炭治郎に頼んで禰豆子のいる部屋に案内して貰う。
とはいえ、禰豆子は炭治郎達のようにベッドで眠っているのではなく、炭治郎が持っていた箱の中で眠っていたのだが。
ただ、少し疑問なのは実弥によって日輪刀で突き刺されて壊された筈の箱が、綺麗に直っていた事だろう。
炭治郎や善逸なら箱を直そうと思うかもしれないが、今はとてもではないが自由に行動出来る状態ではない。
伊之助は……あの落ち込んでいる状況を考えると、それこそ禰豆子の箱を直すといった真似は出来ないだろう。
そうなると、炭治郎の仲間以外の誰かが直したという事になるのだが、一体誰だ?
ここが蝶屋敷であると考えれば、もしかしたらしのぶか?
ともあれ、箱が直ってるのは悪い話ではない。
「禰豆子、聞こえるか? というか、起きてるか?」
部屋の中にある箱に話し掛けると、そこからはカリカリといった音が聞こえてくる。
まるで猫が引っ掻いてるような、そんな音。
考えてみれば、禰豆子は竹を咥えているのだ。
そうである以上、禰豆子は声を出せない。
むーむーといった声を発する事はあるが。
ともあれ、俺の言葉に対する返事が、この箱を引っ掻くような音なのだろう。
「どうやら元気そうで何よりだ。炭治郎からは、禰豆子は寝ているかもしれないと聞かされていたしな。こうして起きていて助かったよ」
カリカリと聞こえてくる音が、俺の言葉に対しての反応なのか、それともただ何となく引っ掻いてるだけなのか。
正直なところ、その辺りは俺にも分からない。
鬼になった禰豆子の知能が、具体的に何歳くらいなのかはというのも分からないし。
ただ、取りあえずこっちの言葉は理解出来ていると、そう考えて話をする。
「炭治郎達は現在治療中で、命に別状はないらしい。善逸も手足は問題なく治療出来るらしいぞ」
カリカリ。
引っ掻く音が少しだけ嬉しそうに感じたのは、きっと俺の気のせいではないだろう。
とはいえ、それはあくまでも俺の気のせいといった可能性もない訳ではないのだが。
「それにしても、あの善逸がお前を守る為に伊之助と戦ったというのは少し驚いたな」
先程見舞いをした時に、炭治郎達から聞いた話だ。
俺があの山に転移するよりも前……それこそ炭治郎、善逸、伊之助が揃って戦った鬼との一件で、伊之助は禰豆子を……正確には禰豆子の入った箱を破壊しようとしたらしい。
それを善逸が防いだ。
とはいえ、それは善逸が伊之助を撃退したという訳ではなく、文字通りに自分の身体を盾として箱を守ったらしい。
つまり、炭治郎が来るまでは伊之助にボコボコにされていたとか。
善逸がヘタレなのは間違いないが、それでも禰豆子の為に身体を張るといったような真似が出来るのは、高評価だ。
俺の中で善逸の評価が少しだけ上がった。
同時に、伊之助の評価が少しだけ下がった。
そうして、特に何か意味があるようなものではない世間話をしていると、不意に部屋に近付いて来る足音と気配を感じる。
その足音はこの部屋の前で止まり、扉が開き……
「アクセルさん? どうしたんですか、こんな場所で」
姿を現したのは、アオイだった。
まさか俺がここにいるとは思っていなかったのか、思い切り驚いた表情を浮かべている。
「禰豆子とちょっと話をな」
「そうですか。……でも、鬼になったとはいえ、女性の部屋に入り浸るのはどうかと思いますよ」
「入り浸るって表現はどうなんだ? とはいえ、そう言われても仕方がないか。じゃあ、禰豆子。俺はこの辺で失礼するよ。また今度話そうな」
カリカリ。
その引っ掻く音が具体的にどのような意味を持つのかは、俺にも分からない。
分からないが、それでも何となく俺の言ってる内容に同意しているように感じられた。
「そんな訳で、俺はそろそろ帰る。……ああ、そうそう。今度から善逸は薬が苦いといったように騒いだりはしないと思う。もしそれでも騒ぐようなら、格好悪いとでも言ってやってくれ。多分それが一番効果がある」
「格好悪い、ですか? 分かりました」
完全に納得したといった様子ではなかったが、取りあえず頷くアオイ。
生真面目な性格をしているだけに、女好きの善逸がどういう性格をしているのかといったような事は分からないのだろう。
ともあれ、俺はアオイと言葉を交わし、最後に禰豆子にも声を掛けてから、病室から出ると影のゲートを使って産屋敷家に向かうのだった。
「あら、アクセルさん? どうしたんですか?」
産屋敷家に入った俺を最初に見つけたのは、あまね。
耀哉が今の状況であると考えれば、鬼殺隊の運営にもあまねが関わっているのは間違いない。
そして次期産屋敷家当主となるだろう輝利哉も、当然のように耀哉が呪いに蝕まれている分、仕事が回されているだろう。
そんな輝利哉に炭治郎の事を聞くのはどうかと思うが……かといって、まさか今の状況で耀哉に聞く訳にいかないのも事実。
「ちょっと輝利哉に調べて欲しい事があってな」
俺の口から出たのが予想外の言葉だった為か、あまねは驚きの表情を浮かべる。
これで俺が耀哉に会いに来たといった事を言えば、それはそれで納得したのかもしれないが、ここで出たのが輝利哉の名前なのだから、母親として驚くのも当然だろう。
「輝利哉にですか? 一体何でしょう?」
「今までの鬼殺隊の剣士の中に、炭治郎……禰豆子の兄だが、その一族の者がいなかったかどうかを」
「それは……何故、と聞いてもいいでしょうか?」
「ああ。別に隠すような事でもないしな」
そう言うと、炭治郎の家には独自の呼吸……正確には呼吸の型のようなものが代々伝わっているといった話をする。
「その呼吸の型を使うと、炭治郎の動きがかなり強化されたらしい。だからこそ、もしかしたらその辺の情報が鬼殺隊にも残ってるんじゃないかと思って」
「なるほど。ですが、呼吸法というのは様々な派生があります。それを考えると、恐らく調べても見つけるのは難しいのではないかと」
「そうかもしれないが、それでも調べてみる価値はあると思ってな」
「そこまでする必要があるのですか?」
あまねの疑問に、どう答えるか迷う。
まさか、この世界の主人公の可能性が高いからなどと言ったところで、信じて貰えるとは思えない。
また、信じられたら信じられたで、面倒なことになるのは間違いない。
「俺がこの世界にやって来て最初に会ったというのもあるし、何より禰豆子は明らかに普通の鬼と違う。だとすれば、その秘密は炭治郎の血筋にあるのかもしれないと思ってな」
「なるほど」
咄嗟に思いついた説明だったが、あまねを説得するには十分なものだったらしい。
実際、俺の口から出たその説明も、決して適当なものではない。
何故禰豆子だけが、人を食わなくてもいいのか。
そのような鬼は、聞いた限りでは禰豆子だけだ。
あるいは過去にもそういう鬼がいた可能性は否定出来ないものの、そのような場合は柱合会議の時に耀哉が何か言ってもおかしくはない。
そうである以上、やはり過去に禰豆子のような鬼はいなかったか……いても本当に希少で、鬼殺隊には見つからなかったといったような感じになっていた可能性が高い。
であれば、結局のところ禰豆子は鬼殺隊にとっても非常に重要な存在なのは間違いなかった。
「そんな訳で、炭治郎の血筋に鬼殺隊がいなかったかどうかを調べたいんだが、輝利哉に頼んでもいいか?」
「そうですね。今は休憩をしている頃でしょうし、あの禰豆子という鬼については私も気になっていました。そうである以上、しっかりと調べてみた方がいいのかもしれませんね」
あまねも俺の言葉に納得し、俺は輝利哉のいる部屋に案内されるのだった。
「アクセルさん!?」
部屋に入ると、何らかの本を読んでいた輝利哉が驚きながら叫ぶ。
ちなみにこの部屋は輝利哉の部屋という訳ではなく、皆が集まって勉強をするような部屋らしい。
実際に輝利哉以外にも耀哉の娘達……全員娘だよな?
実は輝利哉と同じように魔除けの風習として女装している男がいたりしないよな?
まぁ、いたらいたで、それはそういうものだと認識するしかないのだろうが。
ともあれ、輝利哉以外の耀哉の子供達も揃っている。
これが全員なのかどうかは、正直なところ俺も分からないのだが。
とにかく、輝利哉がここにいるのは丁度いい。
今は休憩中だって話だったと思うが、それでも本を読んでいる辺り、真面目だよな。
あるいは一目惚れしたクリスが忘れられず、勉強に集中してそれを忘れようとしているとか?
「輝利哉、ちょっと頼みがあって来させて貰った」
「頼みですか? 何でしょう?」
「禰豆子と炭治郎の一族に、過去鬼殺隊の剣士がいたかどうか、調べられないか?」
「それは……最近ならともかく、昔だと資料が残っているかどうか分かりませんが、調べられる限りなら。けど、どうしてです?」
そう聞かれ、先程説明した禰豆子の件や竈門家に伝わっているという呼吸の型の件について説明する。
「それは……興味深いのは間違いないですね。調べてみる価値はありそうです」
「だろう? 竈門家には、あるいは無惨に対する抵抗力を持つ力があるのかもしれない」
炭治郎から聞いた話によると、炭治郎には弟や妹が何人かいたらしいが、無惨によって全員殺されている。
もし全員が無惨によって鬼にされていたら、もしかしたら禰豆子と同じように人を食わない鬼が多数存在した可能性もあるのか。
とはいえ、そう上手くいくかどうかは分からないが。
「鬼舞辻無惨を倒す為の力になるかもしれませんね。分かりました。調べてみます」
「頼む。……いっそ、炭治郎や禰豆子をホワイトスターに連れていけば、色々と調べられるかもしれないんだが」
炭治郎を鍛えるといったような話になっているし、善逸に女を紹介するといった件もある。伊之助も鍛えるという意味では同じだな。
そんな訳で、蝶屋敷での治療が終わったら、一度ホワイトスターに連れてきてもいいかもしれないな。
耀哉には当然話を通す必要があるが。
「これは感謝の気持ちだ。今は休憩中なんだろ? 妹達と一緒に食べるといい」
そう言い、空間倉庫の中からシュークリームを取り出す。
ケーキ屋で売ってるようなシュークリームではなく、スーパーやコンビニで普通に売ってるようなシュークリームだ。
とはいえ、当然ながら日本で売ってるシュークリームだけに、そのレベルは高い。
チョコが100円やそこらで買えるレベルのものではないのは有名だが、それはチョコだけではなく他の甘味にも言える。
実際、日本で普通に売ってるシュークリームのレベルは、全世界的に見てもトップクラスなのだから。
勿論、パティシエが作るようなシュークリームには到底及ばないものの、それはある意味で当然の話だ。
しかし、機械で量産されるシュークリームとして考えた場合、それは非常に高レベルとなる。
ましてや、大正時代に生きる者達にしてみれば、そんなシュークリームはまさに天上の甘露……というのは少し言いすぎかもしれないが、そういう感じに思われてもおかしくはない。
それだけの味なのだ。
そして事実、袋を開けるのに若干戸惑った者もいたものの、シュークリームを食べると一気に騒がしくなる。
……何気にあまねも一緒にシュークリームを食べているのは、取りあえず見ないようにしておいた方がよさそうだ。
いや、ここは耀哉へのお土産としてシュークリームを持っていってもらうべきか?
そう考え、あまねにシュークリームを渡す。
ただ、今の耀哉はこの世界だと呪いの影響を受けている。
ホワイトスターにいれば、普通にシュークリームを食べることも出来るだろうが、鬼滅世界だと食べるのは難しいかもしれないな。
まぁ、もしそうなったら、シュークリームはあまねが食べるだろうし。
「炭治郎の一族の秘密を解き明かしたら、もっと美味いスイーツ……甘味をご馳走しよう」
ギンッ、と。
俺の言葉を聞いた者達……特に女達は、鋭い視線をこちらに向けてくる。
やはり女はスイーツを好むのだろう。
いや、別にそれは女だけではないし、男であっても普通にスイーツは好きなんだが。
「兄様、急ぎましょう、まず竈門家について調べられる範囲で調べなければ」
「そうですね。呼吸の型が伝わっていたというのなら、鬼殺隊と何らかの接触があったのは、多分間違いないでしょう。具体的にいつになるかが問題なのですが」
「家に代々伝わっていたという事であれば、父親や祖父といったような時代ではなく、もっと前になるのでは?」
「そうなると、具体的にどのくらい前になるかで話は変わっていきますが、あまり前になると兄様が言っていたように資料が残っていない可能性があります」
輝利哉の妹達が即座に会話をしているのを見て、スイーツの力は偉大だなと思う。
「取りあえず……これを耀哉に。あまねも忙しいだろうけど頑張ってくれ」
俺の言葉に、あまねは感謝の言葉を口にするのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730