転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2690話

 デラーズとの遭遇から数時間が経過し、部屋の中で雑誌を読んでいた俺は、再びシーマによってブリッジに呼び出された。

 とはいえ、それに不満を持ったりはしない。

 何故俺を呼んだのかは分かっていたのだから。

 そしてブリッジに到着すると、映像モニタに表示されている光景を見て、その名前を口にする。

 

「あれがペズンか」

「そうだよ。どうやら、あたし達が一番乗りだったみたいだね」

 

 俺の言葉に、シーマが若干得意そうに告げる。

 だが、それも当然だろう。このペズンという場所では、現在のジオン軍の最新鋭MSたるゲルググよりも高性能なMSの開発が行われているらしいのだから。

 そんなペズンを確保すれば、それは月にとって大きな意味を持つ。

 それに……ペズンで研究しているMSについての情報も欲しいが、それと同等以上にペズンという小惑星が欲しいというのが、上層部の本音だろう。

 ペズンは既にジオン軍によって基地として運用されているのだから、そのまま施設を流用出来る。

 後は、このペズンをここから移動させれば、月の周辺に存在する機動要塞……とまではいかないが、それでも大きな意味を持つ場所になるのは間違いない。

 サイド3に対するア・バオア・クー的な存在でもいいし、もしくはルナツーのように地球の側に移動させれば地球にルナ・ジオンが唯一持っている領土のハワイとのやり取りもスムーズになる。

 ……そうだな、月の周辺にはバルジを始めとした機動要塞が複数あるんだし、ペズンを占拠しても、わざわざ月まで持っていく必要はない。

 地球の周辺に置いた方が、色々と便利だろう。

 

「何を考えてるんだい? ペズンを見て、何か思うところがあったとか?」

「思うところというか、ペズンを占拠したら、ルナツーみたいに地球の側に置いておけばいいんじゃないかと思ってな」

「それは……また……随分と突拍子もない事を考えるね。けど、それはなかなかいいかもしれないね」

 

 その短いやり取りで、シーマもペズンを地球の側に置いておくという意味を理解したのだろう。

 最初こそ少し驚いた様子だったが、それでもすぐに納得したように頷く。

 この辺りの政治的なセンス……いや、この場合は軍事的なセンスなのか? ともあれ、その高さもまた、シーマが有能であるという事の証だよな。

 

「ただ……アクセルの言ってる事には納得も出来るけど、連邦軍の本拠地の地球や、その基地たるルナツーの側にペズンを持っていくとなると、防衛戦力はしっかりと用意する必要があるだろうね」

「だろうな。連邦軍の中には妙な事を考える奴も多いし」

 

 具体的には、星一号作戦において俺達を敵の少ないEフィールドに向かわせたような奴とか。

 いやまぁ、それは納得出来ない訳でもないのだが。

 チェンバロ作戦にしろ、星一号作戦にしろ、ルナ・ジオン軍は大きく活躍しすぎた。

 そういう意味では、これ以上ルナ・ジオン軍に活躍させる訳にはいかないと考え、あまり敵が多くなく、手柄を挙げられないEフィールドに向かわせるといったのは理解出来る。

 そもそも、一年戦争はあくまでもジオンと連邦の戦いで、月は第三者的な立場だったのだから。

 だからこそ、主役は自分達だと思って、Eフィールドに向かわせるのは理解出来る。

 しかし……それで色々と問題のある……いや、問題のありすぎる部隊を俺達と同行させるといったような真似をしたのは、明らかに余計な事だろう。

 この例を見れば分かるように、連邦軍の中にも色々と問題のある人物はいる。

 レビルがいればその辺の対処もある程度出来たんだろうが、残念ながら今はそのレビルもいない。

 そうである以上、もしペズンを地球のすぐ側まで持っていったら余計な事を考える奴は必ず出て来る。

 

「ただ、そういう危ない場所だけにメギロートやバッタの類を多くしておけば、もし連邦軍が何らかの理由をつけて攻めて来ても、それに対処するような事は出来るだろ」

「シャドウミラーがそこまで手を貸してくれるのなら、それもいいかもしれないね。けど……いいのかい? そこまでやって貰って」

「今更だろ」

 

 シーマの言葉にそう返す。

 実際、それは本当に今更の話だった。

 何しろ、現在ルナ・ジオンの首都としているクレイドルを譲渡した事や、それ以外でも様々な資源や戦力を持ち出してるのだ。

 とはいえ、資源の類はキブツがあれば無限に生み出せるし、メギロートやバッタも無人機である以上、キブツの資源があれば幾らでも量産出来る。

 そう考えれば、何気にシャドウミラーの持ち出しはそこまで大きくはないんだよな。

 いやまぁ、クレイドルや機動要塞を考えれば、それだけで結構な持ち出しではあるんだが。

 

「全く、うちの姫様も……おっと、女王様も恵まれてるね」

「そうだな。シーマみたいな女も味方についてくれたし」

「……馬鹿だね、そんなお世辞を言っても、何も出やしないよ」

 

 俺の言葉が意外だったのか、シーマは数秒の沈黙の後、照れを誤魔化すようにそう言ってくる。

 このままシーマの様子を見ていてもいいんだが、今はそれよりもやるべき事があるので、そちらを優先するか。

 

「それで、ペズンにはどう対処するんだ? こうして俺達から見る事が出来ている以上、当然のように向こうからもこっちの存在は把握してるだろ?」

 

 そう、普通に考えれば軍艦がペズンの姿をしっかりと捉える事が出来ている以上、ペズンの方でもこっちの存在は既にキャッチしている筈だ。

 いや、寧ろペズンにある装置の方が大型に出来る分、リリー・マルレーンよりも性能は上だろう。

 だが、その割には何故か今のところペズンから敵が出て来る様子はない。

 これは……素直に俺達に降伏する気になったのか?

 そんな思いを抱くも、ペズンの性格を考えればその可能性もなきにしもあらず……といったところか。

 新型MSの開発をしているんだから、当然だがペズンにはそれらのMSがあるだろうし、それ以外にもMSの開発を行うという点でニュータイプ用のMSやMAを開発するのとは別の意味で重要拠点である以上、相応の防衛戦力が用意されていてもおかしくはない。

 だというのに、こうして俺達が近付いてもペズンから迎撃の戦力が出て来るような事がないのだ。

 それはつまり、何らかの意味があってそのような事になっている……と、そう考えてもおかしくはないだろう。

 問題なのは、一体何を考えているのかが分からないといったところか。

 

「そうさね。このまま黙って近付いて行けば、向こうから通信を入れてくるなり、もしくはそれ以外に何らかの反応をするなりするとは思うけど……今の状況でペズンに圧力を加えるような真似は、出来れば避けたいところだから、こっちから通信を入れてみるかい」

 

 そんなシーマの言葉を聞くと、副官のコッセルはすぐに通信の準備をするように命令する。

 外見は海賊そのものといったような様子のコッセルだが、シーマとの付き合いは長く、その呼吸を読む術には長けている。

 能力と外見が一致しないいい例って奴だよな。

 

「シーマ様、どうぞ」

 

 コッセルの言葉に頷き、シーマは艦長席に座る。

 虎の毛皮が敷かれているそこを、艦長席と呼んでもいいのかどうかは正直微妙なところだが。

 取りあえずここはシーマに任せるとして、俺は会話の邪魔にならないように映像モニタに映らないよう、壁の方まで移動する。

 そして数秒が経ち……やがて、ペズンと通信が繋がったのか、映像モニタに1人の男が映し出された。

 

『こちら、ジオン公国軍のペズン司令官、ダービット・レース大佐だ』

 

 その男は、年齢としては40代くらいか。

 ペズンという重要な場所を守っているような人物だけに、有能そうな人物ではある。

 もっとも、コッセルの例とは逆の意味で外見は有能そうに見えても、実は無能……といった奴も珍しくはないのだが。

 とはいえ、ペズンを任されている以上、無能という事はまずないのだろうが。

 

「こちらはルナ・ジオン軍の海兵隊を率いているシーマ・ガラハウだよ」

『宇宙の蜉蝣。異名持ちの人物が、このような辺境まで一体何をしに?』

 

 へぇ、このダービットという男、シーマを前にしても敵意を剥き出しにしたりはしないか。

 デラーズ……は、敵意を抱いてはいたが、それを表に出すような真似はしなかった。

 デラーズにとっては不倶戴天の敵と言うべきシーマを前にして、感情を抑える事が出来る辺り、有能ではあるのだろう。

 もしこれが何も考えていないただの兵士であれば、それこそすぐにでもシーマを口汚く罵るといったような真似をしていただろうし。

 

「知っての通り、ジオン公国は敗戦した。……そのくらいの情報はもう入ってるだろう?」

『今は停戦中だと聞いてはいるが……まぁ、そのくらいの情報はこちらにも入っている』

 

 ペズンなんて場所にいて、どうやって情報を入手してるんだろうな。

 普通に考えれば、ア・バオア・クーから脱出したジオン軍の残党がペズンに逃げ込んできたとかか?

 あるいは、情報を集める部隊を派遣していたとか、そういう可能性もあるのか。

 何しろこのペズンはジオン軍にとっても最重要機密の1つだ。

 情報については、どのような情報であっても少しでも早く欲しいだろうし。

 

「なら、話は早い。ダルシア首相からこのペズンの情報を貰ってね。……どうだい? このままだと、遅かれ早かれ連邦軍に接収されてしまうだろう? なら、ルナ・ジオン軍に投降しないかい?」

『……なるほど。ペズンの技術が欲しいのか』

「そうだね。否定しないよ。知っての通り、ルナ・ジオンにはディアナという政府直下の兵器メーカーが存在している。そのディアナには、ジオニック社、ツィマッド社、MIP社、それ以外にも多数の兵器メーカーの技術者がいるし、中には連邦から来ている者もいる。連邦とジオンの技術の融合……興味はないかい?」

『……』

 

 シーマの言葉に、実際に興味を抱いたのかどうかは、分からない。

 だが、ダービットはシーマの言葉に沈黙を返す。

 新型MSを開発しているペズンだけに、その辺についても興味深い一面は当然のようにあるんだろう。

 表に出すような真似はしなかったが。

 

「さっきも言ったけど、このペズン程の代物を連邦軍が見逃す筈はない。そうなると、そう遠くないうちに連邦軍が来るのは間違いないよ。もしくは……ア・バオア・クーから逃げた、キシリア率いる突撃機動軍が来る可能性もあるだろうね」

 

 ダービットがキシリアの件について何か知らない以上、ここでわざわざキシリアの名前を出す必要はないと思うんだが。

 とはいえ、シーマも当然だが何らかの意味があってこうしてキシリアの名前を出したのだろう。

 あるいは、ダービットはギレンの派閥だったのかもしれないな。

 ドズルの派閥だったら、ガルマの関係で色々と……いや、それだとペズンをルナ・ジオンが使えなくなるか。

 

『その話は参考にさせて貰おう。それで、もしルナ・ジオンに接収されるのを断ると言ったら、そちらはどうする気だ?』

「そうだね。こちらとしても、必要があってペズンを接収に来たんだ。幾ら何でも、ここまで来て駄目でしたと言われたからといって、はいそうですかとは言えないよ。その時は多少不本意だが……力づくでという事になるだろうね」

 

 そんなシーマの言葉にダービットも本気の色を見たのだろう。少し考え……やがて、口を開く。

 

『少し、考えさせて欲しい』

「構わないよ。けど、こっちもそう長い間待っていられるような余裕がある訳じゃない。それこそさっきも言ったように、いつ連邦軍が来るか分からないからね」

『分かった。では、3……いや、2時間でいいから時間を貰いたい』

 

 シーマはそんなダービットの言葉に、即座に頷きを返す。

 

「じゃあ、今から2時間後にまた連絡を入れさせて貰うよ。一応言っておくけど、その2時間の間に妙な事をしたら、こちらも相応の態度を取らないといけなくなるのは分かってるよね?」

『了解した。……感謝する』

 

 その言葉と共に通信が切れる。

 

「どうなると思う?」

 

 シーマにそう尋ねると、扇子を手の中で弄びながら口を開く。

 

「そうだね。時勢が読めるのなら、こっちについてもおかしくはないと思うよ」

「時勢が読めれば、か。それはまぁ、確かにそうだろうな」

 

 ジオン公国が実質的な敗戦となった今の状況を考えれば、それでも降伏を否定するといったような真似は、普通ならしないだろう。

 ……ギレンに強い忠誠心を抱いているような相手であれば、あるいはそんな手段を取るかもしれなかった。

 ともあれ、今はペズン側がどう反応するのかを楽しみにして待つとしよう。

 そうしてシーマと話をしながら時間を潰し、約束の時間になったので再び通信が開かれる。

 向こうに映し出されたのは、当然のようにダービット。

 そのダービットは、若干緊張した様子で口を開く。

 

『条件付きで、そちらの要求を呑もう』

 

 そう、告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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