転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0261話

「まさか、吸血鬼としての力をここまで取り戻した私と魔法も無しに互角にやり合うとはな。ますますお前に興味が湧いて来た」

 

 エヴァがそう言いながら、右手に作り出していたビームソードのような物を消し去る。

 

「俺としてはここまで手の内を晒して引き分けというのが微妙な所だがな」

「くくっ、まあそう言うな。……そもそも、お前は生身での戦闘が専門では無いだろう?」

「……良く分かったな。確かに俺の専門はいわゆる人型兵器のパイロットだが」

「ほう、お前の世界では人型兵器が実現しているのか。随分と技術の進んだ世界のようだな。……もっとも、そうでも無ければ次元を渡り歩くなんて真似は出来ないか」

 

 そこまで話を聞き、まだエヴァの喉元に突きつけていた右腕を離してから話の続きを促す。

 

「お前の能力自体は確かに破格と言ってもいいだろう。あのスライムとかいうのにしても、身体強化魔法にしても、どこからともなく武器を取り出す術についてもな。だが、それに対して実際に戦闘を行うとお前の動きはその戦闘経験や身のこなしに対してどこか稚拙に感じたからな。それがお前が私やこの学校にいる魔法使い達と違って生身の戦いが専門では無いと感じた理由だな。……それにしても……」

 

 エヴァがチラリと地面へと視線を向ける。

 そこには炭と化した初心者用の魔法の杖の残骸が落ちている。

 

「まさか火よ灯れなんていう初心者用の魔法で私の闇の吹雪を部分的にとは言え相殺するとはな。お前のようにサウザンドマスター以上の馬鹿魔力でも無ければ出来ないだろうよ」

 

 エヴァの台詞に思わず苦笑を浮かべる。

 

「とは言っても、魔法を使う度に杖を壊しているからな。その辺をどうにかしないと戦闘に魔法を組み込むのはちょっと難しいな」

「何、それなら簡単な話だ。ようは、杖がお前の魔力に耐えきれないのが原因な訳だから、初心者用の杖ではなくそれなりの魔法発動体を使えばいいのさ。……ちょっと待ってろ」

 

 エヴァがそう言い、目を瞑る。そして数秒後、目を開けるとニヤリとした笑みを口元に浮かべながら得意気に声を掛けてくる。

 

「今、茶々丸がお前の保護者2人を連れてここに向かっているが、そのついでにいい物を持ってくるように言っておいた。楽しみに待っていろ」

「いや、だが……そうほいほい俺に物をやってもいいのか?」

「何、8割程の力だとは言ってもこの私と互角に戦った褒美だと思え。それにお前の血は、味はともかく効果は圧倒的だったからな。その礼も兼ねている」

「それはありがたいが……」

「それに元々私の物では無いのだから、お前が気にする必要は無い」

「エヴァの物じゃない?」

「ああ。言ったと思うが、私は齢600歳を越える真祖の吸血鬼だ。魔法使い共は吸血鬼という存在が禁忌か何からしくて、私は賞金を掛けられた訳だ。で、その賞金目当てに襲ってきた賞金稼ぎ共の遺産と言うか、奪った品が大量にあってな。お前にやるのもその1つでしかない」

 

 なるほど。賞金稼ぎ狩り、みたいな生活をしていたのか。

 

「そう言えば、さっきの戦闘でお前も身体強化魔法? とかいうのを使ったのか?」

 

 先程のエヴァの動きを思い出し尋ねる。瞬時に移動したその速度は、俺の精神コマンドの加速に匹敵するレベルのものだった。あれが魔法使いとしての標準的な身体強化魔法だとしたら、魔法使いに対する認識を改めなければならない。

 何せ俺の想像する魔法使いは後衛で魔法を撃ってる感じのイメージだからな。

 

「ん? あぁ、あれは瞬動という技だな。厳密には魔法では無いからある程度以上の使い手なら普通に使える技だ。……色々と欠点も多いがな」

「瞬動?」

「ああ。足に魔力や気を込めて地面を蹴り短距離を高速移動する技術だ。お前程の戦闘センスがあるのならその気になれば使いこなすのも難しくないだろう。……だが、お前にはあの無詠唱で使える身体強化魔法があるし覚えなくてもいいんじゃないか?」

 

 確かに精神コマンドがあればいらない……か?

 一瞬そう思ったが、加速の効果は速度の上昇だ。つまり、その瞬動とやらを使いながら加速を同時使用出来るんじゃないか?

 まぁ、駄目で元々。同時使用出来ればラッキー程度の認識だが。

 

「いや、使える手札は多い方がいいからな。後で練習してみる」

「そうか? まぁ、お前がそう言うのなら別にいいが。それよりもお前のスライムとか言ったか。ちょっと見せてみろ」

「ん? ああ」

 

 空間倉庫を展開し、スライムの触手をエヴァの方へと伸ばしていく。

 

「触っても構わないか?」

「消化・吸収能力は俺の意志で発動するからな。この状態では特に危険は無い」

 

 俺の言葉を聞き、エヴァがスライムへと触れる。

 最初は指で突き、やがて手の平でペタペタと。

 

「ほう、私の知っているスライムとは触感が随分と違うな」

「やっぱりスライムとかいるのか?」

 

 魔法使いがいる世界だ。スライムがいてもそうおかしくは無い。

 

「ああ。とは言っても、こっちの世界では無く向こうの世界だがな」

「向こうの世界?」

「そうだ。……ん? 言ってなかったか。魔法世界という、私達が今いるこの世界と対になっている一種の異世界だな。そこはいわゆるファンタジー風な世界だと思って貰えばいい。当然ドラゴンやスライムといった存在もいる」

 

 それは興味深いな。ドラゴンを捕獲してホワイトスターのキブツにある牧場で飼育とか出来たら面白い事に……いや、ちょっと待てよ? 俺のスキルには召喚魔法があるんだからもしかしてドラゴンを召喚出来たりするんだろうか。

 

「エヴァ、召喚魔法はどう使う?」

「……難しいな。元々私はそちら方面が得意じゃないというのもあるが、召喚魔法自体がそれなりに難易度の高い魔法だからな。私が知っているのは一つだけだ。自分の力で屈服させた対象と契約を結び、召喚するという方法だな。他にも交渉による契約なんかもあると言うが、私は詳しくは知らん。何せ私は元々人形使いだからな。手駒は基本的に人形だ」

「となると、竜なんかを召喚する為にはその魔法世界に行かないと駄目か」

 

 俺の言葉に頷くエヴァ。

 

「そうなるな。一応こちらの世界でも秘境とかには竜なんかも生き残っている可能性が無いとは言わないが、かなり分の悪い賭けだろう」

「分の悪い賭け、か」

 

 そのフレーズに、思わず口元に笑みを浮かべる。

 

「どうした?」

「いや、俺の知ってる奴なら『分の悪い賭けは嫌いじゃ無い』とか言ってその秘境に向かいそうなんでな」

「くくっ、随分と道楽的なギャンブラーが知り合いにいるんだな。余程負けが込んでそうな性格だな」

 

 エヴァの言葉に首を振る。

 

「いや、そうでも無い。確かに普段は負けが込むが最後の最後で大きく賭けて勝つタイプだな」

「……最後の最後で勝っても、それまで負け続けているのなら総合的にはプラスマイナスゼロだろうに」

「ああ、そいつの恋人もそう言って嘆いていたよ」

 

 エクセレンがそう言って嘆いていたのは、OG1だったか、あるいはOG2だったか。

 そんな風に内心で考えていると、こちらへと近付いてくる気配を感じ取る。

 

「アクセル君、無事ですか!? 怪我は無いですよね! ちょっと見せて下さい」

 

 茶々丸に連れられてきたあやかが、千鶴をその場に置き去りにしてこちらへと突っ込んでくると、そのまま俺の身体をペタペタと触って怪我がないかを確認していく。

 

「大丈夫だ。俺もエヴァも特に怪我らしい怪我はしていない」

 

 そう言ってもあやかとしては自分の目で確かめるまで安心出来ないのか、俺の身体をまさぐっている。

 

「はぁはぁ、アクセル君の身体……こんなに小さくて可愛らしいのにまるで戦士のような身体で、あああああ!」

 

 ……と思ったら、例の如くトリップしてハイテンションになっていた。

 

「あらあら、あやかったら」

「あやかさんはどうしたのでしょうか?」

 

 千鶴はいつもの如く笑みを浮かべてそんなあやかを見守り、茶々丸は小首を傾げて理解不能な状態になっていた。

 

「ええいっ! こんな所で発情するなぁっ!」

 

 エヴァがどこからともなく取り出したハリセンであやかの頭頂部に思い切り突っ込みを入れる。

 本来なら身長差があってエヴァがあやかの頭に突っ込みを入れるのは無理なのだが、現在のエヴァは俺の血のおかげで魔力を取り戻している為、普通に空を飛んでいる。

 

「エヴァンジェリンさん!? 貴方には言いたい事が山程あります! 一体何のつもりでアクセル君にあんな危険な魔法を使ったのですか! あの吹雪や氷の塊を頭上から降らせるなんて真似、下手をしたらアクセル君が死んでしまうでしょう!」

 

 頭頂部への突っ込みで再起動したあやかは、エヴァへと向かってがーっと喚き立てる。だが、エヴァはそれを鼻で笑って無視して茶々丸へと視線を向ける。

 

「茶々丸、持ってきたか?」

「はい。これでよろしいでしょうか?」

 

 茶々丸が差し出したのは、一種の腕輪のようなものだった。エヴァはそれを見て頷くと、俺の方へと視線を向ける。

 

「茶々丸」

「はい。アクセルさん、どうぞ」

 

 渡された腕輪をじっくりと見る。外側から見る分には妙な紋様が描かれている普通の腕輪にしか見えないが、その内側には何やら俺の読めない文字らしき物で何かが刻み込まれていた。

 渡されたその腕輪は、大人が付けるようなもので子供化した俺にはぶかぶかだ。

 

「安心しろ。サイズを自動的に合わせてくれる機能が付いている。それにその腕輪ならお前の馬鹿魔力で魔法を使っても壊れはしないだろう。本来は指輪型の魔法発動体をやろうかとも思ったのだが、私の持っている指輪型ではお前の魔力を処理しきれるかどうか分からなかったからな。より処理能力の高いその腕輪を選ばせて貰った。……もっとも、その腕輪は腕輪で多少の問題があるんだが」

「問題?」

「ああ。その腕輪は確かに多くの魔力を受けても初心者用の杖と違って破損しないだろう。だが、その為と言うか、そのおかげと言うか、そのせいと言うか……魔法を使う際に多少だが本来より消費が激しくなるんだ」

「ふむ、なるほど……」

 

 まぁ、SPブーストを持っている俺にしてみれば多少消費SPが多くても特に問題は無かったりするのだが。

 

「どうする? 消費魔力が大きくなるというのは魔法使いにとってそれなりにダメージがでかいが」

 

 微妙に心配そうな顔をするエヴァへと苦笑を向け、その腕輪を右腕へと装着する。

 

「気にするな。多少魔力の消費が大きくなった所で特に問題は無いさ。それよりも魔法という手札を使える方が重要だ」

「そ、そうかそうか。うむ、ならば私に感謝するがいい!」

 

 空中に浮かびながら腰に手を当て、フハハハハ、とばかりに高笑いをするエヴァ。

 その空中に浮かんでいるのを見て、ふと考える。空を飛ぶというのは魔法的には風とかそっち系統じゃないのか? と。

 だが、エヴァのステータスにあるスキル覧には魔法(風)とは一切表示されていない。これは、もしかして……

 

「エヴァ、ちょっと聞きたいんだが」

「うん? 何だ? 今の私は非常に機嫌がいいからな。何でも答えてやるぞ」

 

 ……さて、ステータス表示に関してはエヴァにも秘密にしているからな。教えても構わないような気もするが、いざという時に使える手札は多い方がいい。

 

「さっきの模擬戦でエヴァが使ったのは基本的に氷属性の魔法だったよな?」

「ああ。私の得意な属性が闇や氷なのでな」

「なら……そうだな、雷や炎といった魔法は使えないのか?」

 

 エヴァのスキルには雷や炎といった魔法スキルは存在していない。俺の常識で考えるとこれらの魔法をエヴァは使えない筈なのだが。

 だが、俺のそんな疑問に対してエヴァはあっさりと首を振る。……左右に。

 

「いや、確かに得意属性程ではないが雷だろうが炎だろうがそれなりに使えるぞ」

 

 そう言って、指先に火を出す。

 恐らく『火よ灯れ』だろう。先程の戦闘でも感じたが、熟練してくれば呪文の詠唱をする省略するのも可能なようだ。

 

「……興味深いな」

 

 思わずといった様子で呟く。今日の模擬戦は色々と気が付かされる事も多い実りあるものだったな。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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