転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0265話

 2月に入り、寒さも微妙に緩み春の訪れが待ち遠しくなる頃。

 ……そんな風に表現してみたが、それでもまだ2月になったばかりのこの時期は当然寒い訳で。

 

「アクセル君、今日の夜はお鍋にしましょうか」

 

 本日最後の授業も終わり帰りの準備をしていると、素早く帰りの準備を済ませた千鶴がそう言いながら近付いてくる。

 

「鍋?」

「そうねぇ。折角なんだしアクセル君も和食を食べたいわよね。……すき焼きなんてどうかしら?」

「俺としては嬉しいが、いいのか?」

 

 すき焼きとなると材料も色々と必要で、その分いつもの食事よりも食費が高く付くだろう。

 

「いいのよ。……夏美ちゃんのいる所では言えないけど、一応お祝いの意味もあるしね」

「お祝い?」

「ええ。始動キーを決めたんでしょう?」

 

 そう、地道に魔法の訓練を積む事約20日。転生特典による魔法の才能のおかげでエヴァも呆れる程の早さで魔法を習熟していった俺は、ついに魔法初心者から魔法使い見習いへと1歩を踏み出すべく始動キーを決めるようにエヴァに言われていたのだ。

 実際、始動キーというのは意識的なスイッチみたいなものだと俺は認識している。その始動キーを口に出す事により、スムーズに自分の魔力を練り上げるよう無意識で行う為のキーワード。……まぁ、あくまでも俺がそう理解しているというだけで実際にはもっと深い意味があるのかもしれないが。

 つまり、ありきたりな言葉を始動キーにしてしまうと下手をしたら日常生活で魔法を無意識に使う可能性もあるのだ。

 例えば始動キーが『ゆうひ』としてしまった場合、友人とかと話している時にその会話に夕日という単語が混じっていたら無意識に魔法が発動する可能性も考えられる。

 なので普通始動キーには日常生活で使わない言葉を設定している訳だ。例えばエヴァの始動キーは『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック』だしな。こんな言葉は日常生活でまず使わないだろう。

 だが当然始動キーは魔法の呪文を唱える前に口に出す訳で、短ければ短い程有利になる。これらを考えて俺の設定した始動キーはこうなった。

 

「アリアンロッド」

 

 イギリスのウェールズ地方で信仰されている女神で、時と運命と月を司る女神だ。他にも異界にある塔に住むと言われており、次元の狭間に本拠地であるホワイトスターがあるシャドウミラーを率いる俺には、これ程似合う始動キーも無いだろうと判断した。

 それに日常生活でアリアンロッドなんて普通は口に出さないから魔法を無意識に発動させるなんて事も無いだろう。

 

「それで、お買い物をお願いできる? 本当は私が行きたいんだけど、今日は保育所でボランティアの日なのよ」

「ん? 構わないけど……何を買えばいいんだ?」

「シラタキと椎茸、春菊をお願い。その他の材料は冷蔵庫に入ってるし、お肉に関してはあやかが用意してくれるらしいから期待してもいいと思うわよ。はい、これ」

 

 そう言って1000円札を渡される。

 

「あ、アクセル君。お爺ちゃんが呼んでたで。学園長室に来て欲しいそうや」

 

 いざ買い物! と教室から出ようとすると、近衛に声を掛けられる。

 

「分かった。じゃ、買い物に関しては話が終わってから行ってくるから、千鶴はボランティアを頑張ってこい」

「ええ、お願いするわね」

「何か千鶴ちゃんとアクセル君のやり取りを見てると、新婚夫婦っぽいなぁ」

「あらあら。そうかしら?」

「えー、どっちかと言うと母親と息子じゃないのかー?」

「お、お姉ちゃん!」

 

 近衛の言葉にいらない突っ込みを入れたのは鳴滝姉妹だ。……正確には妹の方は巻き添え以外の何ものでもないな。

 実際ホホホホとばかりに笑顔でプレッシャーを発しつつ迫られて半分涙目になっていたりするが……自業自得と連帯責任だと思って諦めて貰おう。巻き添えにされるのは御免だし。

 という事で、尊い犠牲となった2人をその場に残して学園長室へと向かう。

 

 

 

 

 

 ……そう言えば、何で女子中学校の校舎に学園長室があるのか未だに理由が不明だな。

 目の前にあるドアをノックしながらふとそう思う。

 まぁ、恐らく近右衛門の趣味か何かだろう。

 あの見た目で女子中学生好きが高じた……のかもしれないしな。

 

「誰じゃ?」

「アクセル・アルマーだ。呼ばれてると聞いて来たのだが」

「うむ、入りなさい」

 

 中からの返事を聞いてドアを開ける。

 学園長室の中には、部屋の主である近右衛門の姿が。そして応接セットのソファには高畑と2-Aの副担任でもある源しずなの姿もあった。その3人の姿を見ながら俺もソファへと腰を掛ける。

 

「2-A関係者が揃ってどんな悪巧みだ?」

「おいおい、悪巧みは無いだろう」

 

 高畑が苦笑を浮かべながらそう返してくる。

 

「ふぉふぉふぉ、アクセル君を呼んだのは他でも無い。そもそも君を雇う時に言った事を覚えているかね?」

 

 俺を雇う時? あぁ、そう言えば。

 

「来月……いや、もう今月か。魔法学校を卒業したばかりの子供が教師として赴任してくるから、いざという時のフォローを頼みたい、という話だったと思うが?」

「うむ、それじゃ。その子供、ネギ・スプリングフィールドというのじゃが明後日に来日する事が決まったので知らせておこうと思ってな」

「それは理解したが、何故高畑や源までここにいるんだ?」

「いや、僕はネギ君とは友達なんでね。それに彼の父親とも縁がある。それにしずな先生は一応魔法について知ってるからね。その関係でだよ」

「父親というと……確か、エヴァをこの麻帆良に封印したナギ・スプリングフィールドとか言ったか」

「ああ。小さい頃に世話になってね。ナギの事はエヴァから?」

「まぁ、大雑把にだが」

 

 エヴァの話によると、明後日来るネギ・スプリングフィールドの父親であるナギ・スプリングフィールドは20年程前に魔法世界で起きた戦争を終結させた紅き翼という集団のリーダー格で、こちらの世界ではともかく魔法世界では知らない者はいない程の有名人らしい。

 確かにその一人息子ともなれば、近右衛門や高畑が神経質になるのも分からないでもない。……だからと言って、俺みたいなのを保険として付けるのは正直どうかと思うが。

 

「ネギ君は魔法学校を卒業したばかりで、魔法の才能も父親譲りと言ってもいいだろう。……正直、それに負けない才能を持っている君に驚かされるが……まぁ、それはともかく。それだけに魔法を気軽に使ってしまう事もある。君にはそういう時にさりげなくフォローをお願いしたいんだ」

「それは、いざという時に入るのか?」

「魔法バレするとオコジョにされてオコジョ収容所に送られる事になるから十分いざという時に入ると思うよ」

「……オコジョ?」

「そう、オコジョだ」

 

 オコジョという単語に思わず高畑へと尋ねるが、至極真面目な表情で頷かれる。

 ……なんでオコジョ? そう思いつつも、近右衛門の話に耳を傾ける。

 

「じゃが、当然最初から自分のフォロー役がいると知っていてはネギ君にとってもあまり良く無いじゃろう。じゃから、アクセル君に関しては魔法関係については知らない普通の一般人として紹介する。飛び級と共学化に関するテストケースの生徒としてな。それで君は同年代の男の子という事で、まずは魔法以外に関しての日常生活で相談に乗って欲しい」

 

 近右衛門や高畑の言葉に考える。確かにそれ程に有名な父親の息子だというのならその才能を受け継いでいる可能性も高いだろう。まぁ、2人の様子を見る限りではそのネギとかいう子供が才能に溺れて魔法を乱発するといった性格ではないようなのが救いだが。

 

「取りあえず了解した。そのネギとかいう子供が魔法を知られそうになったらそれとなく注意するとしよう」

「うむ。……ただ、それとは別に注意点がある。その魔法バレについてじゃが孫の木乃香とアスナちゃんについては例外として欲しい」

「……何故、と尋ねても?」

「詳しい事は言えないのじゃが、色々と理由があるのじゃよ。特に木乃香はかのサウザンドマスターすら越える魔力がその身に宿っている。今は木乃香の父親でもある婿殿の要請で魔法に関わらないようにさせておるが、あれだけの魔力を持っている以上はこの先もずっと魔法と無関係でというのはまず無理じゃろう。それに、お主がこの麻帆良に来た時に出会った外部の魔法使いがいたじゃろう? 幸いあの連中の目的は図書館島じゃったが、木乃香の魔力を何かに利用しようとして侵入して来る者もおる。……関西呪術協会の強硬派とかな」

「関西呪術協会?」

「うむ。この日本には大きく分けて2つの魔法使いの組織がある。それが儂が理事を務める関東魔法協会と、京都に本拠地を構える関西呪術協会じゃ。で、木乃香の父親で儂の娘婿でもある人物がその関西呪術協会の長を務めておるのじゃが……」

「ちょっと待て!」

「ふぉ?」

「つまり、何か? 関東魔法協会と関西呪術協会のトップは身内同士という事か?」

「うむ。そうなるの。それで婿殿が木乃香の持つ魔力を組織のゴタゴタに巻き込まれるのを懸念してこの麻帆良に預けた訳じゃ」

「で、それを不服に思う強硬派とやらが襲ってくる、と」

「そうなるな」

「一応聞いておくが、東と西の仲は?」

 

 俺の質問に、近右衛門が軽く眉を顰める。

 

「お世辞にも良い、とは言えないのう」

「その状態で長の娘をこの麻帆良に預けるという発想にびっくりだよ」

 

 近右衛門とその娘婿に関しては知らないが、関西呪術協会のメンバーにしてみれば長の娘。つまり自分達の姫のような存在が仲の良くない組織へと預けられているようなものだ。普通に考えて人質扱いだと判断するだろう。そして、人質を送っているとなると関西呪術協会は関東魔法教会よりも組織として下に見られる事になる。

 ……強硬派とやらが頭角を現すのも無理は無いな。

 

「俺が言えた話でも無いが、関西呪術教会の長とやらは組織のトップとしてどうなんだ?」

 

 シャドウミラーのトップである俺がほいほいと出歩いたり、今回みたいに行方不明になったりしているのだから俺自身組織のトップとしての自覚が足りないと言われればそうなんだろうが。それでも長とやらの考えはいまいち理解出来ない。

 

「そう言わないでくれないか。詠春さん――木乃香君の父親だが――にも色々と事情があるんだ」

 

 高畑の言葉に思わず溜息を吐く。

 

「まぁ、いい。それでその狙われている近衛に関してはそのままでいいのか?」

「そのまま、とはどういう事かの?」

「護衛とかを付けなくてもいいのかって話だ。その関西呪術協会の強硬派とやらが襲ってくる可能性があるのなら2-Aの生徒が巻き込まれる可能性も否定出来ないだろう」

「ふぉふぉふぉ、大丈夫じゃよ。護衛はしっかりと付けておるし、何の為に2-Aに魔法関係者達を集めていると思ってるんじゃ?」

 

 護衛を付けている? その言葉にふと思い出す。そう言えば桜咲が時々熱心に近衛を付け回していた事があったが……

 

「桜咲か?」

「うむ。彼女は関西呪術協会と関係の深い神鳴流という流派の剣士なのじゃよ。木乃香とも幼少の頃からの仲で、その縁で婿殿が護衛を頼んだ流れじゃな」

「……幼少の頃からの仲?」

 

 転校してから20日程経つが、桜咲と近衛が話している所は殆ど見た事がない。いや、近衛が何度か桜咲に話し掛けようとしているのを見た事はあるんだが、桜咲は素っ気無くあしらっているように見えた。もっとも、この前のバスケの時の件もあるので嫌ってはいないようだが。

 と言うか、護衛。護衛ねぇ……少なくても俺の護衛のイメージとなると対象の側にピッタリと付いて回るというものなのだが。

 ストーカー気味に後を追い回していざという時の護衛が務まるものなのか? あるいは桜咲がそれ程の腕を持っているのか。

 

「まぁ、近衛と桜咲については色々と思う事はあるが納得しておくとしよう。それで他のクラスメイトについてはいざという時の為に魔法関係者を1つに纏めてあると認識していいのか?」

「うむ。他にも色々と理由はあるがいざという時の備えという意味も大きい。……今は君という人物もおるしの」

 

 そうは言うが、微かに眉を顰めている所を見ると案外人手が足りない為の苦肉の策なのかもしれないな。

 

「それで、取りあえず俺はどうすればいいんだ?」

「明後日の朝になったらここに来て欲しい。ここで初顔合わせをしようと思っているからね」

 

 高畑の言葉に頷き、ソファから立ち上がる。

 

「ネギ君の補佐についてはしずな先生にもお願いしているから、何かあったら彼女とも連絡を取ってくれ」

「よろしくね、アクセル君」

「ああ。出来ればそういう面倒事は回避したい所だが、話は分かった」

 

 源の言葉に頷き、学園長室を出て行く。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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