ムーラが姿を消した件については、ドレイクからの命令で極秘の扱いとなった。
ドレイクとしても自分が派遣したメイドが、実は他の領主や国のスパイだったとは思わなかったので、仕方がないのだが。
とはいえ、バーンと一緒に俺の家までやって来た兵士達が情報を流さないとはとてもではないが思わない。
それに機械の館からでも、マーベルが乗っていたゲドやそれ以外にもオーラバトラーの各種部品、まだ開発途中だったらしいがオーラ増幅器の設計図といった諸々が盗まれ……更には機械の館で働いていた何人かも姿を消したのだから、機械の館で働いている者達には事情を話す必要があった。
そんな訳で、ムーラの一件は皆が知ってるが話題には出さないといったそんな感じになっていた。
ちなみに、俺とマーベルが暮らしている家には新しいメイドが送られてきたが、こちらは当然のように派遣される前、徹底的に裏がない人物かどうか調べられたらしい。
そんな風に調べられるのは面白くないのだろうが、それでも俺の家のメイドは給料がいいからという事で、何気に競争率が高かったとか何とか。
ともあれ、ムーラの一件から少し時間が経ち……現在、機械の館の前にはダンバインの姿があった。
サーバインと似ているようで、量産性を考えられてか、ある程度簡略化されているそのオーラバトラーは、白い。
ダンバインは幾つかの種類がある。
いや、性能そのものは同じなのだが、装甲の色が何種類かあるのだ。
これは、ドレイクの部下の一般的な兵士が使うドラムロとは違い、地上人……聖戦士が乗るオーラバトラーとして開発されたからこそだろう。
聞いた話だと、白以外にも青や緑、茶といった色があるらしい。
「アクセル、どうなると思う? 無事にダンバインは起動出来ると思うか?」
ダンバインを見ている俺に、ショットがそう尋ねてくる。
ショットにしてみれば、自分達が開発したオーラバトラーだけに、無事に動くかどうかというのは興味津々といったところか。
「マーベルなら大丈夫だとは思うけどな。聖戦士と呼ばれてるんだろ?」
ドレイクの兵士達の中では、マーベルの人気は高い。
元々人目を引く美人であり、そんな美人がゲドに乗って恐獣を多数殺してきたのだ。
ドレイクの兵士達にとって、マーベルは聖戦士……より正確には戦女神的に思っている者も多い。
俺よりもマーベルの方が人気は高いんだよな。
まぁ、マーベルは地上人という事でしっかりとバイストン・ウェルでも知られている存在なのに対し、俺は異世界の王といった存在なのだから。
それを思えば、ドレイクの兵士達がどちらを好むのかは考えるまでもないだろう。
「そうだな。実際、ゲドを操縦出来ているというのは大きい。バイストン・ウェルの人間にもゲドを操縦出来る者はいるが、その数は少ないからな」
「だからこそ、より低いオーラ力でも操縦出来るドラムロを開発したんだろ? そっちはどうなんだ?」
ドラムロはダンバインと違って量産機だ。
そうである以上、ダンバインよりも開発が進んでいてもおかしくはない。
そう思って尋ねると、ショットは笑みを浮かべて口を開く。
「問題ない。開発は順調だ。バーン・バニングスを始めとした何人かに乗って貰ったが、バイストン・ウェルの人間でもオーラ力が強い者であれば問題なく操縦出来ている」
「そうか。そうなると、次に何らかの報酬を貰えるのなら、ドラムロを貰っておきたいところだな」
「ドラムロを貰うのか」
ショットが俺の言葉に微妙な視線を向けてくる。
まぁ、ショットにしてみれば、自分が開発したドラムロを俺が報酬で貰うというのは、思うところがあるのだろう。
「ドラムロは色々と見るべきところがあるしな。フレイボムとか、ドラムロの大きな特徴だし」
そう言うと、ショットが少し嬉しそうな様子を見せる。
そして……
『起動しました』
周囲にマーベルの声が響く。
その声と共に、ダンバインが起動した。
どうやら、マーベルは予想通りダンバインを起動する事が出来たらしい。
そして、まずは1歩……2歩、と歩いていく。
マーベルの操るダンバインは、特に何の問題もなく動いていた。
「ほう。随分とスムーズに動かす。ゲドを操縦したおかげかな?」
「どうだろうな。マーベルがどんな風に思ってダンバインを動かしているのかは分からないが、これは十分な成果だな」
ショットが動いているダンバインを見て満足そうに告げる。
聖戦士用に開発されたオーラバトラーである以上、その性能は非常に高い。
とはいえ、問題なのはダンバインの性能は機体そのものが持つ性能ではなく、パイロットのオーラ力あってこその性能といったところか。
「ダンバインは元々数が少ないんだよな?」
「そうだな。コスト的な問題もあるし、何より聖戦士がそこまで多く集められるとは思えん」
聖戦士を集めるということは、また地上から人を召喚するという事になる。
つまり、半ば強制的に連れてくるという事だ。
その事には若干思うところがない訳でもないが……マーベルはともかく、ショットやゼットはバイストン・ウェルに来た事を後悔しているようには思えない。
寧ろ、オーラバトラーやオーラボムといった諸々を開発したりと、充実していると言ってもいい。
そういう意味では、地上にいたくない何らかの理由がある奴を連れてくる分には、強制的であっても最終的には決して悪い事じゃなかったりするんだよな。
「聖戦士を連れてくるにしても、適当にって訳じゃなくて、地上で不満を抱いている奴とか、そういう連中を連れてくる事は出来ないのか?」
「それは……難しいだろう。そもそも地上との間にオーラロードを繋げるといった真似をするのも、エ・フェラリオでようやく出来る、難易度の高い作業なのだから」
オーラロードというのは、以前ちょっと聞いたな。
ようは、バイストン・ウェルと地上を繋ぐ通路というか……ゲート的な転移門を開くといった印象だ。
いや、実際にオーラロードを開く光景を見た訳ではないので、あくまでもそれは俺のイメージでしかないが。
「そうか。……けど、マーベルの事を考えるとな。マーベルがそんな感じだっただけに、思うところがあってもおかしくはない」
マーベルもまた、大学生だったのが強引にバイストン・ウェルまで連れてこられたのだ。
とはいえ、マーベルを召喚したのはシルキー・マウではなくて他のエ・フェラリオらしいが。
「む、そうか。それは少し困るな。彼女は現在のところ、非常に貴重な聖戦士なのだから」
ショットのその言葉は、決して嘘ではないだろう。
というか、正確にはショットにとって聖戦士というのは自分の開発したオーラバトラーの性能を最大限に発揮させるという意味で重要なのだろう。
マーベルにしても、女としての自分よりも聖戦士としての自分に興味を持って貰った方がいいと、そういう認識なのだろうが。
「その件はドレイク殿の判断次第である以上、私からは何も言えるような権利はないのだが。とはいえ、その件をそのままにしておく訳にはいかないか」
ショットがそう言う以上、多少は考慮されるのだろう。
ダンバインがオーラソードを振るっているのを見ながら、そんな風に思う。
とはいえシルキー・マウの件だけに、無理は出来ないと思うが。
これ以上この件に関して突っ込んでも、ショットを困らせるだけか。
そう判断し、俺は話題を変える。
「で、サーバインの改修作業はどうなってるんだ? ダンバインの方もこれで一段落したし、そろそろ完成しないのか?」
「ふむ。現在のところ7割……いや、8割といったところか」
「随分と時間が掛かってるな」
「赤への塗り直しとオーラショットの方は特に問題なく終わったのだが、やはり問題はショットクローだな。元々ショットクローではない部位をショットクローにするのだから、それで時間が掛かるのは当然だろう」
どうやら予想通り、ショットクローで時間が掛かっていたらしい。
まぁ、普通の……言わば飾りとでも呼ぶべき部位だった手首の爪をショットクローに変更するとなると、色々と改修する場所が出て来るのは当然なのだろう。
「それに、サーバインは知っての通りダンバインよりも更に性能の高いオーラバトラーだ。ショットクローに変更するにしても、ワイヤーの部位をどの素材で作るのかといった事はしっかりと考える必要がある」
「ダンバインの奴をそのまま流用は出来ないのか?」
サーバインが特殊な素材……それこそ、恐獣が多数存在するリの国でも希少な素材を使って作られているのは知っているが、ダンバインもまた聖戦士用に開発されたオーラバトラーだ。
であれば、ダンバインのショットクローに使われているワイヤーも流用出来るのでは?
そんな疑問からの言葉だったのだが、ショットは首を横に振る。
「サーバインはあくまでもダンバインのプロトタイプという事で、色々と希少な素材を使っている。……それが、あの性能の高さを出している理由なのだが、それだけにダンバインの素材であっても簡単に使う訳にはいかないんだよ」
「そういうものなのか。いっそ、俺が恐獣を倒して素材を獲ってくるか? そうすれば、わざわざリの国からの素材を待っていたりとか、そういう事を気にしなくてもいいと思うが」
「それは不味いだろうな。もしアクセルの存在がリの国の者に見つかってしまえば、ドレイク殿はかなり不味い事になる」
「見られても俺だって分からなければいいんじゃないか?」
「サーバインを使えば、すぐにどこの所属なのかというのは分かる。かといって、生身で恐獣を倒すような存在はそう多くはない。アクセルの事を調べれば、すぐにドレイク殿に辿り着くだろう」
サーバインを使えば、それがオーラバトラーであるという時点でそれを開発したドレイクが怪しまれるのは当然か。
また、ドラムロと違ってサーバインはあからさまにゲドの後継機といった外見をしている。
その辺の事情を考えると、オーラバトラーを使って恐獣と戦うといった真似は出来ないだろう。
そして俺が生身で戦うという事になっても、生身で……しかも1人でとなると、当然だがそんな事が出来る者は非常に少なく、ドレイクの下にいる俺に辿り着くのも難しくはない……か。
ショットのその言葉に、納得は出来る。
また、ドレイクはあくまでもアの国の領主の1人にすぎず、そこでリの国から正式に抗議が来れば不味いというのも事実だろう。
「だとすると、最悪ショットクローの案は却下するか? それなら問題なくサーバインを使えるんだろ?」
オーラショットはダンバインの使っているのをそのまま流用するだけだし、装甲を赤に塗るといった事もそう難しい話ではない。
結局のところ、一番厄介なのはショットクローのみなのだ。
「いや、それは止めてくれ。ショットクローの調整の為に現在サーバインは分解されている。ここまで来たら、完成するまで大人しく待っていて欲しい」
ショットクローで分解?
ショットクローは手首の辺りにある爪的な存在をワイヤーで飛ばす、スラッシュハーケン的な武器だ。
その場合、分解するのは精々手首……もしくは前腕部、どんなに大袈裟でも腕だけでいいんじゃないか?
そんな疑問を抱くが、ショットの様子を見る限り特に冗談か何かでそのように言ってるといった様子ではない。
だとすると、俺に出来るのは大人しくサーバインが完成するのを待つだけだろう。
ただ待つだけしか出来ないというのは、非常に残念ではあるのだが。
「結局今の俺に出来るのは、こうやって待つだけ……か」
「その通りだ。それよりも……こうして話している間にも、ダンバインの方は終わったらしいぞ。下りてくるのを迎えてやったらどうだ?」
ショットの言葉にダンバインに視線を向けると、確かに片膝を突いた駐機姿勢を取っているのが見えた。
そしてコックピットが開き、マーベルが姿を現す。
一応念の為という事で、マーベルはパイロットスーツ……と呼ぶにはどうかと思うが、ともあれそんなのを着ており、頭にはヘルメットというか、兜と呼んだ方がよさそうなのを被っている。
まぁ、オーラバトラーに乗って激しい動きをするんだから、いざという時の為にそういう準備をしておいた方がいいか。
そう考え、マーベルのいる方に向かう。
「お疲れさん。どうだった? やっぱりゲドと違ったか?」
何人かがマーベルの周囲に集まっていたが、俺が行くと自然と場所を空ける。
この辺は、俺がマーベルの恋人という事になってるからというのが大きいだろうな。
マーベル本人も、引っ越す時にそういう事にされて不満そうではあったが、男に言い寄られる事がなくなったと、複雑な表情で俺に言ってたし。
「そうね。やっぱりゲドに比べるとオーラ力の消耗が激しいわ。聖戦士用と考えれば、おかしくはないんでしょうけど」
そう言いながらも、ダンバインの性能はマーベルにとって満足出来るものだったのか、笑みを浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1400
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1648