転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2924話

 レンの海に出てからのヨルムンガンドは、まさに何の問題もない状態という、今までの俺の不運から考えれば信じられない状況での行動だった。

 とはいえ、問題がないというのはあくまでもラウの国やフラオン軍、ピネガン軍、もしくは海に生きる恐獣に襲撃されないという意味であって……ヨルムンガンドの運用に関しては、それなりに問題が出てしまう。

 具体的に言えば、やはりオーラバトルシップだから、というのが大きい。

 今までナムワンの操縦をしていたものの、それがヨルムンガンドになるとどうしてもナムワンと違う場所はある。

 一応、ヨルムンガンドが引き渡された時に開発をした技術者の一人から説明を受けてはいたものの、技術者はあくまでも開発を行うという仕事で、そのような者だからこそ最低限持っている技術を前提に説明されている場所も多い。

 そんな中でも特に大きかったのは、やはりこのヨルムンガンドの最大の特徴である、艦内にある機械の館だろう。

 ダーナ・オシーやドラムロの生産ラインがあるのは助かったが、当然ながらビランビーやレプラカーンといった新型機の生産ラインはない。

 この辺は後々何らかの報酬として別途貰う必要があるだろうな。

 まぁ、生産ラインの件はともかく、当然ながら普通に地面に建築された機械の館と、ヨルムンガンドの内部に建造された機械の館では、名前こそ同じであっても色々と違う場所は多く、それがキッス家の面々を戸惑わせていた。

 他にも色々とナムワンと違う場所はあったが、その辺も色々と戸惑っており……慣れるには、やはりもう少し時間が必要となるだろう。

 そういう訳で、特に襲撃されるような事もなくレンの海を進むことが出来ている俺達は幸運だったのだろう。

 

「海にも恐獣がいるって話だったけど、全く襲ってくる様子がないわね」

 

 マーベルがヨルムンガンドの映像モニタに表示されている海を見ながら、そんな風に呟く。

 

「多分、海中にいる生物は襲われるんだろうけど、飛んでいる相手は襲わない……もしくは襲えないとか、そういう事なんだろうな」

「トビウオとか、そういうのは?」

「ここまで届かないとか? もしくは、ヨルムンガンドの大きさを考えれば、勝ち目がないと判断しているのかもしれないし」

 

 どこで聞いた話なのかは忘れたが、海の中で小さな魚は集団になることで、自分達の姿を大きく見せるといったような話を聞いた覚えがある。

 もっとも、それでも他の魚を食う魚には普通に襲われたりするのだが。

 ともあれ、自分達よりも大きな魚に対しては襲撃しないという魚も多い筈だ。

 ましてや、ヨルムンガンドは空を飛んでいるので襲撃したくても襲える魚はそう多くはないだろう。

 ……今回の場合、海に棲息するだろう恐獣が問題なのだが。

 その恐獣も、こうしている今の状況では襲ってくる様子がない。

 このままナの国に到着するまでの間、恐獣に襲撃されないといいんだが。

 今の状況を考えると、多分大丈夫そうだとは思うけど。

 そんな事を考えつつレンの海を飛んでいると、不意に通信を担当している男が俺の方を見て口を開く。

 

「アクセル王、オーラバトラー隊が少し外に出て訓練をしたいと、そう言っていますが……」

「外に? まぁ、今の状況なら特に襲撃されるようなこともないだろうから、大丈夫だとは思うけど。一応、何があってもすぐに対処出来るように注意しておけと言っておけ」

 

 ナムワンでは、搭載可能なオーラバトラーの数の問題からビショットから貰ったアルダムを全て使いこなすといったような事は出来なかったが、ヨルムンガンドではナムワンとは比べものにならないくらいのオーラバトラーを運用出来る。

 何しろ、前線に出ないで後方で待機する空母的な存在に特化しているのが、このヨルムンガンドだ。

 ウィル・ウィプスやゲア・ガリングとは違い、前線に出ない分だけ運用可能なオーラバトラーの数は多くなっている。

 そもそも、オーラバトラーを製造する機械の屋敷がヨルムンガンドの内部にはあるのだから、素材さえあれば部品に加工してオーラバトラーを次々に製造するといった真似も出来る。

 問題なのは、その素材をどう入手するかだが。

 この辺は、ラウの国の機械の館に期待といったところか?

 そんな風に思う俺の視線の先では、アルダムが出撃していく様子が映像モニタに表示される。

 今までがダーナ・オシーだった事を考えると、一気にオーラバトラーの性能が強化されたよな。

 正直なところ、アルダムはビランビーとほぼ同じ性能を持っている。

 勿論、ほぼ同じという事は違うところも色々とあるのだが。

 ただ、ビランビーはダンバインの後継機といった扱いの高機動機なので、そういう意味でもダーナ・オシーに慣れているキッス家の面々にすれば問題はなかった。

 

「続いて、ドラムロ隊、出ます!」

 

 その言葉通り、アルダムが全機出撃したと思ったら、次に出撃したのはドラムロ。

 このドラムロは、当然ながらドレイク軍から出向してきている者達だ。

 ヨルムンガンドの大きさを考えれば、アルダムだけでは数が足りない

 それに、俺達が向かうのはこの周辺では最大の国家とされるナの国だ。

 そうである以上、こっちの戦力が少なすぎても、相手に侮られるだけだろう。

 とはいえ、純粋な能力という点では俺とマーベルがいればそれで十分なんだが……それがナの国の連中に理解出来るかどうかは、また別の話だ。

 これがアの国やクの国、そして俺達と戦ったミの国の面々……もしくはフラオン軍やピネガン軍から情報収集をしているラウの国であれば、まだ俺とマーベルの戦力を脅威に感じるのだろうが。

 

「模擬戦か。……無駄に機体を損傷しないように気をつけろよ」

 

 模擬戦とはいえ、アルダムはキッス家、ドラムロはドレイク軍の兵士達だ。

 戦っているうちに熱くなってだったり、もしくは相手に何らかの恨みを抱いていたりといったようなことになっても、この場合はおかしくない。

 そうなったら、間違いなく面倒な事になる。

 まぁ、キッス家の面々は俺の命令に逆らう事はないだろうし、ドレイク軍の兵士も俺の命令に従うように命じられている筈だから、問題はないと思うけど。

 それに、ある程度の予備部品はあるから、いざという時は対処出来ない事もない。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

 心配そうな様子で呟くマーベル。

 マーベルにしてみれば、これからナの国に向かうという状況で、仲間同士が戦うといったようなことはないといいと、そう思ったのだろう。

 その気持ちも理解出来ない訳ではなかったが、今の状況を思えば多分大丈夫だろうとは思う。

 

「今のこの状況で仲間内で争うような真似はしないだろ。キッス家の面々は俺の命令にはきちんと従うだろうし、ドレイクの送ってきた連中もその辺は十分に理解している筈だ。そんな状況でも、もし何かしようものなら……そうだな、お仕置きは必要かもな」

 

 お仕置きという意味深な言葉に反応したのは、マーベルではなくキブツを始めとしたキッス家の面々。

 今の状況で自分達がもし何かをしようものなら、間違いなく酷い目に遭うと、そう理解しての行動だろう。

 俺にとっても出来ればそんな状況にはなって欲しくないので、緊張感を持って仕事をしてくれれば助かるんだが。

 

「も、模擬戦……始まりました」

 

 恐る恐るといった様子で、ブリッジにいた1人がそう告げる。

 映像モニタでは、その言葉通り模擬戦が行われていた。

 数としては、実は10機しか存在しないアルダムよりも、ドラムロ隊の方が多い。

 模擬戦では当然のようにアルダム隊が不利となるが、性能という点ではやはりドラムロの方が下だ。

 その辺りがいい具合にお互いの戦力を均衡させていた。

 

「大丈夫そうね」

 

 模擬戦において、お互いがしっかりと相手に致命傷を与えないように注意しているのを見ながら、マーベルが呟く。

 そして模擬戦についての心配がいらないとなれば、今度はまた別の方に考えが向く。

 

「アルダムの方が動きがいいわね。……機体の性能という意味じゃなくて、操縦の仕方が上手いという意味で」

 

 そんなマーベルの言葉に、キブツは嬉しそうな表情を浮かべる。

 キッス家の兵士が褒められたのだから、そのキッス家を率いるキブツにしてみれば、それが嬉しくない訳がない。

 今までの成果が出ているという点で、満面の笑みを浮かべるキブツ。

 その日はそのまま模擬戦が続けられ、双方共にとって悪くない結果となる。

 そして、翌日……

 

「あれが多島海か。確かに小さな島がたくさんあるけど、霧も結構出てるな」

「はい、あの霧のせいで周囲の様子をきちんと確認出来ないのは痛いですね。もしこのヨルムンガンドを敵が狙っている場合、向こうにしてみれば待ち伏せにちょうどいいという事になります」

「だろうな」

 

 キブツの言葉に頷きを返す。

 実際、それなりに霧が出ているこの様子から見ると、敵にしてみれば潜むのは最適の場所と言ってもいい。

 そしてヨルムンガンドの大きさを考えれば、敵がこちらを見つけるのも難しい話ではないだろう。

 こうして考えてみると、本当に厄介な場所だな。

 多島海を通る事にしたのは、もしヨルムンガンドの運用にミスをしたり、何らかの不具合が出た場合、着地する場所として使えるからというものだった。

 だが、幸いなことに今のヨルムンガンドは特に不具合らしい不具合もない。

 だとすれば、多島海を通るといったような真似はしないで、そのまま真っ直ぐにナの国に向かえばよかったと思う。

 とはいえ、それは今だからこそ言える事だ。

 結果としてヨルムンガンドの運用に特に問題は起きなかったが、もしかしたらそれが起きていた可能性も十分にあるのだ。

 最悪の状況を予想すれば、多島海を通ってナの国に向かうといった選択肢は決して間違いだった訳ではない。

 

「もし俺達を攻撃しようと思う奴がいるとすれば、ここで待ち伏せをしている筈だ。何があってもすぐ対処出来るように、準備を忘れるな」

「はい」

 

 キブツが俺の言葉にそう返し、すぐブリッジにいる面々に指示を出し始める。

 ドレイク軍の兵士だろうが、キッス家の兵士だろうが、そんなのは全く関係ないといった様子で、ブリッジにいるメンバーはそれぞれ自分のやるべき行動を行う。

 俺にしてみれば、このまま上手くいってくれればと思わないでもないが。

 

「アクセル、私達はどうするの?」

「格納庫だ。この霧の中で向こうが攻撃をしてきたら、俺達もすぐそれに対処出来るようにしておく必要がある」

「分かったわ。じゃあ、行きましょうか。……けど、こんな状況で本当に攻撃してくると思う?」

「どうだろうな。ただ、ラウの国にしてみれば、俺達にナの国に行かれたら困ると考えるのは間違いない」

 

 ブリッジを出て、格納庫に向かいながら俺とマーベルはそんな会話を交わす。

 ウィル・ウィプスやゲア・ガリングに比べて自動化が進んでいる為に、通路にいる兵士の数は決して多くはない。

 そのような者達も現在の状況を何か嗅ぎ取っているのか、少し落ち着かない様子を見せていた。

 

「ナの国に行かれたら困る、ね。……そうなると、襲撃されたらされたで、向こうがナの国に援軍を送ってくれるように頼んでいると判明するから、そう悪い話でもないのかしら?」

「そうなるな。ラウの国にしてみれば、本来ならここは動かない方がいいんだろうけど、果たしてそれが出来るかどうかだ」

 

 ラウの国にしてみれば、ナの国の援軍くらいしか現状を打破出来る方法はない。

 いや、それ以外でもリ、ケム、ハワの国を纏め上げ、反ドレイク、反ビショットの連合軍を結成するといった手段も、ない訳ではないが……正直その辺は難しいだろう。

 それこそ、リの国はアの国やクの国に恐獣の素材を売って大きく稼いでいるし、ケムとハワは国としてはきちんと存在しているものの、国力という点ではミの国より若干上といった程度でしかない。

 いや、ミの国が曲がりなりにもダーナ・オシーを開発出来ていた事を考えると、独自――ダーナ・オシーを開発したのはギブン家だが――のオーラバトラーを開発するといったような真似も出来ないとなると、ケムとハワはミの国よりも格下といった感じになってもおかしくはない。

 そう考えると、ピネガンってやっぱり国王としては相応に優秀だったんだよな。

 もっとも、その優秀さもラウの国の王女パットフットと半ば駆け落ち状態になり、それによって国交断絶し、そして最終的には反乱軍を生み、それがミの国にとって敗北の大きな理由の1つとなったのだが。

 恋は女を狂わせると言うが、男も……そして国も狂わせるといった感じか。

 この辺の問題で、ピネガンを有能なのか無能なのか判断するのに困るんだよな。

 フラオンみたいに、一発で無能だと分かるようならいいんだけど。

 そんな風に考えていると……

 

『ゼラーナ隊、発見しました! 攻撃しながらこちらに近付いてきます!』

 

 予想通り……もしくは、ある種の予定調和的に、ゼラーナ隊が現れたと艦内通信に響き渡るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1680

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