野営が終わり、翌日には再びドレイク軍は進み始める。
昨日国境を突破した件については、既に連絡がいってるらしく、何人か偵察と思しき者の姿があるらしい。
らしいというのは、俺が直接その偵察を見た訳ではなく、あくまでも人伝に聞いた話の為だ。
当然だが、偵察というのは見つかる訳にはいかない。
つまり、オーラバトラーの類で来ているのではなく、生身で来ているのだ。
勿論、見つからないのが最優先ではあるが、最初から最後まで生身で来たという訳ではなく、あくまでもこのドレイク軍が野営をしていた場所の近くからは生身で来たといった感じだが。
あるいは、ガロウ・ランなら高い身体能力を持っているので、最初から最後まで生身でという事も考えられるけど。
「それで、その偵察しに来た連中は捕まえたのか?」
「いえ、偵察をしに来た者達は、破壊工作をするようなら捕らえろと命令が出ていますが、純粋に偵察だけをするのなら見逃せという話でしたので」
「……見逃せ? 何でまた?」
わざわざこっちの戦力がどれくらいなのかといった事を、ピネガンに……あるいはフラオンにもか? ともあれ、敵に知られても、いい事は何もないと思うんだが。
「プレッシャーを与える為じゃない?」
俺とナムワンの艦長の話を聞いていたマーベルが、そんな風に言ってくる。
なるほど、プレッシャーか。
ドレイク軍が用意してきた戦力は、この軍勢だけでもかなりの戦力だ。
その上、後詰めも向かって来ているのだから、ピネガンやフラオンにしてみれば脅威でしかないだろう。
ああ、なるほど。つまりはプレッシャーを与えて、フラオンとピネガンに手を組ませるのが目的といったところか。
ラウの国の件でドレイクに対して疑問を抱いたマーベルだったが、それはそれ、これはこれといった感じらしい。
「つまり、ドレイクとしては敵は分散させるのではなく、纏めて叩きたい訳だ。まぁ、その理由は十分に理解出来るけど」
敵の数が多かったり強力であるのなら、各個撃破というのは重要な役割だろう。
だが、敵の数はドレイク軍に比べると少ないし、個としての強さも……ショウやゼラーナ隊のような例外はあれど、それ以外は基本的に練度はそこまで高くはなかった。
であれば、纏めて叩いてしまった方が手っ取り早いと、そんな認識をドレイクが持ったとしてもおかしくはない。
それに、ドレイクはミの国を征服した後はラウの国にも手を出そうとしているのだ。
ミの国と長々と戦うつもりはないという事なのだろう。
「戦力に自信があるのね。……いえ、それは分かるけど」
マーベルのその言葉は、俺にも納得出来た。
何しろ、ドレイク軍はナムワンとブル・ベガーという2種類のオーラシップを使っており、これはどっちも相応の性能がある。
以前までは、オーラシップの中で一番高性能なのはナムワンをベースに改修したゼラーナだったが、ブル・ベガーはそんなゼラーナよりも更に性能が高い。
……その上、ウィル・ウィプスのようなオーラバトルシップまで建造中なんだよな。
また、聖戦士も多数擁している。
フラオン軍では、ショウ1人。
ピネガンの陣営にいたっては1人も聖戦士は存在しない。
それに比べると、ドレイク軍では5人も有している。
そして俺とマーベルもドレイクの配下という訳ではないが、協力者ではあった。
いやまぁ、マーベルはともかく俺は地上人どころか異世界人なんだが。
ともあれ、そんな訳で戦力的にはドレイク軍が圧倒的に有利な状況にあるのは間違いない。
「戦力に自信があるからこそ、戦う相手には戦力を分散するのではなく、一ヶ所に纏まって欲しいんだろうな」
そう言いながら、多分狙いはそれだけではないだろうという思いもある。
ラウの国にフラオンを避難させる時、スムーズに進めるようにというのがあるのだろう。
また、逃げる場所があると知ってれば、敵も本当の意味で死ぬ気で攻撃をしてきたりはしないだろうし。
下手に逃げ場所をなくしてしまった場合、向こうは死に物狂いで攻撃してくる。
だが、逃げる場所があるとなれば、どうしてもそちらに意識を取られる者も出て来るだろう。
であれば、そうして意識を散らして貰った方が、ドレイクとしては戦い易いと判断してもおかしくはない。
「ともあれ、アクセル王達は基本的に戦闘をせずに行く……という事で構わないでしょうか?」
艦長のその言葉に、俺は頷く。
結局のところ、今の状況で特に俺達がやるべき事はない。
敵にちょっと強い相手が出て来たとしても、それこそ聖戦士の数も揃っているドレイク軍であれば、それに対処するのは難しい話ではない。
ショウが出て来たら厄介だが……トッドを始めとした連中が出れば、対処出来ない事もないだろう。
場合によっては、ドレイク軍の聖戦士……特にアレン達のような後発組で誰かが死ぬ可能性もあるが。
その場合、一番危険なのはフェイだと思う。
アレンは元戦闘機のパイロットというだけあって、他人を下に見る性格はともあれ、状況判断は的確だ。
自分が危険になったと思えば、それこそすぐにでも撤退するだろう。
ジェリルは、攻撃という一点においては非常に優れた能力を持っている。
それは防御や回避が他の者より劣っているという事になるのだが、その辺はトカマクが対処する事が多い。
それに比べると、フェイは……能力的にはいまいち光るところがない。
いやまぁ、聖戦士だけあって高いオーラ力を持っているし、バイストン・ウェルのパイロットに比べると間違いなく技量は高いんだが。
それでも全体的な能力や視野の広さではアレンに負け、攻撃という点ではジェリルに負ける。
ある意味、トッドと一緒に召喚されたトカマクのような感じだよな。
ただ、トカマクの場合は色々と試した結果として、後方からの援護が得意だった。
けどフェイの性格を考えた場合、そういう方向にはいかないだろうな。
何だかんだと、フェイも攻撃的な性格をしているのだから。
そういう意味では、やっぱりトカマクが特殊だったんだろうな。
「もしドレイクがどうしようもないと判断したら、こっちに連絡して戦力を貸して欲しいと言ってくるだろうし」
そうなった場合、当然だがそれなりの報酬は貰う事になるだろう。
しかし、ドレイクにしても自分が負けるよりはそっちの方がいい筈だ。
この状況で負けるという事は、まず考えられないだろうが。
「お館様の力を考えれば、取りあえずそのような心配はいらないかと」
艦長は俺の言葉を聞いて、そう言ってくる。
現在は俺のナムワンを操縦する為に派遣されているが、元々はドレイクの部下だ。
そうである以上、ドレイクの実力を侮るかのような事を言われるのは面白くなかったのだろう。
ただ、ショウとういうようなイレギュラーがいるのを考えれば、いざという時の為に俺達のような戦力はいた方がいい。
そう思うのは、当然の話だった。
「そうだと、俺達も楽なんだけどな。……まぁ、その話は置いておくとして、偵察が来ていたという事は、今日辺り攻撃を仕掛けてくるかもしれないから気をつけた方がいいぞ」
偵察に来ている以上、向こうが何もしないという事はまずないだろう。
ましてや、戦力的にはドレイク軍の方が圧倒している以上、ピネガンも籠城をするといった事はないだろう。
ミの国の首都に限らず、今までオーラバトラーを始めとするオーラマシンがなかったのが、バイストン・ウェルだ。
その当時に建築された首都……いや、この場合は王都か? ともあれ、それだけに空を飛ぶ敵に対しての襲撃は十分とは言えない。
それでも、空を飛ぶ恐獣とかがいるので、ある程度の防備は整っている可能性はある。
実際、ドレイク城と名を変えたエルフ城も、空を飛ぶ敵に対抗出来るような作りになっていたし。
とはいえ、その指揮を執ってるのが愚王として有名なフラオンである以上、どうしようもなかったのだろうが。
ミの国の王都で籠城というのは、その辺を考えても結局はないだろう。
そもそも、籠城というのはあくまでも援軍の存在ありきで行うものだ。
あるいは、攻めてくる者達の食料が限界だったりする時も有用な戦術ではある。
だが……ミの国に援軍を送るような国はまずないし、食料に関してもドレイク軍はナムワンやブル・ベガーで移動しているのでたっぷりと持ってきているし、後詰めの部隊も当然のように食料は持ってくる筈だ。
そう考えると、やはり籠城というのは愚策でしかない。
……フラオンなら何も考えていないので、攻めて来たから籠城しようと考えるかもしれないが。
いや、フラオンの場合は籠城するよりも敵を攻撃するという考えになるか。
とはいえ、ミの国の現状を考えるとそれが正解なんだから、分からないものだな。
そんな風に考えていると、艦隊の前方で何かが光ったのが見えた。
これは、噂をすらば何とやら。
もしかして攻めてきたのか?
「アクセル王、先頭を進んでいたナムワンが攻撃を受けました。現在、戦闘中との事です」
通信を担当している兵士が、俺に向かってそんな風に言ってくる。
やっぱり攻めて来たか。
「そうか。なら、こっちも一応注意しておいた方がいいかもしれないな。背後から攻めてくるという可能性もあるし」
「背後から、ですか? 了解しました。警戒を厳しくするように知らせます」
兵士はそう言い、通信装置を使ってナムワンの内部にいる者達に警戒するように言う。
ピネガンも、待ち伏せをしたからといって、正面からドレイク軍と戦って勝てるとは思わないだろう。
だとすれば、当然のように何か別の手段を打ってくる筈だった。
そして前後からの挟撃というのは、この場合は有効な手段ではある。
そうである以上、敵がこっちを攻撃する可能性というのは、間違いない。
俺の心配が決して間違いではなかったのは、数分後に証明される。
「後方から、ダーナ・オシーが5機程やってきます!」
5機か。
それなりに戦力を振り分けてきたが、それでもナムワンを破壊するのに戦力は足りない。
とはいえ、この場合は一体どうすればいいんだろうな。
基本的に俺達はあくまでも一緒に行動しているだけで、ミの国との戦いに積極的に参加するつもりはない。
そうである以上、俺が戦いに参加する必要はない。
とはいえ、それはあくまでも俺の判断だ。
だが、ミの国……もしくは、フラオン軍かもしれないが、攻めて来た相手に関しては俺がドレイク軍と一緒にいるのは変わらない以上、敵と認識してもおかしくはない。
「どうするの、アクセル。出る?」
「いや、ここで俺達が出ると、ドレイクは次もこっちを巻き込もうとしてこないか?」
「でも、だからってこのままでいるとこのナムワンも敵に攻撃されるわよ?」
マーベルのその言葉も正しいんだよな。
そうなると、やっぱりこっちで出撃した方がいいのか?
そんな俺の疑問を解消するかのように、通信担当の兵士が叫ぶ。
「近くにいるナムワンから、ドラムロと……ビランビーが出撃してきました!」
どうやら、こっちの状況については向こうも理解していたらしい。
けど、ビランビーとなると、誰だ?
現在ビランビーに乗っているのは、トッド、アレン、ジェリル、フェイ、バーンの5人だけだ。
もっとも、トッドは現在反乱軍と行動を共にしているので、この艦隊の中にはいないのだが。
そうである以上、トッド以外の誰かがやって来たのは間違いないが。
『アクセル、後ろの敵は俺に任せておきな!』
と、不意にナムワンの映像モニタに映し出されたのは、アレンの顔。
どうやら、こっちに向かってきたのはアレンだったらしい。
前方の方では派手に戦いになっている以上、アレン達はそっちに向かうのも当然か。
「分かった。任せる」
短い一言。
だが、それでアレンには十分に伝わったのだろう。
2機のドラムロを率いて5機のダーナ・オシーに向かって突っ込んでいく。
数だけで考えれば、アレンの方が明らかに不利だ。
しかし、敵はあくまでもダーナ・オシーだけだ。
この襲ってきた敵がピネガンの正規軍なのか、フラオンの軍なのかは分からない。
だが、フラオンの軍なら、それこそショウのダンバインがいなければ問題はなかった。
ゼラーナ隊のダーナ・オシーは若干手強いが、それはあくまでも若干程度でしかない。
少なくても、こうしてアレン達と正面から戦って勝てる技量ではない。
そんな俺の予想を証明するかのように、アレンのビランビーが振るうオーラソードは、瞬く間に1機のダーナ・オシーの胴体を切断する。
そのままショットクローを放ち、1機のダーナ・オシーに絡ませると、そのまま振り回して武器とする。
この戦い方……もしかして、俺の影響だったりしないよな?
KMFのスラッシュハーケンに近い特性を持つ――その武器について説明して開発したのだから当然だが――ショットクローだけに、俺は結構多用する。
まぁ、もし俺が使う場合は、基本的にサーバインのみに装備された電撃を使うが。
ともあれ、ビランビーはショットクローでダーナ・オシーを振り回し、近くにいる別のダーナ・オシーにぶつけ、バランスを崩したところをオーラソードで倒していく。
ドラムロの方も協力してダーナ・オシーと戦い……気が付けば、後方から襲ってきたダーナ・オシーは全て撃墜されたのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1679