転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2754話

「ここが……その、ガッターがいる場所?」

 

 以前来たのと同じ場所で、マーベルは慎重に周囲を見回していた。

 マーベルにしてみれば、恐獣は初めて見る……いや、一応俺が倒したガッターを見ていたし、別に初めてって訳じゃないか。

 それ以前に、ユニコンとかも分類的には恐獣になるのか?

 まぁ、その辺は詳しく考えなくてもいいか。

 

「ああ。前回来た時はそれなりにガッターがいたんだけど、今日はどうだろうな。縄張り意識が強いらしいから、ゲドがいるのを見れば向こうから勝手に出て来てくれそうだけど」

「それは、私が危険という事じゃない?」

「そうとも言う。けど、マーベルもしっかりと戦いを経験しておく必要があるのは間違いないだろ?」

 

 そう言うと、マーベルは緊張した様子で頷く。

 自分で恐獣と戦うと決めても、実際に戦うのはこれが初めてなのだから、緊張するのもしょうがないか。

 

「安心しろ。俺は生身でもガッターを倒すことは出来る。最初はマーベルに任せるけど、いざとなったらすぐに俺が助けに入るから」

 

 恐獣という大袈裟な名前でも、生き物であるのは変わらない。

 そうである以上、首を切断すればそれで死ぬのだ。

 その上、ガッターは恐獣……いや、野生の獣的な存在だけに、頭がいい訳でもない。

 倒すのはそう難しくはなかった。

 

「取りあえず、ゲドを出すぞ。マーベルはそれに乗って、いつ戦闘があってもいいように準備をしてくれ」

「……ええ」

 

 緊張の為だろう。数秒の沈黙の後で、やがてマーベルが頷く。

 そこまで緊張しなくてもいいと思うんだけどな。

 ともあれ、実際にゲドに乗ってしまえば緊張も幾らかマシになるだろうと判断し、ゲドを取り出す。

 うん、改めて見るとでかいな。

 いや、MSとかに比べれば小さいんだが、バイストン・ウェルにいる者達にしてみれば巨大……いや、恐獣とかが結構な数いるって話だし、それを考えればそこまで大きさを気にする必要もないか?

 

「じゃあ、乗るわね」

「ああ。ガッターが出て来たら……どうする? 最初は俺が弱らせてから、最後にマーベルが参加するか? 見たところ緊張しているみたいだし、そっちの方がいいと思うんだけど」

 

 気を遣ってそう言ったのだが、マーベルは首を横に振る。

 

「いえ、いつまでもアクセルに甘えている訳にもいかないから、私がやるわ」

 

 決意の籠もった言葉で、そう言ってくる。

 この辺り、すぐにやる気になるのは性格だよな。

 こういう時に怖がっているような奴は……いざという時に頼りにならない事が多い。

 もっとも、そういう性格の奴が一度覚醒すると無双するようになったりするのだが。

 

「分かった。なら、気をつけろよ」

 

 そう告げると、マーベルは頷いて片膝を突いている状態のゲドのコックピットに乗り込む。

 さて、後はどうやってガッターを誘き寄せるかだが……そう簡単にガッターが姿を現すとは思えない。

 いや、それともガッターだから何も考えずにいきなりこっちにやって来る可能性も否定は出来ないか?

 そんな風に思ってる間に、ゲドが起動した。

 

「マーベル、調子はどうだ?」

 

 ゲドは……いや、オーラバトラーはと言うべきか、イメージで動かすという割合が強い以上、その操縦に慣れるのが早いというメリットがあると同時に、その時の体調によって機体の動きが悪くなるというのもある。

 イメージが大きな意味を持つだけに、その辺は当然の事だった。

 それでも、操縦桿とかそういうのがあるので、完全にイメージで操作する訳ではないというのは、救いか。

 

『ええ、大丈夫よ。問題ないわ』

 

 外部スピーカーでマーベルがそう言ってくる。

 そう言えば、今更の話だがオーラバトラーにも外部スピーカーがあるんだな。

 その辺の技術もショットやゼットはどうにかしたといったところか。

 

「分かった。なら、まずはこの状況に慣れる為に森の中に入るぞ」

 

 今までマーベルが訓練をしてきたのは、あくまでも機械の館の周辺……つまり、特に障害物らしい障害物は存在しない平地でだ。

 勿論、平地であっても段差になっていたりといったような軽い障害物はあっただろうが、言ってみればそれだけだ。

 この森のように、木々が生えているといったような障害物は存在しなかった。

 バイストン・ウェルでオーラバトラーを使うとなると、当然だがこういう場所での戦いも多くなる筈だ。

 いや、もっと正確には恐獣と戦う可能性が高いのだから、オーラバトラーの操縦訓練をする上では木々の生えている場所での戦いというのは、決して少なくはない筈だった。

 そうなると、今日戻ったらショットに……いや、ドレイクに言った方がいいのか?

 ともあれ、機体を動かす練習をするのなら、こういう場所で行った方がいいと、そんな風に言っておいた方がいいかもしれないな。

 

『ええ。行くわ』

 

 若干緊張した様子で告げるマーベル。

 やっぱり初めての実戦という事で、緊張しているのだろう。

 それは分かるが、それでも緊張のしすぎは戦いになった時に苦戦する要因となる。

 さて、そうなるとどうしたものか。

 今までの経験からすると、この類の緊張というのは一度戦いを潜り抜けてしまえば、そこまで気にする事もないんだよな。

 だとすれば、なし崩し的に一度ガッターと戦わせてみるか? 幸い、もうこっちに向かって来ているし。

 以前ここでガッターを倒してから、まだそんなに時間は経っていない。

 にも関わらず、既にこの場所を自分の縄張りとしているガッターがいるというのは……いやまぁ、俺達にとってはそう悪い話じゃないけど。

 

「マーベル、早速向こうからのお出ましだ。準備はいいな?」

『もう来るの!?』

 

 ゲドから聞こえてくる、マーベルの驚きの声。

 マーベルにしてみれば、まさかこんなに早くガッターが姿を現すとは思ってもいなかったのだろう。

 

「ああ。前にも言ったと思うが、ガッターは縄張り意識が強い。そこにゲドのようなオーラバトラーがやって来たのを考えれば、当然排除しようと……もしくは倒して餌にしようとするだろうな」

『餌?』

「そうだ」

 

 マーベルはあまり自覚がないようだったが、オーラバトラーの筋肉……オーラマルスは、恐獣の筋肉を素材として作られている。

 加工されている以上、生身の肉そのままといった訳ではないが、それでも肉は肉だ。

 ガッターにしてみれば、自分が食べる肉としては十分許容範囲内であると、そう考えても間違いではなかった。

 もし何らかの理由で遭難するような事になった場合、もしかしたらオーラマルスを食べて生き残るといったような事も出来るかもしれないな。

 オーラバトラーに乗っていてどうにかなるというのは、あまり想像出来ないが。

 というか、もしどうにかなったとしても、オーラバトラーの中に乗っていた方が安全度は高い筈。

 そんな事を考えていると、やがてガッターが姿を現す。

 その大きさは、俺がここで倒したガッターの中でも大きな方だろう。

 間違いなくゲドよりも大きい。

 

「さて、まずはどうする? 俺が攻撃するのか、それともマーベルだけでやるか」

『私だけでやるわ』

 

 そう告げるマーベルの様子に、少しだけ意外に思う。

 てっきり最初は俺が攻撃して、それでマーベルが最後の一撃を与えるといったような事になるとばかり思っていた為だ。

 だが、マーベルは自分だけで戦うと言った。

 これはマーベルの性格もあるのだろうが、このバイストン・ウェルで生き抜く事を決意したといったところか。

 

「聞いた俺が言うのもなんだけど、大丈夫か?」

『分からないわ。けど、やれるだけやってみる。それにもし危険になったら、アクセルが助けてくれるんでしょ?』

「ああ。だから、思い切りやれ」

「グギャアアアアアア!」

 

 森の中から姿を現したガッターが、ゲドの姿を見つけると大きく鳴き声を上げて牽制する。

 恐らく……いや、間違いなくゲドを自分と同じような恐獣だと思っているのだろう。

 オーラバトラーを見た事がないのなら、それも当然かもしれないが。

 

『すぅ……はぁ……行くわ!』

 

 深呼吸の音がして、決意を固めたのかマーベルはオーラソードを手にガッターに向かって走り出す。

 

『やああああああっ!』

 

 ガッターは空を飛べないのだから、ゲドで空を飛びながら攻撃すればいいと思うんだ、どうやらマーベルは緊張してそこに思いつかなかったらしい。

 また、やる気になったのはいいが、やはり命懸けの戦いという事で怯えている部分もあるのか、ゲドの動きが鈍い。

 この辺、ゲド……いや、オーラバトラーの操縦システムってやっぱりマイナス部分も大きいよな。

 機械の館の近くで訓練している時の動きが10だとすれば、ガッターに向かって攻撃を行ったゲドの動きは4……いや、3くらいか?

 つまり、マーベル本来の実力の30%くらいしか出ていない訳だ。

 そして当然ながら、まだオーラバトラーでの戦闘に慣れていないマーベルが実力の30%しか出せないとなれば……

 

「グギャアアア!」

 

 振り下ろされたオーラソードも、練習の時と比べると速度も鋭さも足りず、あっさりガッターによって回避されてしまう。

 そしてガッターにしてみれば、ゲドは自分の敵対者であると同時に餌でもあり……次の瞬間、短い手を振るってゲドに一撃を加える。

 

『きゃあっ!』

 

 悲鳴を上げるマーベルだったが、ガッターの一撃を咄嗟にオーラソードで受け止めた点は褒めてもいいだろう。

 とはいえ、重量差からか吹き飛ばされたが。

 

「グオアアアアア!」

 

 そうして吹き飛ばされたゲドに向かい、追撃の一撃を放とうとするガッター。

 どうする? ここで助けた方がいいか?

 そう思ったが、マーベルの乗っているゲドが動いたのを見て伸ばした手を一旦止める。

 ガッターの一撃を何とか後方に跳躍して回避すると、そのまま一度距離を取る。

 攻撃する体勢を整え、そこにガッターが向かって突っ込んでいく。

 自分よりも小さなゲドだけに、体重で押し潰してしまえばいいと、そう思ったのだろう。

 その判断は決して間違っていない。

 だが、もしそのような攻撃をするのであれば、まだマーベルが集中出来ていない時にやるべきだったな。

 今の一連のやり取りで、完全ではないにしろ、ある程度は緊張が解けたのだろう。

 ゲドはガッターが突っ込んでくるのに合わせるように、背中から羽根を出して突進を回避しつつ、オーラソードの一撃を放つ。

 甲殻に包まれているゲドだったが、マーベルの運がよかったのか、それとも単純にそこを狙ったのか。その辺りは俺にも分からなかったが、ともあれその一撃はあっさりとガッターの脇腹を斬り裂く。

 横を飛びながらの一撃……それも完全に混乱から復帰した訳でもない状態からの一撃だったので、ガッターの身体を斬り裂きはしたものの、その一撃は浅い。

 しかし、浅いからこそガッターを余計に怒らせ、興奮させる事になる。

 

「ギャアアアアアアアアア!」

 

 痛みと怒りに叫ぶガッターが、素早く首をゲドの方に伸ばしてその身体を喰い千切ろうとする。

 しかし、空を飛ぶという事を思い出したマーベルにしてみれば、危なくなったら高度を上げてガッターから距離を取ればいい。

 そうなれば、空を飛べないガッターの攻撃が当たるといった事はなくなる。

 そして……こうなってしまえば、マーベルの心にも余裕が出来る。

 先程までであれば命中しなかった攻撃は次々に命中し、ガッターの攻撃は余裕で回避出来るようになった

 そんなやり取りをする事、20分程。ガッターの身体には幾つもの傷を刻まれたが、未だに立っている。

 これはガッターの生命力が強いから、まだ持ち堪えているという訳ではない。

 いやまぁ、それがないとは言わないけど。

 だが、このような状況になっている最大の理由は……単純に、マーベルがガッターを殺す為の一撃を放てない為だ。

 結果として、ガッターの甲殻はかなり傷ついており、オーラバトラーの素材として使える部分は以前俺が倒した個体に比べるとかなり少なくなっている。

 何故そのような事になっているのか。

 それは単純に、マーベルがガッターを殺すという行為を躊躇っている為だ。

 もしマーベルがその気なら、それこそ今まで何度もガッターを殺す機会はあった

 ガッターが口を伸ばして相手に噛みつこうとするのだから、その時に首を切断してしまえば、それでいいのだから。

 だが、マーベルはそれが出来ない。

 地上にいる時はただの大学生だった以上、それは仕方がない事なのだろう。

 しかし、このバイストン・ウェルで生きていく為には、そんな躊躇は邪魔なだけだ。

 

「マーベル、殺せ! そうしないと、殺されるのはお前だぞ! このバイストン・ウェルでは、生き抜く為には相手を殺す必要がある!」

 

 そう言った瞬間、マーベルは覚悟を決めたのだろう。

 自分に向かって伸ばしてきたガッターの口の一撃を回避して横に回り込み、オーラソードであっさりとガッターの首を切断するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1400
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1648

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