転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0271話

 周囲へと広がった軽そうな男の声。それを聞いた短気そうな方の男は俺の顔をじっと見て、空を見て、釘宮と柿崎を見て、再び俺へと視線を向ける。

 

「……誰だ?」

「本気で忘れたのかよっ! ほら、1ヶ月くらい前に女を口説いていたらいきなり襲われただろうが」

 

 ……は? 俺の記憶が確かなら、こいつらに強引に言い寄られていた釘宮と柿崎を助けたんだが。

 そう思い、釘宮の方へと視線を向けるとその通りだとでも言わんばかりに頷かれる。

 

「……あったか?」

 

 短気そうな男の方はどうしても思い出せないのか首を傾げていた。

 その様子を見ながら、周囲へと視線を走らせる。

 さっきの男の大声で注目を集めていたのだが、短気そうな男の方が思い出せず、特に何が起きるという訳でも無かった為にこちらを見ていた視線は大分少なくなっていた。

 

「あー、悪いがあそこのスーパーに行く用事があるんだ。構わないか?」

「そ、そうそう。歓迎会用のお菓子とかジュースを買わないといけないのよ」

 

 俺の言葉に柿崎が続く。

 柿崎や釘宮にしても、こんな商店街で騒動を起こすのは御免なのだろう。

 

「五月蠅いな、ちょっとそこで黙って待ってろ」

 

 だが、男の方はそんなの知った事かとばかりに叫び、短気な男と話をしている。

 

「だから、いい加減思い出せっつーの」

「んー、そう言われれば何かそんな事もあったような気がするな」

 

 そんな野郎2人の様子を見ながら、柿崎と釘宮の制服を軽く引っ張る。

 こちらへと視線を向けた2人の前で、スーパーの方へと視線を向ける。

 意訳すると、『このままここにいて騒ぎになるのは面倒だから今のうちにさっさとスーパーに行こう』という感じだ。

 それを理解したのか、2人も頷きその場からこっそり立ち去ろうとして……

 

 カツン、カランカラン……

 

 小さいが、確実に音が周囲へと響く。

 音のした方へと視線を向けると、そこでは柿崎が蹴ったのだろう缶ジュースの空き缶がコロコロと男達の方へと転がっていった所だった。

 

「……」

 

 男達が静まりかえり、こちらへと視線を向けてくる。俺と釘宮もまた、柿崎へと視線を向ける。

 周囲からは商店街の賑わいのみが聞こえ……

 

「俺はちょっと黙ってて欲しいって言ったよね? なのに何で逃げようとしてる訳?」

 

 相棒が俺達の事を思い出せず、尚且つ俺達がこっそりと立ち去ろうとしたのを見てついに我慢も限界に達したのか、額に血管を浮き出させながらこちらへと近付いてくる。

 元々忍耐力に不自由してそうな奴だし、しょうがないと言えばしょうがないのか。

 

「つーかさぁ、そもそもこの前だってお前がちょっかいを出さなきゃ美味しい思いを出来たのになぁ……っと!」

 

 ズボンから抜いた警棒を一振りで伸ばし、そのまま俺の顔面へと叩き付けようと振り下ろす男。

 

『キャアアアアアアア!』

 

 思わずだろう、釘宮と柿崎の悲鳴が周辺へと響き渡る。

 

「少しはカルシウムでも食って我慢強くなれ……よっ!」

 

 地面を軽く蹴って釘宮と柿崎から離れ、振り落ろされた警棒を見切って回避。地面へと衝突した警棒を左足で踏みつけ、同時に右脚で警棒を握っていた男の手首を狙いなるべく軽めに蹴りを入れる。

 

「ギャッ!」

 

 聞き苦しい悲鳴を上げ、警棒を離すとそのまま短気そうな男の方へと移動する。

 

「ほら、見たか! あの時もこういう風に俺達にちょっかいを出してきただろ!」

「……ああ、思い出した。このクソガキはアレか。俺を地面に叩き付けてくれやがった奴」

「そうだよ。ほら、俺も手伝うから自慢の拳を見せてくれよ。あのガキを半殺しにしたら、後はあの女共をお持ち帰りしてお楽しみの時間だ」

 

 つくづく3流のチンピラだな、こいつら。

 釘宮と柿崎も嫌悪の宿った目で男達を見ている。それでもここから逃げ出さないのは、子供である俺がこの2人に狙われているからだろう。

 

「ちょっと、あんた達いい加減にしなさいよ。子供相手に2人掛かりなんて恥ずかしくないの?」

「そうそう。そもそもあんた達がアクセル君に勝てる訳無いじゃない。実際この前だってこてんぱんにやられたんだし」

 

 おい柿崎。お前はあの2人を追い払いたいのか、挑発したいのか、どっちなんだ。

 

「釘宮はともかく、柿崎、お前はちょっと黙ってた方がいいぞ」

「美砂、私もアクセル君の言う通りだと思う」

「円もアクセル君もちょっと酷くない? こんなに可愛い子が応援してるってのに」

 

 いや、まぁ、確かに中学生にしては柿崎はかなりの色気を持っているだろう。……あくまでも中学生にしては、だが。

 レモンやコーネリア、マリューといった肉感的な大人の女が周囲にいた俺を誘惑したいのなら……いや、そうじゃなくて。

 

「俺なら大丈夫だから離れてろ。巻き込まれたくはないだろう?」

 

 2人へとそう言い、憎々しげに俺を睨みつけている男達へと近寄っていく。

 迂闊に動き回って釘宮や柿崎を人質に取られるよりは、守るべき対象を俺の後ろに置いておいた方がいいだろう。

 それにこちらへと近付いてくる覚えのある気配を感じ取ったので、どうせこの騒ぎもすぐに収まる。

 

「……」

 

 無言のまま対峙する俺と男2人。だが、その無言の時間は唐突に終わりを告げる。

 

「はい、そこまで」

「高畑先生!」

「え? マジ?」

 

 ズボンのポケットに手を突っ込んで現れたのは、俺にとっては既に馴染み深い高畑だった。

 

「高畑……っ!? デスメガネか! おい、やばいぞ」

「ああ、分かってる。クソガキ、覚えておけよ!」

 

 高畑が現れるや否や、男達2人は典型的な捨て台詞を残して走り去っていった。

 

「大丈夫かい?」

「ふん、来るのがちょっと遅くないか?」

「そう言わないで欲しいな。これでも一応色々とやる事があって忙しいんだから」

「ネギに関してか?」

「ま、それもある……と言っておこうか」

「あの、高畑先生。ありがとうございます、助かりました」

 

 俺と高畑が話していると、釘宮がそう言って頭を下げてくる。

 

「でも、アクセル君がいればあんな奴等あっさりと……」

「ちょっと、美砂!」

「はいはい。ありがとうございます」

「どう致しまして。ただ、最近ああいう輩が少しずつ増えてるらしいから気をつけてくれよ。……ま、確かにアクセル君がいればそうそう心配は無いだろうけどね」

 

 苦笑を浮かべながら高畑が告げるが、麻帆良最強の広域指導員としてその台詞はどうなんだ?

 

「ま、いらない手間を取らせないでくれたのには礼を言わせて貰おうか」

「ちょっと、アクセル君。高畑先生にそんな口の利き方……」

「いや、いいんだよ釘宮君。彼とは担任と生徒という以外にも多少知った仲でね」

「……そうなんですか?」

「ああ。それよりも、ネギ君の歓迎会用の買い出しに来たんだろう? このままここで時間を潰すよりは早くお店に行った方がいいんじゃないのかな? 雪広君も気にしていたよ」

「あーあ。アクセル君と円の密会も委員長にバレちゃったか」

 

 どこかからかうような柿崎のその口調に、釘宮が顔を赤くする。

 

「ちょっと、美砂! なんでそうやって私をいいんちょの同類にした……が……る?」

 

 釘宮のその台詞の途中で、携帯の呼び出し音が聞こえて来る。

 

「ねぇ、ちょっと。このタイミングってもしかして……」

「あ、円もそう思う? ほら、鳴ってるのは円の携帯なんだから早く出なよ」

「……」

 

 無言でバッグから携帯を取り出して、通話ボタンを押す。

 

『ちょっと、釘宮さん! 貴方、誰に断ってアクセル君を連れ出しているのですか!』

 

 携帯から離れた所にいる俺まで聞こえて来るその声は、間違い無くあやかのものだった。

 

「愛されてるねぇ」

 

 そんな漏れ出た声を聞きながら、柿崎が笑みを浮かべながら俺の頭を撫でてくる。

 そして再び鳴り出す携帯の呼び出し音。ただし今度は釘宮の物ではなく、柿崎の方だ。

 

「ん? ……ひぃっ!!」

 

 疑問に思いつつも携帯に出ると、そこには額に血管をピクつかせ、強烈なプレッシャーを放つ鋭い視線のあやかの映像が送られてきているのが俺の位置からでも見えた。

 

『柿崎さん、貴方もアクセル君の頭を撫でるなんてそんなずるい……もとい、道草をしてないでさっさとお菓子を買ってきて下さいな!』

「は、はい。分かりました」

 

 あやかの迫力に押され、大人しく頷く柿崎。

 

「ははは。雪広君の勘は鋭いなぁ。さて、僕もネギ君の歓迎会に出る前に色々と用事があるのでこの辺で失礼させて貰うよ。君達もアクセル君がいるとは言っても年頃の女の子なのは変わりないんだ。気をつけてくれよ」

「そ、そうですよね。確かに可及的速やかにお菓子を買って戻らないといけないですよね。じゃ、委員長。そゆ事で」

『ちょっとお待ちなさ……』

 

 あやかに最後まで言わせずにブツリと通話を切り、そのまま電源も切る。

 チラリと釘宮の方を見ると、柿崎と同じように携帯の電源を切っていた。

 

「さ、さて。確かにいいんちょをこれ以上待たせるのは後が怖いからさっさとお菓子を買いに行くわよ」

「そうね。……全く、あんな勘違いナンパ男共が来なければもう買い物は終わってたってのに」

「美砂、そう言わないの。せめてアクセル君がいる時に来てくれて良かったじゃない。これが私や美砂だけの時に来られたら……」

「……確かにそうね。と言うよりも、もしかして桜子がこっちに回らなかった理由って那波さんじゃなくてこれを予想してたのかしら」

「あー。桜子なら普通にありそうよね、それ」

 

 苦笑を浮かべながらも、今度は本当にスーパーの中へと入っていく。

 

「まずは定番のお菓子を一通り買いましょう。その後で変わり種や新製品って流れで」

「ちょっとちょっと。円、アレアレ!」

 

 買い物カゴを持って2人の後を付いていくと、柿崎が突然釘宮を引っ張る。

 

「何?」

「ほら、これ。『焼きサンマジュース』だってさ。ユエちゃんとか好きそうじゃない?」

「何だ、その得体の知れないジュースは……」

 

 柿崎の言葉に思わず戦慄する。焼きサンマジュース? と言うか、それなら普通に焼きサンマを食べた方が良くないか?

 

「あれ、アクセル君知らなかったっけ? ユエってば変なジュースを飲むのが好きなんだよ。それも怪しげな物程レア度が高いらしいの」

「……と言うか、何で焼きサンマジュースなんて得体の知れない物が売られてるんだ?」

「それはほら、ここが麻帆良だからよ。色々な倶楽部や研究会があって、そういう所が作ったのを試験的に販売したりとか」

 

 成る程、ゴーヤクレープもその類なのか。

 取りあえず、その得体の知れないジュースは2リットルの物しかなかったので、購入は見合わせて普通に食えたり飲めたりするお菓子やジュースを買い物カゴへと入れていった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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