ビショット軍の兵士は素直に俺に従う事に決めた。
取りあえず、簡単に裏切るといったような真似はしないだろう。
刈り取る者という存在は、それだけの衝撃をビショット軍達の兵士達に見せつけていた。
とはいえ、驚きなのは刈り取る者を間近で見たにも関わらず、ビショット軍の兵士の中で他の場所……スプリガンやグランガランに行きたいと思った者はいなかったのは驚きだろう。
刈り取る者が怖いのなら、それこそ他の艦に移動を希望した者がいてもおかしくはないのだが。
ともあれ、その一件が一段落したところでイギリスに向かう事になる。
ビショット軍は……というかビショットは死んでしまったし、結果としてビショット軍は殲滅した。
そうなると、残る相手はドレイク。
とはいえ、ドレイクはそこまで問題を起こしていない……訳ではないか。
何しろドレイク軍は数が多い。
タータラ城での転移において、違う場所に出た連中もいる。
アメリカでマーベルとトッドが介入した戦いが、まさにそんな感じだろう。
ゴラオン隊の方も、戦場がかなり広がっていたのでかなり散らばって転移したらしいが。
そういう意味では、シーラ達は特に動いてはいなかったので纏まって転移出来たんだよな。
ビショット軍も、戦場から戻ってクの国に戻っていたので纏まって転移してきたし。
俺は……マーベルが近くにいたので、そういう意味では運がよかったんだよな。
ヨルムンガンドは離れた場所にいたので、別の場所に転移したが。
「アクセル王、イギリスが見えてきました」
キブツのその言葉で我に返る。
その言葉通り、ヨルムンガンドの映像モニタにはイギリスが見えてきた。
とはいえ、それはあくまでも遠くにイギリスが見えてきたという事で、実際にイギリスに到着するまではそれなりに時間が掛かるのだが。
この辺、オーラバトルシップの欠点だよな。
ちなみにこの軍隊の移動速度で考えると、スプリガン、ナムワン、ブル・ベガー、ヨルムンガンド、グリムリー、グランガランといった順番になる。
中でもスプリガンはオーラクルーザーという種別に相応しく、突出した移動速度を誇っていた。
だが、当然ながらこの手の移動というのは一番遅い相手に合わせる必要がある。
具体的には、グランガランだ。
その為、スプリガンの速度は本来と違ってかなりゆっくりしたものになっていた。
「そうか。ならゆっくりと移動しろ。イギリスとのやり取りはシーラに任せてある」
最初にイギリスの女王と会った時は、俺とショットもシーラと一緒に向かった。
しかし、今回の報告という点ではシーラがいれば十分なのは間違いない。
「ビショット軍の兵士はどうなっている? 真面目に働いているか?」
「はい。……正直なところ、アクセル王が脅かしすぎたんだと思いますよ?」
少し……本当に少しだけ、ビショット軍の兵士達を哀れむようにキブツがそう告げる。だが、ビショット軍の兵士をそのままにしておくというのはな。
それこそ、破壊工作なりなんなりで最悪の結果になっていた可能性は否定出来ない。
そうならないようにする為には、まず俺に逆らってはいけない。怒らせてはいけないといったような形で一度反抗心をへし折っておく必要があった。
とはいえ、鞭だけでは意味がない。
出来るだけ早いうちに飴も与える必要があるな。
「ビショット軍の兵士達は、何を与えれば喜ぶと思う? 厳しい一面だけじゃなくて、甘い一面も見せておく必要があるだろ」
「そうですね……」
そんな風に俺とキブツは会話をしながら、イギリスに向かうのだった。
「へぇ……これがフィッシュ&チップスね。美味しいじゃない」
イギリスに到着した翌日、俺はマーベルと共にロンドンを観光していた。
現在世界中で多数のオーラマシンが暴れたりしており、イギリスの近くでも俺達がビショット軍と最終決戦をしたにも関わらず、観光客はそれなりにいる。
勿論、オーラバトラー騒動の前と比べれば減ってるんだろうが。
この辺も多分ハワイと同じなんだろうな。
バイストン・ウェルから転移してきた者達による騒動で飛行機が飛べず、俺達が地上に出た時にロンドンにいた者達がまだそのままロンドンに待機していると。
「そうだな。このフィッシュ&チップスは普通に美味いな。イギリスって事で料理に期待はしていなかったんだが、これは大当たりだ」
イギリスと言えば、料理が不味いという印象がある。
以前ネギま世界にいた時にネギから聞いた話によると、ウナギのゼリー寄せとかいうとんでもない料理もあるらしいし。
また、マブラヴ世界でイギリス軍用のレーションは、それこそ筆舌につくしがたい味だったとか何とか聞いた覚えがある。
その辺りの理由であったり、ペルソナ世界で学生生活をしている時に集めた情報だったりで、どうしてもそういうイメージがついてしまっていた。
だが、こうして食べたフィッシュ&チップスは、間違いなく美味い。
ちなみにフィッシュ&チップスというのは魚……基本的には鱈のフライにフライドポテトを組み合わせた料理だ。
ちょっと変わった店では、フライドポテトの代わりにポテトチップスを入れている店もあるのだが、マーベルと一緒に買ったフィッシュ&チップスは一般的な方だった。
そうしてロンドンを歩いて見物していき……ちょっとよさそうだと思う物は取りあえず購入するとする。
ちなみにそんな中でも一番金を使ったのは、紅茶の茶葉だった。
紅茶派の俺としては、紅茶の本場であるイギリスまで来て茶葉を買わないという訳にはいかないだろう。
幸いにも、金という点では金の延べ棒であったり宝石であったりをイギリス政府の伝手で換金出来たので、金には困っていない。
そして紅茶を思う存分購入し……
「ちょっと、アクセル。幾ら何でも使いすぎじゃない?」
マーベルに呆れの視線を向けられることになる。
無理もない。
日本円にして数百万円分の紅茶を買ったのだから。
勿論1つの店でこれだけ購入した訳ではなく、幾つかの店から購入した代物だ。
さすがに1つの店で茶葉を買い占めるといったような真似をすれば、その店でいつも買ってる客が迷惑するし。
それにバイストン・ウェルの騒動が地上にも広まっている以上、当然今までのように茶葉を輸入したりといった真似は難しくなる。
そういう事で、俺は色々な店から茶葉を購入する事にした訳だ。
ちなみに店側には迷惑に思われるかも? といったような思いもあったのだが、寧ろそこまで金を使ってくれて感謝されたので、多分問題はない筈だ。
「イギリスの紅茶だぞ? 本場の紅茶だけに、ここで買っておかないと後悔するのは間違いない」
「それは分かるけど、お金を使いすぎなのよ。……はぁ、アクセルの金銭感覚っておかしくない?」
「それは否定出来ないな」
マーベルの言葉に素直に返す。
そもそも、金の延べ棒や宝石の類はギャングとかを襲撃して入手したり、何よりキブツ――キッス家のキブツではなく、ホワイトスターのキブツ――を使えば、すぐに入手出来る。
産業廃棄物の処理を他の世界から頼まれ、それをキブツに投入する。
もしくは、UC世界のルナ・ジオンに住んでいる者の職業として、隕石やスペースデブリの類を持ってきてシャドウミラーに売るといったような仕事もある。
それらを使えば、金の延べ棒や宝石なんてのは容易に入手出来た。
ペルソナ世界で学生をしていた時は、それなりに一般市民染みた金銭の感覚を持っていたのだが。
今となっては遠い昔の事のようにも思える。
そう考えれば、やはりホワイトスターに戻れない状態であることに、寂寥感を覚える。
一種のホームシックか?
「アクセル、ほら、次に行くわよ」
そんな俺の手を引っ張るマーベル。
恐らく俺が何を思っているのかを十分に理解していたのだろう。
マーベルの心遣いが嬉しく、自然と笑みを浮かべる。
ロンドン塔やタワーブリッジ、セントポール大聖堂といったような場所を見て回る。
そうして時間が経過し、夕方になり……俺とマーベルは公園で夕日を眺めていた。
「綺麗よね。まさかロンドンでアクセルと一緒にこうして夕日を見るなんて事になるとは、思ってもいなかったわ」
沈む夕日に目を奪われているのか、マーベルがうっとりとした様子で呟く。
「そうか? 俺はいつかはこういう風になったらいいなとは思っていたけど」
「あら、それはいつ思ったのかしら?」
少しからかうように言ってくるマーベルに、そうだな……と少し考える。
「マーベルを女として意識していたという意味でなら、それこそバイストン・ウェルで一緒に目覚めた時からだな」
「むぅ……その答えは少し狡くない?」
「そうか? 俺は正直な気持ちを言ってるだけだぞ?」
「もう……」
そんな風に会話をしながら、軽く唇を重ねる。
最初は本当に触れるだけのキス。
だが、それはやがて深いキスへと変わり……俺とマーベルはロンドンの夜に消えるのだった。
「アクセル王、少しよろしいでしょうか?」
マーベルとの一夜をすごしてから、数日。
未だに俺達はイギリスにいた。
「どうした? 何かあったのか?」
ブリッジにいると、不意にキブツがそんな風に声を掛けてくる。
キブツが何の用事もなく俺に話し掛けてくる訳がないので、多分何か用事があるのだと思っていたのだが、キブツの口から出たのは俺にとっても予想外の言葉だった。
「はい。カワッセ殿がアクセル王に相談があると」
「……カワッセが?」
カワッセと俺は、それなりに付き合いがあるものの、そこまで親しいという訳ではない。
以前停戦交渉をする時にラウの国まで護衛したくらいの付き合いでしかない。
とはいえ、カワッセという人物はシーラにとって懐刀とでも言うべき存在なのは間違いなく、ナの国にしてみれば非常に重要な相手なのは間違いなかった。
シーラは女王として有能なのだが、それでもまだ10代でしかない。
経験が必要な時は、カワッセがそれを補佐するといった形になっていた。
そう考えると、カワッセが俺に相談があるというのはシーラが何か関係してるのか?
そう思いながら、俺は取りあえずやる事もないのでカワッセと会う事にしたのだった。
「アクセル王、わざわざ時間を取らせてしまって申し訳ありません」
カワッセが俺を見て頭を下げてくる。
その顔にはかなりの疲れが滲んでおり、カワッセが何か悩んでいるというのは明らかだった。
「気にするな。シーラにはイギリスとの交渉を完全に任せているし、こっちはこっちで特にやるべき事もないからな。そういう意味では、こっちも今は暇なんだ。話を聞くくらいは問題ない」
「ありがとうございます。では早速ですが……その、ここ数日シーラ様は何かを悩んでおいでの様子なのです」
「シーラが?」
そう尋ねるが、カワッセの悩みに納得出来るところがあるのも事実だった。
カワッセが自分の個人的な内容を俺に向かって話すとは思えない。
だとすれば、やはり相談してくるのはナの国やグランガランに関することか、あるいは……今こうして口に出したように、シーラの事だろう。
「はい。それでアクセル王に何か心当たりはないのかと思って、こうして相談に来たのですが」
「そう言われても、特に何か心当たりはないな。シーラと話をしてはいるが、それは公的な会話が殆どで、私的な会話は殆どないし」
「そうですか。では、シーラ様は一体何を……」
俺が最後の頼りだったのか、カワッセは憂鬱そうに息を吐く。
カワッセにしてみれば、シーラの件を俺に解決して欲しいと思ったのだろうが……何で俺?
いやまぁ、シーラと俺が親しいのは間違いない。
シーラの周辺には同年代の者はおらず、そういう意味でも俺とシーラが親しいのは間違いない。
しかし、そういう相談をするのなら俺ではなくマーベルの方がいいだろうに。
シーラとマーベルは、何と言うか不思議な関係だ。
親友のように思える事もあるし、ライバルのように思える事もある。
ある意味では喧嘩友達に近いのか?
そんな関係だからこそ、シーラとマーベルの間に遠慮は……ない訳ではないのだろうが、それでも他の者達に比べれば、そこにある遠慮はずっと少ない。
そうである以上、俺としてはその手の相談は俺じゃなくてマーベルにと思うのだが、カワッセが相談に来たのは、マーベルではなく俺だった。
「何か心当たりはないのか? ……というのは、ちょっと不謹慎か」
シーラが悩む原因というのは、それこそ幾らでもある。
バイストン・ウェルの者達がオーラマシンと共に地上に出て来てしまっており、それによって地上ではかなりの混乱が起きていた。
ましてや、ビショット軍によって地上の中でも有数の大都市であるパリが燃やされるといった事が起きていれば、それについて悩むなという方が無理だろう。
不幸中の幸いなのは、ナの国とクの国はそこまで親しい付き合いがなかったことだろう。
とはいえ、その件でシーラがそこまで悩む必要はないと思うんだがな。
「分かった。取りあえず俺がシーラと少し話してみる。それでシーラが悩みを話すかどうかは分からないが」
「ありがとうございます!」
カワッセは俺の言葉に大袈裟な程に深く頭を下げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1706