転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0294話

「ネギ先生が……ねぇ」

 

 ネギが茶々丸を襲撃したという話を聞いた千鶴が思わず溜息を吐く。

 ちなみに、現在部屋にいるのは俺と千鶴のみとなっている。あやかは実家の用事があるとかで出掛けているし、夏美は例によって演劇部の練習に行っている。

 そんな中、今日はボランティアや天文部の活動も無い千鶴は俺以外は誰もいない部屋の中でエヴァから貰った初心者用の杖を使って魔法の修行に取り組んでいる訳だ。

 

『プラクテ、ビギ・ナル……風よ!』

 

 杖を振りながら呪文を唱える千鶴だが、特に何も起きない。……いや?

 

「あら?」

 

 次の瞬間、本当にほんの微かにだが杖から風が流れて部屋の空気をかき混ぜる。

 

「成功……かしら?」

 

 小首を傾げる千鶴。大人っぽいその容姿に子供のようなその仕草は、アンバランスでそれ故にどこか目を惹き付けるものだった。

 

「そうだな。今、確かに魔力が動いた。成功で間違いないだろう」

「フフフ。あやかよりも随分と遅れたけど、これで私もようやく魔法使いね」

 

 大人っぽいと言っても、やはりまだ中学生という事なのだろう。初の魔法成功に喜んでいる千鶴の姿は、先程とは違い純粋に年相応のものに見える。

 しばらく初の魔法に喜んでいた千鶴だったが、唐突に部屋のドアがノックされると急いで杖と初心者用の教本を目に付かない所へと仕舞い込む。

 

「はい、どうぞ」

「お邪魔しまーす」

 

 部屋に入ってきたのは、既にお馴染みと言ってもいい柿崎と釘宮だった。ただ、いつもと違うのは椎名の姿が無い事か。

 

「いらっしゃい」

「那波さん、良かったら駅前に出ない? 当然アクセル君も」

「そうそう。折角いい天気なんだし、こんな時に部屋に閉じこもっているのは勿体ないよ」

 

 そう誘ってきた柿崎と釘宮は春物の服に身を包んでおり、華やかな雰囲気を放っていた。

 

「そうねぇ。私は構わないけど……アクセル君は?」

 

 千鶴の言葉に頷く。

 

「俺としても問題は無い。特に用事がある訳じゃないしな」

「じゃ、行きましょうか。確かに柿崎さんの言う通り、こんな天気のいい日に部屋の中に閉じこもっているのは勿体ないし」

 

 俺の返事を聞いた千鶴は軽く頷き、自分の部屋へと向かう。

 

「千鶴?」

 

 何故わざわざ部屋に行くのか、という言外の問いに苦笑を浮かべながらこちらへと振り向く。

 

「折角駅前に行くんですもの。どうせならしっかりとお洒落をして行きたいでしょう? ほら、アクセル君も着替えて。確かこの前、あやかが春物を用意していたわよね」

「あ、ああ」

「へぇ、いいんちょの選んだ春物か。ちょっと興味あるかな」

 

 何故か釘宮も興味深そうにこちらへと視線を向けている。

 チラリと柿崎の方を見ると、そちらは満面の笑みを浮かべてこちらを見ている。

 

「……はぁ。分かったよ」

 

 個人的にはファッションとかそういうのに全く興味がないので、着飾るというのは面倒なだけなんだが。いや、レモン達が着飾っているのを見るのは勿論好きだけどな。

 その場に柿崎と釘宮を残し、俺の部屋へ。

 ……と言っても、あやかの部屋に俺の荷物を置かせて貰っているだけなんで実質的にはあやかの部屋なんだが。それに俺のベッドは大きすぎてあやかの部屋に入りきらないのでドアを閉めたりも出来なくなってるし。

 

「と言うか、覗くなそこ」

 

 ドアを閉められないという事は、当然外側から丸見えな訳で。着替えようと服を脱いでいると何故か部屋の入り口から顔を覗かせている柿崎と釘宮を発見する。ちなみに、柿崎は興味津々に。釘宮は照れの為か微妙に頬を赤く染めながら部屋の中を覗いていた。

 

「あ、ごめん。つい」

「……」

 

 言い訳をしてくる柿崎と無言の釘宮。溜息を一つ吐き、あやかに用意して貰った春物の服を取り出す。

 ジーンズに春をイメージしたのか、淡い緑色のジャケットと至ってシンプルな感じだ。

 ……チラリと子供用の半ズボンが目に入るが、それは取りあえずおいておく。後でネギにでもやるか。

 

「ま、こんなもんか」

 

 あやかの部屋にある鏡で一応チェック。そこには春物を着た俺の姿があった。どう見ても小生意気な子供にしか見えないのは、自分自身を見ているからだろうか。

 そのまま財布をポケットに入れて部屋を出る。着替えに要した時間はおよそ3分程。カップラーメン並の時間だ。……いや、最近のカップラーメンは待ち時間5分とか普通にあるから麺固めな感じかもしれない。

 

「待たせた」

 

 居間に戻ると、そこには手持ちぶさたにテーブルの上へと置かれていた雑誌を読んでいる柿崎と釘宮。当然ながら千鶴の姿はまだ無い。まぁ、女は準備に時間が掛かると相場が決まってるしな。

 

「へぇ、割とシンプルに決めてきたね」

「そうだね。いいんちょの事だから、てっきり半ズボンとか用意してるのかと思ったんだけど」

 

 釘宮の鋭い推理を半ばスルーしつつ、改めて2人へと視線を向ける。

 柿崎は短めのスカートに薄い青のカーディガンを着ており、釘宮は動きやすさを重視したのか、パンツスーツのようなのを着ていた。2人共に言える事だがどちらもよく似合っている。

 

「ふふーん。アクセル君が見惚れている所を見るとこのコーディネートは成功だったようだね。……でも、どうせなんだから円はもう少し冒険した方がいいと思うんだけどね。アクセル君もそう思わない?」

「ちょっと、美砂。元々私は可愛い系の格好が似合わないってのは知ってるでしょ」

 

 溜息を吐きながら柿崎の言葉を否定する釘宮。

 

「そうか? 釘宮は結構な美形なんだから可愛らしい服装も十分似合うと思うけどな」

「ちょっ、アクセル君!?」

「だよね。アクセル君もそう思うよね。ほら、円。アクセル君も円の女らしい格好を見てみたいってさ」

 

 そんな風にある意味いつも通りの雑談をして時間を潰しているとようやく千鶴が部屋から出て来た。

 

「ごめんなさい、ちょっと時間が掛かってしまったわね」

 

 そう謝ってくる千鶴は、白い生地のワンピースを着ていた。

 

「へぇ、那波さんって服のセンスいいわね」

「……あの胸はある意味凶器ね」

 

 褒める釘宮に対し、微妙に嫉妬を浮かべながらクラスNo.1と噂される巨大な膨らみを見つめる柿崎。そんな柿崎にある種余裕の笑みを浮かべながら千鶴が口を開く。

 

「さて、じゃあそろそろ行きましょうか。お昼はどこで食べるか決めてあるのかしら?」

「ちょっと前に桜子からパスタの美味しい店があるって聞いたから、そこに行ってみない?」

「……そう言えば、今日は椎名はどうしたんだ?」

 

 基本的にはいつもチアリーダー3人組で行動をしているのだが、今日は2人だけだ。

 

「あ、桜子は今日はラクロス部の練習があって抜けられないんだってさ。実はちょっと恨めしそうな顔で見られたり」

 

 苦笑を浮かべながら釘宮が話す。

 

「あら、じゃあ夏美ちゃんと同じね」

「村上も部活? 確か演劇部だっけ?」

「ええ。麻帆良際に向けて頑張っているわよ」

 

 そんな風に話をしながらも、女子寮を出て電車に乗り駅前へと向かう。

 

 

 

 

 

「ちょっといいかな? もし良かったら一緒にカラオケでもどう?」

「ご免なさい。今日はカラオケの予定は無いので」

 

 千鶴がそう断ると、残念そうにしながらも2人組の男が去っていく。

 

「またナンパかぁ。いくら春になったからって盛らないで欲しいよねぇ」

 

 柿崎が溜息を吐きながら呟く。女子寮を出てから既に5組目のナンパだっただけにどこか呆れたような様子だ。

 だが、それも無理は無いだろう。大人顔負けの身体付きで、一見天然風にも見える千鶴。いかにも今時の女の子といった感じの柿崎。パンツスーツを着ている影響もあるのだろうが、ボーイッシュというよりは格好良いと言った方がいい釘宮。3人が3人ともその辺のアイドル顔負けの美形なのだ。そんな3人が揃っていれば誘蛾灯の如く男達を惹き付けるのもある意味しょうがない。特にそれが10代で女に対しての興味が高い年代とくれば尚更に。

 ……ナンパしてくる野郎共には俺の事が全く見えていないというのが微妙に癪に障るが。

 

「んー、このままナンパをあしらい続けるのはちょっと面白くないわね。それに以前みたいに強引なナンパも無いとは限らないし」

 

 柿崎が思い出しているのは俺が何度か助けたあの2人組に関してだろう。確かにこうも連続してナンパされていると、ああいうのが寄ってこないとも限らない。

 

「そう、ね。ならまだちょっと早いけどお昼にしましょうか」

 

 千鶴の言葉に釘宮が頷く。

 

「それがいいかも。さすがに食事中にナンパしてきたりは……しない、よね?」

「幾ら麻帆良だとは言っても、そこまで常識知らずな野郎はいないと信じたい所だが……」

 

 ある意味、これも認識阻害を使った結界の悪影響なのかもしれない。そんな風に思いつつ、柿崎の案内に従ってパスタの美味しい店とやらに移動する。

 その店は、いかにも柿崎とかが好みそうなセンスのいい店だった。基本的にはシンプルな店構えなのだが、店の雰囲気が若者受けする感じだ。

 

「いらっしゃいませ。4名様でよろしいでしょうか?」

 

 そう声を掛けて来た店員の案内に従い、席へと案内される。

 

「アクセル君は何を頼む?」

 

 釘宮にそう聞かれてメニューに目を通す。そこに表示されている料理の写真はどれもがいかにも美味そうに写っており、店内に漂っている料理の匂いと共にこれでもかとばかりに腹の虫を刺激してくる。

 

「そうだな、折角だしお薦めのアスパラと甲イカのパスタ。……あとはシーフードとベーコンのピザを1枚だな」

「……パスタとピザを両方頼んで、食べられるの?」

「以前牛丼を食べに行った時も残さなかっただろう?」

「あー、そういえば。と言うか、その小さい身体のどこにあんな量が入るのやら」

「そうなのよね。寮でも私達よりもかなり多く食べてるのよ。好き嫌いが無いというのはいいんだけど、食べる量が量だけにちょっと心配で。病気か何かじゃないといいんだけど」

 

 釘宮の言葉に、どこか心配そうに俺の方を見る千鶴。

 だが、俺自身はそれ程心配していない。食べてる量自体は子供の姿になる前とそう大して変わらないからだ。子供化の影響と考えられなくもないが、そもそもアクセルの肉体がそうそう病気にやられるとも思えないしな。

 

「俺よりも、そっちの注文は決まったのか?」

「そう、ね。この沖縄風ゴーヤパスタも気になるんだけど……」

 

 俺の言葉にそう返したのは柿崎。……ゴーヤクレープといい、そんなにゴーヤが好きか。

 

「でもシーフードスープパスタも美味しそうかも。うーん、迷うな」

「茄子とベーコンのミートソースが美味しそうね」

「あ、那波さん。なら鮭とキノコ3種のクリームパスタとかも美味しそうだよ」

「あら、確かに」

 

 こうしてああだこうだ相談しながらも、それぞれが満足する昼食を取れたのだった。




名前:アクセル・アルマー
LV:38
PP:625
格闘:262
射撃:282
技量:272
防御:272
回避:302
命中:322
SP:462
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    ギアス(灰色)
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    ???
    ???

撃墜数:376

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