俺が影を蹴った瞬間、影から刈り取る者が姿を現す。
見るからに凶悪な……それこそ、俺が倒した下弦の伍の鬼と比べても明らかに凶悪な外見をしたその姿は、当然ながら柱達に戦闘準備を整えさせるのに十分なものだった。
「落ち着け。これはさっき説明した召喚獣で、俺の使い魔的な存在だ」
「あァ!? ふざけるな、これは危険な奴だろうがァ!」
実弥が風の呼吸の緑の刀身から赤く染まった刀身を持つ日輪刀を構えながら、そう叫ぶ。
他の柱達も、それぞれ日輪刀を構えて戦闘体勢に入っていた。
刈り取る者の外見は、凶悪そのもの。
そう思えば、こうなるのは当然だったのかもしれないな。
刈り取る者を召喚する前に、その辺を言っておけばよかったな。
日輪刀を手に今にも攻撃をしそうな様子を見せる柱達。
だが、刈り取る者はそんな柱達を前にしても、特に何も反応していない。
過激に反応してもおかしくはないのだが、それでも銃身の異様に長い拳銃を構えないのは、俺が反撃するように命令していないからだろう。
「危険な奴なのは間違いないが、今の状況を見れば危険視する必要はないだろ?」
俺の言葉に多少は納得した様子を見せる実弥。
「アクセルの言うことだし、信用出来るだろう。皆、日輪刀を下ろしなさい」
耀哉の声が響き、柱達は即座にその指示に従う。
この辺り、耀哉のカリスマ性が凄いよな。
「悪いな。……さて、そんな訳でこれが刈り取る者。俺がこことは別の世界で召喚獣として契約したモンスターだ。……羽根が生えているのが分かるか? これが俺の血によって生じた外見の変化だ」
外見の変化はこれだけだが、能力という点では何気にかなり強化されてるんだよな。
鬼が俺の血に適応したら一体どうなるのか。
純粋に能力が上がるだけで敵となるのか、それとも血の効果によって俺に従うようになるのか。
それは実際に試してみないと分からない。
「鬼にこのような羽根が生えるのですか?」
俺の血の影響だからだろう。しのぶは日輪刀を下ろすと、興味深そうに刈り取る者を観察する。
「その個体によって、影響は違うな。他のモンスターの中にはもっと翼の数が増えていたり、角が生えていたりとかしてるし」
グリに角が生えたのは、多分……いや、間違いなく俺がリョウメンスクナノカミを吸収した影響だろう。
とはいえ、リョウメンスクナノカミの件はもう少し黙っておいた方がいいか。
鬼というのは、鬼殺隊にとってそれだけで殺す対象になりかねない。
それは禰豆子の件を考えれば明らかだろう。
「なるほど。……色々と試してみる必要がありますね」
「その辺には協力するよ。ゲートでホワイトスターと繋がれば、医療技術の協力もかなり本格的に出来るだろうし」
純粋な医療技術という点では、間違いなくシャドウミラーが上だ。
しかし、大正時代の技術で半ば蜘蛛になっている者達を治療出来るというのは、非常に興味深い。
恐らくレモンを始めとした技術班も興味を抱くのは間違いないだろう。
「俺の血についてはこんな感じだ。……戻れ」
短く言うと、刈り取る者は特に不満らしい不満を抱いた様子も見せず、俺の影に身体を沈めていく。
刈り取る者の姿がなくなり、周辺にどこか安堵した雰囲気が流れる。
そんな雰囲気を感じたのか、耀哉が口を開く。
「さて、アクセルの件についてはこれでいいだろう。もっと詳しく知りたい者達は、アクセルがゲートというのを設置する時に一緒に行けばいい。……勿論、私も見に行くつもりだよ」
『お館様!?』
ゲートの設置を耀哉も見に来るというのは、柱達にとっても予想外だったのか、驚きの声が上がる。
柱達にしてみれば、俺を信用出来る出来ない以前の話として、耀哉を危険になるかもしれない場所に連れいきたくないのだろう。
ましてや、現在の耀哉は呪いによって目が見えなくなっている。
ゲートの設置を見に行くとはいえ、目が見えないのでは意味がない。
……とはいえ、耀哉は目が見えない代わりに他の感覚が優れている。
目以外の感覚器官……耳や鼻、場合によっては舌でも情報を得る事が出来てもおかしくはない。
とにかく、柱達は心配しているものの、実際にはゲートを設置してホワイトスターに戻るだけなのだから、危険はない。
……今更、本当に今更の話だが、俺がこの鬼滅世界に来てから、まだ1日も経ってないんだよな。
鬼滅世界に来てから色々な出来事があったせいで、何だかもう随分と長い時間この世界にいるような気がするが。
「私の友人のアクセルがいるんだ。大丈夫だろう? それに……そうだね、治療技術の件もあるし、しのぶと……他にも何人か一緒に来るというのはどうだろう? 構わないかい、アクセル?」
「ああ、こっちは構わない。元々希望者は全員向こうに連れて行くつもりだったしな」
大正時代しか知らない鬼殺隊の面々にしてみれば、ホワイトスターを見せればしっかりと俺の言葉を理解出来るだろう。
異世界という存在については、まだ理解出来ていない者も多いだろうし。
そういう意味では、やはり直接自分の目で見せた方が手っ取り早いのは間違いない。
「ありがとう。さぁ、そういう事で話は決まったよ。まずは柱合会議を終わらせよう」
耀哉のその宣言に、小芭内や実弥のようにまだ納得していない者もいたが、それでも結局は耀哉の指示に逆らうような真似はせず、柱合会議が始まる。
まず最初に話題になったのは、柱達がそれぞれ受け持っている場所についての報告。
とはいえ、これはそこまで違いはない為か、あっさりと終わる。
俺にとっては鬼殺隊の知識を少しでも得られるので、その報告は黙って聞いていた。
……本来なら、この柱合会議というのは鬼殺隊の最高幹部達が揃っての会議で、当然ながら部外秘の会議なのだろう。
それこそ部外者の俺が聞くような真似は、本来なら出来なくてもおかしくはなかった。
耀哉も俺を友人だと言っているが、公私は分けて当然だろうし。
それでも俺がこの柱合会議への参加が許可されたのは、耀哉にとって俺……というか、シャドウミラーとの関係は重要だと考えたからだろう。
ともあれ、そうしてそれぞれの担当地域についての話が終わったところで、今回の本題に入る。
俺がダンバイン世界から飛ばされて、姿を現した山。
那田蜘蛛山という山らしいが、あの山の一件がかなり問題視された。
那田蜘蛛山にいたのが鬼の組織の中でも幹部……鬼殺隊の柱とも言うべき十二鬼月だったとはいえ、それによって鬼殺隊が受けた被害はかなり大きかったらしい。
育手という、鬼殺隊の剣士を育てる事を専門にしている者達もいるのだが、そちらにも問題があるのではないかといったような話題が出たり、鬼殺隊の剣士の1人……村田とかいう奴が呼び出されて事情聴取されたり。
にしても、村田か。うちのムラタとは比べものにならないな。
ムラタと村田を会わせてみたらどうなるのか、少し試してみたいという思いもあるが……うん、さすがに村田が可哀想だな。
ちなみにこの村田は、色々とあったせいでストレスを溜めていた柱達から圧迫面接的な感じになり、かなり怯えていた。
最後にしのぶに笑みを浮かべられると、何故か喜ぶのではなく顔を青くしてその場から去っていったが。
それ以外にも細々とした事を話し合い……そして、柱合会議が終わる。
「どうだったかな、アクセル。君から見て」
「どうと言われても、こういうものなのかと」
シャドウミラーの場合は何か会議をする際にも、もっと軽い調子で話が進む。
しかし、それはあくまでもシャドウミラーが色々と特別なだけだろう。
「おや、そうかい? ちなみにシャドウミラーの方はどうなんだい?」
「どうと言われてもな。もっと気軽な感じで話が進むな。政治に関しては、俺がこういう風に進めて欲しいと指示を出せば、政治班の方でそれを実現してくれる感じだし」
とはいえ、これは実はかなりリスクの高い政治のやり方でもある。
基本的に俺は政治班を全面的に信じてはいるが、もし政治班の中に妙な事を企んでいる奴がいた場合、人数が少ない分だけ好き勝手に出来る範囲が広くなる。
そういう意味では、政治班を心から信じられるのが前提の政治体制と言ってもいい。
まぁ、レオン辺りは本来ならそこまで信用出来ないんだが、鵬法璽のおかげでレオンについても心配しなくてもいいし。
「国が……それで運営出来るのかい?」
「優秀な奴が多いしな」
書類整理とかの類には人数が必要になるものの、その辺は量産型Wで十分対応が可能だ。
量産型Wの能力は、それこそその辺の秀才よりも余程高い。
また、人数も幾らでも投入出来るというのが大きい。
そういう意味でも、シャドウミラーは特殊な性質を持つ国家であるのは間違いない。
……というか、そもそも王である俺がゲートで未知の世界に転移するといったような真似をするのだから、その辺からして普通じゃない。
とはいえ、今はこの状況でシャドウミラーが回っているものの、この先もずっと同じという訳にはいかないだろう。
交流する世界が増えれば、当然のように政治班が交渉する世界も多くなるし、シャドウミラーに所属する者も増える可能性は高い。
とはいえ、それがいつになるのかは分からないが。
正直なところ、ドレイクやシーラは政治班で働いて欲しかった。
いや、それについてはもう今更の話か。
「ともあれ、シャドウミラーがどういう場所なのかはホワイトスターに行けば十分に見る事が出来るから、楽しみにしていてくれ。……で、どうする? 柱合会議が終わったのなら、蝶屋敷に行くか? 幸い、耀哉の体調も悪くないようだし」
今日の朝に耀哉と会った時は、体調が悪かった。
しかし、昼くらいまで寝ていた為か、今の顔色はかなりいい。
あるいは、鬼に対して協力出来るシャドウミラーの存在を知ったからか、もしくはホワイトスターに行けば呪いをどうにか出来るかもしれないと思ったからか。
耀哉にとって、現状ではかなりストレスを感じていたのは間違いない。
それを自覚してるかどうかは、また別の話だが。
「ふむ、そうだね。だが……アクセルの国に行くのだろう? なら、正装とまではいかないが、もう少ししっかりした服を着た方がいいかもしれないね」
耀哉は自分が現在どんな服を着てるのかは、盲目である以上は分からない筈だ。
それでもこうした事を口にする辺り、気が利くと言うべきか。
「どっちでもいいと思うけど、耀哉がそう判断したのならそれでいいんじゃないか? じゃあ、耀哉の準備が出来たら蝶屋敷まで案内してくれ」
「分かった。では、私は用意してくるから待っていて欲しい。……皆も、アクセルの国に興味がある者は一緒に行っても構わないよ」
そう言い、耀哉はその場から立ち去る。
当然だが、あまねや耀哉の子供達もいなくなり……ここに残ったのは、俺と柱の面々だけとなる。
「さて、そうなると耀哉が戻ってくるまでは暇だな。なら、ちょっといい物を見せてやろう」
輝利哉に雑誌を見せた時の反応が面白かったこともあり、俺の言葉に今度は何をするつもりだといったような視線を向ける柱の面々に、空間倉庫の中から雑誌を取り出す。
美味いと評判の料理店の特集が載っている雑誌で、当然ながら雑誌にはカラーの写真が多数ある。
「これが……そうだな。ざっと100年近く未来の日本で売ってる雑誌だ」
そんな俺の言葉には興味を抱いた者が多かったのだろう。
何人もの柱がこっちに近付いて来る。
目の見えない行冥と、俺を信用している訳ではない小芭内の2人は、こっちに近付いてこなかったが。
「凄いですね。これ、本当に写真なんですか?」
しのぶがクレープの写真を見ながら、感嘆したように呟く。
「そうよねそうよね。これ、凄い美味しそうよね」
蜜璃もそんなしのぶの言葉に同意するように、興奮した様子で言っていた。
……蜜璃がそんな風に言うのが面白くないのか、離れた場所にいる小芭内の俺に向ける視線が一際鋭くなったが。
「鮭大根!?」
ページをめくっていき、和食のページになったところで義勇が鋭く叫ぶ。
鮭大根? と思って視線を向けると、そこには確かに鮭と大根の煮物の写真があった。
「鮭大根か。ブリ大根とかなら一般的だけど、鮭大根って聞いた事がないな」
そう告げる俺の言葉に、義勇は本気かこいつ? といったような視線を向けてくる。
いや、でも実際それなりに和食とかを食べる機会はあるけど、鮭大根とかは食べた事がないぞ?
一般的に考えて、ブリ大根と鮭大根のどっちが有名かと言われれば、圧倒的にブリ大根だと思う。
とはいえ、それはあくまでも俺がそう思っているだけで、もしかしたら鮭大根もそれなりにメジャーな料理なのかもしれないが。
そうしてページをめくっていき、それぞれが写真に写った料理を見て感想を言う。
「おお、このパエリアっての、派手な料理じゃねえか!」
「このお萩、これは……」
それ以外にも色々と言ってる者がいたが……俺にとって幸運だったのは、クレープのところにゴーヤクレープがなかった事だろう。
そんな風に思いつつ、俺達は耀哉が戻ってくるまで雑誌を見ながら会話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730