「ライネックの残骸は全て回収しろ。置く場所がないのなら、俺の空間倉庫に収納する。それと、パイロットは捕虜にする。攻撃してくるようなら反撃は許可するが、意味もなく攻撃するような真似はするな」
戦闘が終わった後、皆に指示を出す。
ここでライネックの部品を残していけば、間違いなくそれはソ連軍に回収されるだろう。
部品によっては、オーラバトラー系の技術を向こうが獲得するといったような事にもなりかねない。……なりかねないか?
オーラバトラーの部品は、恐獣の素材が必須となる。
それを分析する事で得られる何かはあるかもしれないが、だからといってオーラバトラーの技術を入手出来るかと言われれば、疑問だった。
もっとも、それでもソ連の利益になるような事はしない方がいいと思うので、こうしてライネックの部品を可能な限り集めようとしているのだが。
いっそスライムで集めるか?
そう思わないでもなかったが、スライムはバイストン・ウェルについて知っている者が見ても明らかに異常だ。
となると……もしやるとしても夜だな。
そう判断し、俺はライネックの残骸が集まるのを待つのだった。
「で? ビショットの命令にしても、少し露骨だと思うんだが? そもそも、それは本当にビショットの命令だったのか?」
オーラバトラー隊を率いていた兵士に、そう尋ねる。
ここはヨルムンガンドの中にある牢屋。
オーラバトルシップは、旗艦として運用される事が多い。
ましてや、ヨルムンガンドは後方で空母……あるいは移動要塞的な使い方をするオーラバトルシップだ。
当然のように、そこには独房や牢屋の類も用意されている。
「ビショット王の命令であるのは間違いない」
そう繰り返す男。
俺の知るビショットというのは、オーラバトラーの開発もしているように、有能な人物なのは間違いない。
しかしその才能が関係しているのか、性格的には慎重な面が強かった。
言い換えれば、臆病であると言ってもいい。
そんなビショットがナの国のオーラバトルシップだとは予想しつつも、まだ確定していない状況で奪取なり占拠なりしようとして、兵士を派遣してくるか?
ましてや、ガラミティ達のような腕利きではないとはいえ、最新鋭のライネックを主力としたオーラバトラー隊を。
下手をすればライネックを失うことになるにも関わらず。
いや、下手をすればというか、実際に俺達によって撃退されてライネックは全滅している。
幸いな事に……本当に幸いな事に、死人は1人も出ることはなかった。
それでもクの国の戦力がかなり減ったのは間違いない。
ましてや、地上ではオーラバトラーが壊れたからといって、無尽蔵に修理出来たり新型機を作ったりといった真似も出来ないのだ。
オーラバトルシップは巨大なだけに、予備パーツの類はある程度あるかもしれないが。
そういう予備パーツも無限にある訳ではないのだから。
「グランガランを奪えば、オーラバトラーの予備パーツとかを確保出来ると思ったのか? けど、使ってる機種が違うしな」
クの国が使っているのは、ドレイク軍系のオーラバトラーだ。
それに対して、ナの国が使っているのはギブン家系とでも言うべきダーナ・オシー系のオーラバトラーとなる。
同じオーラバトラーである以上、多少は共通部品があるだろうが、それでも多少でしかない。
ましてや、ナの国の部隊と予想はしている以上、どうせならナの国ではなくラウの国のゴラオンを襲った方がよかった筈だ。
ナの国は現状……いや、正確にはバイストン・ウェルでの状況を思えば、アの国やクの国とは半ば友好関係にあったのだから。
わざわざそんな友好関係にある国を襲うといったような真似をしなくても、明確に敵であるゴラオンを攻撃した方がいいのは間違いない。
もっとも、ゴラオンの持つオーラノバ砲を脅威に感じてナの国を襲撃したという可能性は、否定出来ない事実なのだが。
「とにかく、シーラは現在俺と手を組んだ。そんな状況でビショットがグランガランに攻撃を仕掛けてくるなら、それは俺に対する敵対行為でもある」
「それは……」
俺の言葉に、兵士は何も言えなくなる。
ビショット軍はそれなりに俺と行動を共にした事がある。
それだけに、俺の力を知っている。
ましてや俺だけではなく他の面々もいると考えれば、ビショットにとって最悪の結論を下した可能性も否定は出来なかった。
「そうならないようにする為には、ビショットに何があったのかを知る必要がある。何故ビショットはグランガランを襲おうなんて考えた? その辺をしっかりと話せば、こちらも相応に対処しても構わないんだが?」
繰り返し事情を話すように言うと、やがて兵士もこれ以上自分が意地を張るとビショットにとっての不利益になると判断したのか、渋々といった様子ではあるが口を開く。
「実は現在クの国の行動を決めているのは、ビショット様ではない。いや、正確には命令はビショット様がしているのだが、その内容はバイストン・ウェルにいた時のものとは大きく違うのだ」
「それは……」
その言葉に、何と言えばいいのか迷う。
バイストン・ウェルと地上では環境が大きく違う。
だとすれば、その辺りの事情で命令の方向性が変わってもおかしくはない。
とはいえ、兵士達もその辺りについては分かっている筈だった。
だとすれば、もっと何か別の理由がある可能性が高いのは間違いなかった。
「なら、誰がビショットに命令を出させているんだ?」
「ルーザ・ルフトだ」
「……は?」
兵士の口から出て来たのは、俺にとって完全に予想外の名前。
いや、でも考えてみればラウの国で戦っている時に、ルーザがクの国に向かったという情報を入手した覚えがあったような、なかったような。
もしその情報が本物だったとしても、その情報を聞いてから結構な時間が経っている筈だった。
だとすれば、ルーザが何の用事でクの国に行ったのかは分からないが、その用事をすませて、既にアの国に戻ってもおかしくはないと思っていたんだが。
この兵士の言葉からすると、どうやらルーザはクの国にいたらしい。
そしてルーザがいるとなれば、ビショットの命令が全く違う方向性になっているというのも、俺には十分に理解出来た。
理解は出来たが……
「何故ビショットがルーザに従う必要がある?」
「正確には、ビショット様が従っているのではない。ルーザがビショット様をいいように操っているというのが正確だ」
本来ならルーザはアの国の王妃だ。
当然のように、アの国の同盟国であるクの国の兵士がルーザの名前を呼び捨てにするような真似は許されない。
これはどれだけ兵士がルーザを憎んでいるのかということを意味していた。
「操るか。だが、ビショットも相応の実力を持つ国王だ。そんなに簡単にルーザに操られるような事はないと思うが」
多少気の弱いところはあれど、ビショットが国王として優秀なのは間違いない。
そんなビショットが、ルーザによって操られるというのは、少し期待出来ない。
「ビショット様はルーザに誑し込まれたのだ」
「は?」
それは、本日2度目の予想外の言葉。
俺は今まで色々な経験をしてきたので、そう驚くといったような事はない。
だが、今日に限っては本当に心の底から驚いた。
誑し込むというのは、つまり相手を自分に溺れさせて言いなりにするといったような事を意味する。
普通に考えれば、それは色恋……もっと具体的に言えば、身体を使っての籠絡だ。
それは分かる。そこまでは分かる。だが……こう言ってはなんだが、ルーザはとてもではないが美形とは思えない顔立ちをしている。
ドレイクの顔立ちも強面という表現が相応しいのを思えば、ドレイクとルーザの間に生まれたリムルが可愛い顔立ちをしているのは奇跡に等しいだろう。
あるいは、ドレイクかルーザの血筋に顔立ちの整った者がいて、それが隔世遺伝や先祖返りといった感じでリムルの顔立ちが整ったのかもしれないが。
ともあれ、そんなルーザだけに身体を使ってビショットを籠絡するといった真似は出来るとは思えない。
思えないが……兵士がこう言ってるという事は、恐らく真実なのだろう。
考えられるとすれば、ビショットの趣味が特殊だったとか?
そう思えば、納得出来なくもなかった。
国王という地位にいれば、それもクの国という強国の王であれば、当然のように部下の貴族や他国の王族の女から言い寄られるといった事になるだろう。
そして男に言い寄るのだから、当然のようにその相手は美形な筈だ。
そんな相手に言い寄られた経験が多々あったビショットだけに、そういう相手には辟易しており、寧ろルーザの方に魅力を感じたとなっても、分からなくはない。
世の中には色々な性癖があるのだから。
「それは、また……クの国も色々と大変だな。だが、ここは地上だ。いざとなれば、ビショットに知られないようにしてルーザを排除するといった真似も出来るんじゃないか?」
ここがバイストン・ウェルなら、ルーザはアの国の王妃であるが故に、迂闊な真似は出来ない。
だが、ここは地上だ。
アの国が幾ら大国であっても、その権威は効果がない……とは言わないが、それでもかなり小さい筈だ。
「無理だ。ルーザは強力な部下を引き連れてきた。もしルーザに何かあったら、黒騎士がビショット様を殺すだろう」
「……は?」
三度驚く。
まさか、ここで黒騎士の名前が出て来るとは思わなかった。
黒騎士は最初ショウではないかと、そう思っていた。
だが、ショウの操るビルバインと一緒に出て来て、その上にズワァースに乗っていた事から、ショウが黒騎士であるという仮定は崩れた。
そんな黒騎士はルーザと組んでいたらしい。
いや、組んでいるというか、黒騎士がルーザに仕えているのか?
そう考え、停戦交渉の襲撃を思い出す。
停戦交渉の場を黒騎士は襲った。
それはつまり、黒騎士はドレイク達を殺そうとしたという事にならないか?
ルーザは停戦交渉の件でドレイクやビショットを殺そうとした?
というか……
「黒騎士はビショットも危険視していた筈だ。停戦交渉を襲ってきたんだからな。なのに、ルーザが黒騎士を引き連れていても、何の問題もないのか?」
ビショットの性格を考えれば、自分の命を狙った黒騎士を自分と一緒に行動させるような真似は、とてもではないが出来ないだろう。
だが、実際に現在黒騎士はビショットと共に行動している。
そうである以上、何かがあったのは間違いないんだろうが。
「その辺りはこちらにも分からない。だが、ルーザが黒騎士を部下としているのは間違いない」
ルーザなら、ズワァースを1機用意する事くらいは容易に出来るだろう。
なら、タータラ城でズワァースに乗って俺を襲ってきたのも納得出来る。
それにルーザは俺を嫌っている。
黒騎士が俺を殺そうとしてきたのは、それも関係あるのだろう。
「ちなみに、ドレイクはその件を知ってるのか?」
ウィル・ウィプスとゲア・ガリングは、当然ながら別の場所で地上に出ている。
そうである以上、当然ながらお互いに連絡を取り合うのは難しい。
バイストン・ウェルの技術で使える通信機は、一つの戦場……それも地上ではなくバイストン・ウェルの基準での戦場の中くらいでしか使えないのだから。
地上に出て来てから、どうにかして地上の技術で開発された通信機を入手していれば……いや、ドレイク軍とビショット軍の双方が通信機を入手する必要がある以上、それは無理か?
周波数とかもきちんと調整する必要があるだろうし。
「分からない。こちらが知ってる限りでは、知らない筈だが」
地上での情報を集めれば、すぐにでもバイストン・ウェルの軍勢が地上に出て来たのが分かる筈だ。
そうなれば、当然のようにビショットもドレイクもお互いの存在を把握はしているだろうが、ドレイクはビショットを同盟者ではあっても格下と認識してるので、向こうから挨拶にくるまで待っているといったような事をしてもおかしくはない。
対してビショットの方は、本来ならドレイクに挨拶に来たかもしれないが、ルーザがいる。
怪しい動きをしている……というか、はっきりと俺を殺しに来ているし、ドレイクの件も停戦交渉の場で下手をしたら黒騎士に殺されていた可能性が高い。
そう考えると、ビショットもドレイクと接触はしたくないだろう。
ましてや、この兵士の話が本当だとすれば、ビショットはルーザを寝取っている。
……ビショットとルーザの関係を単純に寝取ったと表現してもいいのかどうか、正直なところ微妙なんだが。
ともあれ、ビショットとしてはルーザの件もあってドレイクに会いに行くといったような真似はしにくい筈だった。
「なるほど。話は分かった。……お前達は捕虜だし、ビショットとの取引材料になるかもしれないから、殺すような真似はしない。だが、それは今のまま大人しく捕虜としていればの話だ。もしそうならなかった場合……その時はどうなるか分かっているな?」
俺のその言葉に、兵士は素直に頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689