「は? イギリスに?」
アメリカ軍から送られてきた通信に、少し驚く。
通信装置やレーダーといった各種装備を取り付けた翌日。
そろそろフランスに向かおうかと考えていると、ハワイのアメリカ軍から通信が入った。
その内容が、イギリスが俺達に接触したがっているというものだった。
それもイギリス政府や政治家といったものではなく、女王が。
何でわざわざイギリスの女王が俺達に接触を? と思わないでもなかったが、少し考えれば理由は分かる。
イギリスとフランスは隣接しており、ゲア・ガリングにパリが燃やされたのは他人事ではないのだろう。
実際にオーラバトラーの性能を考えれば、フランスからイギリスに向かうのはそう難しい話ではないし、ゲア・ガリングのようなオーラバトルシップも、速度こそ遅いが普通に空を飛んで移動出来る。
そして地上にある通常の兵器では、オーラバリアのあるオーラマシンを相手にした場合、どうしようも出来ない。
そういう意味では、向こうが俺達に接触してくる理由は分からないでもない。
だが、何故そこで俺達なんだ?
普通なら、実際にパリを燃やしたビショット軍と戦っていたゼラーナ隊……あるいはそのゼラーナ隊が所属しているラウの国のゴラオンに連絡を取ってもおかしくはない筈。
接触を求めて来たのがイギリスの女王であると考えると、もしかしてシーラが女王だからといった理由じゃないよな?
そもそもの話、女王というのならシーラだけではなく、パットフットも現在はラウの国の女王という扱いになっている筈だった。
であれば、わざわざ今のところはイギリスと全く関係のないシーラに接触しようとせず、ビショットと戦っているパットフットに接触した方が手っ取り早い筈だ。
『そうです。ソ連でのアクセル王の一件をどうやら知っているらしく、それで連絡をしてきたのだろうと』
映像モニタに表示された通信担当の軍人が、若干戸惑った様子を見せながらそう告げてくる。
ソ連の事をと言われても、あの状況でどうやって情報を入手したんだ?
いや、でもイギリスにはかなり腕の立つ諜報機関があるって話だったな。
その諜報機関がソ連での俺達とビショット軍の戦いの情報を入手したのか?
可能性としては十分にあるが、それでも確信までは出来ない。
「こっちを騙そうとしている可能性は?」
『イギリスからの直接の要請ですし、恐らくそのようなことはないと思います』
ソ連のニジェンスキーの件で少し疑り深くなっているのかもしれないが、もしかしたら……本当にもしかしたら、ラウの国が先にイギリスに接触しており、俺達を罠に嵌めようとしている可能性も決して否定は出来ない。
とはいえ、これ以上は直接行ってみないと分からないか。
それにもし向こうがこっちを罠に嵌めようとしてきても、その場合はこちらも相応の報復をすればいいだけの話だ。
……もし罠なら、パリに続いてロンドンが火の海になる可能性もあるな。
とはいえ、こちらとしては出来るだけそのような真似はしたくない。
地上の国を敵に回すと、補給とかでも困る事になるだろうし。
「分かった。少し検討してみる」
そう言い、通信を切る。
「アクセル王、どうするのですか?」
キブツの言葉に、少し考えてから口を開く。
「イギリスというのは、地上においても強国の1つだ。そんな国だけに、手を組む事が出来れば意味は大きい。……ただし、罠じゃなければの話だけどな」
国土という点では小さいイギリスだが、技術力であったり、何より歴史であったりして、この地上においては強国や大国の1つだ。
そのような国だけに……いや、そのような国だからこそ、オーラバトラーの技術を欲していてもおかしくはない。
「では、無視しますか?」
「それもまた惜しいんだよな。それに、イギリスはフランスの近くだ。どのみちパリのビショットと接触するなり、決着をつけるなりするには、イギリスの協力があった方がいい」
純粋に戦力としては期待出来なくても、偵察であったり補給作業であったりと、人手が多ければ色々と便利なことも多い。
そうなれば、俺達としては作業が減るという意味で助かる。
……イギリスなので、食事については期待出来ないが。
けど、紅茶には期待出来るか?
「シーラとショットに繋げ」
俺の指示に従い、すぐにスプリガンとグランガランに通信が繋がる。
そしてアメリカ軍から提供された情報を教えると、ショットは難しい表情を浮かべた。
『それはまた……妙な事になっているな』
「ああ。こっちから接触するのならともかく、まさかイギリスからこちらに接触してくるとは思わなかった。……どう思う?」
『罠と答えたいところだが、現在のイギリスの状況を考えると、少しでも戦力が欲しいと思っているのは間違いないだろう』
『そうですね。地上の地図を見た限りでは、イギリスとフランスは隣接しているようなものですし。その状況でビショット軍がパリという大都市を焼いたのですから、普通に考えれば戦力を必要としているのは、私も間違いないと思います』
「戦力か。……そうなると、もしかしたらイギリスは俺達とラウの国を共闘させたいのかもしれないな」
イギリスが戦力を欲しているのなら、最善の策としてはそれだろう。
とはいえ、それが成功するかどうかは、微妙なところだが。
ゼラーナ隊はともかく、ラウの国のパットフットがどう判断するか。
俺達をドレイク軍とは別の勢力であると認識すれば、あるいはその可能性もあるかもしれない。
シーラを前に出して交渉すれば、もしかしたら上手く行くか?
そう思わないでもなかったが、ラウの国の中で精鋭のゼラーナ隊が俺達を決して許容しないという確信もある。
あるいはゼラーナ隊には黙って俺達を戦力に組み込むとか?
それはそれでありかもしれないが、いざ戦場で俺達と遭遇した時はこちらに攻撃してきてビショット軍との戦いどころではない騒動になりそうだ。
「ともあれ、向こうがこっちに接触したいのなら、接触してみてもいいだろ。シーラやショットの安全は、俺がいれば問題なく守ることが出来るし」
もし俺達が行った時に罠を仕掛けられていても、魔法を使えばある程度それに対処出来るし。
『そうですね。では、イギリスに向かいますか? ショットの意見はどうです?』
『私はあまり気が進まない。だがどうしても反対という訳ではない以上、二人が行くというのなら、それに従おう』
シーラは賛成、ショットは消極的賛成といったところか。
俺はなにかあったら二人を守るというつもりだし、イギリスが本気でこちらに接触を求めているように思われるので、多分大丈夫だとは思うんだが。
「よし、なら行くか。今のイギリスには俺達を嵌めるといったような真似はとてもではないが出来ない筈だ。なら何かあっても対処出来ると、俺はそう思う」
最終的には俺のその言葉で、話は決まったのだった。
ちなみに最初はヨルムンガンド、スプリガン、グランガランの3隻だけで行く予定だったのだが、ビショット軍と戦いになるとこっちも数がいた方がいいというカワッセの主張により、グリムリーやナムワンも一緒に向かう事になった。
……まぁ、俺の魔力なら大丈夫だと思うけど。
「出ます! 地図照合……目標通り、イギリスです!」
影のゲートは、当然ながら影のある場所でなければ転移することが出来ない。
そういう意味では、多少制限はあるのだが、それで便利な魔法なのは間違いのない事実だった。
だからこそ、俺達が姿を現したのは海の上ではなく、イギリスにある陸地。
これは無断で国内に侵入したという事になるのだが、まさかこの状況でイギリスの近くにあるフランスとかに転移する訳にもいかないし。
それこそ下手にフランスに転移した場合、いきなりビショット軍との戦いとなりかねない。
イギリスの女王との会談の筈が、何故かそうなってしまうというのは、出来れば今は考えたくない。
「よし、スプリガンとグランガランにも連絡を取れ。そっちが無事なら、イギリスに俺達が到着したと連絡を入れろ」
ブリッジクルーにそう命令し、マーベルとトッドに視線を向ける。
「お前達は何かがあったらすぐ出撃出来るように、準備を整えておいてくれ。イギリス側が俺達の存在に過剰反応し、もしかしたら攻撃をしてくるかもしれない。その場合は、可能な限り向こうに被害が出ないようにしてくれ」
「アクセルの予想通り、ゼラーナ隊やゴラオン隊がいて、こっちに攻撃を仕掛けてきたらどうする?」
「その時は反撃してもいい」
トッドの疑問に対し、短くそう答える。
まさか俺があっさりと反撃をしてもいいと許可を出すとは思っていなかったのか、トッドは驚きの視線をこちらに向けていた。
マーベルは俺がどういう風に言うのか予想していたらしく、そこまで驚いた様子を見せていなかったが。
マーベルはそんなトッドを引き連れ、格納庫に向かう。
勿論、ゼラーナ隊やラウの国……ゴラオン隊が攻めて来たら、俺も反撃に出る。
ただ、俺の場合はそれこそ影のゲートを使えば一瞬で格納庫に移動出来るので、移動時間を心配しなくてもいいのは大きい。
「スプリガン、グランガラン、共に問題ないとの事です」
「イギリス政府との通信……繋がります!」
イギリスとの通信が繋がったという言葉に頷く。
すると、映像モニタには40代程の男の顔が映し出された。
『これは……アクセル王。その、この通信は一体どこからでしょう?』
「悪いな、いきなりで何だが、現在俺達はイギリスの領土内にいる。詳しい場所は後で知らせるよ」
『はぁ。その……こちらの会談の要求に応じて貰えたという事でよろしいのでしょうか?』
複雑そうな表情の男。
無理もない。
いきなり自国の中にこれだけの戦力が姿を現したのだから。
本来なら、そのような真似をした相手には色々と言いたい事はあるのだろう。
だが、別の面から見れば俺達がこうしてすぐ自国にやって来たというのは、向こうにとっては非常に助かる事の筈だ。
イギリスにしてみれば、海を挟んでその向こう側にビショット軍がいるのだから。
パリを燃やしたビショット軍は、いつイギリスにその牙を向けないとも限らない。
いや、それどころかビショットが次に狙う場所として可能性が高いのは、やはりイギリスだろう。
国土そのものはそこまで広くないものの、この地上においてイギリスは先進国の1つだ。
フランスのパリを燃やしたビショット軍が、自分達の力を見せつけるという意味ではイギリスを狙う可能性は十分にあった。
イギリス軍は地上の軍隊の中でも精鋭と呼ばれる軍の1つではあるが、それはあくまでも地上での話だ。
オーラバリアが存在するオーラマシンと戦うとなると、かなり難しい出来事になるのは間違いなかった。
「それで、会談の件だが……どうなっている?」
『それは……さすがにここまで素早く来るとは思っていなかったので、女王陛下のスケジュールを調整する必要があります』
困った様子を見せる男。
まぁ、ここで俺が無理に話をする必要もないか。
「その辺の話が終わったら通信を入れてくれ。あるいは案内役に誰かを寄越してもいいな」
現在のイギリスにおいて、オーラマシンというのはパリを焼いた存在と認識している筈だ。
一応ゼラーナ隊がビショット軍と戦ったのだが、ゼラーナ隊云々よりも、やはりパリを焼いたという方が大きな印象を与える。
それだけに、イギリス国内をオーラバトルシップを含めたこれだけの数で移動していれば、絶対に混乱する。
オーラシップやオーラバトルシップは、地上の兵器とは全く違う体系の代物だ。
特にグランガランなんかは、見るからに普通ではない。
……寧ろ、兵器というよりも移動する宮殿といった表現が相応しいと思う。
それを見たイギリス人がどう反応するのかは、俺にも分からないが。
ともあれ、下手をすればイギリス人が自分達の住んでいる場所も燃やされると勘違いして、混乱する恐れがある。
そうならないようにする為には、やはりイギリス軍から派遣された戦闘機か何かに案内してもらい、俺達はビショット軍とは違う存在であると、そう認識して貰う必要があった。
向こうもそれは分かっているのか、こちらの場所を確認してすぐに案内役を送ると言ってくる、
向こうにしてみれば、自分達の国を守る為に俺達を呼んだのに、俺達の存在に寄ってイギリス人が混乱するなんて事になったら、洒落にならないだろうしな。
そんな訳で、俺はその辺りの交渉をさっさと終えると、一度通信を切る。
こういう風に素早く交渉が進むのは、今が非常時だからなんだよな。
もしこれが平和な時であれば、それこそ責任の所在をたらい回しにされたりといったような事になってもおかしくはない。
それどころか、今日女王に会いたいと言って、それですぐにスケジュールを調整するなんて真似は、とてもではないが出来るものではなかった。
これで向こうが無能なら、それこそ今のこのような状況であっても、前例がないとかそんな風に言って手順をややこしくし、こちらの機嫌を損ねるような真似をしてくるんだろうが……まぁ、その辺は面倒がなくて助かったと思う事にしよう。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689