転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0259話

「ここがエヴァンジェリンさんのお家ですの?」

 

 エヴァの家であるログハウスを見ながら、あやかが呟く。

 結局歓迎会終了後に千鶴があやかへと模擬戦の件について話してしまい、最終的には千鶴とあやかの2人共付いてくる結果となったのだ。

 ちなみに、夏美に関しては演劇部の練習があるとかで歓迎会が終わるや否やすっ飛んでいったので心配無い。

 その後一端寮へと戻り、荷物を置いて着替えを済ませた俺達は昨日に引き続きエヴァのログハウスへとやってきた訳だ。

 ちなみに、一応だが昨日エヴァからもらった杖と本は持ってきている。下手に部屋の中に置いたままにして、誰かが興味を持ったりしたら大変だしな。

 そういう意味ではマーカーに関しても持ち歩いた方がいいのだが、何せただでさえ壊れているので出来るだけ衝撃を与えるのは避けたいという理由もあり、あやかの机の中に仕舞い込まれている。

 

「皆さん、ようこそいらっしゃいました。マスターがお待ちですのでどうぞ上がって下さい」

「では失礼させて頂きますわ」

 

 あやかの後に続き、千鶴と共にログハウスの中へと入っていく。

 昨日俺が魔法を発動させてボヤを出してしまった居間に関しては既に綺麗に元に戻っており、その様子に驚きながらもエヴァへと声を掛ける。

 

「来たぞ。それでどこでやる?」

「地下室だ。付いて来い」

 

 俺達を見た途端、持っていた紅茶のカップをテーブルに置いてさっさと地下へと向かうエヴァ。俺達は置いて行かれないようにその後を追う。

 

「模擬戦をやると伺っているのですが、地下なのですか?」

「そうだ。魔法使いらしい物を見せてやるよ」

 

 向かった先は恐らく倉庫として使われていたのであろう場所だった。ただ一つ違和感があるのは、中央部分にガラスの球体のような物が置かれている事か。その球体の中には城のような物が見える。

 

「あら、私これ知ってるわ。確かボトルシップとか言うんじゃ無かったかしら」

 

 千鶴が小首を傾げながらそう呟くが、少なくても中にあるのは船ではなく城だというのを考えるとボトルシップではなくボトルキャッスルとでも言うべき代物じゃないだろうか。

 だが、エヴァは俺と千鶴の会話を聞いて口元に自慢気な笑みを浮かべている。

 

「これはそんな有り触れた物じゃない。ダイオラマ魔法球と言ってな。……いや、まぁ詳しい話は向こうに行ってからだ。これに触れ」

 

 向こう? と思いつつも、千鶴、あやかと3人でそのダイオラマ魔法球とやらへ手を置く。すると次の瞬間には俺達の目の前の景色が変わっていた。

 

「馬鹿なっ、転移だと!?」

「ほう、分かるか」

 

 俺の言葉に笑みを浮かべているのはエヴァンジェリン。ただ、いつもと違うのは地面を歩いているのでは無く、空中に浮かんでいる事だろう。

 転移した先は、塔か何かの屋上らしき場所だった。今いる場所から向こう側に城らしき建物が見えるが、そこに続く通路は手摺りも何も無い状態だ。

 いや、待て。あの城は見覚えが……?

 

「そうか」

 

 その城の様子を眺めながら、ここがどこかを理解する。その様子を見ていたエヴァが感心したように口を開いた。

 

「気が付いたようだな」

「気が付いたって何にですの?」

 

 さすがと言うべきか、あやかは特に怯えた様子も無く塔の屋上に立ち、エヴァへと尋ねる。

 

「あらあら、いい眺めね」

 

 千鶴もまた、特に堪えた様子も無く塔の屋上から周囲を見回していた。

 

「ここは先程地下室に置かれてあったダイオラマ魔法球とか言うのの中だって事にだよ」

「……なるほど。言われてみれば、確かに向こうに見える城は見覚えがありますわね」

「さて、いつまでもここにいてもしょうがない。向こうの城に行くぞ」

 

 茶々丸を引き連れ、手摺りのない通路を進んでいくエヴァ。

 とは言っても、エヴァは空を飛んでいるので通路から落ちる心配は全くないのだが。

 茶々丸はガイノイドというだけあり、特に恐怖心を感じさせる事も無く通路を歩いて行く。

 

「じゃ、私達も行きましょう。……その、アクセル君。手を握ってもよろしいかしら?」

「ああ」

 

 右手で差し出されたあやかの手を握り、左手で千鶴の手を握ったまま手摺りの無い通路を進んでいく。2人が落ちないようにゆっくりと進んだ為に10分程掛かったが、特に何事もなく通路を渡りきる事に成功した。

 

「……エヴァンジェリンさん、せめて手摺りくらいは付けて欲しいのですけれど」

「ふん、この中に入れば地上を歩く等という真似をしなくてもいいのだから必要無いだろう」

「エヴァンジェリンさんはそうでも、私達は空を飛べないんですから」

「私の美意識的に手摺りというのは余り好みではないのでな。どうしてもと言うのなら……慣れろ」

 

 そう言いながら、エヴァンジェリンはどこからともなく取り出した水晶球をあやかへと渡す。

 

「これは?」

「その水晶球には魔法を掛けてある。見てみろ」

 

 そう言われ、水晶球へと視線を向ける俺達。そこに映し出されていたのはどこかの広い空間だった。周囲の風景から見て、恐らくこの城の外部のどこかだろう。

 

「私とアクセルが本気で戦う場所だ。お前達のような一般人がいては巻き込まれるだけだからな。戦闘を見るのなら、城の中からその水晶球を使って見ていろ。茶々丸」

「はい。では雪広さんに那波さん、私に付いてきて下さい」

「え? でも……」

 

 どこか心配そうにこちらへと視線を向けてくるあやかと千鶴。

 

「こっちは大丈夫だ。それに、お前達2人がいてはエヴァの言うように巻き込む可能性もある。離れた所からその水晶球を使って見るというのは俺も賛成だ」

「……分かりました。ではアクセル君、ご武運を」

「アクセル君、怪我をしないように気をつけてね」

 

 短くそれだけ言って、城の中へと入っていく2人と茶々丸。

 

「くくっ、会ってからまだ数日だというのに随分と好かれているな」

「好かれていると言うよりは、保護者的立場だと思ってるんだろう。……まぁ、この外見じゃしょうがないがな」

 

 俺の言葉に、ふと興味深げにこちらへと視線を向けるエヴァ。

 

「そう言えば、きちんと聞いた事は無かったがお前の実年齢は何歳なんだ? 少なくても、その見た目通りじゃないんだろう?」

「まぁな。とは言っても20代半ばといった所だ」

「……なんだ、そんなものか。私の勘も鈍ったものだな」

 

 どこか詰まらなさそうに溜息を吐くエヴァ。

 

「何歳くらいだと思っていたんだ?」

「200歳程度だな」

 

 その言葉に溜息を吐く。アクセルに転生する前の前世を合わせても50歳に届かない。

 

「お前は俺を買いかぶりすぎだな。……ちなみにエヴァの年齢は?」

「ざっと600歳といった所か」

「600歳!?」

 

 その予想外の数字に、さすがに驚く。その話が本当だとすると、目の前にいるお子様吸血鬼は大体1400年頃から生きている計算になる。

 ……その割には性格は子供っぽいものだが。吸血鬼になった時の年齢のままで精神年齢は固定されるのだろうか。

 

「さて、話はこのくらいにしておくか。戦闘地域に行くから付いて来い」

 

 そう言って空中を移動するエヴァ。その後を俺は当然ながら歩いて行く。

 空を飛んでいるエヴァを見ながら、ふと思う。もしかして念動力を使って自分をサイコキネシスで浮かせられれば俺も空を飛べるんじゃないか、と。

 エヴァを見る限りでは、この世界の魔法使いは空を飛ぶのが標準性能らしいので、今度一度試してみるのもいいかもしれない。

 歩き始めてから10分程経ち、俺とエヴァは城の前庭とも言える場所へ移動していた。もっとも前庭とは言っても、植物が植えられたりしている訳では無くただ広場になっているだけだが。

 

「確かにここなら戦闘をするのに好都合かもしれないな」

 

 周囲には特に建造物も無いので銃器による射撃戦には向かないかもしれないが、念動力やスライム、精神コマンドを使った戦闘と考えればそれなりにやれない事も無いだろう。

 

「っと、戦いの前にお前の血を多少貰えるか?」

「血?」

「ああ。この中では多少魔力が戻ると言ってもたかが知れている。だから強い魔力を持った者の血で魔力を回復させる訳だ」

「……血を吸われた影響で俺が吸血鬼になったりは?」

「お前程の魔力があるのなら、まず確実に吸血鬼化を無意識に無効化出来るだろうから心配はいらないさ」

「まぁ、それなら……手でいいのか?」

「本来なら首筋が一番なんだが……ああ、五月蠅い五月蠅い。分かった。腕で我慢するから騒ぐな」

「誰と話してるんだ?」

「雪広あやかと那波千鶴の2人だ。水晶球でこちらの様子を見ているからな。首筋から血を吸うと言ったらギャンギャン騒いでいた」

 

 まぁ、あの2人にしてみればあくまで俺は保護対象なんだろうからしょうがないと言えばしょうがない。

 

「ほら、とっとと腕を出せ」

 

 急かされるままにエヴァへと腕を突き出す。

 

「では、いただきます」

 

 手を合わせてそう言い、カプリと俺の腕へと噛みつき……

 

「っ!?」

 

 数滴の血を飲んだかと思ったら、瞬時に後退して何かに驚いたような目でこちらを見ている。

 

「どうした?」

「お前……本当に人間か?」

「いや、普通に人間のつもりなんだが?」

「……」

 

 俺の言葉を聞き、自らの身体の調子を確認するように確かめていく。

 不思議に思いつつも、エヴァのステータスを確認する。するとその数値は殆どが俺の血を吸う前とは比べものにならない程に高くなっており、魔力を意味するSPに関しても300近い数値を叩き出していた。

 高畑から聞いた話が事実なら、エヴァはサウザンドマスターとか呼ばれる魔法使いにより封印されていた筈。この数値を見る限りでは……

 

「封印が解けたのか?」

 

 封印という単語を聞き、眉を微かに顰めるエヴァ。

 

「誰から……いや、タカミチから聞いたか。封印自体は解けていないな。この状態が保てるのはこの別荘にいる間だけだ」

「別荘?」

「このダイオラマ魔法球の事だ。あの城は私の別荘だからな」

「なるほど。……となると、何にそんなに驚いているんだ? 元々魔力の回復の為に俺の血を飲んだんだろう?」

「ああ。だが、それにしたって数滴の血を飲んだだけでここまで回復するとは思っていなかったからな。お前の血は異常な程に高純度な魔力が含まれているらしい」

「それが俺に人間かと尋ねた理由か?」

「ああ。ここまで高純度な魔力を含んだ血なんて、それこそ私のような真祖の吸血鬼でも持っていないレベルだ。魔力の切れた魔法使いに一滴でも飲ませてみろ。恐らくその場で全快するぞ。……もっともお前の魔力にその魔法使いの身体が耐えきれれば、だがな。忠告しておくが、他の魔法使い共にはなるべく隠しておけ。もし知られでもしたら、それこそ何にどう使われるか分かったものではないからな」

 

 何と言うか、まさか自分の血にそれ程高純度の魔力が宿っているとは予想外だった。考えられる理由としては、SPの値が高いからか。……あるいは、スライムによる吸収の影響という可能性もある。

 どのみち他の相手に知られても良い事は無いようだから、エヴァに言われたように隠しておくのが無難だろう。

 

「ちなみに、高純度の魔力が宿ってるとなると味的にはどんな具合だったんだ?」

 

 血を吸って魔力を回復させるエヴァに取ってどのような味がしたのか微妙に気になり尋ねてみるが、エヴァは眉を顰めて一言で味を表現する。

 

「不味い」

「不味い? 高純度の魔力が宿っているんだろう?」

「だからこそ、だ。料理でも塩なり砂糖なりが大量に入っているとどうなる?」

 

 脳裏に浮かぶのは、以前コーネリアに食べさせられた試作料理。

 

「……不味い、な」

「だろう? だが味としては確かに不味いが、良薬口に苦しとも言う。そういう意味ではお前の血は超の付く一級品だよ」

「薬扱いされてもな……まぁ、いい。能力が回復したんなら早速始めようか」

「そうだな。感謝するぞ、アクセル・アルマー。封印前のように全快とは言わずとも、まさか8割程の力を使えるようになるとは思ってもみなかった。予想外の僥倖だ」

 

 その言葉を最後に、俺とエヴァは少しずつ離れて行き……同時に地を蹴る!




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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