トッドとバーンの一件が片付いた後、バーンが不機嫌そうに帰って行ったのを見送っていると、不意にトッドが口を開く。
「なぁ、アクセル。お前やマーベルはオーラバトラーを使った戦闘は得意なんだろ?」
「は? 何だいきなり」
そんなトッドの言葉に疑問を抱きつつも、頷く。
「俺はこの世界だけじゃなくて、他の世界でもオーラバトラーと同じような人型機動兵器を使ってきたから、それなりに慣れてるな。マーベルもゲド……最初期のオーラバトラーを使って訓練をしていたし、ダンバインに乗っても訓練していた。そういう意味では、トッドが言うようにオーラバトラーを使った戦闘は得意だと言ってもいいかもな」
そう言うと、トッドは少し考え込み……やがて、口を開く。
「もしオーラバトラーを使った戦闘訓練をするとしたら、アクセルとマーベルのどっちの方から習うのがいい?」
「習う、か。それをやるかどうかはともかくとして、教えるのなら間違いなくマーベルだろうな」
トッドの疑問に対し、俺は即座にそう答える。
実際、俺の操縦技術は非常に高いのは間違いないが、混沌精霊としての身体能力ありきのものだ。
それこそ対G? 何それ美味しいの? といったような感じの操縦も普通にやるし、オーラバトラーを操縦する際に一番大きなイメージや想像力に関しても、他の人型機動兵器に乗ってきた経験からくるものも多い。
まぁ、それでもベースとなってるのは、シャドウミラー……国ではなく、特殊部隊だった頃のシャドウミラーの時の活動や、その前の士官学校での行動によって習得した技術であるのは事実なのだが。
そんな訳で、純粋にオーラバトラーの操縦技術を習いたいのなら、ゲドからオーラバトラーに乗っていたマーベルから教えて貰った方がいいのは間違いない。
それに、マーベルが乗ってるのが、トッド達の乗っているのと同じダンバインだというのも、この場合は関係してくるだろう。
俺のサーバインは、ダンバインのプロトタイプではあるが、それ故に色々な意味で特殊な機体だしな。
トッド達が十分にダンバインを動かせるようになり、そして使いこなす事が出来るようになって、自分達よりも強敵を相手にしたいと言うのであれば、俺がサーバインで相手をしても構わないのだが。
「なら、頼めないか? バーンの野郎にああまで言われて、このまま黙ってる訳にはいかねえしな」
トッドとしては、バーンの言葉は許容出来ないのだろう。
空軍のパイロット候補生だったトッドは、当然ながら負けず嫌いの面がある。
というか、アメリカ軍という大量の軍人がいる中で、パイロットというのは当然ながら非常に競争率は高い。
そこで勝ち抜くには、負けず嫌いというのは半ば必須事項だろう。
勿論、天才的な能力を持っている奴の中には、負けず嫌いではないといった可能性もある。
「マーベル、どうする?」
「私は別に構わないけど。でも、さっきの様子を見ると、もしそういう事をするのなら、バーンが怒るんじゃない?」
バーンが俺に対して思うところがあるのは間違いない。
それを理解しているからこそ、マーベルは俺にそうやって尋ねてきたのだろう。
「バーンにしてみれば面白くないかもしれないが、ダンバインの操縦を習うという点でマーベル以外に相応しい相手がいないのも間違いない事実だ」
「それはそうだけど。……アクセルがそう言うのならやるけど、いいのね?」
「構わない。やってくれ」
そう言うと、マーベルは頷いてトッドに視線を向ける。
「アクセルから許可が出たから、訓練をしてもいいわ。それで、今すぐにやるの?」
「おう、頼む。言っておくが、そう簡単に負けたりはしねえぞ?」
「俺にもやらせてくれ」
トッドの言葉に、ショウもそう言ってくる。
トカマクは……と思ったんだが、トカマクの方はそもそもオーラバトラーがないか。
いや、オーラバトラーというだけなら、トッドかショウのダンバインを借りるといったような真似も出来るのだが、トカマクの場合はそれ以前に死の恐怖を感じたのが影響してるのか、戦える様子ではない。
「どうする?」
「私は構わないけど。今日は別にダンバインに乗って戦ったりしてないから、余裕があるし」
この場合の余裕があるというのは、体力もそうだがオーラ力の方を主に指しているのだろう。
マーベルは聖戦士だけあって、オーラ力はバイストン・ウェルの人間よりも高い。
そういう意味では、何人もに訓練をつけるということは得意なのだろう。
「って事らしいが、どっちからやる? それとも、2人で戦うか?」
そんな俺の言葉に、トッドは負けず嫌いな性格を刺激されたのか、不満そうに言う。
「幾ら何でも、それはちょっとやりすぎじゃないか?」
「そうだ、俺とトッド2人を相手にするなんて、幾ら何でもこっちを侮りすぎだ」
トッドに続いてショウもまた不満そうに言ってくる。
ショウもまた、トッドと同様に負けず嫌いな点があるのだろう。
だが、俺はそんな2人に対して首を横に振る。
「侮るという意味では、お前達の方がマーベルを侮ってるんじゃないか? さっきも言ったが、マーベルは今日初めてオーラバトラーに乗ったお前達と違って、ゲドの時から乗ってるんだぞ? それで、恐獣や……それこそオーラバトラーとの戦いもやっている。素質はともかく、実戦経験という意味ではお前達2人とは比べものにならないくらい上だ」
クの国でゲドと戦ったというのもあれば、ドレイクの部下が操縦するドラムロと模擬戦をやった事も数え切れない。
素質という点なら、トッドはともかく、この世界の主人公と思われるショウはかなりの素質を持っていてもおかしくはないんだが、それでもマーベルの持つ経験は簡単に覆せるものではない。
「マーベル、どうだ? お前ならショウとトッドの2人を相手にして勝てるか?」
「やってみないと分からないわね」
勝てると言い切らない辺り、マーベルもショウやトッドが相応の素質を持っているのは理解しているのだろう。
「取りあえず、やってみるか? 2人揃って勝てなかったら、素直にマーベルに教えを請う事になるだろうし」
俺としては、ショウとトッドの2人に気を遣って言ったつもりの言葉。
だが、言われた方にしてみれば、その言葉は挑発にでも聞こえたのだろう。
俺を睨み付けるようにしながら、それぞれ頷く。
……いやまぁ、その辺の事情はともかくとして、何でそこで睨み付けてくるのが俺なんだ?
これからお前達が戦うのはマーベルなんだから、どうせ睨むのなら俺じゃなくてマーベルを睨めばいいだろうに。
そう思ったが、それを口に出せば今以上に面倒な事になりそうだったので、それについてはこれ以上言わない。
「で、どうする? まずは2人でマーベルと戦ってみるか?」
「その前に1つ聞きたいんだけどよ、もし俺達がマーベルに勝ったら、アクセルと戦えるのか?」
「は? 本気で言ってるのか?」
「どういう意味だ? 俺達だとアクセルに勝てないってのか?」
「それもあるけど、それ以前にマーベルに勝てると思ってるのか?」
「……へぇ。それはまた、随分と強いんだろうな」
「ちょっ、アクセル!?」
トッドに視線を向けられたマーベルは、慌てたようにそう言ってくる。
マーベルにしてみれば、まさかそのように大袈裟な程に持ち上げられるとは思ってもいなかったのだろう。
ただし、俺にしてみれば将来的にはともかく、今の状況ではショウとトッドの2人を相手にしても勝ち目は十分にあるのは間違いない。
「安心しろ。少なくても今日初めてオーラバトラーに乗ったばかりの相手に、お前が負けるという事は有り得ないから」
「そう言っても、ショウやトッドは一応実戦経験があるのよ?」
一応という言葉がついたのは、バーンとのやり取りでショウはともかくとして、トッドはろくに戦っていないと分かったからだろう。
軍人としては情報収集とかが大事だというのは分かるのだが、それを考えた上でも今回の模擬戦をやる上で実戦経験と表現するのは若干難しいだろう。
そういう意味では、強敵はショウだけといった事になるのか。
「本当にそう思ってるの?」
疑わしいといった様子で尋ねてくるマーベル。
何だかんだと、マーベルは結構な実戦経験を積んでいる。
それを思えば、そこまで心配になる事はないと思うんだが。
「ああ。才能云々はともかく、実戦経験では圧倒的にマーベルが勝ってるのは間違いない。普通に戦ったら、ショウとトッドを相手にしても勝てると思う」
実際にはショウとトッドがどの程度戦えるのかは分からない。
俺が見たのは、ガラリアが出撃する前にダンバインを動かしているのを見ただけなのだから。
その時の動きでは、ショウとトッドは大体同じくらいの操縦技術のように思えた。
そうなると、ギブン家との戦いで戦闘を行わなかったトッドと、ギブン家としっかり戦ったショウでは、ショウの方が多少ではあるが実戦経験を積んでいると思った方がいいだろう。
その1度の戦闘でどれだけの実戦経験を積んだのかというのは、俺にも分からない。
しかし、それでも今までマーベルが戦ってきた経験とは比べる事は出来ないだろう。
「分かった。なら、マーベルに勝ったらアクセルに相手をして貰うからな! マーベル、お前のダンバインを持ってこいよ!」
俺とマーベルの会話を聞いていたトッドが、鋭く叫ぶ。
どうやら、今の一連のやり取りはトッドにとって自分が侮られているといったように思えたらしい。
別にそんなつもりはなかったし、どちらかと言えば普通にそう思っていただけなんだけどな。
ともあれ、これで模擬戦が行われる事は決定した。
「マーベル、どうする? 俺が機械の館から持ってくるか? それとも、マーベルが機械の館に行って乗ってここに戻ってくるか?」
「乗った方がいいわね。少しではあっても機体を動かしておきたいところだし」
「分かった。なら、機械の館まで送るよ」
そう言うと、マーベルはすぐに俺の方に近寄ってくる。
「何してるんだ?」
トッドが疑問の視線をこちらに向けてくるが、俺とマーベルはそれを気にせずに影のゲートに身体を沈めていく。
「うおっ!?」
「なぁっ!?」
「おいおいおい!」
トッド、ショウ、トカマクがそれぞれ驚愕の悲鳴を上げるのを聞きながら、俺とマーベルはそのまま影のゲートに沈み、次の瞬間には機械の館に出る。
出たのはいいのだが、人の姿が殆どない。
「あれ? ……ああ、ダーナ・オシーの解析か」
俺が奪ってきた、ギブン家のダーナ・オシーやウィングキャリバーの解析をすると、ショットが言っていたのを思い出す。
ルフト家以外で開発された、初めてのオーラバトラー。
実際にはショットの部下が開発したオーラバトラーなので、技術の基礎はショットから学んだという点では独自のオーラバトラーとは言えないのだろうが。
それでも、オーラバトラーを開発出来たという点は凄いと思うが。
そんなダーナ・オシーだけに、技術者達が熱心になるのも当然だろう。
「どうするの?」
「別に調整をしたりする必要もないし、そのまま持っていけばいいだろ。俺達が持っていったって……ああ、いや。その必要もなくなったな」
視線の先に技術者が1人、走っているのを見つける。
恐らくは何らかの用事で機械の館に戻ってきたんだろうが、そういう意味でもこっちにとっては運がいい。
「おい、ちょっといいか?」
「え? アクセル王? どうしたんです?」
急いではいるのだろうが、それでも俺に声を掛けられたということで、足を止めて尋ねてくる技術者。
この辺りの礼儀正しさは、ファンタジー世界で身分制度が現代よりもしっかりしてるから、というのが大きいんだろう。
「ちょっとマーベルがショウやトッドと模擬戦をやるから、ダンバインを使うぞ」
本来なら、マーベルの使っている白いダンバインと俺の赤いサーバインは、あくまでも俺達の所有だ。
使うのにわざわざ断る必要はないのだが、それでも気が付いたら機械の館から消えていたら、間違いなく騒動になるだろう。
そうなれば、かなり面倒な事になりかねない。
だからこそ、今回のように突発的にオーラバトラーが必要になる時はしっかりと言っておいた方がいいのだ。
「分かりました。頑張って下さい。使い終わったら元の場所に戻しておけば、こちらで整備しますので」
技術者はそう言うと一礼し、走り去る。
それだけダーナ・オシーに強い興味を持っているのだろう。
「そんな訳で、問題ないらしい。俺は向こうに戻ってるから、マーベルはダンバインで来てくれ」
「分かったわ。……ねぇ、アクセル。本当に2人を相手にして、私が勝てると思う?」
「ああ、問題なく勝てると思うぞ」
「……そう。じゃあ、ちょっとやってみようかしら」
心配そうな様子ではあったが、それでもマーベルは俺の言葉に頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650