バスが建物に到着すると、扉が開く。
「では、皆。行こうか。この会見……そして交渉は、私達のこれからにとって大きな意味を持つだろう」
耀哉がそう言い、バスから降りる。
当然のように他の柱達やあまねも、耀哉の後に続く。
いや、正確にはあまねは耀哉と一緒に降りたのだが。
俺もまたバスから降りると、政治班が使っている建物の外にはエザリアを始めとする政治班の面々――何人かいないが――や、レモン、木乃香、刹那の姿もあった。
刹那は柱の面々を見て何か感じたのか、表情を引き締める。
柱の面々も、刹那を見て色々と思うところがあったのだろう。それぞれに反応していた。
「アクセル、よく無事に戻ってきたわね」
そんな中、レモンが俺の側までやってきてそう告げる。
満面の笑みを浮かべているのを見れば、今回の件は上手くいったと、そう思っているのかもしれない。
「そうだな。無事に戻ってきたけど……今回の転移に関しては、かなり問題があった」
「……そう」
笑みを浮かべていたレモンだったが、その言葉で何かを感じたのか短く呟く。
そんなレモンの肩に軽く手を置き、耀哉達の前に出る。
「エザリア、こっちが産屋敷耀哉。鬼滅世界……俺が戻ってきた世界で接触した組織の代表だと思って貰えればいい。耀哉、こっちはエザリア・ジュール。シャドウミラーの政治班を任せている人物で、政治に関しては俺が全面的に信じている人物だ」
そう言うと、耀哉とエザリアはそれぞれ自己紹介する。
エザリアは当然のように耀哉の様子から盲目であるというのは分かっているようだったが、実際にそれを口にする様子はない。
そのような真似は無作法で失礼になると、そう理解しているのだろう。
「それとこっちは産屋敷あまね。耀哉の妻だ。で、後ろにいるのは柱という、鬼滅世界で俺が接触した組織……鬼殺隊の幹部のようなものだと思ってくれればいい」
そう言い、次に鬼滅世界の面々にエザリア以外の政治班の面々を説明していく。
「さて、これで自己紹介が終わったし、取りあえずいつまでも外にいるのはどうかと思うから、そろそろ建物の中に入らないか?」
「そうね。このままだと耀哉さんの身体にも悪いでしょうし」
「いえ、構いませんよ。私の呪いは、このホワイトスターにやって来てから問題なくなりましたし」
「……呪い……?」
エザリアが戸惑ったように言う。
木乃香に来るように言っておいた点から、怪我か病気といったように考えていたのだろう。
だが、正確には呪いが関係している。
「ああ。呪いらしい。正確にはその辺を調べて貰う為に、木乃香やレモンにも来て貰った訳だ。だが、耀哉が言うようにその呪いは鬼滅世界だけのもので、ホワイトスターに来たら具合がよくなったらしいぞ」
「それは……失礼しました」
「いえ、お気になさらず。私の顔を見れば、そのように思ってもおかしくありません。それに……何度も言いますが、このホワイトスターに来てから身体の調子がいいのです。そうである以上、私は寧ろここに来る事が出来たのを喜んでいますよ」
笑みを浮かべ、そう告げる耀哉。
そんな耀哉の横では、あまねも笑みを浮かべていた。
鬼滅世界では呪いによって身体の調子の悪い耀哉が、こうして気楽な様子を見せているのが嬉しいのだろう。
「そう、ですか。とにかく、建物の中に入りましょう。2つの世界の初めての会合です。それを思えば、やはりいつまでも外にいるのは外聞が悪いでしょうし」
「そうですね。では、行きましょう」
耀哉とエザリアの間で話が決まり、2つの集団は建物の中に入っていく。
そんな中で、レモンが木乃香と刹那を連れて俺に近付いてきた。
「アクセル、呪いって……本当なの?」
「正直なところ分からない。ただ、耀哉はそう思っているし、ホワイトスターに来てから元気になったのも間違いのない事実だ」
「それで、ウチが解呪すればいいんか?」
「呪いだったらな。実際には単純に向こうの世界では知る事が出来ない病気という可能性も否定は出来ない。何しろ、大正時代だからな」
大正時代。
その言葉に、レモン達は驚きの表情を浮かべる。
「また、随分と昔の時代に転移したわね。でも、それだとアクセルが欲しい技術とかはあったの?」
レモンにしてみれば、大正時代というのは遙か昔という認識だ。
それだけに、シャドウミラーの利益となるような物があるとは思えなかったのだろう。
とはいえ、実際は鬼滅世界には結構なお宝が存在する。
「ああ。日輪刀、鬼、血鬼術、呼吸……他にも探せば色々とあると思う」
俺の口から出た言葉の殆どについては、意味を理解出来なかったのだろう。
だが、それでも今の状況を思えば、俺が嘘を言ってる訳ではないというのは理解したのか、取りあえずそれ以上の話をするのを止める。
このままここで話をしていても、意味がないしな。
まずは建物の中に入って、耀哉とエザリアの交渉を見る必要がある。
その後は、当然ながら耀哉の治療についてだろう。
ホワイトスターに来た今は、耀哉の調子はいい。
だが、鬼滅世界に戻った時にそれがどうなるのか。
それは容易に予想出来る。
「ウチがどうにかすればいいんやね」
「ああ、頼む。勿論木乃香だけじゃなくて、魔法や呪いに詳しいだろうエヴァや、科学的な面からレモンにも頼むと思うけど」
「呪い、ね。少し面白そうではあるけど……まぁ、いいわ。じゃあ、まずは行きましょう」
「このちゃん、気をつけて。あの人達……全員が、それなりの実力者です」
「ありがと、せっちゃん。でも、せっちゃんがいれば問題ないやろうし、何より向こうは交渉に来たんやろ? なら、心配はいらんやろ」
そんなやり取りをしている2人をその場に残し、俺とレモンは建物の中に入るのだった。
「なるほど。鬼、ですか。……正直なところ、鬼という点では私達にとってはそこまで珍しい存在ではありません。勿論、鬼滅世界でしたか。その世界の鬼と私達の知ってる鬼は違うでしょうが」
エザリアのその言葉に、耀哉は小さく笑みを浮かべて頷く。
「その辺については聞いています。ですが……私達の世界の鬼は、質が悪い」
耀哉はそう言い、鬼滅世界の鬼に対して説明する。
耀哉の口から出る言葉は、強い説得力があった。
それは声もそうだが、実際に自分が鬼殺隊を率いており、それによって現場の状況についても理解しているからだろう。
柱達やあまねも、耀哉の説明に時折頷いており、鬼滅世界の鬼がどれだけの存在なのかというのを、周囲に知らせていた。
だが……エザリアを始めとした政治班の面々は、そんな耀哉の言葉に納得しつつも口を開く。
「鬼滅世界についての話は理解しました。しかし、正直なところを言わせて貰えば、鬼滅世界の鬼はそこまでの脅威とは思えません」
言い切るエザリアに対し、柱のうちの何人か……特に血の気の多い実弥が何かを言おうとするも、耀哉はその気配を察したのか手を伸ばしてそんな実弥の行動を止める。
「どういう事でしょう?」
「アクセル代表から聞いてるかどうかは分かりませんが、マブラヴ世界という世界があります」
そうして語られる、BETAとの戦い。
地球の殆どをBETAによって占領されたその状況は、確かに鬼滅世界とは比べものにならない程の地球の危機だろう。
マブラヴ世界に比べると、鬼滅世界は地球の中でも日本……それも限られた場所にいる鬼をどうにかする必要があった。
例えるのなら、日本という国に人食いの猛獣が多数棲息しているといったところか。
勿論、実際にそんな猛獣の側にいる者にしてみれば、そのような状況はとてもではないが許容出来ないだろう。
しかし、それでもマブラヴ世界と比べれば圧倒的なまでに平和な世界と言ってもいい。
「ペルソナ世界は……今はもう安全ですが、それはアクセル代表やその世界の人達が協力して対処したおかげです。そうでなければ。月が……ニュクスが目覚めて、BETA云々以前に人類が壊滅していたでしょう」
実際、ペルソナ世界はある意味でBETAによる脅威を抱いていたマブラヴ世界よりも危険だったんだよな。
「そしてマクロス世界。別の銀河からやって来た、宇宙を飛ぶ虫のような存在バジュラ。これもまた、その力は脅威でした。最終的には和解して向こうが別の銀河に行きましたが、もしバジュラと正面から戦うといったような事になっていた場合、地球は……いえ、銀河そのものが危険だったでしょう」
バジュラの件は……まぁ、色々とある。
実はまだバジュラが1匹マクロス世界に残っていたり、バジュラの影響で大きな騒動が起きたり。
「他にも多数ありますが、そういう意味では鬼滅世界がそこまでの危機ではないというのは、分かって貰えるでしょうか?」
「そうですね。今の話の全てを完全に理解した訳ではありませんが、聞いた話を考えると確かに私達の世界はそこまでの危機ではないのでしょう。しかし、それでも今の状況を思えば、鬼滅世界の者としてはシャドウミラーに協力を仰ぐしかないのです。私の子供達……鬼殺隊の剣士達は、鬼との戦いで日々その命を散らしていきます。それを何とかする為なら、そして鬼の首領たる鬼舞辻無惨を倒す為にも」
そう言う耀哉は、何があろうともここで1歩も退くつもりはないと、そう態度で示していた。
エザリアはそんな耀哉の様子に笑みを浮かべ……そしてレオンを見る。
エザリアに視線を向けられたレオンは、小さく頷いてから口を開く。
「では、お互いに前提条件を理解したところで、交渉といきましょう。まず、そちらが求める物は何でしょう?」
「戦力です。鬼と戦うには、呼吸を習得した剣士だけでは厳しい。幸いにもホワイトスターには、量産型Wという存在がいると聞きました。それもその実力はかなりのものだと」
耀哉の口から出た量産型Wという言葉に、レオンは俺を見てくる。
まぁ、このような状況である以上、誰が量産型Wについて教えたのかというのは、考えるまでもなく明らかなのだから。
「また、こちらでは治療技術が進んでいるという話も聞きます。鬼との戦いで怪我を負った者、そして手足を失った者……そのような者達を癒やしてやりたいと思っています」
「なるほど。お話は分かりました。アクセル代表から色々と聞いているようですが、確かにシャドウミラーならそちらの希望に応えられるでしょう。ですが……こちらから提供する物は多いですが、それでは一方的な施しとなります。そうならないようにする為には、そちらの世界からも色々貰う必要があります。その辺はどうです?」
レオンにしては随分と優しい態度だな。
いつもならもっと高圧的に押してくるんだが。
けど、こうして見た感じでは今のところそんな事をする様子はない。
「アクセル王から、そちらが興味を示す物については窺っています」
アクセルではなくアクセル王と言ったのは、これが公的な会話であると理解しているからだろう。
アクセル代表ではなくアクセル王という呼び方に少し違和感があったのか、レオンはこちらに一瞬視線を向けていたが。
そう言えばバイストン・ウェルからの流れで普通に自分の事を王と名乗っていたな。
まぁ、代表よりは分かりやすいし、バイストン・ウェル関係という事でマーベルやシーラの事を忘れないという意味で、このまま代表ではなく王という表現にした方がいいのかもしれないな。
「ほう、具体的にはどのような物があります?」
「鬼殺隊の子供達は、呼吸という……アクセル王が仰るにはシャドウミラーで使われている気と似てはいるが違う力があります。この情報をそちらに渡しても構いません。また、それだけではなく……義勇、日輪刀を」
「は」
何故ここで耀哉が義勇の名前を出したのかは、俺にも分からない。
あるいは特に何か意味がなく、何となくなのかもしれないが。
ちなみにこの席において、武装解除はされていない。
鬼殺隊の面々は普通に日輪刀を持っている。
とはいえ、エザリアやレオンを含め、シャドウミラーのメンバーである以上、当然ながらエヴァの訓練を受けている。
それに政治班には生身での戦いをこそ得意としている面々……凛、千鶴、あやかといった面々もいる。
もし鬼殺隊の誰かが妙な真似をしようとしても、それに対処出来る自信が十分にあるのだろう。
「ほう、これは……素晴らしい刀ですな。それもこのような色は珍しい」
鞘から抜かれた義勇の薄い青の刀身の日輪刀を見て、レオンが感心した声を上げる。
とはいえ、レオンにしてみれば日輪刀……日本刀の刀身の色が普通と違うだけでしかない。
これだけですか? といった視線を向けるレオンに、耀哉は言葉を続ける。
「この日輪刀は、鬼滅世界にいる鬼の首を斬れば殺せます。日光が蓄えられた特殊な金属で作られているので、シャドウミラーにとっては興味深いのでは? それに、鬼を確保出来た場合はそちらに引き渡しても構いません。……どうです?」
そんな耀哉の言葉に、レオンはどう答えるのか悩むのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730