チュンチュン……と、そんな風に聞こえてくる小鳥の声で意識が急速に覚醒し、そして目が覚める。
周囲にあるのは、見覚えのない部屋。
その事に一瞬戸惑ったが、広いベッドの中で俺の隣に一糸纏わぬマーベルが眠っているのを見て、昨夜の事を思い出す。
やってしまったな。
それが、現在の俺の正直な気持ちだ。
とはいえ、マーベルのおかげで昨日感じていた絶望感は既になく、いつも通りになっている。
昨日、外で数回行為を行った後、影のゲートで転移してそういう行為をしてもいいようなホテルに来て、一泊したのだ。
まさか、マーベルの両親がいる家でそのような行為をする訳にもいかないので、当然の選択だった。
ちなみにアメリカというのは、日本にあるような、そういう行為の為のホテルというのはない。
いや、あるのかもしれないが、少なくても俺はそのようなホテルを見つけることが出来なかったので、あったとしても数は少ないのだろう。
代わりにモーテルといった……ビジネスホテル的な宿泊施設もあるが、マーベルの初めて――厳密には草原の後なので違うのだが――をそういう場所でというのもなんなので、それなりのホテルに部屋を取り、朝方近くまで愛し合っていた。
ちなみに、当然だがこの世界の金は持っていないので、ホテルの代金はマーベル持ちだ。
後で空間倉庫の中にある宝石か何かを処分して、金を返さないとな。
昨日はゲートが設置出来ない事に絶望し、そんな事を考えるような余裕もなかったのだが、今こうして金の心配を出来るようになったのはマーベルのおかげだな。
それにこっちからゲートが設置出来ないのは間違いないが、近いうちにホワイトスター側……レモンの方からこの世界にやってくるという可能性もある。
そんな風に思いつつ、俺はマーベルの髪をそっと撫でる。
「ん……」
そんな感触にマーベルは小さく声を漏らす。
出来れば、いつまでもこうしてマーベルを見ていたような気がするが、部屋の時計を見ると既に午前8時をすぎている。
ホテルのチェックアウトまでは、まだそれなりに時間があるが……マーベルの両親が心配しているのは間違いない。
何しろ、いきなり……マーベルの母親から聞いた話だと、乗馬していて落馬したところでオーラロードが開いてその姿が消えたらしい。実際にはオーラロードが開いた事によってバランスを崩して落馬したのか、あるいは俺がゲートで転移したのが何か関係しているのか。
その辺りの事情については分からなかったが、ともあれいきなり消えた娘が帰ってきたと思ったら、朝になっても帰ってこなかったのだ。
俺に会いに行くといったように言ってあったり、伝言を残していたりしたのならともかく、もし何も言ってきていない場合は心配しているだろう。
……まぁ、こうして俺と一緒に朝帰りをしたらしたで、母親はともかく父親はどういう行動に出るか分からないが。
「アクセル……?」
「起きたか。そろそろホテルを出て家に戻った方がいいと思うけど、どうだ?」
「ええ。でもその前にシャワーを浴びてくるわ。まさか、こんな状況で家に帰る訳にはいかないでしょう?」
男女の行為の痕跡として、そういう臭いが部屋の中に漂っているのは間違いない。
そんな臭いの中で眠ったし、何より昨夜の残滓が色々と身体に付着している以上、シャワーを浴びた方がいいのは間違いなかった。
「そうだな。……なぁ、マーベル」
「何?」
毛布で身体を隠しながら、マーベルが尋ねてくる。
そんな真似をしなくても、昨夜の行為で俺の手や舌が触れてない場所はないだろうに……と思わないでもなかったが、その辺は行為中であった昨夜と起きたばかりの今では色々と違うのだろう。
「好きだ」
「……出来れば、こういう行為をする前に聞かせて欲しかったわね。でも、私もアクセルを愛してるわ。次は好きじゃなくて愛してるって言って欲しいわね」
そう言いつつ、笑みを浮かべて俺に近付いて来ると、軽く唇を重ねてからシャワー室に向かう。
マーベルの女らしい曲線を描いている後ろ姿を見ながら、ベッドの上に横になる。
マーベルがシャワーから出たら、俺もシャワーに入って臭いだったり残滓だったりをどうにかする必要があるなと、そう思いながら。
「あら、お帰りマーベル。アクセルさんも」
シャワーを浴びた後、ホテルをチェックアウトし……宝石を金に換えてから、昨日のホテル代をマーベルに渡し、マーベルの家に帰ってくる。
時間的には、午前10時少し前といったところか。
換金をする店を見つけるのが大変だったな。
とはいえ、この時代だと宝石とかの換金にもそこまで厳しい手続きの類はない。
本当にしっかりとした場所なら、そういう手続きも必要なんだが。
いっそ、どこぞのチンピラに絡まれてそいつから金を貰った方がよかったのでは? とも思ったが、幸か不幸かそういう相手に絡まれるような事はなかった。
……というか、昨日のオーラバトラーが大量に現れた件で、皆がそれどころじゃなかったって感じだったが。
それでも店はしっかりとやってる辺り、人間ってのはしぶといよな。
「マーベル!」
母親がマーベルの名前を呼ぶのが聞こえたのか、父親が急いで姿を現す。
そしてマーベルを見て、俺を見て、マーベルを見て……最後に俺を見る。
いや、これは正確には俺を見るんじゃなくて俺を睨んでいるといった表現が正しい。
とはいえ、愛娘が俺の毒牙に掛かったと思っている――そしてそれは正しい――のだから、父親としてこういう態度になるのも仕方がないが。
「ほら、いつまでもここでこうしていられないでしょう? まずは家の中に入ってちょうだい。これからマーベルとアクセルさんがどうするのか、決めないといけないでしょうし」
何だかんだと、母は強しってところか。
マーベルの父親はそんな母親に対して何かを言おうとするものの、結局それ以上は何も言えなかったのを見て、そんな風に思う。
そうして家の中に入ると、トーストとベーコンエッグ、サラダ、牛乳、チーズといった簡単な朝食が用意される。
当然だがマーベルの両親は既に食べ終えており、俺とマーベルだけが食べる。
そうして食べ終えたところで、最初に口を開いたのはマーベルの母親。
「それで、マーベルとアクセルさんは付き合う事になったのかしら?」
「おいっ!」
いきなりの言葉に、マーベルの父親が声を荒げる。
だが、マーベルはそんな父親の様子を気にした様子もなく、どうなの? と俺に視線を向けてくる。
俺とマーベルの関係は、とてもではないが一般的な恋人関係とは言えないだろう。
俺が絶望して落ち込んでいるところでマーベルが慰め、身体の関係が出来てからお互いに告白したのだから。
ましてや……
「俺としてはマーベルと付き合いたいと思っている。だが……マーベルはそれでいいのか? 知ってると思うが、俺は国に10人以上の恋人がいて、その恋人達と同棲してるんだぞ?」
「な……」
マーベルの父親が、俺の言葉に唖然とする。
普通に考えれば、理解出来ない事態なのは間違いない。
そうして部屋の中に沈黙が満ち……やがて数分が経過すると、マーベルの母親が口を開く。
「マーベルはそれを知っていたの?」
「ええ。アクセルとはバイストン・ウェルに転移してからずっと一緒に行動していたもの。その時に、色々と話を聞かせて貰ってるわ。アクセルが10人以上の恋人と同棲しているというのも、知ってたわ。それを知った上で、私はアクセルを愛したの」
「……そう。マーベルが納得しているのなら、いいわ」
「ちょっと待て! それを許すのか!?」
まさか、母親が俺とマーベルの付き合いを認めるとは思っていなかったのか、父親の口からは驚きの声が漏れる。
「本人が納得している以上、私達が何を言っても無駄ですよ。それに、アクセルさんが悪い人じゃないのは、何となく予想出来ますから」
その目は本当に大丈夫か? と言いたくなった俺は、決して間違ってはいないだろう。
俺は今まで、数多の戦場を潜り抜け、多くの命を奪ってきた。
それこそ、歴史上個人で俺より多くを殺した者はいないのでは? と思ってしまうくらいに。
あ、いや。でも戦略兵器を使った人物とか、そういうのに比べれば話は別か。
ともあれ、マーベルの母親が俺を認めるのなら、ここで妙な事を口にしてそれでやっぱりマーベルとの付き合いに反対するといったように言われるよりはいいと思う。
「ママ……」
嬉しそうに母親に抱きつくマーベル。
ただし、母親の方は俺とマーベルの付き合いに納得した様子を見せたものの、マーベルの父親は当然ながら全く納得した様子はない。
その気持ちは分かるんだけど、このままだと俺もまた困ってしまう。
「パパ、アクセルは頼りになる人よ。それに私がバイストン・ウェルにいる間、ずっと一緒にいてくれた人なの」
「それは分かっている。しかし、それはマーベルがこの男しか頼る相手がいなかったから、何か勘違いをしているだけかもしれない」
「パパ!」
「恋人が10人以上いるような男だ。そのような者を相手に、マーベルを託すような真似は出来ん」
これ、マーベルの父親の言ってる事が正論なんだよな。
それだけに、この場で俺が何かを言った場合、それはマーベルの援護とはならない。
「パパ、私はそれを分かった上でアクセルを好きになったのよ。それだけの魅力がアクセルにはあるわ」
「……魅力がか?」
マーベルの言葉に、父親は俺を疑わしそうに見る。
にしても、魅力……魅力? 正直なところ、俺自身でもその辺については分からない。
まさか、夜のテクニックとかそういうのじゃないだろうし。
というか、今更の話だがマーベルは普通に歩いているな。
初めてでかなり手加減をしたとはいえ、普通なら歩きにくいとか何とかレモンとかから聞いていたんだが。
その辺は人それぞれといったところか。
父親の前でこんな事を考えていると知られたら、色々と不味そうなので考えを切り替える。
「ええ。私はバイストン・ウェルにおいて、アクセルがいなければ間違いなく死んでいた。いえ、死ななかったかもしれないけど、もっと酷い目に遭っていた可能性が高いわ。最悪、テロリストになっていた可能性もあったのよ。それを助けてくれたのが、アクセルなの」
それは大袈裟でも何でもなく、真実だ。
キブツから、ギブン家がエ・フェラリオに協力を要請し、地上人を召喚する儀式を行ったというのは聞いている。
そして、恐らくその時に召喚されたのがマーベルだという事も。
もし俺がそのタイミングでゲートを使っていなければ、マーベルはギブン家に召喚されて、テロリストのような真似をしてルフト領に攻撃を仕掛けていた可能性は否定出来ない。
そういう意味では、確かに俺はマーベルを救ったのかもしれないが……
「それでは、マーベルがアクセルに抱いているのは感謝であって、恋や愛ではないのではないか?」
「違うわ。確かに最初は感謝だったのかもしれない。でも、アクセルと一緒の時間をすごしているうちに、私の中に生まれたのは間違いなく恋愛感情よ」
そう告げるマーベルに、母親は嬉しそうに笑みを浮かべている。
母親としては、マーベルにそういう相手が出来たのが嬉しいのだろう。
……最初から俺に友好的だったのも、その辺が関係しているのかもしれないな。
マーベルは美人だ。
だが、同時にそう簡単に男を寄せ付けないような雰囲気があるのも間違いない。
少なくても、自分を口説こうとして言い寄ってくる相手にマーベルが嬉しそうにしているという場面は想像出来なかった。
マーベルは大学生だったので、当然のように合コン――この時代の名称は違うかもしれないが――の類はあっただろうし、マーベル程の美貌ならそれに誘ってくる者もいただろう。
だが、マーベルが合コンに参加して楽しんでいるといったような印象はない。
それが合コン……いわゆる男女の出会いを重視したものではなく、普通のパーティとかなら、楽しんでそうだが。
「ぐぬぅ」
言い切ったマーベルに対し、父親は言葉に詰まる。
今のマーベルに何を言っても無駄だと、そう判断したのだろう。
「取りあえず、オーラバトラーの件が片付くまでは、その件については棚上げにして欲しい。そして……俺がいる限り、マーベルは守ってみせる」
「あらまぁ……ほら、どう? 私はアクセルさんにマーベルを任せてもいいと思うけど」
マーベルの父親は、俺をじっと見つめる。
本来なら、俺とマーベルの父親の間には隔絶した実力差がある。
向こうも当然それは分かっているのだろうが、それでも娘を預ける相手として俺を見ており、それに対してこちらもまた視線を逸らす事はない。
そうして俺とマーベルの父親が視線を交わしている間、マーベルとその母親は口を開いたりといったような真似はしない。
今は俺とマーベルの父親だけでやり取りをしていると、そのように思っているのだろう。
実際、それは間違っている訳ではないので、俺はただ黙ってその視線を受けるだけだ。
そして一体どれくらいの時間が経ったのか。
やがてマーベルの父親は口を開く。
「娘をよろしく頼む」
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1600
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1688