交渉を希望してきた男が口を開いたのは、それこそたっぷりと数分が経過した後の事だ。
他のダーナ・オシーのパイロット達が不安そうにざわめいていたが、それを制するかのように口を開く。
「正直なところ、そこまでは考えていなかった」
それは駄目だろ。
そう突っ込みたくなるが、今のこの状況でそのような真似をした場合、向こうが交渉を打ち切るといったような真似をしかねない。
それを思えば、そんな事は言えない。
だが、ピネガンを排除しようとしていたのに、その後の事を全く考えていなかったってのは、正直どうかと思う。
この連中にしてみれば、とにかく自分の家だったり何だったりを没落――と呼べる程の被害を受けたのかどうかは分からないが――させたピネガンが許せないと、その一心なのだろうが。
あるいは、バイストン・ウェルではこれが普通だったりするのか?
ギブン家にしても、宣戦布告も何もなくいきなりルフト領に向かってテロ行為を仕掛けてくるような者達だ。
そう考えると、もしかしたらドレイクが他とは比べものにならないくらい優秀で、それ以外はこういうのが普通……といった可能性も否定は出来ない。
「それで? どうする?」
「ミの国のこれからの事を考えれば、ドレイク・ルフトに治めて貰った方がいいと思う。だが、それはあくまで私の考えだ。組織の考えではない」
「だろうな」
あるいは、この男はあくまでも実働部隊……というか、俺と接触する事を任された人物でしかない。
それこそ、場合によっては俺との交渉が決裂して死んでしまう可能性すらあった。
だからこそ、組織の上層部が考えているような事を教えていなかったという可能性は否定出来ないが。
そもそも、本当にそれだけの組織の規模があるのか? といった疑問や、俺と交渉する際に組織がこれからどうするのかといったことを教えていないのはどうなんだ? と思わないでもないが。
「なら、どうする?」
「一度戻らせて貰う。そして、もし組織からドレイク・ルフトがミの国を治めてもいいと判断したら、その時こそ協力してくれるか?」
「そうだな。その時は間違いなく協力するだろう」
とはいえ、そうなると微妙にこの国での行動がやりにくくなったのは間違いない。
このままだと、上手くいけばミの国がそのままドレイクのものになるのだ。
だとすれば、ミの国にある機械の館を破壊するのは、止めておいて方がいいかもしれない。
ミの国の戦力については……正直、微妙なところだが。
何しろ、ピネガンに心酔している奴が多いし。
そういう意味では、もしドレイクがミの国を治めるような事になったとしても、不穏分子が大量にいるという事になってしまうのか。
それはそれで、ちょっとどうかと思う。
ただまぁ、その辺りはドレイクに任せておけばいいだろう。
結局ミの国を治めるのは、ドレイクなのだから。
「分かった。では、私はこの辺で失礼させてもらう」
そう言うと男は一礼し、他の者達と共にダーナ・オシーの方に戻っていく。
あ、本当に今更の話だが、あの男の名前を聞いてなかったな。
まぁ、名前は次に会った時に聞けばいいか。
そう判断し、俺もまたサーバインのコックピットに戻る。
『それで? これからどうするの?』
ダンバインの性能を考えれば当然だが、俺と男の会話は聞こえていたのだろう。
マーベルが興味深そうに尋ねてくる。
元々、マーベルがダンバインに乗ったままだったのは、向こうが交渉をする振りをして、実は騙し討ちをしてきた時、マーベルの安全を確保する為の行動だった。
それだけに、ダーナ・オシーのパイロット全員が降りてきた時点で、その心配はなくなっていたのだが……それでも万が一を考え、待機していて貰っていたのだ。
実はダーナ・オシーのコックピットの中に複数人が乗っていて、その中の1人だけが降りてきて、こっちを狙っているといった可能性も否定は出来なかったのだが。
「そうだな、取りあえずルフト領に戻る。……オーラショットの弾倉を補充してきたばかりで何だが」
今回の一件は、ドレイクに知らせた方がいいのは間違いない。
現在ドレイクは、エルフ城に向かっているから、ルフト領に戻ったらそっちに顔を出す必要があった。
本来なら、ドレイクは自分が望んで前線に出るといったような真似はしない。
そんなドレイクが、何故前線に出ているか。
それは当然ながら、そうしなければならない理由があるからだ。
アの国の国王たるフラオンに敵として認識されたというのは、ドレイクにしてみればそこまで致命的な事ではない。
しかし一般の兵士にしてみれば、ドレイクよりも上位の存在がドレイクを敵とみなしたといった事を意味する。
ドレイクの部下の兵士達にしてみれば、そんな状況で士気が上がる筈もない。
それ以外にも、エルフ城以外にギブン家との戦いも行っている。
そうなると、ドレイクの戦力は2つに分けられてしまっているのだ。
戦力の分散は、普通なら各個撃破の対象でしかない。
その辺りの判断もあって、ドレイクは少しでも自軍が有利に戦えるように領主の自分も前線に出るといった判断をしたのだ。
ドレイクにとっても、ギブン家はともかく、まさか今まで散々貢ぎ物をしてきたフラオンが敵に回るというのは、予想外だったのだろう。
そんな訳で、ドレイクも前線に出る必要がある訳だ。
『エルフ城に行くの?』
「そうなるだろうな。まぁ、ドレイクもいるし、結構な戦力を用意してるのは事実だ。それに、敵はろくな武器もない以上、それこそドレイク軍が正面から戦っても負けるといったような事はまずないだろうから、心配はいらないと思うけど」
ドラムロはなく、戦力はゲドだけ。
いや、あるいはギブン家からダーナ・オシーを譲渡されている可能性もあるのか?
とはいえ、ダーナ・オシーは元々ドラムロよりも性能が低い。
また、ギブン家はあくまでも領主でしかない以上、そこまで大々的にダーナ・オシーを量産出来るだけの力はないだろう。
ましてや、エルフ城と同時にギブン領にもドレイクは戦力を送っている。
その辺の事情を考えれば、ギブン家がフラオンにダーナ・オシーを譲渡するといったような真似は出来ないだろう。
それは、ミの国やフラオン、ギブン家との戦いの時、フラオンが率いる軍にいたオーラバトラーがゲドだけだったというのも、示している。
普通に考えれば、我が儘一杯に育ったフラオンだ。
ダーナ・オシーが高性能のオーラバトラーなら、それこそギブン家に対し、自分達へ渡すようにと命令していただろう。
当時はダーナ・オシーを使っているのはギブン家だけという認識だったので、もしフラオンがそんな我が儘を言っていれば、恐らく戦いが始まる前にフラオンがギブン家と繋がっているというのが分かっただろう。
新しい玩具を手に入れたら、他人に自慢をするといった子供のような性格をしているのがフラオンなのだから。
「ドレイクがさっきの連中をどう判断するのかは分からない。けど、間違いなくドレイクにとっては利益になる存在だろうしな」
何しろ、敵国の中に反政府組織がいて、それが協力を求めてきているのだ。
……ただし、その組織が具体的にどれくらいの規模なのかといったようなことは、まだ判明していないが。
『そうね。なら、早く行きましょう』
マーベルのその声に従い、俺達は来たばかりだがルフト領に戻るのだった。
「ドレイクが具体的にどこにいるのかは分からない、か」
「申し訳ありません」
ドレイクの城にいた兵士に、現在ドレイクが具体的にどの辺りにいるのかといった事を聞いてみたのだが、残念ながらそれに対する返事は分からないといったものだった。
地上界のように通信技術が発展しているのならともかく、今のバイストン・ウェルで使われている通信技術は非常に範囲が狭い。
それこそ、戦場内であればともかく、それ以上に連絡をするとなれば中継の人員を置くなり、もしくはドロか何かで伝令の兵士が働いた方が手っ取り早いと思えるくらいに。
その辺の事情を考えれば、今のところドレイクがどこにいるのか分からないというのは、しょうがない事なのだろう。
いないならいないで、こっちとしてはそれに対処するのは難しい話ではない。
そう判断すると、兵士に頷く。
「分かった。なら、直接ドレイクに会いに行く。……多分、エルフ城にいるだろ」
普通に考えれば、今日出発してすぐにエルフ城まで到着するといったことは出来ない。
あるいはドラムロやドロだけであれば、そのような真似も出来るだろう。
だが、エルフ城を攻めるとなると、当然ながら他にも多数の人員が必要となる。
であれば、歩兵や騎兵といった面々や補給物資を持っている部隊も必要となるだろう。
そうである以上、普通に考えればどうしても行軍速度は落ちる。
しかし、それはあくまでも普通に考えればの話だ。
ドレイク軍には、ナムワンというオーラシップがある。
オーラバトルシップが完成していれば、更に安全になったのは間違いない。
だが、オーラバトルシップが建造中の今は、それを使うといったような真似は出来なかった。
それでもナムワンがあれば、そこに人員や戦力、補給物資を詰め込むような真似は出来るだろう。
ナムワンの数もドレイク軍にはそれなりにあるし。
あるいは、これでギブン家との戦いを後回しにしていれば、ギブン家の戦力がフラオンに味方をしにいった可能性があった。
そうなれば、ショウのような聖戦士や、そのショウが操縦するダンバイン、それにナムワンよりも性能の高いゼラーナや、ドラムロよりも性能は低いがゲドよりは上のダーナ・オシーといった戦力が向こうにはあっただろう。
だが、ドレイクもその辺は最初から考えていたのか、ギブン家にも戦力を送っている。
ギブン家にしてみれば、強制的に二正面作戦を行わされているようなものだ。
とてもではないが、たまったものではないだろう。
ギブン領を落とされてしまえば本拠地を失うことになるのだから、ギブン領を守らない訳にはいかない。……まぁ、ギブン家の屋敷は既に壊滅しているらしいのだが。
ギブン領にしてみれば、それでも抵抗しているのだからしぶとい。
そしてエルフ城を落とされてしまった場合、ギブン家としては大義名分を失ってしまう事になる。
色々な意味で、ギブン家が厳しくなってしまうのは間違いないだろう。
何しろ、現状ではルフト家こそが反乱軍といった扱いになっているのに対し、ドレイクがエルフ城を落としてしまえば、アの国はドレイクが治める事になり、そのドレイクと戦っていたギブン家こそが反乱を起こしたといった扱いになってしまうのだから。
ギブン領もエルフ城も落とすことが出来ない。
かといって、ギブン家の戦力そのものはそこまで多くなかった。
いや、ギブン領の規模としては十分すぎる程の戦力を持っているのは間違いないのだが、この場合は戦う相手がドレイクだというのが問題なのだ。
ドレイクの所有する戦力は、それこそ領主の1人としては有り得ない程に多い。
とてもではないが、ギブン家が戦力を2つに分けるといった真似をした場合、結局どちらの戦力も撃破されてしまうだろう。
そうならないようにする為には、それこそどちらか片方に戦力を集中させる必要がある。
そうしても、ドレイク軍の攻撃を凌げるかどうかは、正直微妙なところだろう。
あるいは、昨日の戦闘でミの国があそこまでの被害を受けてなければ、その戦力をエルフ城に援軍として送るといったような真似も出来ただろうが。
だが、ミの国がアの国まで派遣してきた部隊は、俺の手によって半壊するくらいのダメージを受けた。
壊滅するといったようなダメージを与える事は出来なかったが、それでも戦力的にかなり消耗したのは間違いない。
あるいは、ピネガンが前線にいれば半壊した戦力であろうとも、エルフ城に向かわせるといったような真似は出来た可能性もある。
しかし、ピネガンは前線に出るような王ではない。
ラウの国から王女を奪う――駆け落ちなのだから、正確には違うのだろうが――といったような真似をするだけの行動力があったのだから、前線に出て来てもおかしくはないと思うんだが。
ともあれ、ピネガンがいない以上は半壊した部隊をどうするのかというのは、ミの国まで戻って指示を仰ぐ必要がある。
そしてミの国に戻れば、俺とマーベルが散々暴れ回ったといった情報がそろそろ伝わっていてもおかしくはなく、ミの国としては自国の防衛に戦力を用いない訳にはいかないだろう。
ピネガンとしても、自国を犠牲にしてまでアの国を助けたい……などとは、とてもではないが思わない筈だ。
であれば、アの国に対する援軍はないと考えてもいい。
チェックメイト、もしくは王手といったところか。
そんな風に思いながら、俺はマーベルと共にドレイクに会う為、影のゲートを使うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1525
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1673