ルグウとシンドロを倒すと、俺はルグウを空間倉庫に収納してからさっさと嵐の球から出る事にする。
当然ながらそんな俺をショウが放っておく筈もなく、こっちを追ってきた。
……結果として、いわゆるスリップストリーム的な感じでショウのダンバインはサーバインの後ろを移動する。
嵐の球の外縁部は、その名の通り激しい風が吹き荒んでおり、まさに嵐の球という名前が相応しい。
つまりショウのダンバインにしてみれば、サーバインの後ろにいる事で前方から吹き荒ぶ風に関しては問題ないが、それ以外……具体的には、横や後ろ上下から来る風に関しては自分でどうにかするしかない。
「きゃあああああっ!」
サーバインのコックピットの中にエルの悲鳴が響く。
シーラはコックピットの後ろに掴まって、必死に声を出さないようにしていたが。
そんな状況なので、ショウの状況にはそこまで気を配る余裕もなく……
「よし、脱出だ!」
嵐の球の外縁部を突破して、ふと気が付けばサーバインの後ろにダンバインの姿はなかった。
これは……もしかして嵐の球の中に取り残されたか? それとも風に流されて、俺達とは全く違う場所に出たか。
後者ならいいが、前者なら不味いな。
とはいえ、ショウは聖戦士にしてこの世界の原作の主人公だ。
そうである以上、大丈夫だと思うしかない。
ともあれ、今は無事に嵐の球を脱出出来た事を喜ぼう。
そう思って映像モニタで嵐の球の様子を確認すると、そこではどこかに移動していく赤い空間……嵐の球の存在があった。
本当に、ショウのダンバインがあの中に残っていないといいんだが。
「アクセル、シーラ様を下ろした方がいいんじゃない? いつまでもこんな狭い場所にいると、シーラ様も大変でしょうし」
そうエルに促され、俺はサーバインを地上に着地させる。
シーラがいたって事は、ここはナの国なんだよな?
あるいは、嵐の球は動き回っていた関係もあって、実はナの国から離れた場所にいるのか。
ともあれ、この辺の地理は俺には分からないし、エルもフェラリオであると考えれば、そこまで地理に詳しくない可能性がある。
そうなると、やっぱりシーラを起こしてこの周辺の様子を聞くしかないか。
気絶しているシーラを苦労して横抱きにし、サーバインのコックピットから降りようとした瞬間……不意に、シーラの目が開く。
「え? ……アクセル……? 一体、何をしているのです?」
戸惑った様子を見せるシーラだったが、それでも冷静に俺に向かって聞いてくる。
そんなシーラに対し、エルは空中を飛び回りながら口を開く。
「シーラ様、覚えてないんですか? 私達、嵐の球を脱出したんですよ。その時の衝撃でシーラ様は気絶しちゃって……だから、アクセルに運んで貰うところだったんです」
「エル……そうですか。迷惑を掛けました」
「気にするな。ちょっと待ってろ。今この状況で下ろすような真似をしたら、ちょっと危険だ。まずは地面に降りてから、この状態をどうにかするから」
「……任せます」
そう告げるシーラだったが、やはりこの状況は恥ずかしいのか、薄らと頬が赤くなっている。
とはいえ、サーバインから降りる間だけだ。
シーラが俺の腕の中にいたのは、本当に短い時間でしかない。
地上に着地すると、シーラが俺の腕の中から立ち上がり、地面に立つ。
「そう言えば、もう1機のオーラバトラーはどうなったのです?」
「さぁ? 嵐の球から脱出はしたと思うんだが、俺達と違う場所に出たみたいだな。……さすがに嵐の球の中に残ってはいないと思うけど」
この世界の原作の主人公だけに、嵐の球と一緒に行方不明になるという事はないと思う。
「そう、ですか。……それで、アクセルはこれからどうするのです?」
「一応、俺とショウが嵐の球に飛ばされる前にはレンの海にいて、飛ばされる前にはナの国に行くように言っておいたから、ナの国に行きたいと思ってる。……一応聞くけど、ここってナの国でいいのか? ああやって嵐の球が移動しているとなると、もしかしたらシーラが嵐の球の中にいる間に、移動していた可能性もあるけど」
「いえ、ここはナの国で間違いありません。見覚えのある景色です」
自信満々にシーラが言う。
とはいえ、ナの国というのは現在俺が知っているバイストン・ウェルの国の中で最も国土の広い国だ。
そんな中で、全ての景色を完全に覚えているといったような可能性は……まぁ、絶対にないとは言わないけどな。
「ともあれ、嵐の球を抜け出せたのはよかった。後は、王都に向かう必要があるな。……多分、ヨルムンガンドもそっちにいるだろうし」
「そう言えば、ナの国に向かっていると言ってましたね。以前来てから、まだそれ程経っていないと思いますが、どうしたのですか?」
今更か。
そう思ったが、考えてみれば今までは嵐の球の一件でそれどころではなかったしな。
「ドレイクとビショットから、停戦を受け入れるといった返事を貰った。ただし、現在の状況でそのまま戦っていればドレイク達が勝っていたし、タータラ城の側まで攻め込んでいる。……まぁ、フォイゾンにしてみれば、ドレイク軍を引き込むといったつもりだったのかもしれないが」
「……そうなると、素直に停戦には応じないと?」
「いや、停戦には応じると思う。ただ、その際にラウの国よりも自分達の方が有利になるような条件を要求してくると思う」
ドレイクにしてみれば、停戦というよりは実質降伏宣言的な認識でいるんだろうし。
勿論、それをあからさまに言うような事はないだろうが。
「条件付き、ですか。ドレイクにしてみれば、この停戦を受け入れなくてもいいと考えているのでしょうか?」
「そこまでではないと思うけどな。ドレイクにしたって、ナの国とラウの国の双方を相手にするのは難しいだろうし。……とはいえ、ここまで攻め込んだ状態で停戦をする必要がある以上、相応の利益は必須なんだろ。まぁ、その辺は俺も詳しくは聞いてないから、実際に停戦の交渉をする時にどうにかしてくれ。俺がやるのは、ドレイクとビショットに停戦を呑ませる事だけだしな」
元々はドレイクからナの国がラウの国に協力しないようにと、交渉をする為にナの国にやって来て、それでシーラからナの国が仲介に入って停戦をするという話になった。
正直なところ、俺って一体何をやってるんだろうなという思いがない訳でもない。
ただ、現状ではそれが最善だと思うからこそ、こうして使いっ走り的な仕事をしてるのだが。
「分かりました。詳細に関しては、城に戻ってから話しましょう。……アクセルもヨルムンガンドが心配でしょう?」
「そうだな。多分大丈夫だとは思うけど」
キブツはヨルムンガンドの艦長として十分な働きをしているし、マーベルという戦力も残っている。
ゼラーナ隊や恐獣、ガロウ・ランが襲ってきても、対処するのは難しくない筈だ。
「では、城に行きましょう。ですが、その前に……アクセル」
そう言い、近付いてきたシーラは俺の頬に一瞬だけ唇を触れさせ、離れていく。
シーラの頬は、それこそサーバインの装甲と見間違う程、真っ赤に染まっていた。
シーラにしてみれば、嵐の球から自分を助けてくれた俺に対する感謝の気持ちだったのだろうが……清楚を売りにしいるシーラがそんな真似をしてもいいのか?
まぁ、この場にいるのは俺とシーラとエルの3人だけなので、何も問題はないのかもしれないが。
「さ、さぁ。いつまでもここにいる訳にはいきません。王都に向かいましょう。停戦の件も話を纏める必要がありますから」
俺の頬にキスをしたのがそんなに照れ臭かったのか、シーラは今の行為についての話を続けれないようにして、そう言ってくる。
女王としては立派だが、女としてはやっぱりまだそういう方面に弱そうだよな。
そんな風に思いつつ、俺は再度サーバインに乗ってシーラとエルをサーバインの掌に乗せて移動する。
嵐の球から脱出する時は、嵐となっている場所を突破させる為にシーラをサーバインのコックピットに入れる必要があったが、今はもう外である以上、サーバインの掌の上でもいい。
コックピットに乗せた方が安全なのは間違いないが、やはりサーバインのコックピットとなると、色々と危険な点が大きい。
俺だけならまだしも、シーラも乗せると一体何が起きるのか分からない。
そんな訳で、俺はシーラを乗せたままナの国の王都に向かう。
シーラがこの辺に見覚えがあると言っていたのは正しく、シーラとエルの案内で特に問題なく移動し……やがて王都が見えてきた。
王都の側にヨルムンガンドの姿があるのを見て、安堵する。
俺とショウが嵐の球に向かった時、ナの国に行くようにとは言ったものの、その通信が本当に聞こえているのかどうかというのは、正直分からなかった。
しかしこうしてヨルムンガンドがナの国にいたという事は、しっかりとあの通信は届いていたのだろう。
『アクセル、無事!?』
と、まるでタイミングを計ったかのように、通信が入る。
映像モニタに表示されるなりそう叫んだのは、当然のようにマーベルだ。
恐らくヨルムンガンド側からでもサーバインの姿を確認することが出来たので、こうして慌てて通信を送ってきたのだろう。
とはいえ、これは丁度いい。
いきなり俺がシーラを連れて王都に向かっても、それこそ混乱させるだけだ。
そうである以上、今のうちに話を通しておいて貰った方が面倒がない。
「ああ、無事だ。怪我も何もないから、心配するな」
『そう。……やっぱり地上に出たの?』
あの時の様子から、ガラリアが地上に出た時の事を思い出し、そう尋ねてくる。
まぁ、ガラリアの時の経験から考えると、そんな風に思ってもおかしくはないよな。
「心配するな……ってのはどうかと思うが、取りあえず地上には出ていない。ナの国にあった嵐の球って奴の中に出た」
『嵐の球ですと!?』
キブツの驚愕の声が聞こえてくる。
バイストン・ウェルの住人らしく、嵐の球については当然のように知っていたのだろう。
ヨルムンガンドのブリッジにいるのだから、キブツがいるのも当然の話だ。
「ああ。そしてそこにはシンドロとかいうガロウ・ランによって、シーラが閉じ込められていた。正確には、シンドロに誘拐されたところで嵐の球に遭遇してしまったらしいが」
『シーラ女王が。……なるほど、それで……』
何かを納得したようなキブツの声。
恐らくは、ナの国の対応が色々と妙だったのだろう。
女王がガロウ・ランに誘拐されたのだから、騒動にならない方が難しい。
あるいは、誘拐を隠してその間に少数の者でシーラの行方を探っていたという可能性も否定は出来ないが。
「ともあれ、これからシーラを連れて王都に向かう。そっちの方で先に連絡を入れておいてくれ」
『了解しました』
そう言うと、キブツが早速ブリッジにいる面々に指示を出す声が聞こえてくる。
そんな声を聞いていたのだが、何故か映像モニタに表示されているマーベルの表情が面白くなさそうな、不機嫌そうな様子になっているのに気が付く。
『ふーん。私達がアクセルを心配している間、アクセルはシーラ様と一緒だったんだ。……ふーん……』
その言葉を聞けば、さすがにマーベルが何を不満に思っている……というより、何を心配しているのかは理解出来る。
「言っておくけど、別にシーラと妙な事には……」
なっていない。
そう言おうとしたのだが、不意にシーラが頬にキスをしてきた事を思い出す。
とはいえ、あのキスはそういう意味のキスではなく、嵐の球の中にいた自分を救ってくれた感謝からくるキスだ。
「……ないぞ?」
『その間が凄く、凄く、凄く、もの凄く気になるわね。何もないのなら、そんな間はなかったと思うけど?』
「その、だな。色々とあって……うん。まぁ、そんな感じだ」
『それが具体的にどういう色々なのか、もの凄く気になるんだけど。……恋人が10人以上もいるアクセルのことだから、シーラ様に手を出してもおかしくはないけど、そうなったら間違いなく問題になるわよ?』
「いや、そういう意味では手を出してない。安心しろ」
キスされたのも、口じゃなく頬だしな。
頬にキスなら、それこそ恋人とかじゃなくて親愛の証としてそう珍しい話じゃない……筈。
とはいえ、マーベルが言う通り恋人が10人以上いる状態で俺が何を言ったとしても、そっち方面での説得力は当然のように低くなる。
俺にしてみればそういう風に言われても反論は出来ないのだが。
「ともあれ、シーラを救ったというのは停戦の件にも多少は影響してくる……かもしれないな。可能性は低いけど」
何だかんだと、シーラは女王として高い才能を持っている。
それは、ナの国をここまで導いてきた事を見れば明らかだろう。
だからこそ、自分が助けられたという事で俺に感謝はするだろうし、個人的な謝礼を渡したりといったような真似はするかもしれないが、その感謝によって国政を動かすといったような事はない。
そんな風に考えつつ、俺はシーラとエルをサーバインの手に乗せたまま、キブツから連絡を入れられた王都に向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684