転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0283話

 魔法の修行やら、あやかの実家に遊びに行くのやらで忙しかった春休みもとうとう最終日。桜もそろそろ葉桜へと変わってきている中、俺は春休み最後の日という事もあり……

 

「カラオケねぇ」

「そうそう。この春休みは何だかんだ言ってアクセル君と一緒に遊ぶ暇が無かったからね。この機会を逃すのは円的にちょっと可哀想でしょう? 折角の春休みなんだから、ロマンチックな思い出の1つくらい……」

「ちょっと、美砂! あんたはいつもいつも……」

 

 スパーン! と、どこかから取り出した手製のハリセンを柿崎の後頭部に叩き付ける釘宮。そしてその様子を面白そうに眺めている椎名。

 いつものチアリーダー3人組だった。

 て言うか、カラオケがロマンチックな思い出になる……のか?

 

「痛たたた……。ちょっと円、そもそもカラオケの割引券を貰ってきたのはあんたでしょうに」

「それはそうだけど……でも、別に私はアクセル君を誘おうなんて一言も言ってないし」

「ありゃ? じゃあ誘わなくてもいいのかなー?」

「にゃはは。円も正直になったらいいのにね」

「桜子、あんたまで! あぁ、もう。分かったわよ。春休みに一回くらいアクセル君と遊びに行きたいとは確かに思ってたわよ! でも、いい!? 別に私はいいんちょの同類だったりはしないんだからね! その辺の所をきちんと覚えておくように!」

「はいはい。ま、正直に言えるようになったのは一歩前進かな? で、どう? アクセル君。綺麗なお姉さん達と一緒にカラオケに行ってみない?」

 

 スカートのポケットから取り出したチケットをひらひらとさせながら柿崎がそう言ってくる。その手に持っているのが先程言っていた割引券なんだろう。

 

「まぁ、いいが。カラオケは行った事ないぞ? そもそも歌とかあんまり詳しくないし」

 

 アクセルに転生してから死亡フラグを叩き折って生き残る事に全力を注ぎ込んできた俺は、当然カラオケなんかに行ってる暇も無かった。と言うか、そもそも外国では日本程カラオケはメジャーじゃないしな。

 

「え? そうなの? 勿体ないなぁ。じゃ、今日がアクセル君のカラオケ初体験だね!」

 

 柿崎がそう言って、俺の腕を取りそのまま部屋を出て行く。

 ……あやかに千鶴、夏美がいなくて良かったというべきか。

 いや、千鶴ならウフフフと笑いながらもあやかみたいに暴発する事は無いか。

 

 

 

 

 

「さ、ここだよ」

 

 そう柿崎が言ったのは、女子寮から電車で数駅行った所にある駅前のカラオケ店だった。春休み最終日というのも影響してるのだろう、それなりに賑わっているように見える。

 そのまま店の中に入り柿崎や釘宮が手続きをしている間、周囲を確認する。

 どうやら麻帆良にあるカラオケ店といっても、俺の常識が通じる範囲の店のようだ。

 

「取りあえず8時間でいいよね」

 

 そう、柿崎の声が聞こえるまではそう思っていたのだ。

 

「ちょっと待て! 8時間!?」

「ん? そうだよ。このくらい普通だよね?」

「いや、それはあんた達だけだから」

 

 顔を覆いながら柿崎と椎名へと突っ込みを入れる釘宮。こういう所がこの3人組の中で苦労性と言うか、常識人と言うか……どことなくあやかの『いいんちょってばいい人なんだけどねぇ』みたいな雰囲気が漂っているような気がする。

 その後、釘宮の拳による粘り強い交渉でカラオケは5時間になった。現在が10時ちょっと過ぎなので、午後3時くらいまでか。

 

 

 

 

 

「はい、アクセル君」

 

 個室に入った途端柿崎に渡されたのはマイクとリモコン。

 

「俺、カラオケ初体験って言ったと思うんだが」

「まぁまぁ。取りあえずはアクセル君の実力を見る……聴く? 為にって事よ。ほらほら、何歌う?」

 

 そう言われてテーブルの上に置かれてあるリクエスト番号の書かれてある本のページをめくってみる。

 パッと見、俺の知ってる曲は殆ど無い。と言うか、それも前世で知ってる曲って意味だが。

 パラパラと適当にめくっていくと、ようやく知っている曲を発見したのでそれを入力。

 すぐに前奏が始まり、マイクを持ってステージの上へと移動する。

 

 

 

 

 

「う、うーん……何て言うか、微妙? いや、下手じゃないんだよ。それは確か。でも、上手くもないと言うか……やっぱり微妙?」

 

 それが俺の人生初のカラオケの評価だった。

 釘宮のその評価を聞き、柿崎と椎名は苦笑を浮かべている。

 

「あはははは。頭良し、運動良しのアクセル君にも弱点はあったか。……まぁ、そこまで完璧超人じゃちょっと引くしね」

「完璧超人、ねぇ……」

 

 柿崎の言葉に内心首を傾げる。個人的には自分の事をとても完璧超人だとは思えないのだ。特にアクセルに転生してからのアルコールの弱さは致命的なまでの弱点だろう。……もっとも、幼児化している今はまずそれが表沙汰になる事はないだろうが。

 

「じゃ、次は私達の美声を聴かせてあげよう! 私の歌を聴けぇっ!」

 

 柿崎はそう宣言し、既に暗記しているのかリクエスト番号の載ってる本を見もせずにリモコンで番号を入力していく。そしてやがて流れ始めたのは、よく街で流れている流行りの歌だった。

 確かに自分で言うだけあって、その声は美声と言ってもいいだろう。

 

「うわ、さすが美砂。伊達にコーラス部って訳じゃないわね」

「コーラス部?」

 

 釘宮の呟きに、思わず尋ねる。

 

「あれ、アクセル君は知らなかったっけ。美砂はチアリーディング部の他にもコーラス部に入ってるんだよ」

「なるほど、道理で……」

 

 その後は柿崎が歌い終わるまでその声に聞き惚れる事になった。

 そして歌い終わった後の拍手でどこか照れくさそうに顔を赤くしているのが印象的だった。普段が普段なので、照れて赤く染まった柿崎はかなり新鮮だ。

 

「じゃ、次は私の番だねー。ほにゃらば!」

 

 柿崎と同じく、番号を暗記しているのか慣れた様子で入力していく椎名。

 流れてきたのは夏美や千鶴と一緒に見たTVドラマの主題歌だった。

 椎名のその歌声は柿崎程に美しくは無いが、聴いてるだけで元気が湧いてくるような声で椎名の感情が上手く表現されている。

 

「上手い……と言うか、聴いてて楽しくなるような歌声だな」

「あ、やっぱりアクセル君もそう思う?」

 

 注文したポッキーを口に運びながら柿崎が笑う。

 

「何て言うか、歌声に感情が乗っている? 桜子の歌声ってそんな感じなのよ。技術自体はそれ程でも無いんだけど、その1点でコーラス部に入っても十分やっていけると思うんだけどね。技術に関しては覚えればいいんだし」

「にゃははー。でも、今はチアリーディングとラクロスで精一杯だからねぇ」

 

 ニコニコと笑いながらこちらへと戻って来る椎名。テーブルの上に置かれていた缶ジュースで喉を潤しながら照れたように笑っている。

 

「ま、さすがに部活を強制は出来ないしね。……さて、次はいよいよ本命の円の番だね。その美声でアクセル君のノックアウトを狙ってみようか」

「ノックアウトって、美砂。あんたねぇ」

「まぁまぁ。折角来たんだし円の歌をアクセル君に聴かせるチャンスなんだよ?」

「だから、私は別にいいんちょの同類なんかじゃ……」

 

 そう言いつつも、リクエスト番号の載っている本も見ずに番号を入力していくのはそれなりにこのカラオケ店に慣れている証拠だろう。

 

「と言うか、美砂や桜子の後に歌えってどんな罰ゲームよ」

 

 溜息を吐きつつも、流れてきた音楽に耳を疑う。それは柿崎の流行のポップ曲でも無く、かと言って椎名のようなドラマの主題歌でも無い。俺でさえ聞き覚えのある洋楽だったからだ。

 

「洋楽?」

「そ。アクセル君は知らなかったっけ? 円って実は洋楽とか好きなんだよ」

 

 フライドポテトを摘みながら柿崎から教えて貰う。

 釘宮の女としてはややハスキー気味な声が洋楽と上手くマッチする。その歌は柿崎の歌程上手くも無いし、椎名の歌のように感情が伝わってくる訳でもない。だが、何故か強烈な印象を俺の心に残していった。

 

「えっと、お粗末様でした」

 

 歌が終わって、釘宮がペコリと頭を下げる。

 

「やっぱり美砂や桜子と比べるとちょっとね」

「いや、そうでもない。いい歌声だったぞ」

「え? そう?」

 

 褒められて満更でもないのか、照れ笑いを浮かべる釘宮。

 その様子を、柿崎と椎名が生暖かい目で見守っていた。

 

「良かったね、円。いい歌声だってさ」

「ひゅーひゅー」

「ちょっと、2人共!」

「キャー、アクセル君、たすけてー」

 

 拳を振り上げた釘宮から逃げるように、柿崎が棒読みな台詞を口にしながら俺の背後へと回り込む……と言うか、俺を自分の膝の上に抱え込む。

 

「ちょっと、美砂!」

「ふふーん。ツンデレクギミー破れたりだね」

「クギミー言うな! 後、ツンデレでもないわよっ!」

 

 そんな釘宮の言葉を聞き流しながら、テーブルの上にあるフライドポテトを摘んで俺の前へと持ってくる。

 

「はい、アクセル君。あーん」

「……」

 

 この場合はやっぱり食べないと場が収まらないんだろうな。以前レモンにやられた時と同じで。

 

「あーん」

 

 内心で溜息を吐きながら、口を開いて差し出されたフライドポテトを口の中に入れる。

 

「ひゃんっ!」

 

 だが、どういうミスかフライドポテトと一緒に指まで口の中に入れて舌で絡め取り、その感触に柿崎が悲鳴を上げた。何と言うか、普段の大人の女ぶっている柿崎にしては妙に可愛い声だった。

 

「美砂、変な声を上げない! アクセル君も、それはセクハラだよ?」

「いや、そう言われても……」

「そうそう。セクハラは女が嫌な場合成立するんでしょ? なら大丈夫。私はそんなに嫌じゃなかったから」

 

 微妙に頬を赤くした柿崎を見て、釘宮が頬に一筋の汗を垂らす。

 

「美砂、あんたもしかして……」

「え? 何?」

「美砂、顔が赤くなってるよ?」

 

 椎名の指摘に顔を引きつらせる釘宮。

 

「いいんちょの同類って私じゃなくてあんたなんじゃ……」

「は? 無い無い。確かにアクセル君の舌はちょっとその……ゾクリとしたのは認めるけど私の守備範囲は……え? あれ?」

 

 そこまで言って何かを考え込む柿崎。その様子を横目に、その膝の上から降りて元の場所へと戻る事に成功する。

 そんな俺を見ていた釘宮と椎名だったが、すぐに気を取り直すように再びカラオケへと集中していく。

 そしてその後は特に変な空気になる事も無く5時間たっぷりとカラオケを楽しんだ……と言うか、楽しまされたのだった。

 ちなみに昼食に関してはカラオケ店の料理を注文したんだが、アクセルに転生してから初めての焼きそばを始めとした料理をたっぷりと楽しんだ。

 

 

 

 

 

 この日、寮に戻ったら何故かネギ王子説とかいうのが流れていたのはまぁ、余談である。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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