鬼にとっては、何よりも欲する血、それが稀血。
実弥はその稀血の持ち主で、現在実弥はその腕から稀血を流している。
そんな実弥の前では、竹を咥えた禰豆子は動かない。
実弥の腕……稀血が流れている血をじっと見つめていた。
もし禰豆子が実弥に襲い掛かったら、俺はすぐにそれを止めるつもりだ。
勿論、実弥は風柱という鬼殺隊の中でも最精鋭の存在だ。
禰豆子が襲い掛かっても、実弥なら何とでも出来るだろう。
しかし、実弥は鬼を強く憎んでいる。
禰豆子が襲ってくれば、それこそ即座に殺そうとするだろう。
耀哉にしてみれば、禰豆子を殺すといった選択肢は存在しない。
鬼舞辻無惨を倒す為に、禰豆子や炭治郎の存在が重要なのだと理解しているのだろう。
もしかしたら、この世界の主人公は禰豆子なのかもしれないな。
あるいは、炭治郎か。
さすがに実弥だったり義勇だったりは……ないと思う。
「ふー、ふー……」
息を荒くする禰豆子。
実弥の腕をじっと見ており、それこそすぐにでも襲い掛かってもおかしくないのでは?
そんな様子を見せており、周囲の者達も黙ってそんな禰豆子の様子を見ていたが……
プイッ、と。
半ば無理矢理禰豆子は実弥の腕から目を逸らす。
フン、フン、と我慢をしているのは明らかだったものの、それでも稀血から意識を逸らしたのは間違いのない事実。
「な……」
実弥にとって、これは完全に予想外の展開だったのだろう。
自分の血が稀血という血だけに、鬼であれば間違いなく自分に襲い掛かってくると、そう思っていたのだろう。
だが、禰豆子はそんな稀血から視線を逸らした。
実弥にしてみれば、とてもではないが信じられないと思ってもおかしくはない。
ちなみに、本当にちなみにの話だが、実弥の稀血というのは俺にとっては特に何の影響もなかった。
リョウメンスクナノカミを吸収して最終的には混沌精霊になった俺だけに、場合によっては俺にも稀血の影響があるのか? と思わないでもなかったが……幸いな事に、そうではなかったらしい。
耀哉は子供から禰豆子が実弥に襲い掛からず、そっぽを向いたというのを聞き……
「では、これで禰豆子が人を襲わないことの証明が出来たね」
そう告げる。
そんな耀哉の言葉に、実弥は……そして他の者達も何も言えなくなる。
耀哉は炭治郎に声を掛け、まずは皆に認められるように強くなり、十二鬼月を倒してくるようにと言う。
……そんな耀哉の言葉を聞き、炭治郎が鬼舞辻無惨を殺すと宣言するも……まずは十二鬼月を倒せるようになれと言われるという一幕もあったが、それだけだ。
その後の話し合いでも多少ゴタゴタ――炭治郎が実弥に頭突きをさせろと言うとか――があったものの、結局炭治郎は隠によってしのぶの蝶屋敷に禰豆子の入った箱と共に運ばれていく。
そうして、現在この場に残るのは、柱の面々と輝利哉やその家族。そして……唯一の部外者である俺のみとなる。
耀哉が呟いていた珠世という名前も気になったが、何なら後でそれについて聞けばいいだけだ。
「さて、炭治郎と禰豆子の事はいいね。では柱合会議に……と思ったけど、皆アクセルが気になるようだね」
耀哉のその言葉に、柱が全員俺に視線を向けてくる。
柱にしてみれば、俺が日本人ではないというだけでもそうだが、何よりも実弥の日輪刀を止める……それも刀身を手で掴んで止めるといったような真似をしたのが、俺に注目する理由だろう。
いや、それ以前に俺が掴んだ刃が何故か赤く染まった件が大きいのか?
「お館様がお連れになる以上、何らかの意味があるとは思います。ですが、見たところ異国の人物の模様。出来れば紹介して欲しいのですが!」
声を張り上げてそう告げる男の髪はオレンジ色で先が赤くなっている。
外国人というのなら、この男の方がよっぽどそれらしく思えるんだが。
「そうだね、杏寿郎。では、紹介しよう。彼はアクセル・アルマー。私の友にして、異世界の国の王だ」
杏寿郎という人物の言葉に、耀哉はそう返す。
そう返すが……その言葉の意味が理解出来ないといった様子の者が大半だった。
俺の存在を知っているしのぶと義勇の2人だけが、特に驚いた様子はない。
「はっはっは! 異世界の国の王ですか! それは凄い!」
……いや、杏寿郎が真っ先にそう告げる。
だが、その言葉は耀哉の言葉を信じたというよりは、耀哉の言葉が面白かったからそのように言ってるかのようにも見えた。
「お館様……その者は妄想の中に生きている存在なのでは? 嘆かわしい……そのような者がいるなど、何と悲しい世だ」
そう言い、柱の中でも一際巨大な男が涙を流す。
「ふふふ。そう思うのは無理もない。だが……彼は下弦の伍を倒した人物だよ。それも日輪刀も使わずに」
『なっ!?』
やはり日輪刀を使わずに鬼を殺すというのは、大きな衝撃があったらしい。
何人もの柱が耀哉の説明を聞いて驚きの声を上げる。
とはいえ、鬼を殺すというだけなら日輪刀以外にも太陽を当てるといったような方法もある。
そういう意味では、俺が鬼を殺したと聞いても、その方法を思う浮かべる可能性が高かった。
とはいえ、それでも俺の事を怪しい相手を見るような感じで見ている者達に対し、しのぶが口を開く。
「お館様の仰っている事は本当ですよ? 冨岡さんがその目で見たらしいですし。そうですよね、冨岡さん?」
しのぶの言葉に、義勇は無言で頷く。
「それに……アクセルさんはお館様の呪いを解呪出来るかもしれないそうです」
唐突に放り投げられる、しのぶの爆弾。
柱は全員が耀哉に深い忠誠を誓っている。
それだけに、日に日に呪いが侵食していく耀哉には思うところがあったのだろう。
そんな中、鬼舞辻無惨を殺さなければ解除されないとされていた呪いをどうにか出来ると聞けば……
『本当か!?』
実弥を含め、柱の殆どが俺に向かって突進してくる。
それこそ、先程炭治郎が鬼舞辻無惨に遭遇したといった話を聞いた時と同様……いや、それ以上の勢いで突っ込んできた。
柱としての能力まで使い、瞬動に似た速度で突っ込んでくるが……
「本当だ」
そう告げた俺は、先程いた場所から大きく離れた場所に立っていた。
俺に向かって突っ込んできた柱達は、驚きの表情を浮かべる。
とはいえ、実弥は俺の力の片鱗をその目で見ているので、そこまで動揺した様子はなかったが。
「さて。まぁ、お前達にも色々と思うところはあるが、取りあえずその疑問はしまっておけ。どうしても俺の正体が気になるようなら、この柱合会議が終わった後で蝶屋敷に来ればいい」
「……どういう意味だ?」
小芭内が訝しげな……というか、はっきりと不信感を滲ませた視線でそう尋ねてくる。
他の柱達も俺の言葉の意味が分からないのか、説明を求める視線を向けていた。
「俺の世界は異世界。こことは違う世界にある。その世界に行くには、ゲートという機械を設置する必要がある。そして耀哉と相談して、この柱合会議が終わった後で、俺は蝶屋敷の側にゲートを設置する事になった」
その言葉の意味を全員が理解したところで、再び口を開く。
「俺の国……シャドウミラーは、この世界とは全く違う。その世界を見れば、俺の言ってる内容が事実であると、そう理解は出来る筈だ」
ホワイトスターは、少なくてもこの鬼滅世界とは大きく違う。
魔法と科学が両立している……いや、どちらかと言えば科学の方が強いか? とにかく、普通の世界と大きく違うのは間違いない。
「そして、俺と耀哉は治療の件以外にも色々と考えている。具体的には、シャドウミラーの戦力を鬼殺隊に貸す予定がある」
「……どういう事?」
一番年齢の若い……それこそ10代半ばくらいといった感じの男が、不思議そうに尋ねてくる。
「俺の国の戦力は、強い。それこそ鬼を相手にしても戦えるくらいにはな。だからこそ、その戦力を貸すことに問題はない」
基本的に貸すのは量産型Wかバッタといった連中になるだろうから、一般人の前に出す訳にはいかないが。
バッタは無人機である以上、鬼滅世界の人間にしてみれば理解は出来ないだろう。
量産型Wは量産型Wで、ヘルメットを被っているのがかなり不気味だ。……まぁ、ヘルメットを外せばそれはそれで不気味なのは間違いないんだが。
とはいえ、鬼を相手にする戦力としては量産型Wもバッタも十分戦力になる。
バッタはあくまでも無人機である以上、鬼を殺すといったような真似は出来ない。
だが、ミサイルを使って鬼の身体を吹き飛ばすといったような真似を可能としている。
量産型Wは……ガンドが使えるので、それが鬼に対してどこまで効果があるのかだな。
その辺は実際に色々と試してみる必要がある。
場合によっては、もしかしたらミサイルで鬼を殺すといったような事が出来る可能性も否定は出来ないのだから。
人前に出す戦力となると、幹部陣になるだろう。
特にネギま世界とペルソナ世界の出身者。
それとムラタか。
この連中なら人前に出ても問題はないと思う。
……とはいえ、ネギま世界出身者の中でも千鶴とあやかの2人は恐らく無理だろうが。
あの2人は政治班として毎日忙しい。
それこそ休憩とかは魔法球の中で取っている程だ。
時の指輪を持つからこそ、出来るのだが。
「何で?」
「ん? どうした?」
「何でそこまでしてくれるの? お館様の呪いの件も、戦力を派遣するというのも。アクセルだっけ? あんたには関係ない話なんじゃないの?」
ああ、なるほど。鬼殺隊の面々にしてみれば、それは気になるだろう。
何故そこまでしてくれるのか、と。
「簡単だ。この鬼滅世界……」
「鬼滅世界だァ?」
何故か鬼滅世界という名前に反応したのは、実弥。
どこか引っ掛かる場所があったのか?
そう思ったが、実弥はその傷だらけの凶暴な顔に満足そうな笑みを浮かべている。
どうやら鬼滅世界という名前が気に入ったらしい。
「俺達シャドウミラーは、この世界だけではなく、色々な世界とやり取りをしている。そうである以上、世界に名前を付けるのは必要だろう? 本当なら鬼殺隊と知り合った事から、鬼殺世界と名前を付けようとしたんだが……」
「私達の目的は、鬼を殺すことではない。鬼を……鬼舞辻無惨を滅ぼす事だ。だからこそ、私はアクセルに鬼殺世界ではなく、鬼を滅ぼす世界……鬼滅世界と名付けたんだよ」
耀哉の言葉に、実弥はさすがお館様! と感動した様子を見せている。
他の柱達も実弥同様、耀哉のセンスを褒めていた。
いやまぁ……でも、鬼を滅ぼす世界だぞ? 他の世界に比べてかなり物騒だな。
ネギま世界なんて、ネギが魔法使いだから、ネギま世界なんだぞ?
それが鬼滅世界って……いやまぁ、本人達が納得して喜んでいるのならいいけど。
ただ、この世界について他の世界が知ったら、一体どう思うんだろうな。
耀哉が将来的に鬼滅世界と名付けたのを後悔しないように祈るとしよう。
「鬼滅世界……」
柱の誰かが、自分の世界の名前を噛みしめるように呟く。
こうして改めて自分の世界の名前を聞き、しみじみとしているのだろう。
出来ればいつまでも鬼滅世界という名前に感動していて欲しかったが、今の状況を思えばそうしている訳にもいかない。
「そんな訳で、話を戻すぞ。俺が何故この鬼滅世界に……いや、正確には耀哉に対してそこまでするのかって話だったよな。簡単に言えば、この世界に限らず、色々な世界にはその世界特有の技術であったり、素材であったり……そういうのがある」
その言葉に、柱の何人もが俺が何を言いたいのか分かった様子だった。
「そう、大体分かったみたいだが、俺にとってこの世界には独自の技術や素材がある。それが、日輪刀であったり、鬼殺隊が使っている呼吸であったり……そして、鬼である訳だ」
「おい待て、てめェ!」
実弥が真っ先に俺の言葉に反応する。
日輪刀や呼吸だけあれば、ここまで大袈裟に反応するような事はなかっただろう。
だが、そこに鬼が入ってくれば、実弥としてはそれを黙って聞いてる訳にはいかなかったらしい。
鬼殺隊の中では、鬼は即座に殺すといった認識がある。
その唯一の例外が禰豆子となった訳だが、その件も実弥はまだ完全に納得している訳ではないらしい。
そのような状況で、俺が鬼もこの世界で興味深い、独自の存在であると言ったのだから、柱の中でも特に鬼に対する憎悪の強い実弥がこういう反応をするのは明らかだった。
実際に言葉に出したのは実弥だったが、それ以外の柱の多くも俺の言葉には決して賛成といった様子ではない。
これは……どうしたものだろうな。
個人的にはマブラヴ世界のBETAのように……というのは少し大袈裟だが、鬼滅世界での取引材料として考えていたのだが。
この辺に関しては、いますぐにどうこうといった訳ではなく、もう少しゆっくりと相談した方がいいのかもしれないな。
「その辺りについては、俺じゃなくてシャドウミラーの政治班による交渉で解消して貰うつもりだ。今は、鬼も資源であると、そういう風に認識してくれればいい」
俺の言葉に、全く納得した様子は見せなかったものの……それでも取りあえずは黙るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730