転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0266話

 学園長室での用事を済ませ、千鶴から言われたすき焼きの材料を買うべく商店街にあるスーパーへと向かう。

 千鶴に聞いた話では、学園都市というだけあってこの麻帆良にある店は比較的学生向きと言うか、財布に優しい値段になっている所が多い……らしい。

 

「いらっしゃいませ」

 

 スーパーの入り口にある買い物カゴを手に店に入ると、店員からそう声を掛けられて出迎えられた。

 千鶴に頼まれた買い物はシラタキと椎茸、春菊だったな。

 まずは野菜売り場へと向かい、近い位置にある椎茸を手に取り……

 

「あれ? アクセル君?」

 

 後ろからそう声を掛けられる。

 そちらへと振り向くと、そこには俺と同じように買い物カゴを持った釘宮の姿があった。

 

「クギミー」

「クギミー言わないっ! ……それで、アクセル君はお使い?」

「まぁ、お使いと言えばお使いか……!?」

 

 そこまで言って、ふと気が付く。今の俺の状況ってもしかして『初めてのお使い』という奴だったりするのだろうか?

 固まっている俺を見て首を傾げる釘宮だったが、すぐに理解したのだろう。口元にニヤリとでも表現できそうな意地の悪い笑みを浮かべながら生暖かい目で俺を眺めている。

 

「アクセル君は、何のお使いなのかなー?」

「……シラタキ、椎茸、春菊」

「ほうほう、なるほど。あ、その椎茸よりこっちの方がいいよ。はい」

 

 と、俺の持っている椎茸とは別のパックに入っている方を渡してくる。

 

「椎茸ならどれでも同じじゃないか?」

「チッチッチ。初めてのお使いのアクセル君に教えてあげよう。確かに椎茸は椎茸だけど、アクセル君が持っているのよりこっちの方が肉厚でしょ? 買い物のリストから言って恐らく鍋物なんだろうから、薄い椎茸よりも肉厚な方が美味しいよ」

「確かにすき焼きらしいが……良く分かったな」

「ふふん。伊達に食事が当番制な訳じゃないのよ」

 

 なるほど。俺の部屋では食事の準備をするのはほぼ千鶴一択だが、釘宮の部屋では当番制なのか。……いや、良く考えたらそれが普通なのか?

 だが、俺の部屋は生粋のお嬢様であるあやかに、見かけ子供の俺。かろうじて料理を手伝えそうなのは夏美くらいだ。

 と言うか、千鶴も一応那波重工とかいう会社の社長令嬢らしいから立場的にはあやかとそう変わらない筈なんだが……その辺は個人の趣味嗜好が関係しているんだろう。

 

「にしても、すき焼きかぁ。いいんちょのトコは豪華だね」

「クギミン達は?」

「クギミンも禁止! ……全く、アクセル君って意外と根に持つよね。うちはまだ特に決めてないかな。スーパーの中をざっと見て、何か美味しそうなのがあったらそれをメインにって感じで考えてるけど」

 

 そう言いながら、椎茸の近くに置いてあったエリンギを手に取る釘宮。

 

「確かにまだまだ寒いから、鍋はいいかもしれないわね。……あっ、そうだ。ねぇ、アクセル君。お姉さんのお願い聞いてくれないかな?」

「……何だ?」

「もし良ければ、今日の夕食は私達と一緒にどうかなーってね。ほら、どうせ鍋をやるなら人数が多い方が美味しいでしょ?」

 

 釘宮の言葉に少し考える。確かに折角鍋物をやるんだから人数が多い方が楽しく食べられるだろう。一応千鶴的には俺の始動キー決定のお祝いを兼ねてもいるらしいが、魔法の事を知らない夏美がいる時点で公にお祝いなんて真似は出来ないし。

 唯一の問題は、ノリのいい2-Aの事だから済し崩し的にクラス全員が部屋に集まる、なんて風になりかねない所か。……まぁ、そうなったらそうなったでそれも一興だな。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

 釘宮にそう断り、携帯電話を取りだしてあやかへと掛ける。確か今日は馬術部に関して打ち合わせがあるとか言ってたから、運が良ければ……

 

「はい、もしもし。アクセル君ですか? 貴方の雪広あやかですわ」

 

 うん、いつも通りのあやかだ。

 

「あー、うん。アクセルだ。実は今日の夕食にクギャー達も一緒にすき焼きを食いたいらしいんだが、どうだ?」

「釘宮さん達も? ええ、私は構いませんけど」

 

 後ろで『クギャーって何だーっ!』とか聞こえて来るが、何故か通じているので背後からの声はスルーしてあやかとの会話を続ける。

 

「材料の方は大丈夫か?」

「ええ、もちろん。折角アクセル君に食べて貰うすき焼きですので、お肉も松阪牛のA5ランクのものをたっぷりと用意してありますわ。アクセル君が構わないのなら私としても全然問題無いです」

「分かった。なら追加で3人分の用意を頼む」

「分かりましたわ。では、また夕飯の時に。……あ、そうそう。夕飯に釘宮さん達が来るのでしたら今ここで言っておいた方がいいですわね。アクセル君、始動キー決定おめでとうございます」

「ああ、ありがとう。じゃあまた後でな」

 

 そのまま携帯を仕舞い、釘宮の方を見ると微妙に不機嫌な様子でこちらを見ていた。

 

「どうした? 夕食の件は了解が取れたが」

「それはありがとう。でもね、クギャーって何、クギャーって。色々とあだ名で弄られて来たけどクギャーなんてのは初めて聞いたわよ」

「そうか? 可愛いじゃないか、クギャー。いいと思うぞ? クギャー」

「クギャー、クギャー連呼すなっ! っていうか、何でクギャーなのよ」

 

 持っていたエリンギを元の場所に戻し、3人分追加の為に肉厚の椎茸を選びながらブツクサと言っている釘宮。そんな様子に苦笑を浮かべ、自分の買い物カゴを近くにあったカゴ置き場へと戻し、中に入っていた椎茸を釘宮の持っていたカゴへ移し替えてそのカゴを受け取る。

 

「あ、ありがと。……っていうか、アクセル君みたいな子供に買い物カゴ持たせるのってちょっと周りの目が……」

「気にするな。くぎみやの『み』を取って『や』を小さくしてクギャーだな」

「って、何でわざわざ私の名字を変な風に改造するかな」

「なんでだろうな? クギミーというのは響きが良かったからじゃないか? あ、シラタキと春菊も多めに買っていった方がいいな。特にシラタキ」

「そのあだ名、あまり好きじゃないんだけどなぁ。……シラタキ好きなの?」

 

 春菊を3束程買い物カゴに入れ、コンニャク等のコーナーへと移動する。

 

「好き? ……うん、まぁ、多分」

「多分って、あのね」

 

 正確には前世では好きだった、というのが正しいだろう。アクセルに転生してからは和食を食べる機会自体が少なかった為に、当然これが人生初のシラタキとなる。

 そんな感じで買い物を完了し、スーパーの外へと出る。

 

「うわ、もう暗くなってる」

 

 時間も既に午後6時近いというのもあり、太陽は既に完全に沈み、月が昇り始めていた。

 

「ま、2月だしな」

「んー、でも2月に入ったんだしそろそろ寒さも和らいで欲しいんだけどなぁ。アクセル君には分からないかもしれないけど、寒さは女の子にとって大敵なのよ。その点、アクセル君は子供だからいいよね。子供は風の子って言うし」

「子供って言ったって4歳くらいしか違わないだろうに。それに風の子云々言っても俺だって寒いのは好きじゃないぞ」

「そう?」

 

 そう言って買い物袋を持っていない方の手を握ってくる釘宮。

 

「うわっ、本当に冷たい。風邪とか大丈夫かな?」

「そう言えば風邪とか引いた事が無いな」

「え? マジ?」

「ああ」

 

 と言うか、色々とチート的なアクセルの身体で風邪を引くというのはちょっと想像出来ない。それ程根性のあるウィルスが存在するのなら世界的に風邪やらインフルエンザやらが流行るだろう。

 あるいは、今なら子供の姿になっているのだからそういう可能性もあるのかもしれないが。

 

「何とかは風邪引かないっていうけど……」

「一応、釘宮よりはテストの点数はいいんだけどな」

「そうなんだよね。っていうか、アクセル君みたいな子に点数で負けるってのはさすがにちょっと屈辱だわ。3学期の期末テストはちょっと頑張ってみようかな」

 

 そんな風に2人で会話をしながら女子寮へと帰宅し、2年の階へと上がっていくと突然声を掛けられる。

 

「ありゃ、やっぱり円だ」

「桜子? 何でこんな所に?」

「いや、なんとなーくこっちに来た方がいいような気がしてねー。……にしても、円にいいんちょと同じ趣味があったとはねぇ」

 

 椎名が俺と釘宮の繋がれている手を見ながら意味あり気に微笑む。

 

「あのねぇ。いくらなんでもそれはないでしょ、それは」

「でも、手を繋いでここまで来たんでしょ? 現に今も手を握ってるし」

 

 椎名の声にまだ俺の手を握っている事実に気が付き、パッと握っていた手を離す。

 

「こ、これはね。アレよ。アクセル君が手袋とか持ってなかったから、寒いと思って」

「ありゃりゃー? なーんか、慌ててるように見えるにゃー?」

「もう、桜子! そんな風に言うんなら今日の夕飯抜きにするよ!」

「ふふーん。いざとなったら非常食としてカップ麺があるもんねーだ」

 

 椎名のその言葉に笑みを浮かべる釘宮。

 

「へー、そんな風に言ってもいいんだ。今日の夕食はアクセル君やいいんちょ達に招待されて、那波さん特製のすき焼きなんだけどなぁ。しかもお肉はいいんちょの持ち込みによる最高級和牛! ……すき焼きもいいけど、牛丼も食べたい……」

「にゃ、にゃにゃにゃ! ひ、卑怯だよ円!」

 

 そんなじゃれ合いを苦笑を浮かべて見ていると、下の階から声が聞こえて来る。どうやら階段を上ってきている生徒がいるらしい。

 

「ま、じゃれ合いはそのくらいにしてくれ。すき焼きの準備が出来たら部屋に呼びに行けばいいよな?」

「え? うん。お願いね、アクセル君」

「ふふーん。まるで初々しい新婚カップルですなぁ」

「桜子っ! あんたいい加減にしなさいよ。姉と弟とかならまだしも」

 

 再び始まるじゃれ合い。これが女子中学生のパワーかと思いつつも部屋へと向かう。

 

「ただいま、と」

「あら、お帰りなさい。お使いは上手に出来たかしら?」

 

 出迎えてくれたのはエプロン姿の千鶴だった。その中学生離れした肢体をエプロンで包んでいるのを見ると、確かに中学生というよりは若奥様といった感じだ。

 

「あら? こんな所にネギが。……アクセル君、ちょっと刺さってみない?」

 

 こういう風に年齢の事を考えると本能的と言ってもいい感じで反応するのも浮気に感づく若奥様って所なのか?

 

「いや、遠慮しておく。所であやかの方に連絡は入れたんだが釘宮達も一緒に夕食を食べるって聞いたか?」

 

 どこか残念そうに長ネギを見ながら頷く千鶴。

 ……何でそんなに残念そうなんだ。

 

「ええ、さっきあやかから電話で聞いてるわ。材料に関しても足りない分はあやかの方で用意してくれるという事だし、問題無いわね。頼んでおいたのは買ってきてくれたのよね?」

「ああ」

 

 千鶴の言葉に頷き、買い物袋を手渡す。中には、釘宮達が来るということで多めに買った椎茸、春菊、シラタキが入っている。

 

「あらあら。随分と多いわね。お金足りたかしら?」

「と言うか、この買い物の金は釘宮が出してくれた。ご馳走になるお礼だってさ」

「まあ。……それなら腕によりをかけて美味しいすき焼きを作らないといけないわね」

 

 鼻歌を歌いながら台所へと移動する千鶴。その後ろ姿を見ながら、久しぶりのすき焼きを楽しみにするのだった。

 ちなみに、結局この日は釘宮達だけでは無く他のクラスメイトも大量に乱入してきて鍋祭り状態になった事を記しておく。

 あやかが念の為にとかなり多めにすき焼きの材料を用意してくれていて非常に助かった。本人は『内助の功ですわ!』とか言っていたが。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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