先遣隊の連中にはそれぞれに自分のやるべき事を任せ、俺は蝶屋敷に向かう事にした。
輝利哉との話は、結局あまり意味のあるものではなかったが。
……ちなみに、予想通りではあったが荒垣のペルソナは鬼殺隊の剣士達をかなり驚かせていた。
それも慣れなので、頑張って貰うとしよう。
そんな風に考えながら蝶屋敷に向かうと……
「どうした?」
何故か疲れ切って落ち込んだ様子の炭治郎と伊之助を見つける。
怪我そのものは、もうある程度治っているように見えるのだが、何故そのような状況でこうして疲れ切っているのか。
あるいは怪我の治療に体力を使うとか?
「あ……アクセルさん……」
炭治郎の様子からして、かなり疲れているみたいだな。
本当に、これは一体何があった?
「どうしたんだ? 炭治郎らしくないが。もしかして、実はまだ怪我が治ってなかったとか、そういう感じか?」
「いえ、ちょっとその……怪我は問題ないんです。ですが……」
言葉を濁す炭治郎。
伊之助の方に視線を向けるものの、伊之助は落ち込んだ様子を見せている。
以前のような状況から、まだ復活してないのか?
「機能回復訓練というのをやってまして……」
「機能回復訓練? リハビリのようなものか」
「リハビリ?」
俺の言葉に不思議そうに炭治郎が言ってくるものの、リハビリという言葉が分からないらしい。
とはいえ、機能回復訓練という言葉からするとリハビリという認識で間違いない筈だ。
「治療をしていて、その間に鈍った身体を戻すという感じか」
正式な定義としては曖昧なのかもしれないが、俺にとってはそういう認識であるのは間違いない。
俺の説明を聞いて、炭治郎は納得した様子を見せる。
「そうですね。アクセルさんの言ってる内容で間違いないと思います。海外ではリハビリ、というんですね」
そう言う炭治郎だったが、海外でリハビリという言葉や行動が一般化したのがいつなのかは、正直なところ俺は分からない。
そして同時に、炭治郎や伊之助が何故ここまで疲れているのかを理解する。
俺が知ってる限り、リハビリというのはかなり厳しい。
実際にリハビリを途中で投げ出すような者もいるという話を聞く。
とはいえ、炭治郎や伊之助の怪我はそれなりに重傷ではあったが、リハビリが厳しい程ではない……と思う。
寧ろリハビリが厳しくなるのは善逸だろう。
現在の善逸は手足が短くなっているのだから、その手足を普通に使うようにするのはかなり厳しいリハビリが必要となる筈だった。
「そんな感じだな。で、機能回復訓練ってのは、具体的にどういうのをやってるんだ? 俺が知ってるリハビリだと、それこそまずは歩いたりとか、そういうのだが」
「え!?」
「な……」
俺の言葉に、何故か驚いた様子を見せる炭治郎。
いや、炭治郎だけではなく伊之助までもが驚いた様子を見せていた。
あれ? 何でそこまで驚くんだ?
今の状況でどこか驚くような要素があったか?
「歩く、ですか。……アクセルさんの話が本当だとすると、俺達がやってる機能回復訓練とリハビリというのは随分と違いますね」
「そんなに違うのか?」
「はい」
一瞬の躊躇もなく頷く炭治郎。
どうやら機能回復訓練というのはよっぽど厳しいらしい。
あ、でもある意味でそれは当然なのか?
俺がイメージしているリハビリというのは、あくまでも普通の人間が行うようなものだ。
それに比べると、炭治郎達は鬼殺隊の剣士でとてもではないが一般人とは呼べない。
そうである以上、この結果はある意味で当然なのかもしれなかった。
また、それだけではなく、俺が知ってるリハビリというのは、しっかりと科学的に研究されて行われたものだ。
それに対して、この大正時代というのは科学的という考えはまだそこまで発達していない。
今までそうやってきたからといった理由だったり、あるいは根性とかの精神論だったり。
勿論、それが完全に間違っている訳ではない。
精神論も、ある程度は必要だろう。
ただし、それはあくまでもある程度だ。
だが、この時代では精神論が大きな意味を持つ。
……まぁ、それでも蝶屋敷を任されているのはしのぶだ。
しのぶの性格を考えれば、そんな真似をするとは思えない。
そう思いつつ、あるいはしのぶなら無茶なリハビリをやってもおかしくないのでは? という思いがない訳でもない。
「ちなみに、その機能回復訓練というのは、どういう内容なんだ?」
そう聞いてみたところ、まず最初にやるのはマッサージ。
いや正確にはマッサージという程に気持ちいいものではなく、固まった身体を強引に解すといったような真似で、それもかなり痛いらしい。
そのマッサージが終わると、反射訓練として薬湯の入った湯飲みを相手に掛けるか、掛けられる前に湯飲みを押さえて止めるかをするらしい。
そして最後が、全身訓練として鬼ごっこをするらしい。
聞いてる限りだと、若干特殊ではあってもそこまでおかしいとは思わない。
炭治郎や伊之助が何故ここまで疲れているのか、その理由が分からなかった。
「聞いてる限りでは、そこまで厳しいようには思えないが。それに薬湯を掛けられたという割には濡れてないが?」
「その辺は機能回復訓練が終わった後で拭いたりしたので。……訓練そのものは、そこまで厳しいように思えないんですけど、それをやっているカナヲが強いんですよ」
そう言ってくる炭治郎の様子を見ると、カナヲはかなりの強敵らしい。
今まで何度か名前を聞いた事がある人物だが、実際に会った事はない。
アオイとは以前見舞いに来た時に会ったんだけどな。
「取りあえず俺は善逸の見舞いに行ってこようと思うけど、善逸はどんな感じだ?」
「アクセルさんの助言が効いたのか、薬を飲む度に文句を言うようなことはなくなりましたね。……かなり我慢して飲んでいるみたいなので、飲んでいる時は凄い顔ですけど」
そこまで苦い薬なのか。
ともあれ、女にモテたいという思いからであっても、そうして努力出来るのはいい事だ。
本人的にどう思っているのかは分からないが。
「そうか。なら、俺は善逸の様子を見に行ってくるけど、お前達はどうする? 機能回復訓練が終わったという事は、もう病室に戻ってもいいんだろ?」
「いえ……その、もう少しここでゆっくりしていきます」
そう告げる炭治郎の横では、伊之助が言葉には出さずに頷く。
精神的にかなり厳しいらしい。
こうなると、俺がここで下手に何かを話すよりも、さっさとこの場から立ち去った方がいいかもしれない。
そう判断し、俺は立ち上がる。
「分かった。じゃあ、善逸には炭治郎達が少し遅れるって言っておくよ」
そう言い、俺は善逸のいる病室に向かって進む。
……と、そんな中、庭というか外に誰かがいるのに気が付く。
見た事のない女だが、蝶屋敷にいるだけあって非常に顔立ちが整っていた。
いや、違う。以前見た事があったな。
特に何かをするでもなく、ぼうっとしている女を見て納得する。
蝶屋敷には他にもまだ子供が3人いるが、その3人も将来性が楽しみな顔立ちをしている。
これは蝶屋敷に入るには相応に顔立ちが整ってないと駄目なのか、もしくは蝶屋敷で生活をしていれば顔立ちが整ってくるのか。
しのぶの性格を考えれば、前者はないな。
そんな風に思いつつ、俺は外に出る。
とはいえ、蝶屋敷に入ったところで靴は脱いでいるので、空中を飛びながらだが。
「……」
空を飛ぶ俺を見ても、その女は特に何かを言ったりはしない。
それどころか、口元に笑みを浮かべたままぼうっとし続けていた。
「俺はアクセル。ちょっと善逸の見舞いに来たところでお前を見つけたんだが、お前がカナヲで間違いないか? 以前ちょっとしのぶから話を聞いていたけど、会ったのは……これが2度目だよな? 話をするのは初めてだけど」
俺が初めてこの世界に転移してきた時、しのぶや義勇と産屋敷家に向かう前にしのぶが話し掛けてたのが、このカナヲだった筈だ。
「……」
しかし、カナヲは俺の言葉に何を言うでもなく、ただ黙って笑みを浮かべたままだ。
これは……どうなってるんだ? もしかして、何らかの病気だったりするのか?
そんな風に考えていると、不意にカナヲが動く。
一体何を? と思ったのだが、コインを取り出すと親指で上に弾き、それを取る。
そしてコインを見ると……再び、ぼうっとした様子になる。
一体、何なんだ?
そんな疑問を抱くも、恐らくこれ以上ここで話を聞こうとしても多分カナヲが何か反応はしない。
そう理解し、これ以上ここにいても意味はないかとそ、その場を後にする。
にしても、俺が空を飛んでいるのはカナヲも見た筈なのに、それでも全く何の反応もなかったな。
ある意味、これは凄い。
とはいえ、カナヲの様子はちょっと気になる。
後でちょっとしのぶに聞いてみた方がいいかもしれないなと思いつつ廊下を歩き続け、やがて善逸のいる病室に到着する。
「善逸、いるか?」
「あ、師匠!」
ベッドの上で寝ていた善逸が俺を見ると、嬉しそうに叫ぶ。
以前来た時と違うのは、その手が以前と比べて明らかに伸びている事だろう。
「どうやら以前よりは大分回復してきたようだな」
「そうなんですよ。先生の言う通り、薬も我慢して飲んでいます」
相変わらず師匠と先生が混ざってるな。
せめてどっちかに統一出来ないのかとも思うが、善逸がいいのならそれは別にいいだろ。
「そうか。アオイ達の見る目も少しは変わってきたんじゃないか?」
「うーん、どうでしょう。だといいなぁ……とは思ってるんですけど」
「そんなお前に、見舞いの品だ」
そう言うと、空間倉庫の中から1冊の雑誌を取り出す。
「え? え? ちょっ、今一体どこから……って、何これ!?」
最初は空間倉庫の存在に驚いた様子を見せた善逸だったが、その驚きは俺が出した雑誌を見た瞬間に消える。
何故なら、俺が空間倉庫から取り出したのはグラビア雑誌だったのだから。
俺を含めて、平成時代に生まれた者が見れば、少し過激な水着を着ている女が写っている写真といったようにしか見えないが、この鬼滅世界は大正時代だ。
ましてや、善逸は女好きではあっても、実際にそういう経験は……恐らくない。
そんな善逸にしてみれば、俺が渡したグラビア雑誌は驚く……いや、驚愕するに相応しいものだった。
「さっきも言ったが、これは見舞いの品だ。善逸の物だ」
「え? 本当に……師匠……」
尊敬の視線でこっちを見てくる善逸。
その視線は、どこか信仰の色すら帯びているような……いや、何でそこまでいく?
鬼滅世界の者にしてみれば、カラーのグラビア写真というだけで珍しいのは間違いないし、俺の目から見ても美人のグラビア写真だけに、善逸にしてみればそれだけ衝撃を受けてもおかしくはないのかもしれないが。
「取りあえず、炭治郎達が機能回復訓練でいない間、暇だろう? それを見ておけ。文字は……まぁ、解読するのは大変かもしれないが」
この時代の文字と平成の文字というのは書式も含めて大きく違う。
それでも日本語である以上、読もうと思えば読める筈だ。
ああ、でも外来語の類はちょっと分かりにくいか?
その辺は前後の文脈から読み取って貰う必要があるか。
とはいえ、善逸が興味があるのは文章よりも写真の方だろう。
文章を気にするのは、それこそ写真を見飽きた後でもおかしくはない。
「そう言えば……善逸が使うのは雷の呼吸だよな?」
「……」
ふと気になって善逸にそう声を掛けるものの、善逸は全く俺の声が聞こえていないかのように、雑誌を見ていた。
雑誌を渡すよりも前に聞くべきだったか?
そう思いながら、善逸が持ってる雑誌を取り上げる。
「ああっ! 先生、一体何をするんですか!」
「取りあえず俺の話を聞け。善逸は雷の呼吸の使い手だったな?」
炭治郎が水の呼吸、善逸が雷の呼吸、伊之助は獣の呼吸。
ただし炭治郎は水の呼吸以外にも竈門家に舞として伝わっている呼吸を使えるのだが。
また、伊之助が使う獣の呼吸も独学で、ある意味では天才肌ではあるんだよな。
「え? はぁ、そうですけど」
「なら、同じ雷の呼吸を使う獪岳って奴は知ってるか?」
「か……獪岳!?」
獪岳という名前を出した瞬間、善逸は何故か叫ぶ。
いや、この場合は何故かといったような事ではないか。
獪岳も善逸も、双方共に雷の呼吸の使い手だ。
そうである以上、お互いに同じ育手に呼吸を習ったとしてもおかしくはない。
ちなみに鬼殺隊全体で見た場合、炭治郎も使っている水の呼吸の使い手が一番多いらしい。
それに比べると、雷の呼吸は水の呼吸に比べると使い手は少ない。
つまり、育手もその分少ないのだろう。
「どうやらその様子だと、獪岳は知ってるらしいな」
「あ、はい。師匠の言う通り獪岳は俺の兄弟子です。けど……その、決して仲は良好という訳じゃなくて」
「だろうな」
それは俺にも十分理解出来た。
獪岳と善逸の性格を考えれば、その相性が悪いのは間違いない。
とはいえ、善逸達を鍛えるのはムラタにやって貰おうと思ってたんだけど、そうなるとちょっと難しいか? そんな風に思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730