ビショットとの取引は模擬戦の件もあって無事に終わり、現在俺達はアの国のルフト領に向かって帰還中だった。
そんな中、微妙に不愉快な様子を見せているのはガラリア。
「なぁ、どうしたんだ、ガラリアの奴? 見るからに機嫌が悪そうだが」
食堂にあるテーブルの1つに陣取り、見るからに不機嫌ですといった様子を見せているガラリアを眺めつつ、マーベルに尋ねる。
「ビショットから、私達の護衛にとナムワンが派遣されたのが面白くないみたいよ?」
マーベルの言う通り、現在この一団には俺のナムワンとドレイクのナムワン以外に、ビショットが派遣した護衛としてナムワンが1隻いる。
また途中で襲撃されないようにと、そう考えてのビショットからの派遣だった
ケミ城に行く途中で遭遇したガロウ・ランの盗賊と2機のゲド。
特にゲドのパイロットに関しては、具体的にビショットとの間でどのような交渉結果になったのかは、俺にも分からない。
ケミ城には2泊したので、その間にガラリアやもう1隻のナムワンに乗っている者がビショットと交渉したのだろうが。
その辺は俺にはあまり関係ない。
いやまぁ、その交渉の結果として俺に何らかの悪影響があれば、話は別だっただろうが。
あるいは、その交渉結果として、こうしてビショットがナムワンを派遣したのかもしれないが。
「何でそれで……ああ、自分の技量が疑われたと思ったのか。あるいは単純に、途中で襲撃された時に自分の出番がないと思ったのか」
ガラリアの性格を思えば、そんな風に思ってもおかしくはない。
とにかく手柄を求めるといった性格だしな。
とはいえ、この先にどういう戦いが起きるのかは分からないが、その辺はどうにかした方がいいと思うんだが。
真っ先に敵に突っ込んでいくというのは、並大抵の技量では死ぬだけだ。
ましてや、ガラリアの乗機はドロなのだから。
あ、でもドラムロが出来た以上は、ガラリアもドラムロに乗る事になるのか?
そうなればそうなったで、敵に真っ先に突っ込むのは余計に危険になると思うんだが。
「そうでしょうね。だとすれば、アの国に入ったらガラリアの機嫌もよくなると思うけど」
「だろうな」
ビショットから派遣された護衛ではあるが、当然ながらそのナムワンがアの国に勝手に入るといった真似は出来ない。
フラオンの性格を考えれば、もしクの国のナムワンが勝手にアの国に入ったと知れば、それだけで戦いになりかねないし。
フラオンの性格を全て知ってる訳ではないが、それでもプライドだけは高いように思える。
それに比例して能力もあればまだマシだったんだが、残念ながらフラオンはプライド程に能力は高くない。
働き者の無能は一番厄介だって話はよく聞くが、フラオンの場合は見事にそれに当て嵌まってるんだよな。
おまけに、フラオンはアの国の国王だ。
そんな人物が国のトップにいるってのは、アの国の人間にとって最悪に等しい。
だからこそ、ドレイクもかなり好き勝手にやれている一面があるのだろうが。
「なら、取りあえずアの国に入るまではガラリアに構ったりしない方がいいな」
何だかんだとガラリアはそれなりに複雑な性格をしている。
アの国に入ったからといって、すぐに機嫌がよくなるとは思えない。
だが、ルフト領に戻ればゼットがいるんだから、後はゼットに任せておけばいい。
ガラリアの相手はゼットの担当なんだから。
ゼットも面倒を押し付けられたとか、そんな風には思わない筈だ。
ゼットがガラリアに好意を持ってるのは間違いないし、ガラリアの方もゼットの好意を悪くは思っていないらしいし。
そういう意味では、ガラリアとゼットは一緒に扱った方がいいと思うんだが……技術者の、それも重鎮と呼ぶに相応しいゼットと手柄を求めて真っ先に敵に突っ込んでいくといった性格をしているガラリアでは、一緒に行動するなんて真似はまず出来ないだろうが。
そんな中……何を考えたのか、1人の兵士がガラリアに向かって近付いていく。
食堂にいた者の多くが、ある意味で勇者を見るような視線をその兵士に向ける。
「ガラリア隊長、ドロの件で少し問題が出たのですが」
「……何?」
案の定、兵士に向けるガラリアの言葉には強い苛立ちが混ざっている。
ガラリアにしてみれば、ここでそのようなことを言われるのは不満だったのだろう。
もっとも、ドロはガラリアが乗っているオーラボムだ。
それを考えれば、不機嫌だからといって無視する訳にもいかないのは事実だったが。
今はクの国のナムワンがいるので、護衛についてはそこまで気にする必要はないものの、アの国に入れば、そこからはガラリアが護衛の責任者として活動するのだ。
いざとなれば、俺やマーベルが出撃するといった事も出来るのだが、ガラリアとしてはそれを望まないだろう。
ガラリアにとって、手柄を立てるのならやはり自分で襲ってきた相手を倒すのが最善なのだから。
そういう意味でも、ドロに異常があるというのを聞けばそのままに出来る訳がなく、不機嫌そうな様子を隠しはしないものの格納庫に向かう。
そしてガラリアがいなくなった事により、食堂に漂う空気は明るくなる。
「ガラリア、能力は高いんだけどな。性格の方をどうにかしないと、この先は危険だぞ?」
ガラリアと友人のマーベルにそう言っておく。
魔法を教えたりもしているし、以前程に警戒心は高くないものの、それでもガラリアと俺の関係は友人とは呼べない。
……それでもスタートがマイナスだったのが、ようやくプラスに転じ始めたといったところなのだが。
「分かってはいるけど、あれがガラリアの性格である以上、私にはどうしようもないわ。いざとなったら助けようとは思ってるけど」
「問題なのは、ガラリアがそれを喜ぶかだな」
ガラリアの性格を考えると、それこそ余計なことをするなと、そう叫びそうな気がする。
それとも、マーベルが相手ならそこまで厳しい事は言わないのか?
「それでも、ガラリアを見捨てるような真似は出来ないわ」
そう告げるマーベルの言葉に、俺はそうだろうなと頷く。
何だかんだと、マーベルと親しい女友達というのはガラリアしかいない。
元々バイストン・ウェルはファンタジー世界だというのもあって、かなり男尊女卑……というか、男は表に出て女は裏で支えるといったような一面がある。
それだけに、聖戦士として表舞台で活躍するマーベルが親しくなる女というのはそういない。
他に考えられるのは……ドレイクの妻のルーザと娘のリムルか。
だが、ルーザはマーベルを――正確には俺をだが――嫌っており、何かの拍子に顔を合わせても嫌悪感を如実に表す。
リムルの方は、何故か俺やマーベルが悪しきオーラ力の持ち主であると判断している為か、向こうから近付くといった事はない。
悪しきオーラ力って何なんだろうな。
いやまぁ、混沌精霊である俺が悪しきオーラ力を持っていると言われるのは分かる。
混沌という言葉の中には、そういうニュアンスがあってもおかしくないのだから。
だが、マーベルの場合は混沌精霊であるとかそういうのは全く関係ない。
それこそ普通にこのバイストン・ウェルに召喚された地上人であり、聖戦士だ。
そんなマーベルまでもが悪しきオーラ力を持つというのは、正直納得出来ない。
実際、マーベルもそんなリムルに対して思うところがあるのか、自分から接触するような真似はしていない。
他の女は……シルキー・マウがいるが、水牢の中に閉じ籠もっている以上、マーベルもそう簡単に会うような真似は出来ない。
そういう意味では、マーベルにとってガラリアという存在はかなり大きいのだろう。
「まぁ、ガラリアを見捨てる事が出来ないというのは、俺も同じだけどな」
正確には、マーベルよりもゼットの方を重視しての事なのだが。
ゼットはショットと共にオーラバトラーの開発の第一人者だ。
そんなゼットが恋している相手が、ガラリア。
今のような状況で、ガラリアが敵に突っ込むのを黙って見ていて、その結果としてガラリアが死んでゼットが俺を恨む……などといった事になったら、最悪の結果だろう。
であれば、ガラリアを助けないという選択肢は俺にはない。
とはいえ、ガラリアの性格を直すのは一苦労だよな。
今までずっとそんな風に生きてきたのだから、直せと言われてもすぐに直せる訳がない。
「一度ガラリアの心を徹底的にへし折るといったような真似をすれば、直るかもしれないが……どうだろうな」
上手くいけば、ガラリアの性格も代わるだろう。
だが、下手をすればガラリアのいいところが完全に消滅してしまう。
であれば、そんなことは危険でしかない。
少なくても、ゼットはそれを試すかと言っても、その言葉に頷くといったような真似はしないだろう。
「それは、無茶じゃない?」
マーベルもその選択肢には賛成出来ないらしい。
そんな話をしながら、俺達は時間を潰すのだった。
「では、これで失礼します」
クの国のナムワンから来た兵士……いや、騎士か。その騎士が、俺に向かって一礼するとブリッジを出ていく。
現在ナムワンがいるのは、アの国とクの国のちょうど国境の辺り。
まぁ、国境とは言って明確に川とかで区切られている訳ではないので、そこまで気にする必要はないんだが。
それに一応アの国とクの国は友好国といった関係である以上、その辺が問題になったりもしない。
これで、実はアの国と敵対している国であれば、国境をどこにするのかといった感じで問題になってもいいのだが。
というか、フラオンの性格とハワ、ケム、リ、ク、ミといった5つの国と接している地理的な状況を考えれば、それこそどこか他の国と揉めてもおかしくはないのだが。
そういう意味では、フラオンもそこまで迂闊ではないのか? ……いや、あのフラオンだぞ? 迂闊ではないという事は、まずないと思うんだが。
寧ろフラオンの性格を考えれば、領土を広げればそれだけ自分が贅沢を出来るからって事で他国に侵略とかしそうだけど。
ただし、5ヶ国と隣接している以上、もしアの国がどこかを侵略しようとした場合、即座に他の国がアの国に攻めてくるといった可能性があるが。
それをやらないとなると、誰かがフラオンを上手い具合にコントロールしてるのか?
可能性としてはドレイクだが、ドレイクも領主である以上は自分の領地を治める方が必須だろう。
ましてや、ドレイクはオーラマシンを開発して他国と商売をしている。
とてもではないが、エルフ城でフラオンをコントロールするといったような真似は出来ないだろう。
俺の使う影のゲートのような転移魔法があれば、その辺も解決するのだろうが。
「アクセル王、私はドロで警戒に出たいと思いますが、構いませんか?」
「任せる。ゲドが襲ってくるって事はないと思うが、ガロウ・ラン辺りはいるかもしれないから気をつけてくれ」
「は!」
高い身体能力を持つガロウ・ランだけに、盗賊として活動しているのは厄介だ。
身体能力云々よりも前に、地上で悪い事をしていた奴……それこそ、悪しきオーラ力を持っているような連中が、ガロウ・ランとしてバイストン・ウェルで生まれるらしいが。
ともあれ、そんなガロウ・ランに対抗する為に開発されたのがドロだ。
そしてガラリアは独断専行をする事が多いが、有能な人物なのは間違いない。
もしガロウ・ランが襲ってきても、寧ろ喜んでそれを迎え入れて、自分の手柄にする為に殲滅するだろう。
そもそも、歩いて地上を移動しているのならともかく、ナムワンで移動している俺達にガロウ・ランが攻撃してくるかどうかというのは疑問だが。
「アクセル、いいの?」
ガラリアが出て行った方を見て、マーベルが心配そうに尋ねてくる。
マーベルにしてみれば、ガラリアの事が心配なのだろう。
「取りあえず問題はないと思うぞ。ルフト領はガロウ・ランの数が少ないし」
ガロウ・ラン用にドロを開発したのだから、当然ながらドレイクは積極的にガロウ・ランを狩っていった。
その結果として、ルフト領におけるガロウ・ランの数は決して多くはない。
ガロウ・ランだって悪しきオーラ力を持っているからといって、別に馬鹿という訳ではない。
ルフト領にいれば危険だと判断すれば、とっとと他の場所に逃げるだろう。
自分の実力に自信のある者であれば、競合相手のガロウ・ランがいないという理由でルフト領にいる可能性はあるが。
とはいえ、そういう連中の自分の実力への自信というのは自分の過信である可能性の方が高い。
本当の意味で実力のあるガロウ・ランなら、個人的に雇ってもいいんだが。
「そう? ……そうね。だとすれば、そこまでガラリアの心配をする必要はないのかしら」
「今はそれでいいけどな。ただ、バイストン・ウェルの人間でも操縦出来るドラムロが開発された以上、ガラリアもそう遠くないうちにドラムロに乗る可能性はある。そうなった時が、危険だと思うけどな」
その言葉に、マーベルは難しい表情を浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650