ミの国の正規軍との間で起きた一番大きな戦いは、予想通りアの国の大勝で終わった。
勿論、アの国側にもそれなりの被害はあったが、それでも今のアの国の状況を思えば、それは殆ど問題ではないといったような程度だ。
フラオン軍が挟撃を途中で止めて撤退するような真似をしなければ、あるいはもっとドレイク軍も被害を受けていたのは間違いないが。
そうして、ミの国にとっては最大級の戦力を派遣して行われた戦いで負けた以上、向こうの戦力は殆ど残っておらず……ドレイク軍は、ミの国の王都まで到着していた。
さすがに王都だけあって、防御はそれなりに堅い。
だが、それはあくまでもそれなりであって、現在のドレイク軍に対処出来る程ではない。
まぁ、基本的に王都というのはガロウ・ランの盗賊達や恐獣を想定したものだしな。
いやまぁ、それ以外にも攻めて来た隣国を想定してもいるのだろうが、王都が作られた時に想定していたのは、あくまでもユニコンに乗った騎士や、歩兵といった相手であり、自由に空を飛ぶドロやオーラバトラー、ナムワンやブル・ベガーといった存在ではない。
一応恐獣の中にも空を飛ぶ奴はいるので、全くの無警戒という訳ではないのだろうが……それでも、空を自由に飛ぶドレイク軍を相手にするには明らかに時代遅れだった。
あの戦いで負けて王都まで迫られた時点で、ドレイク軍の勝利は間違いなかったのだろう。
「反乱軍の方、上手く説得出来ていると思うか?」
ナムワンにある食堂で、トッドがそう尋ねてくる。
何故かトッドは今、俺のナムワンに滞在していた。
まぁ、反乱軍が暴走しないように抑える為と言われれば、素直に納得するしか出来ないんだが。
実際にあの戦いにおいて反乱軍は自分達も出撃すると言い、それを却下するのはなかなか大変だった。
反乱軍の中で一番多くの者が乗っているこのナムワンでは、何とか暴発を阻止する事が出来たが、分散して乗っている他のドレイク軍のオーラシップでは、それこそ出撃するしないで揉めて、反乱軍との間で戦いになってしまったところもあったらしい。
そして、結果的にダーナ・オシーで出撃した者も何人かはいたとか。
反乱軍にしてみれば、ピネガンに不満を持っている者の集まりである以上、ピネガンの正規軍との決戦とも呼ぶべき戦いに自分達が参加出来ないのは許せなかったらしいが……まぁ、その件はもう終わった事なので、今はいいか。
ともあれ、そういう事を繰り返さない為にも、反乱軍の中では英雄視されているトッドが、次からは暴走させないようにと俺のナムワンに乗り込む事になった訳だ。
トッドがいれば、取りあえず暴走する事はないだろうという判断なのだろう。
とはいえ、既に一大決戦と呼ぶべき戦いは終わっており、残るは王都での戦いだけだ。
それを思えば、もう反乱軍が暴走するといった事はないと思うんだが。
反乱軍は、あくまでも反乱軍であって、盗賊の類ではない。
王都を攻めたり占領したりしても、その時に略奪や暴行を行うといった真似は……絶対にとは言えないが、可能性は少ないだろう。
そういう略奪とかを楽しみにして反乱軍に加わった者がいないとは限らないが。
ともあれ、ドレイクとしてはこれから自分が治める場所である以上、王都を戦場にしたくないという思いがある。
当然だろう。自分が治める領地の、それも王都だった場所……つまり、ミの国の中でも税収の多い場所を、わざわざ荒らしてその税収を少なくするというのは、ドレイクにとっても最悪に近い。
だからこそ、現在ドレイクは反乱軍の上層部……ミの国の中でも大商人と呼ばれる者達に、降伏するように交渉をさせていた。
「ピネガンが馬鹿じゃないなら、もう勝ち目はないと判断して降伏するだろ。フラオンならともかく」
そんな俺の言葉に、トッド以外でもう1人同じテーブルにいるマーベルが頷く。
「でしょうね。フラオンなら逃げるのは嫌だと、駄々をこねてもおかしくはないわ」
マーベルにしてみれば、フラオンには悪い印象しかないので、そのような判断になるのだろう。
……いや、印象の問題ではなく、純粋に能力から考えての発言であると言われても、素直に納得出来てしまうが。
それだけ、フラオンは悪い意味で有能なんだよな。
「まぁ、ピネガンはフラオンじゃないんだ。よっぽどのことがなければ、大人しく交渉に応じるだろ。ここにフラオンがいれば、みょうなちょっかいを出してきたりもしただろうけど、今はいないし」
そんな俺の言葉に、マーベルとトッドの2人は揃って頷く。
「そう言えば、トッドはドレイクから報酬として土地を貰うのを希望してたんだよな? いっそ、このミの国を貰ったらどうだ? 意外とドレイクもこのミの国ならトッドに与えてもいいと思ってるのかもしれないぞ?」
ふと、そんなことを思いつき、トッドに言う。
トッドは、広大な土地をくれるというドレイクの言葉に惹かれていた。
それを思えば、ここでミの国を貰うという方法は、決しておかしなものではない。
トッドは完全に意表を突かれた様子で、驚きの表情を浮かべる。
とはいえ、この土地をトッドに与えるというのは、ドレイクにとっても悪い話ではない。
聖戦士が活躍すればきちんと報酬を与えるという事を示せるのだから。
トッドも、こうして自分だけがミの国を貰うという事になれば、聖戦士筆頭であるというのを示し、アレンに対するコンプレックスも克服出来るかもしれないのだから。
もっとも、ミの国を与えるという事になっても、その場合あくまでもここはミの国ではなくギネス領といった扱いになるだろうが。
「え? うーん……いきなりそんな事を言われてもな」
トッドにしても、俺の言葉はいきなりだったのだろう。
戸惑った様子を見せる。
もっとも、トッドは地上ではあくまでも軍人でしかなかった以上、政治家の類ではない。
急に政治家としてやっていけるかと言われても、それは無理だろう。
ドレイクも、トッドにミの国を与えるという選択をした場合、それはあくまでも表向きそういう形になるだろうが、実際に領地の運営をやるのトッドではなくドレイクが送り込んだ面々になるだろうし。
あ、でもパイロット候補生という事は、トッドもエリートの一員なのは間違いないのか。
歴史の授業とかで過去の内政とかについて知っていれば、それを活かすといった可能性もあるな。
「まぁ、トッドがその気なら、ドレイクに言ってみてもいいけど、どうする? とはいえ、俺はあくまでも推薦するだけだ。実際にどう判断するのか、決めるのはドレイクだけどな」
「あー……そうだな……」
俺にとっては単なる思いつきだったが、トッドにとってはかなり大きな意味を持つ言葉だったのだろう。
かなり迷った様子を見せる。
「何を迷ってるの? トッドはその為に今まで頑張ってきたんでしょ? なら、ここで迷うような事はないじゃない」
迷っていたトッドだったが、そんなマーベルの言葉が背中を押したのだろう。
やがて覚悟を決めたように頷く。
「分かった。もし本当にそんな要請があったら、それを受けるよ」
そう告げるトッドにとって、やはり今回の俺の言葉はそれだけ驚きだったのだろう。
「まぁ、今はそこまでトッドが考えても意味はないしな。ドレイクがどう反応するのか分からないし」
具体的に、いつドレイクにその辺りの話をするのか。
現在行われている交渉で、ピネガンをミの国から追い出すなりなんなりして、完全にミの国の侵略が完了したらの話だろう。
いや、ラウの国との戦いが終わってからか?
その辺はドレイクの様子を見てからといったところか。
ただ、ドレイクの性格を考えれば、ここで言えば意外とあっさり受け入れるような気がしないでもない。
「トッド様が、ミの国の国王……いえ、領主になるのですか!?」
と、少し離れた場所で俺達の話を聞いていたのだろう人物が、そう声を掛けてくる。
誰だ? と一瞬思ったが、トッド様と呼んでいるところを見ると、反乱軍の者なのだろう。
ドレイクの部下でも、トッドの名声はかなりのものだが、それでも多数いる聖戦士の1人でしかない。
それに比べると、反乱軍ではトッドが唯一の聖戦士だ。
ましてや、その実力は聖戦士として見ても間違いなくトップクラス。
……トップクラスであってトップでないのは、それこそショウやマーベルといった存在がいるからだろう。
それでも反乱軍にしてみれば、トッドは自分達の救世主と呼んでもおかしくはないだけの強さを持っていた。
「待て、別にそうなると決まった訳じゃない」
慌ててそう言うトッド。
トッドにしてみれば、この件で騒がれるのは色々と不味いと判断したのだろう。
……まだ、その辺についてドレイクに話した訳でもないのに、噂が一人歩きしようものなら、それこそ洒落にならないし。
下手をすれば、トッドが領地を得る為にそういう噂を流したといったように疑われてもおかしくはない。
ましてや、反乱軍にとってトッドは特別な存在である以上、その噂が広まるのは間違いなく早い。
「え? そうなんですか? だって今……」
「お前、話をしっかりと聞いてなかったのか? いや、聞いてなかったからそういう風に思ったんだろうな。言っておくが、まだそういう話は何もない。だから、余計な噂を立てるような真似はするなよ。いいな?」
念を押すように言うトッドに、反乱軍の兵士は渋々といった様子で頷く。
「分かりました。けど、俺はミの国を治めるのならトッド様のような方がいいと思っています」
そう断言し、頭を下げてから兵士は食堂から出ていく。
「随分と慕われてるのね」
からかうようなマーベルの言葉に、トッドは鼻を鳴らして何も答えない。
トッドにしてみれば、どう反応していいのか分からなくなったのだろう。
そんな風に考え、トッドをからかいつつ話をしていると……
「アクセル王、大変です!」
と、兵士が食堂にいる俺を見つけ、慌てた様子で近付いてくる。
何だ? 何かあったのか? この様子を見る限り、何かあったのは間違いないと思えるが。
そんな風に思って兵士に尋ねる。
「どうした?」
「バーン様の部隊の一部が、王都で略奪を……」
「……は?」
一瞬、兵士が何を言ってるのか、分からなかった。
ミの国は小国だし、ドレイクにとってどうしても重要な場所という訳ではない。
しかし、それでも得られるのであれば、得た方がいいのは間違いない場所だった。
だというのに、そのような場所で略奪をしようものなら、王都の住人からは間違いなく敵視される。
それは、ドレイクにとって決して愉快な出来事ではないだろう。
「何を考えて、バーンはそれを許可したんだ?」
「いえ、許可はしておらず、部下が暴走したと。現在、バーン様が直接王都に向かっています」
まさか、バーンも一緒に略奪をしようと向かった訳ではないだろう。
そうなると、バーンが向かったのは部下を止める為か。
とはいえ、部下を暴走させたという事だけで、バーンにとっては大きなマイナスだ。
特にピネガンと交渉をしている反乱軍の上層部にしてみれば、それこそ味方に背後から撃たれたようなものだろう。
正直なところ、一体何を考えてそんな真似をしたのか俺には分からない。
いやまぁ、バーンにとっても部下のこんな行動は予想外だったのだろうが。
「これは……荒れるな」
「ええ。取りあえずピネガンが素直に降伏に応じるという事はないと思うわ。最悪、市街地での戦いになるわね」
それこそ、ドレイクにとっては最悪の結末だろう。
一体何がどうなってこんな事になったのかは、分からない。
分からないが、取りあえずバーンの失脚は決定的と言ってもいいだろう。
それ程に大きい失態なのだから。
「それで、俺達はどうすればいいんだ?」
「いえ、特に動く必要はないとのことです。ですが、お館様からこの件についての情報を隠すような真似はするなと、そう言われたので」
「……なるほど」
ドレイクにしてみれば、情報を隠すといったような真似をして俺に不信感を抱かれたくなかった訳か。
その判断は、正しいと思う。
特にマーベルは正義感が強いので、もしそのような略奪を許容していたり、もしくは起きた事を隠しているといったようなことになったら、間違いなくマーベルはドレイクに疑惑を抱く。
それはドレイクも知っており、そのような事になるのは避けたかったのだろう。
「バーンも、これで終わりだな」
「そうね。……とはいえ、一度大きな失敗をしたからといって、もう這い上がってこないとも限らないわよ?」
「その時は、脇の甘さが消えてるといいけどな。……ただ、バーンがこれで終わりとなると、代わりは誰だ? やっぱりガラリアか?」
「どうかしら。能力的には問題ないと思うけど」
言いにくそうにするマーベル。
友人の事だけに、能力はともかく性格についてはすぐにどうこういえないのだろう。
「だとすれば、もしかしたらトッドって可能性もない訳ではないか」
「俺かよ!?」
俺とマーベルの話を聞いていたトッドは、予想外の展開に叫ぶのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680