転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0284話

 春休み最後の日、カラオケ大会から帰った俺は茶々丸経由でエヴァに呼び出されて寮の近くにある丘へと来ていた。テストで1番になったパーティを開いたり、長谷川が公開ストリップをしたあの場所だ。

 雲一つ無い月夜という事もあり、夜にしては明るい月光が降り注いでいる為に街灯の無いこの場所でも明るさに不自由はしない。

 

「へぇ、いよいよ今夜から始めるのか」

「うむ。じじぃとの約束でうちのクラス以外の奴には手を出しては駄目だし、後に残る危害を加えるのも禁止されてるがな。折角の機会なんだ。たまには吸血を楽しませて貰うとするよ」

「言っておくが……」

 

 俺の言葉にエヴァは苦笑を浮かべる。

 

「ああ、雪広あやかと那波千鶴には手を出さんよ。私としてもお前のような興味深い奴と敵対するのは面白くないからな。……いや、逆に徹底して敵対してみるというのも面白いか?」

「エヴァ」

「ああ、分かってる。冗談だ冗談」

 

 エヴァと近右衛門との約束。それがいよいよ今日から始まるのだ。

 近右衛門にしてみれば、ナギの息子であるネギがこの麻帆良に来るというのを隠していた後ろめたさもあって許可した事だが、当然それだけではないだろう。ネギという魔法学校を卒業したての子供に闇の福音という二つ名を持つエヴァと戦わせて戦闘経験を積ませ、あわよくばあの闇の福音に勝ったという自信を……といった所か。

 それにエヴァと近右衛門との間でネギの命を奪うというのは禁止されているというし、関東魔法協会理事としても安心して見ていられるのだろう。

 もっとも、エヴァに近右衛門からの信頼が無ければそもそもこんな模擬戦……いや、茶番は行われないんだろうが。

 

「で、誰を狙うんだ?」

「さて。まだ分からんな。夜の8時を過ぎてもまだ寮に戻っていない相手を標的にするとじじぃとは話が付いてるが」

「一応聞いておくが本当に安心なんだろうな?」

 

 俺の中にある吸血鬼で一番印象深いのは型月世界の吸血鬼だ。あの世界の吸血鬼は血を吸われたら人間としての生は終わりになる。

 

「以前も言っただろう? この世界の吸血鬼はお前の知っている吸血鬼とは随分と違うんだよ。少なくても、血を吸われたら即死亡なんて事はないから安心しろ」

 

 エヴァの話によると、吸血によって操る事が出来るのは魔力の低い者や魔法を使えない者のみらしい。ある程度以上の魔力を持った者は無意識に抵抗出来るとか何とか。

 

「まぁ、いい。どうせ今回の出来事に俺は基本ノータッチだしな」

「そうか? ……そうなるといいな」

 

 何やら意味あり気な笑みを口元に浮かべるエヴァだが、ネギにしてみれば俺は魔法に関しては何も知らない一般人という事になっているのだから関わりようがないだろう。

 

「さて、ではそろそろ行かせて貰うよ。良い夜を」

「失礼致します」

 

 満月が近い影響もあり、幾分か封印も緩んでいるおかげだろう。ふわりと空中に浮かぶエヴァ。茶々丸も足の裏と背中から何かを噴射してその後を追う。

 

「さて、いよいよ茶番の始まり……か」

 

 その後ろ姿を見送り、寮へと戻った。

 

 

 

 

 

「あら、お帰りなさいましアクセル君。でもこんな時間まで外に出るのは感心しませんわよ?」

「いや、エヴァとちょっとな」

「エヴァンジェリンさんと?」

「ああ。……夏美は?」

 

 このまま魔法関係の話をしていて夏美に聞かれでもしたら色々と厄介な事になるのでそう尋ねる。

 

「夏美さんなら千鶴さんとお風呂へ行ってますわ」

「そうか。なら丁度いい。エヴァとネギの模擬戦の件については話したな?」

「……ええ。正直、あまり感心出来ませんが」

「ま、あやかならそうだろうさ。だが、これは学園長も許可している事だ。ネギにとっても吸血鬼との戦いは無駄にはならないだろう。それに身の安全が保証されている戦いだ」

 

 もっとも、当然ネギはその辺に関しては知らないのだが。

 

「ネギにエヴァが吸血鬼だと気が付かせる為の吸血行為を今夜からエヴァが開始するらしい。その激励みたいな感じだな」

「……本当に、大丈夫なんですわよね?」

 

 やはり委員長としてクラスメイトが心配なのか、どこか心細気に尋ねてくる。

 

「ああ。それに関しては本人も太鼓判を押していたし、学園長も了解済みだからな。大丈夫だと思っていいだろう」

「そう……ですか」

「ま、あやかや千鶴は魔法や裏の世界に関しては知ってはいても、別に好き好んで関わる必要も無いんだ。そっち関係に関しては俺に任せてあやかは風呂にでも入ってくればいい」

 

 そう言って着替えを持ったあやかを大浴場へと送り出し、俺は部屋にあるシャワー室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「3年!」

「A組!」

『ネギ先生ーーーーっ!』

 

 翌日。新学期が始まり、クラスはネギに対する歓迎ムードで一色だった。

 いや、進級したといってもクラスはそのまま2-Aの時と同じ教室なんだがな。

 その後ネギがこれからの抱負を語り、賑やかなクラスを嬉しそうに眺めていたが素早くこちらへと視線を向けてくる。

 その視線が向いているのは俺……ではなく、その隣でネギへと鋭い視線を送っているエヴァだった。

 周囲の様子を他所に視線を交えるネギとエヴァ。恐らくそのまま時が流れていればクラスの中でも何人かがその様子に気が付いていただろう。だが……

 

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aの皆もすぐに準備して下さいね。あ、それとアクセル君は申し訳ないけど1人だけ個別にという事になってます。アクセル君、ついてきて頂戴」

 

 源がタイミング良く教室に現れる。

 その台詞に、我に返ったネギは慌てて口を開く。

 

「あ、ここでやるんですか? 分かりました。では皆さん今すぐに服を脱いで……」

 

 そんな言葉を聞きながら、ニヤリとした笑みを口元に浮かべているエヴァと視線を合わせてから教室を出て行った。

 ちなみに、教室の中ではネギが『今すぐ脱いで』発言で自爆していたがその辺は俺は関係ない。

 

 

 

 

 

 俺1人という条件の為に身体測定も素早く終わり、教室へと戻るとゴソっと人数が欠けていた。

 そして何故か黒板にはエイリアンのような存在が描かれている。その横にはチュパカブラの文字が。

 

「明石、何だか人数が少ないようだが?」

「あ、うん。なんかまき絵が桜通りで寝ているのを発見したらしくて。ネギ君含めてそっちに行ってるよ」

「桜通り?」

「うん。ほら、ここ最近噂になってる『桜通りの吸血鬼』って聞いた事ない? アレの仕業じゃないかって」

「桜通りの吸血鬼、ね」

 

 その噂に関しては、近右衛門がネギとエヴァの戦いを行わせる為に意図的に流したものだと聞いている。その噂がこの3-Aにも伝わったのだろう。

 だが。

 

「……で、アレは?」

 

 黒板に描かれているエイリアンへと視線を向ける。

 

「ああ、それが桜通りの吸血鬼の正体じゃないかって」

「……なるほど」

 

 エヴァもまさか自分がチュパカブラ扱いされているとは思ってもみなかっただろう。いや、俺がいなくなった後に書かれた絵なんだしエヴァのいる前で書かれたのか。

 

「哀れな」

「え? 何か言った?」

 

 思わず口から漏れた呟きに明石が反応する。

 

「いや、何でもない。それよりこの後は普通の授業でいいんだよな?」

「うん、その筈だよ。それよりもアクセル君、美人なお姉さんの健康診断には興味ないかな? 特に私はここ最近急に育って来てるんだよねー」

 

 チラチラと健康診断の結果が書かれた紙を振ってみせる明石だったが、それを見た俺は端的にそれに返答する。

 

「フン」

「は、鼻で笑われた!? ちょっとアクセル君、幾ら何でもそれは酷くないかな!?」

「そういう台詞はもう少し色気が出てから気になる相手に言うんだな」

「気になる相手? お父さん、とか?」

「……まぁ、明石がそれでいいのなら俺は別に構わないが」

 

 ショタコンにオジコンがいるくらいだ。ファザコンがいてもそうおかしな話ではないだろう。

 

「えへへ。お父さんってば私がいないと何にも出来ないんだよね。掃除とか洗濯とか。料理なんてレトルトカレーを温めないでそのままご飯に掛けて食べてるんだよ! 信じられる!?」

 

 だが、明石に父親の話を振ったのが俺のミスだったの気が付いたのはそのすぐ後の事。次の授業が始まるまで、延々と父親自慢をされたのだった。

 教訓。明石に父親の話を振るのは危険なり。

 

 

 

 

 

「さて、どうするか」

 

 授業も全て終わり、現在は放課後。

 あやかは委員長としての仕事があるとかで何かの集まりに向かい、千鶴は例の如くボランティアとして悪ガキ達の相手をしに行った。夏美は演劇部。

 

「そして俺はやる事がない、か」

 

 普段なら暇な時は魔法の練習でもしているんだが、エヴァは現在ネギとの戦いに向けて色々と忙しいので俺の相手をしていられないと前もって言われている。

 同様の理由でネギを相手にするのもエヴァの邪魔となる可能性があるので却下。そうなると……

 

「おっと、アクセル君。今日の放課後は暇かな?」

 

 そう俺に声を掛けて来たのは麻帆良のパパラッチこと、朝倉和美だった。

 

「朝倉?」

「そう、皆のヒロイン。真実の追究者。朝倉和美だよ。で、今日の放課後は暇なの?」

「真実の追究者、ねぇ……まぁ、暇と言えば暇だが」

「ラッキー。ね、もし良かったらちょっと私の取材に付き合ってくれない?」

「取材?」

「そ。柿崎や釘宮に聞いたよ。アクセル君ってかなり強いんだってね。だから私のボディーガード代わりにお願い出来ないかな?」

「ボディーガードって、また何か危ない事に首を突っ込んでいるのか?」

 

 俺が転校して来てからも既に数度に渡って朝倉の巻き起こした騒ぎに巻き込まれた経験がある。それだけに多少の警戒心を抱くのはしょうがないだろう。

 

「ま、そんなトコ。で、どうかな?」

「ちなみに、取材先は?」

「噂の桜通りの吸血鬼だね」

 

 あー、まぁ、被害者も出ているし報道部として当然と言えば当然なのか。まほら新聞の記事にもなるだろうし。

 しかし、そもそもこの桜通りの吸血鬼に関してはネギとエヴァの戦いの為のお膳立てだ。一般人の朝倉がそれに巻き込まれるのはどう考えても拙いだろう。……いや、あるいはエヴァに血を吸われて第2の被害者となるとかいう流れもありか?

 

「いまいち気が乗らないんでパスさ」

「じゃーん! アクセル君の事だからそう言うと思ってました! そんな時にこれ! アクセル君命令券!」

 

 俺に最後まで言わせずに、1枚のチケットを取り出す朝倉。と言うか、命令券ってなんだ。

 だが、確かに朝倉の持っているチケットには『アクセル君命令券』と書かれていた。……それも、見覚えのある字で。

 

「千鶴か」

「そ。アクセル君の事だから、断ると思って用意しておいたのさ! アクセル君達の食を握っている那波さんお手製の命令券! さぁ、どうする?」

「……はぁ、今回だけだぞ」

 

 千鶴がこういう手段に出たとなると、恐らく朝倉のボディーガードを頼みたいんだろう。一応今回の事件についてはあやかにも千鶴にも話してあるので、心配はいらないと思うんだが……それでも心配をしてしまうのは千鶴の母性故か。

 まさに皆のお母さんって……

 そう思った時、唐突に背筋がゾクリとしたのを感じてそれ以上の思考はやめておく。

 こうして、結局俺はエヴァの予想通り桜並木の吸血鬼事件に巻き込まれる事になったのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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