きな声を上げているのだろと分かるくらいに口を大きく開けていた。
そんなモニクの言葉を聞くのは、正直気が進まない。気が進まないが……それでもモニクと交渉をする必要がある以上、話を聞かない訳にはいかないだろう。
もっとも、俺が欲しいのはあくまでもビグ・ラングだ。
こっちが連邦軍と揉めている間は、特に何かおかしな行動をする様子はなかったが。
向こうにしてみれば、自分が迂闊な行動をした場合、俺が持っているゲルググの胴体――正確にはそこにいるモニク――がどうにかなってしまうと、そう理解しての行動だったのだろう。
もしジムコマンドとの戦いで攻撃を避け損ない、モニクを殺していれば、一体どうなっていた事やら。
少なくても、ビグ・ラングを操縦しているオリヴァーとの交渉はまず駄目になっていた筈だ。
「さて、こっちの声は聞こえているな? これからそっちの声も聞こえるようにするけど、出来ればあまり騒がないでくれると助かるな」
そう告げると、映像モニタの向こう側でモニクは渋々といった様子で頷く。
モニクにしてみれば、ここでまた自分が何かを言えば、通信が切られると、そう思っているのだろう。
……実際、それは決して間違いという訳ではないのだが。
俺が交渉すべきは、あくまでもモニクではなくオリヴァーなのだから。
それでもこうしてモニクと交渉……というか、話をしようとしているのは、あくまでもモニク達の情報を少しでも入手し、オリヴァーとの交渉を成功させたいからだ。
そして、モニクの言葉が俺に聞こえてくる。
『それで、私達……オリヴァー中尉を月に勧誘しているのは本気なの?』
おや、まさかいきなり本題に入るとは思わなかった。
モニクとはまだ少ししか話したことはないのだが、それでも俺との話では可能な限り情報を入手しようとしていたように思えた。
それが、何故いきなりこういう態度に変わったのか。
黒い三連星が姿を見せたのが関係しているのか、それとも胴体だけの状態で敵の攻撃に晒されたのを俺が回避したのが関係しているのか……はたまた、それ以外に何か別の理由か。
正直なところ、その辺は俺にもよくは分からない。
分からないが、それでもこっちにとって有利なら別に構わないが。
「そうだな。ビグ・ラングだったか。結局のところ、あのMAについて詳しいのはオリヴァーの筈だ。そうである以上、俺としては月に勧誘するのは当然だと思うが?」
『……1つ、提案があるわ』
「提案?」
この状況に及んでの提案となると、何か向こうにとっては重要な事なのは間違いないだろう。
そう判断し、視線で話の先を促す。
『私がオリヴァー中尉にビグ・ラングと一緒に降伏するように説得してもいい。その代わり、オッゴに乗っている子達も一緒に月に連れて行って欲しいの』
「オッゴの?」
子達と表現するという事は、オッゴに乗ってるのは俺が確保して気絶させたオッゴのパイロット以外も、殆どが同様の年代の子供といったところだろう。
いやまぁ、子供と言っても俺とそう違いはない年齢なのだが。
にしても、モニクがまさか子供達の事をそこまで気にするとはな。
モニクの詳しい性格までは分からないが、少し話しただけでも、お堅い女……出来るキャリアウーマンといった印象を受けたんだが。
単純に、10代半ばくらいの子供が死ぬのを許容出来ないだけか?
それとも、もっと他に何らかの理由があるのか。
そんな疑問を抱き……交渉している以上、ここで向こうには腹を割って貰う必要があると判断する。
「何故だ? お前にとって、オッゴのパイロットの命はそこまで大事なのか? ……言っておくが、表面的な言葉はいらない。あくまでも、お前の本音を聞かせろ」
そう告げ、じっとモニクを見る。
もしモニクが適当な事を言ったら、この状況でそのような事を言うような相手は信頼出来ないと判断する。
勿論、モニクが俺を信用出来ないという思いもある可能性は十分にあるが……その辺の判断も含めて、モニクの行動の結果となるのだ。
であれば、それがどのような結果を迎えたところで、結局それは自分の判断なのだから、大人しく従って貰おう。
モニクがどんな事を言うのかと、じっと見ていると……やがてモニクは、数秒の沈黙の後で口を開く。
『オッゴのパイロットの中には、弟がいるの』
「なるほど」
それが心からの言葉だというのは、モニクを見れば分かった。
もっとも、女は全員が女優という言葉もある。
モニクの弟がオッゴのパイロットだというのが事実であっても、月に来る目的が別にあるという可能性もあるが……まぁ、もしそうであっても、それに対処するのはコバッタや量産型Wがやってくれるだろう。
俺がそこまで気にする必要はないと思う。
「分かった。お前の言葉を信じよう。なら、オリヴァーについての説得はお前に任せてもいいんだな?」
『ええ』
素直に俺の言葉に頷くモニク。
にしても、弟と姉が同じ部隊にいるか。
そういう偶然は、基本的にあまりない筈だけどな。
勿論、その辺は軍によって違うので、ジオン軍の……そしてモニクが所属している部隊なら、兄弟姉妹……場合によっては親子であっても、同じ部隊に参加させるといったような真似をするのかもしれないが。
ともあれ、モニクが説得をしてくれるというのであれば、俺としては非常に助かる。
オリヴァーの事は、俺よりもモニクの方が間違いなく詳しいだろうし。
であれば、今は俺の説得でかなり揺らいでいるように見えたオリヴァーだけに、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、あっさりと頷く可能性もある。
『けど……』
「けど? ……まだ何かあるのか?」
『ええ。私とオリヴァー中尉はともかく、母艦の方がどう判断するかは分からないわ。艦長の性格を考えれば、素直に頷くかもしれないけど……』
母艦か。
普通に考えれば、この部隊を動かすにも当然のように母艦は必要となる。
俺が欲しいのは、あくまでもビグ・ラングである以上、それこそオリヴァーとモニク、それとモニクの弟を始めとするオッゴを引き連れて、カトンボまで戻ればそれでいい。
勿論そんな事になると、オッゴはともかくビグ・ラングはカトンボに収納するような真似は大きさ的に難しいので、連邦軍の方から色々と言われる事になるだろうが……言ってみれば、それだけだ。
ルナ・ジオン軍はあくまでも連邦軍に協力している立場である以上、こっちが鹵獲したMAやら何やらについて、連邦軍にああだこうだといったような事は、言わせるつもりはない。
それこそ……と、黒い三連星によってモニクのゲルググと同様に四肢と頭部が切断されているジムコマンドを眺めながら、考える。
ジムコマンドがこっちを攻撃してきたというカードは、それなりに効果があるが、それはあくまでもそれなりだ。
なら、使えるところで使ってしまった方がいいのかもしれない。
ともあれ、母艦をどうするかだな。
ビグ・ラングを運用していたとなると、普通の母艦ではなく特殊な母艦なのは間違いないと思う。
そうなると、問題なのはその母艦がこっちに降伏をするかどうかという話になるんだが……正直、どうだろうな。
MSならともかく、軍艦が降伏するとなると、それを素直に受け入れるかどうか……正直、微妙なところだろう。
何より、MSやMAなら乗っているのは1人だけで、投降するかどうかを判断するのも、1人だけの判断でいい。
だが、それが軍艦でとなると、どうしても乗組員の数は増えるだろうし、その中には積極的にこちらに降伏をすると考える者もいれば、絶対にこっちに降伏をしないと考える者もいる。
そういう連中を1つに纏めるというのは、船長にかなりカリスマを求められる。
アレックスの一件でルナ・ジオンに引き込めたヘルシングなんかは、まさにそんな感じだった。
ただし、そんなヘルシングであっても自分の軍艦の者全員を完全に掌握していた訳ではなく、その結果としてキリングの手の者だったり、それに同調する者によって味方同士で争うといったような事が起こってしまった。
その辺の事情を考えれば、軍艦は放っておいて、このままカトンボまで来た方がいいと思うんだが……ただ、ビグ・ラングを運用している軍艦ともなれば、当然の話だがその運用データだったり、どこを修理したのかといったような履歴だったり、部品交換用の予備パーツだったりと、ビグ・ラングのデータが豊富にある。
正直なところ、それを見逃すのはかなり勿体ない。
うーん……このへん、正直なところ悩みどころだな。
「母艦は、この状況でルナ・ジオンに大人しく投降するのか? もしくは、艦長が降伏を決めても、船員がそれに反対をする可能性は十分にあると思うぞ」
それに、ここでジオン軍に降伏すれば、それはサイド3にいる家族に対しても、迷惑を掛ける事にもなりかねない。
降伏した後でサイド3に残らず、月に移住してくるのなら、その辺も問題はないんだろうが……ヘルシングの艦隊に所属している連中だけでなく、モニクの母艦の連中の家族もどうにかしろってのは……それこそ、量産型Wやコバッタの類を使わないと、どうしようもないような気がする。
ましてや、全員が素直に月への移住を決めたのならともかく、中には故郷を捨てたくないと主張する者もいるだろう。
まぁ、ア・バオア・クーを占領してしまえば、ジオン軍にはもう打てる手はない。
そうである以上、まだサイド3に残っていても、そこまで酷い目に遭わないとは思う。
ただし、裏切り者だとか、そんな風に言われる事になる可能性は高いので、サイド3に残ってもいいのかどうかは微妙なところだが。
『母艦の方でどう判断するのかは分からない。けど、中には月に移住してもいいと思う者がいる筈よ』
なぜそこまで月の利益になる事を示そうとする?
そう思ったが、モニクは恐らく自分の有能さを俺に示そうとしているのだろう。
月での高い地位が望みなのか、それとも弟がいるという話だったから、そっちの関係か。
とはいえ、月の場合は年功序列とかではなく、有能なら出世は早い。
あらゆる意味で、実力こそが重要視されるのだから。
モニクの本心は分からないが、こっちとしては最悪ビグ・ラングを入手さえ出来ればいい。
「分かった。なら、オリヴァーと母艦の説得は任せる。ただし、母艦の説得に行く場合は、ビグ・ラングをここに残していって貰うぞ」
『……分かったわ。じゃあ、私の機体をビグ・ラングに近づけてくれる?』
機体……もう胴体だけになったゲルググを機体と呼んでもいいのかどうかは、正直なところ微妙だった。
だが、それ以外にあまり言いようがないというのも、間違いのない事実なのだ。
「分かった」
モニクの要望に従い、離れた場所で待機していたビグ・ラングの方に向かう。
ちなみにこうしている間にも、このEフィールドではかなりの乱戦が繰り広げられているのだが……それはまぁ、他のルナ・ジオン軍や連邦軍に任せておこう。
若干心配なのは、オッゴのパイロットの中にモニクの弟がいるという点だろう。
モニクが俺達に投降すると決めたのは、あくまでも弟の件があったからだ。
だが……こうしている今も戦いが続いている以上、モニクの弟がいつ死んでもおかしくはない。
「今もまだ、戦いは続いている。モニクが弟を大事に思うのなら、少しでも早く投降するように説得するんだな」
『……分かってるわ』
そのモニクの言葉を聞くと、ビグ・ラングの近くまで来たので、そっとモニクの乗っていたゲルググの胴体部分を離してやる。
さて、どうやって説得するのか。
いや、オリヴァー本人は、俺が説得した時点で結構こっちに興味を持っていた。
そうなると、モニクがオリヴァーを説得するのは、そう難しい話ではないだろう。
だが……この場合、問題なのはオリヴァーよりも他の連中だろう。
オッゴのパイロットや、オリヴァーの仲間で他にゲルググに乗っているだろうパイロット。そして、母艦の艦長を始めとして、他の面々。
そのような者達が一体どう反応するのか。
個人的には、ビグ・ラングという巨大なMAを運用する為の専用艦は是非欲しいところだ。
ビグロだけならともかく、そこに接続している部分とか……あれがあるおかげで、恐らく普通の軍艦ではビグ・ラングの運用は難しい。
もっとも、ビグ・ラングと接続されているあの部分は、オッゴ関係らしいのを考えると、オッゴを使う予定のない俺達には、あまり意味がないが。
あ、でもメギロートやバッタ用に改修すれば、それなりに使えるかもしれないな。
そんな風に思いながら、俺はモニクからの通信を待つのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1265
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1632