転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0260話

 最初に飛んできたのは一昨日の夜にも使われた氷の矢。その数10本。

 一昨日は呪文を唱えてフラスコやビーカーのような物を使って行使されていたその魔法だったが、これが8割の力という事なのだろう。特に呪文を詠唱する様子も無く放たれた。

 だが俺も一昨日の夜のようにスライムの吸収による体調悪化がある訳でも無い。飛ばされてきた氷の矢の弾道を確認しつつ最小限の動きで回避しながらエヴァンジェリンとの距離を縮めていく。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。来れ氷精 爆ぜよ風精 弾けよ凍れる息吹…… 氷爆!!』

 

 氷の矢では防げないと悟ったのか、エヴァと俺の間に無数の氷の塊が出現してそれが爆発。凍気と爆風、氷の破片が周囲へと撒き散らされる。

 

「集中、加速」

 

 その様子を確認し、精神コマンドの集中と加速を使用する。高まった集中力により氷の破片を回避し、加速を使って上がった速度で凍気と爆風の範囲から回り込むようにして回避する。

 

「そのワンフレーズで使用可能な身体強化魔法はさすがだな。だが、これはどうだ?」

 

 その言葉と共に、瞬時に俺の周囲へとエヴァの魔力で出来たと思われる糸が張り巡らされる。そのまま突っ込めば絡め取られるのが分かっているのでその場で急停止。

 

「スライムっ!」

 

 同時に空間倉庫を展開してそこからスライムの触手を伸ばして魔力の糸を切断していく。

 

「ちぃっ、8割の力で編まれた魔力糸をこうも簡単に破るか。チャチャゼロ!」

「アイヨ、御主人」

 

 声が聞こえると同時に、背後から何かが飛びかかってきたのを感知してその場を移動する。すると次の瞬間には大鉈のようなものが俺のいた空間を斬り裂くように叩き付けられ、石畳へとめり込んでいた。

 

「ほう、さすが人形使いと呼ばれているだけはあると言うべきか」

「ソウ褒メルナヨ。ソレヨリ存分ニ楽シモウゼ」

 

 その大鉈を振るったのは、俺の膝丈程の大きさしかない人形だった。カタコトながら喋っているという事は、恐らくエヴァの使い魔とかその辺なのだろう。

 

「全力で戦うと言ったのだ。そのチャチャゼロを使っても構うまい?」

「もちろん構わない。俺もスライムを使わせて貰っているし……なっ!」

 

 エヴァと会話をしながら脳裏に空間倉庫のリストを表示。サブマシンガンを2挺取り出し、チャチャゼロと呼ばれた人形の方へと弾幕を張る。

 

「ケッ、コンナ豆鉄砲ガ効クカヨ」

 

 大鉈で銃弾を防ぎながらそう言ってくるチャチャゼロだが、こちらの目的は足を止める事だ。

 

「スライムっ!」

 

 俺の声に反応したスライムが、その身を鞭と化してチャチャゼロへと襲い掛かる。

 同時に、背後に展開したスライムの触手がエヴァからこちらへと飛ばされてきた氷の矢を纏めて切断する。

 

「ゲッ、早イ!?」

 

 予想外の速度だったのだろう。チャチャゼロは驚きの声を上げながらスライムに弾き飛ばされていく。

 取りあえずこれで暫くはエヴァに集中出来るが……ちぃっ!

 念動力によりこちらへと向かって来る何かを察知し、その場を咄嗟に飛び退る。

 次の瞬間には、つい数瞬前まで俺のいた場所へと複数の氷の矢……というよりは槍のようなものが突き刺さっていた。

 

「不意を突いたかと思ったが……お前、まだ私に隠しているものが色々あるな?」

「さて、どうだろうな? だがそれはそっちも同じだと思うが」

 

 エヴァと会話をしつつ、再度脳裏に空間倉庫のリストを表示する。

 そこで選んだのは手榴弾だ。それもただの手榴弾では無く、いわゆる破片手榴弾と呼ばれるタイプの物だ。普通の手榴弾に比べて中に硬質鉄線が収められている分、その破壊力は脅威の一言だ。開発されたのは1950年代と年代的には既に旧式どころかジュラ紀の遺産と言っても過言ではないこの武器だが、その後、新西暦に至るまで改良に改良を重ねられてきたこの兵器は対人兵器としては凶悪極まりない代物だ。

 だが、相手は真祖の吸血鬼。この程度は必要だろう。

 

「ふっ!」

 

 空間倉庫から実体化させた破片手榴弾をエヴァへと向かって投げつけ、自分の周囲はスライムで覆い尽くす。

 

 ドガァァァァっっっっ!

 

 数秒後、轟音を立てながら猛烈な破壊の嵐が城の前庭に巻き起こるが、その中心近くにいた俺はスライムのドームとも言える物に守られていた為に無傷でやり過ごす事が出来た。

 これなら少なくても多少のダメージは……

 そう判断し、スライムのドームを解除した俺の目に入ってきたのは氷で出来た巨大な盾だった。

 その盾が次の瞬間には砕け散り、大きい破片の幾つかがこちらへと向かって飛んで来る。

 

「ちっ!」

 

 舌打ちしながらその場から飛び退り視線を盾の向こう側へと向けると、そこには無傷のエヴァが口元に笑みを浮かべながらこちらを眺めていた。

 

「以前の戦いでお前が銃を使っていたのは見たからな。なら、その他の兵器を使えると考えるのも当然だろう? そして私はそれに対応する魔法を持っていた、それだけだよ。……もっとも、本来この氷盾は敵の攻撃魔法を反射する為に使う防御魔法なのだがな」

 

 ……なるほど。そう言えば確かにエヴァと初対面の時にサブマシンガンを使ったのを見られていたな。

 

「では、次は私から行かせて貰おうか。一応手加減はするつもりだが……死ぬなよ?」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべながら、エヴァの身体から何かの力らしき物が爆発的に噴出される。恐らくあれこそが魔力、俺で言うSPなのだろう。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。来たれ氷精 大気に満ちよ 白夜の国の凍土と氷河を……こおる大地!』

 

 その魔法が解き放たれるとエヴァから俺へと直線上に地面が凍結し、複数の鋭い氷柱が地面から突き出ながらこちらへと向かって来る。

 

「加速」

 

 このままここにいては危険だと判断し、精神コマンドの加速の効果を使い横っ飛びに移動してエヴァの魔法効果範囲から回避する。だが……

 

「ふはははは。お前の身体能力を考えれば、この程度の攻撃を回避するのは予想済みだ。続けて行くぞ」

 

 空中へと飛び上がったエヴァから、再び魔力が噴出され始める。

 

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。来たれ氷精 闇の精 闇を従え吹けよ常夜の氷雪……闇の吹雪!』

 

 その魔法が発動すると、周囲が暗くなり同時に猛烈な吹雪が吹き荒れる。

 

「ちぃっ!」

 

 吹きすさぶ吹雪。当然それは俺の身体から熱を奪い、次第にこちらの動きを鈍らせていく。

 先程のこおる大地とかいう魔法なら効果範囲が限定されていたから回避するのはそう難しくもなかったが、この闇の吹雪というのは広範囲に吹雪を起こす為に回避しようにも回避出来る場所が無い。

 どう対応する? このままではジリ貧だ。だが、現状で俺の出せる手札にこの吹雪に対抗出来るような手段は……いや、待てよ。魔法には魔法か。そして俺には魔法の杖と昨日覚えた火の魔法がある。なら!

 空間倉庫のリストから昨日エヴァに貰った杖を選択し、そこにSPを集中させる。

 

『プラクテ ビギ・ナル……火よ灯れ!』

 

 轟!とでも表現すればいいのだろうか。SPを50近く一度に注ぎ込んだ所、3m近い炎の塊が出現し、吹きすさんでいた吹雪を全てとはいかないが、その殆どを消滅させる事に成功する。だが……

 

「ちぃっ、やっぱり杖が持たないか」

 

 所詮は初心者用の杖という事なのだろう。俺のSPによって出現した炎に耐えきる事が出来ずに、炭と化してボロボロと崩れていく。

 

「驚いたな。初心者用の呪文で私の闇の吹雪を相殺するとは。……だが、その杖ではもう魔法を使う事は出来ないだろう? それで私とやり合えるのか?」

「何、この一撃を凌いだら後は何とかするさ」

「ほう、どうやってだ?」

「こうやって……だよ!」

 

 エヴァを睨みつけ、念動力を発動。一昨日のようにその身動き一つ出来ないようにして素早く近付いていく。

 銃と同じくエヴァの知っている攻撃方法ではあるが、銃とは違ってほぼノータイムで使用可能な攻撃方法だ。種を知っても対処は難しいだろう。

 

「っ!?」

 

 突然身体が動かなくなり、一瞬だがその目に動揺を浮かべるエヴァ。

 その状態のエヴァへと素早く近付き、鳩尾へと拳を叩き込もうとして……

 

「何っ!?」

 

 エヴァの身体へと触れる数cm程手前で不可視の何かに拳の動きを止められる。

 いや、不可視ではない。空中に魔法陣が浮かび上がり俺の拳を受け止めているのだ。

 

「くくっ、ただでさえ奥の手を幾つも隠し持っているお前に無防備に挑むとでも思っていたのか? それに今の私はお前の血のおかげで全盛期に近い力を取り戻している。念動力とか言ったか? それにしたって……」

 

 念動力で縛り付けられている筈の身体を真祖の吸血鬼としての膂力で無理矢理動かし、徐々に念動力を打ち破っていくエヴァ。イメージ的にはロープで縛り上げられていたのを力尽くで引きちぎるというのが近いだろうか。

 

「素早く動けるのは自分だけだと思うなよ?」

 

 そう告げたエヴァの姿が一瞬ぶれたかと思うと、次の瞬間にはその場からいなくなり俺から5m程離れた場所へとその姿を現していた。

 これが以前から何度か聞いていた身体強化魔法、か?

 

「頭上に注意だ」

 

 ニヤリとした笑みを浮かべながら魔力がエヴァの身体から迸る。

 

『氷神の戦槌』

 

 呪文を唱える事も無くワンフレーズで発動したその魔法は、俺の頭上に巨大な氷の塊を産み出してこちらへと落下して来る。

 

「加速っ!」

 

 精神コマンドの加速を使い、エヴァとは逆の方向へと移動して距離を取る。だが……

 

「甘いぞ」

 

 エヴァの攻撃は留まる所を知らず、再びその小さな身体から魔力が迸る。

 

『氷槍弾雨』

 

 氷の矢とは比べものにならない程長く鋭いそれは、先程チャチャゼロとやりあっていた時に撃ち込まれたのと同じ物だろう。その槍をスライムを使って防ぎつつエヴァとの距離を測る。

 魔法陣による障壁があろうと、そうと知ってさえいれば俺には精神コマンドの直撃というある種反則じみた術があるのだ。唯一の難点はその効果をエヴァに知られてしまう事だが、この模擬戦を引き受けた以上は今更そんな事を気にしてもしょうがないだろう。

 意識を集中しながらエヴァとの距離を測り、口を開く。

 

「そろそろ決めさせて貰うぞ」

「ほう? 次はどんな隠し球を見せて貰えるのかな?」

 

 からかうようにそう言いつつも、エヴァも油断する事無く身体から魔力を迸らせていつでも魔法を使えるように準備している。

 その様子を見ながら脳裏に空間倉庫のリストを表示し、スタングレネードを選択する。ちなみにこのスタングレネード、普通とは違って閃光を重視する作りとなっており、音自体は殆ど出ない閃光弾とでも呼ぶような代物だ。

 

「ふっ!」

 

 鋭い呼気を吐きつつ、スタングレネードをエヴァの方へと放り投げる。

 

「何だ、またこれか? そうそう同じ手段が私に通じると……」

 

 呆れたような口調のエヴァが再び氷の盾を作り出そうとするが、遅い!

 殆ど無音で爆発したスタングレネードが、周囲の空間を圧倒的なまでの光で埋め尽くす。

 

「ちぃっ、目眩ましか!」

 

 作り出したのが土の盾だったりしたら、この光をある程度ではあるが防げたかもしれない。だが、エヴァが使ったのは向こう側が透けて見える氷の盾だった為、その術者であるエヴァは強烈な光をまともに浴びてしまう。

 ……もっとも、それは俺も同じなのだが。何せ一瞬でも目を瞑ってエヴァの姿を見失うと何をしてくるか分からないのだからしょうがない。

 とは言え、俺の場合は自分で投げたスタングレネードだけに意識と心構えが出来ていた。そして、念動力により周囲を探査するという真似も可能だ。つまり……

 

「っ!?」

 

 閃光により目が眩み、周囲の状況が全く理解出来無くなる。だが、俺はそれに構わずに念動力を使いエヴァの位置を捕捉し、そのまま距離を縮める。

 

「直撃」

 

 精神コマンドの直撃を使い、右手を繰り出し……エヴァの張った魔法障壁とやらを直撃の効果でぶち破りそのままエヴァの喉元を鷲掴む。

 

「ぐっ!」

 

 まだ視覚の利かないままだが、その呻き声は間違い無くエヴァのものだろう。だが……

 

「引き分け、か」

「……らしいな」

 

 憮然とした口調でエヴァが頷く。

 その状態のまま数秒もするとようやく視界が元に戻り、現在の状況がきちんと確認できるようになった。

 俺の右手はエヴァの喉元を鷲掴み、いつでも掻き毟れる態勢だ。だが、同時にエヴァの右手もまたビームソードのようなものを形成して俺の首元へと突きつけていた。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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