「シーラ様、ご無事でしたか!」
俺のサーバインがナの国の王都にある王城に着地すると、真っ先に駆け寄ってきた男がそう言ってサーバインの手から降りたシーラに声を掛ける。
その人物は、俺が以前シーラと会談した時に一緒にいた……確か、カワッセとかいう名前の男だ。
その顔には、心からシーラを心配している様子が見てとれた。
まぁ、その気持ちも分からないではない。
何しろ、ナの国という大国の女王がガロウ・ランによって誘拐されたのだから。
……その件が解決した今となっても疑問なんだが、本当に何でそんな事になったんだろうな。
普通に考えれば、シーラがガロウ・ランに誘拐されるなんて事は、基本的にない筈だ。
どこがどう間違えばそうなったのか。
あるいは、実はナの国って警備が緩いとか?
普通に考えれば、シンドロがそれだけ有能だったという事になるな。
しまったな。今更の話だが、出来れば捕獲して部下にすればよかった。
とはいえ、相手はガロウ・ランだ。
もし本当に部下にするのなら、鵬法璽を使わなくてはいけなくなるだろうが。
エヴァからも、鵬法璽の類は出来る限り使うなと言われてるし。……まぁ、キブツを相手にして、使ってしまったけど。
結局、シンドロを部下にするというのは無理だったのだろう。
そう判断し、俺はサーバインから降りる。
すると、シーラを前にして感動していたカワッセや、それ以外にも近衛騎士団や重臣達が、こちらに視線を向けてくる。
向こうにしてみれば、俺という存在にシーラを助けられたのは、色々と思うところがあるのだろう。
何しろ、俺はナの国の人間ではなくシャドウミラーという国の王だ。
異世界の国なので、バイストン・ウェルではその言葉はそこまで大きな意味を持たないが、それでも他国の王族に自国の女王を助けられたというのは、大きな……非常に大きな意味を持つ。
これがシーラを助けたのが俺じゃなくてナの国の者……もっと言えば、近衛騎士団とかなら、カワッセにとっても最良の結果だったのは間違いない。
「アクセル王、シーラ様をお助けいただき、ありがとうございます。それにしても、嵐の球に飛ばされるとは……我々にとっては幸運でしたが、アクセル王にとっては不運でしたな」
「そうでもないさ。そのおかげでシーラを助けられたんだから。それに、ルグウという恐獣の死体も入手出来た。それに、どのみち俺達はナの国に向かってたんだ。そう思えば、一足先に来る事が出来ただけ運がよかった」
まぁ、一足先に来たのは事実だが、嵐の球の中にいたので最終的にはヨルムンガンドの方が早くナの国の王都に到着していたのだが。
「そう言って貰えると、助かります。……このお礼は後程。申し訳ありませんが、まずはシーラ様を少し休ませたいのですが、構いませんか?」
「ああ。あんな事があったばかりだ。シーラも少しゆっくりする必要はあるだろ。そうだな、なら会談は明日という感じで進めてくれ」
「かしこまりました」
「そんな訳で、また明日な」
「あ……」
サーバインに乗り込む時に、少しだけシーラの声が聞こえてきたが、何か話があったのか?
そう思いつつ視線を向けるが、既にシーラはカワッセと何らかの話をしていた。
あるいは気のせいだったのかもしれない。
それに、何か用事があるのなら、また明日話すのだから問題はないだろう。
俺もヨルムンガンドの方に行って、色々と話を聞く必要があるしな。
通信で話した限りでは、ヨルムンガンドには特に被害らしい被害がないようだった。
ショウが襲ってきた後は、他に誰も襲ってくる相手がいなかったのか。
もしくは、襲ってきてもマーベルが倒したのか。
その辺は分からなかったし、分からなかったからこそ、話を聞いておく必要があった。
そんな訳で、俺はサーバインでヨルムンガンドに向かうのだった。
「改めて、よくご無事で……」
ヨルムンガンドのブリッジに入ってきた俺を見て、キブツがそう言ってくる。
通信でこっちの無事は確認出来ていたのだろうが、それでもやはり直接見て、それで改めて安心したのだろう。
あるいは、俺が怪我をしても隠しているとでも思ったか。
マーベルはまだ若干面白くなさそうな様子ではあったが、それでも視線をこちらに向けて、俺が無事なのを見るとキブツと同じく安心した様子を見せていた。
「今回の一件でマーベルやキブツ達には心配を掛けたが、悪い話ばかりじゃないぞ。俺が嵐の球の中に行かないと、多分シーラは悲惨な目に……最悪、死んでいた可能性もあるし」
あるいは命はあっても、女として最悪の体験をしていた可能性もあった。
何しろ、シーラは美人と言ってもいい顔立ちをしている。
体型こそ、まだ発展途上といったところだが、それでも平均くらいは胸があるのは間違いない。
シンドロや部下達にしてみれば、願ってもないご馳走だろう。
……あ、そう言えばルグウは殺して俺の空間倉庫に入ってるし、シンドロも死んでるけど、その部下の3人はどうしたんだろうな。
ショウが殺していない限り、多分まだ嵐の球の中に残っている可能性が高い。
まぁ、嵐の球の中はそれなりに生活出来る環境が整っていた。
シーラの隠れていた難破船なら、寝るのは十分だろうし。
食料はどうなるか分からないが。
ともあれ、もし俺がショウとの戦いで嵐の球の中にいかなければ、そういう意味でも最悪の未来が待っていた可能性がある。
そう考えると、俺が嵐の球に行ったのは決して悪い話ではない筈だ。
「嵐の球の件は取りあえず置いておくとして、結局ヨルムンガンドは俺とショウが消えてからは問題なくナの国まで移動出来たのか?」
「はい。恐獣や前回のようにゼラーナ隊に襲われるような事もありませんでした」
「そうか、ならいい。そうなると、問題なのは明日の会談だな。前回みたいに敵対的な関係にはならないと思うけど」
今回の会談は、あくまでもドレイクが停戦を受け入れたというのを報告に来たのだ。
また、シンドロに誘拐されたシーラを助けたといった功績もあるのだから、敵対的な感じにはならないと思う。
とはいえ、それでもシーラは女王という立場である以上、公私をしっかりと分ける必要があった。
この辺がどうなるか……具体的に明らかになるのは、明日以降の事になるだろう。
そんな風に考えつつ、俺はマーベルの機嫌を直す方法を考えるのだった。
翌日、王城から来た人物に案内され、俺とマーベルは謁見の間にいた。
キブツも連れてこようかと思ったのだが、いざという時にヨルムンガンドを指揮する人物は絶対に必要である以上、そのような真似は出来なかった。
そんな訳で、王城にやって来たのは俺とマーベルだけとなる。
謁見の間か。出来れば前と同じように、シーラとカワッセの2人と気軽に話せるような会談の場がよかったんだけどな。
「アクセル王、この度のことは感謝します」
シーラが俺に向かってそう言ってくる。
にしてもアクセル王? 今までは普通にアクセルと……いや、それは私事だからこそ、俺をアクセルと呼んでいたのであって、今は公の場である以上、アクセル王と呼ぶのは当然か。
「いや、こっちも偶然嵐の球に迷い込んだからな。あそこがどういう場所か、俺だけだと分からなかった。そういう意味では、あそこでシーラやエルに合流出来てよかったし」
シーラ女王ではなく、シーラと名前を呼んだ事が気にくわなかったのか、謁見の間にいる者の何人かは鋭い視線を送ってくる。
ただし、やはりシーラを嵐の球から助けたというのが効いているのか、以前謁見の間に来た時に比べると、好意的な視線を向ける者も多かったのが救いだろう。
「そうですか。その件に関しては、出来るだけ早いうちに謝礼の品を渡します」
「そこまで気にするような事じゃないんだが……まぁ、謝礼の品をくれるというのなら、貰っておくよ」
そう言ったものの、以前ボチューンを貰ったしな。
それ以上の新型機でも開発してるのか?
あるいは、オーラバトラーではない全く別の何かとか。
取りあえず、その辺は楽しみにしておくとしよう。
「では、この件はこれでいいとして……停戦の件です。嵐の球の中で多少話しましたが、詳しくお願いします」
「最初はドレイクも停戦を受け入れるつもりはなかったようだったが、説得したおかげで何とかそれを受け入れさせる事に成功した」
実際には説得ではなく、半ば脅迫に近いやり取りだったんだが。
とはいえ、そのような真似でもしなければドレイクが停戦を受け入れるような事はなかっただろう。
……いや、あのようなやり方であっても、ドレイクが停戦を受け入れたのは驚きがあった。
最初のドレイクの様子を考えると、とてもではないが停戦を受け入れるようには思えなかったのだから。
とはいえ、このままラウの国を占領すれば、俺が敵対する。
停戦を受け入れれば、俺は敵対しない。
そうして自分の状況を天秤に掛けた結果として、ドレイクは後者を選んだ訳だ。
「ただ……停戦を受け入れはしたが、ドレイクはビショットと共にラウの国の王都のタータラ城のすぐ側まで進軍している。そうである以上、もし停戦交渉を行う場合でもアの国やクの国に有利な条件にする必要がある」
「しかし、それは……」
俺の言葉に、シーラではなく重臣の一人が何か言おうとする。
だが、シーラは視線を向けただけで、それ以上の言葉は何も言わない。
いつもならこういう時はエルかベルが何かを言うのかもしれないが、今回の話し合いは真面目な話をするということで、エルとベル2人のフェラリオの姿はここにはない。
「フォイゾンの狙いが、ドレイク軍を王都の側まで引き込んでから補給線を断ち切るなり、あるいはナの国の援軍を頼ったりして、籠城戦を行うというのは予想出来た。だが、それでもタータラ城のすぐ側まで進軍されたという事実は変わらない」
その言葉に、ナの国の重臣達は黙り込む。
ラウの国にしてみれば、今の状態がかなりピンチであるというのは十分に理解している為だろう。
それこそ、このままナの国がラウの国に援軍を出さなければ、ラウの国の敗戦は間違いのない事実となるのだから。
「まぁ、ドレイクやビショットがどういう条件を出すのかというのは、俺も聞いていない。その辺は停戦交渉の時にはっきりとする筈だ」
実際、俺が改めてナの国に派遣される時も、まだ具体的にどういう譲歩をラウの国に迫るのかというのは、決まっていなかった。
恐らくは現在進行形でドレイクとビショット、後はそれぞれの側近によって話し合われているといったところなのだろう。
そうしてまだ決まっていない以上、停戦の時に改めて話し合って貰う必要がある。
「とはいえ、ドレイクやビショットもそこまで無茶な条件は出さない筈だ。ラウの国が受け入れられるかどうかはともかく、ドレイクやビショットにしてみれば最低限これだけのものは受け入れられるといったような」
「……分かりました。では、アクセル王がラウの国に戻る時に、こちらから停戦を行う為の要員を派遣します」
シーラのその言葉で、話は終わる。
俺がやってるのは、結局こういう風になっているという情報の伝達である以上、それは当然の事だろう。
今のシーラの話からすると、恐らくシーラはラウの国には行かないらしいが。
とはいえ、それは当然だろう。
ただでさえ、シーラはシンドロに誘拐されて嵐の球に入り、行方不明になっていたのだ。
シーラはお嬢様育ちである以上、サバイバルとかそういうのは出来ないと思われる。
だとすれば、恐らく昨日……もしくは一昨日に誘拐されたと見るべきか。
そんな状況だけに、シーラとしては女王の仕事があってもおかしくはなかった。
ましてや、シーラは女王としては有能かもしれないが、聖戦士でも何でもない普通の女だ。
現在は自然と休戦状態になっているとはいえ、戦場の最前線であるラウの国に向かうといった真似をした場合、下手をしたら戦闘に巻き込まれる可能性も高い。
その辺りの情報を考えると、シーラがナの国に残るというのは当然の話だろう。
誰がラウの国に行くのかと考えると、信頼出来る人物を派遣する事になるだろう。
恐らくカワッセ辺りか?
見る限り、カワッセはシーラの副官的な存在のように思える。
だとすれば、シーラとしても信頼出来る人物となると、やはりカワッセになるだろう。
そんな風に思いながら、シーラとの謁見を続けるのだった。
シーラとの謁見をした翌日、早速だが俺はラウの国に戻る事になった。
ヨルムンガンドと共に行動するのは、ナの国から派遣される停戦の仲介役となる人物……
「アクセル王、よろしく頼みます」
「任せろ。とはいえ、俺が出来るのはあくまでもラウの国まで連れていくだけだ。その後の停戦の仲介は、カワッセ達に掛かっている」
俺の言葉に、カワッセが力強く頷く。
ヨルムンガンドと共に行動している、グリムリー。
そちらから、俺に挨拶の為にやって来ていたのだ。
「本来ならシーラ様も見送りに来たがったのですが、仕事の方が……」
「だろうな。女王だし、しょうがない」
そうして言葉を交わしつつ、ヨルムンガンドとグリムリーはラウの国に向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684